人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ウルク民「なぁ、ティアマト神を飾り付けとか俺達とんでもない事やってねぇ?」
ウルク民「そうだな…でも、ティアマト神が望んでるらしいぞ…」
ウルク民「ならいい…いいのか…?」
ティアマト『♪♪♪』
ウルク民「カルデアって凄いんだなぁ……」
アジダハリッカ(アジーカ)【おうおうこんにちはウルクの良い子たち。食べるとやみつきになるおやつをあげちゃう。ほらほら食べてお腹満たしちゃいなよほらほら】
「「「「「ありがとう〜!」」」」」
【絶対悪執行完了。やったぜ】
ブイン区画
アマテラス『ワフ(変わらず桜が咲いています。大切にしてくださっているのですねぇ)』
イザナミ『ほわぁ〜!ここが噂の最難関特異点の舞台!なんだか未来すぎるような?』
アマテラス『ワゥ…(色々あったのです。本当に色々…)』
〜
エンキ『ここが、王様の街』
リッカ「そうだよ。ギルガメッシュ王が作った、最高の城塞都市!」
エンキ『………なら』
「?」
エンキ『行かなきゃ、行けないところがある』
リッカ「行かなきゃいけない…?」
ラマッス仮面『その心意気をよしとラマッス』
エンキ『!』
ラマッス仮面『こちらへ。王がお待ちです』
リッカ「王!?つまり会いたいのって…」
エンキ『…』
「ギルガメッシュ王。ギルガシャ…ラマッス仮面が、件の子を招き入れられました」
「そこまで言っては最早真名開示だぞシドゥリ。七つの幼子の戯れだ、無粋な真似は御法度とせよ。よいな?」
「……孫に駄々甘なお祖父様…」
「何か言ったか?」
「いえ何も。ささ、謁見の間へ」
会いたい人がいる。そう告げたエンキはラマッス仮面に連れられジグラットの謁見の間へと誘われる。リッカとラマッス仮面は頭を即座に垂れる中、エンキだけはかの王を真っ直ぐ見据える。
「ほう。此度の騒動の根幹を招いてみれば、怖気づく事無く我を見据えるその細い瞳孔…。我の生涯の失態、その象徴たる蛇めに相違はないな?」
頭を垂れぬ無礼も軽く流すは、ウルクの玉座に座りし賢王ギルガメッシュ。特異点的に存命の『すべてを見たひと』そのものである。若々しいが齢120付近の存在でもある。
「エアめより大層な名を授かった様だが、その晴れぬ顔は何事だ?蛇は蛇らしく、悠々と這うのが自適であろう?」
玉座にて頬杖をつき、エンキを詰る賢王。ラマッス仮面とリッカは静かに面を伏せている。王の謁見とは、許可なく話すは無礼に当たるからだ。
「此度の『カルデア攻略特異点最難関連続首位記念パーティー』に出席するのであれば、貴様が至るは玉座でなく、市民館辺りが妥当な筈だが?」
「王よ、些か剣呑な言い方が過ぎますよ」
「構うなシドゥリ。これは奴めの問題だ」
そう、エンキはまずここに来たいと告げた。それを知り、ラマッス仮面が玉座へと招いた。
口では辛辣であれ、賢王は本当に無駄な時間など取らない。こうしているのは『