人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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───それではリッカちゃん、お願いします!

リッカ「任せて姫様!先に行って、待っててね!」


──はい!

キラナ『トラウマ作ってどうするだァ〜!』
セーヴァー【ギャァァァーーーー!!】

アジーカ【おぉ、コブラツイスト】

キラナ『アジーカちゃんも同罪!』
アジーカ【ファッ】

キラナにアフラ・マズダおしりペンペンを受けたアジーカはこう残した。

【ケツが割れた】、と。


美食のススメ

『…………』

 

不老不死の蛇、ピシュム・エンキは意気消沈していた。それは先日の、アンリマユの『躾』に起因する出来事故にである。

 

彼はひたすらに食らった。食べて生きてきた。それが当然で、それが当たり前だった。

 

しかし、それは【良くない】と言われ、呪いを受けた。それをした存在が、とても偉い存在だということも知っている。

 

故にこそ、自分は間違っていたと理解するのに時間は掛からない。自分は誰かに迷惑をかけていたのだと、彼は正しく認識した。

 

『………』

 

野生は厳しさを極めていた。食べることは本能だった。溜めることも、味わうことも、ほとんど無かった。

 

そうしなければ生きていられなかったから食べてきた。好き嫌いなど無く、量を食べねば生きれない。

 

でも、そんな在り方が間違いならば。そんな行為が許されないならば。

 

自分はもう、何も口にしてはきっといけない。そうエンキは考えた。お腹も絶えず痛む。呪いのせいだ。

 

だから、きっと自分は何も食べてはいけないのだと。彼はそう考えていた。アンリマユの躾は過激な結果を招いたと言えよう。

 

このまま放置すれば、拒食症となる。そうさせないためのケアもまた、カルデアの得意とするところだった。

 

「あ、いたいた!君がエンキ君だよね!」

 

その時、エンキを見つけ朗らかな声が響いた。カルデアにいれば誰もが知るその声。

 

「はじめましてだよね!私は藤丸龍華っていうの!好きな事はコミュニケーションとサブカルチャー全般、きらいなものは先入観!」

 

『リッカ?』

 

「うん!ねぇ、ちょっとこの女ヘラクレスとお話しない?」

 

エンキはその少女を知らなかった。

 

しかし…

 

話したくなる春の暖かさのような雰囲気は、好ましかった。

 

 

「成る程ね。沢山食べたら、何でも食べたら怒られちゃったか…」

 

リッカとエンキはカルデアプラネタリウムで会話をしていた。そこには擬似的ながら、星空が空間を満たしている。

 

『何でも食べることは、良くないことだった』

 

エンキはそう自認した。食べてはならないものも、世界にはある。

 

そして、その理由は『誰かの迷惑になるから』というものであることも、エンキは理解していたのだ。

 

『でも、食べること以外の事はよく分からない。だから、何が迷惑になるか分からないから…』

 

もう食べないほうがいい。サーヴァントは、食事をせずとも活動は出来る。

 

『悪いことなら、しちゃいけないから』

 

エンキの食とは生きること。

 

『……きっと、あの金色の人の草も、そうだった』

 

そして、生きるとは罪を重ねる事。

 

『勝手に食べちゃ、駄目だった…』

 

野生のまま過ごすことから、理性と共に生きる。

 

彼は自身の盗み食いを、原罪として捉えたのだ。自己反省からそこに至るは、確かな知性の証であろう。

 

「そうだね。盗み食いも暴食も、二度とやっちゃいけない悪い事だよ」

 

リッカはエンキの決断を、否定しなかった。それが後ろ暗くとも、それは確かに彼の導いた決断にして結論だ。否定する道理はない。

 

「でも、何も食べちゃいけない…なんていうのも間違ってるよ。生き物は、食べなくちゃ生きていけない。食べるのはね、お腹を満たすだけじゃないんだよ」

 

リッカはこの時のため、榊原の家庭科とアダムの道徳科を専攻し直していた。真偽を正しく、伝えるために。

 

「心を満たして元気にするために、ご飯を食べるんだよ。エンキ君」

 

『こころ…?』

 

「うん!まずは、これ!」

 

リッカが差し出したのは、じゃんぬに頼んで作ってもらったホットケーキ。一つを二人で、すっと切り分け渡す。

 

「食べてみよう?食べる前にいただきます!食べた後はごちそうさま!ね?」

 

『いただきます。ごちそうさま…』

 

「うん!いただきます!」

『いただき、ます』

 

エンキはリッカと共に、ホットケーキを口に運ぶ。

 

『!』

 

そこには、食欲や味覚を越える『感動』があった。血を滲ませ、試行錯誤を重ね、焼き尽くすような情動。

 

『食べた人に消えない感動』をという決意。

【まだまだ理想には程遠い】という憎悪。

 

それが、エンキの食べてきた何よりも上回る『美食』として、彼の舌を焼き尽くしたのだ。

 

『食べた事、ない…』

 

それはホットケーキを指すのではなく、これほど鮮烈な食べ物を、という意味だ。

 

『…………』

 

一口、一口味わい食べる。それは以前の丸呑み、飲み込みとは違うもの。咀嚼、嚥下。食に必要なもの。

 

「ね?何でも食べて、食べて終わりは暴食なんだ。バアル様がいるならきっと解るはず。美食は、そうじゃないんだよ」

 

『美食……バアルは、節制を、学べって』

 

「そう!味わう一口一口が、とっても美味しいのが美食!少なくても、お腹いっぱいになれるもの!」

 

そしてリッカとエンキは完食し、手を合わせる。

 

「ごちそうさまでした!」

『ごちそうさま、でした』

 

食べ終わった後のエンキを未知の感覚が満たす。

 

少ないのに、満たされている。

満たされているのに、まだ食べたい。

 

『これが、美食…?』

 

美しい食事。大切な時間。野生のまま食らっていたのとはまるで違う。エンキの問いに、リッカはにっこりと笑った。

 

「美食はこれからだよ!ついてきて!」

 

リッカはエンキの手を引いた。目指すのは勿論、カルデアの食堂。美食が満ちる場所だ。

 

 

「来たか、リッカ。既に手筈は整えてある。お上がりよ、というヤツだな」

 

そこにいたのは赤エプロンのバトラー、エミヤ。現代的価値観から繰り出される食事でカルデアを救う正義と厨房の味方だ。

 

「ギルガメッシュ王より素材は卸されている。気軽に食べるといい」

 

エミヤが提出したのは、サラダである。それは不老不死の霊草…の、味を再現したもの。

 

『……いいの?』

 

「うん!せーの!」

 

「『いただきます…!』」

 

エンキとリッカは、サラダを口にする。量は少ないが、それでもエンキは一口ずつ運んだ。

 

『美味しい……』

 

あの日食べたのは、ただ腹が減ったから。今はお腹は減っていない。

 

でも、口にしたサラダがこんなにも美味しい。味付けも、歯ごたえも、味すらも。それは一人の、盗み食いとは全く違ったのだ。

 

「料理、食事というものは一人でも出来はする。孤独のグルメ某というジャンルも存在するからな。しかし、食事には手軽に美味しく出来る手段がある」

 

『……それは、みんなで?』

 

「その通り。一人より二人、二人よりみんなで食事をするとより楽しく、より美味しくなる。野生の栄養補給より幾星霜、人類はここにたどり着いたのさ」

 

エミヤの言葉を、蛇は魂で理解できた。何もかもが違うこのサラダ。それは、二人がいて、教え、食べさせてくれたからこんなにもおいしい。

 

「アンリマユとアジーカは、丁寧に教えられなかったから乱暴だったよね。でも…知ってほしかったんだ」

 

『知る…』

 

「『皆で食べてみなよ』っていうのと『ただ食べるだけじゃもったいない』って事。心構えや色々な工夫が生まれて、ただ食べるってだけじゃ無くなってるのが今って世界なんだ!」

 

始まりの蛇へ、人類が伝える食文化の進化。

 

「どうかな!これからもっと、美味しい食事を食べてみたいと思わない?」

 

リッカは手を差しのべた。それは、さらなる学びと美食に導くもの。

 

『…………』

 

本来なら、食べないほうがいいのかもしれない。自分は、暴食からまだ脱却しきったとは考えていない。

 

『…!』

 

だが、腹は減る。考えていようと、決意していようといまいと。どうしても、腹は減る。食べたいと、願ってしまう。

 

食べることが、美食というものに昇華出来るのならば。

 

自分はそれを、したいとおもうから

 

『…うん』

 

エンキは手をとったのだ。

 

美食をもっと、知るために。

 

 




そして、リッカ達が移動せしは……

エンキ『こ、こは……』

遥かに聳え立つ、人類最古の城塞都市。

何故か時代にそぐわないバルーンや、飛行船。『偉大なる姫、生誕祭』とのテロップを掲げながら。

そこに集うは、カルデアのメンバー達。

「さあ、ようこそ!カルデア周年パーティーINウルクへ!」

エンキ『……!』

遠くより、見上げるばかりであった城塞都市。

今エンキは、その眼前に迎え入れられていたのだった。
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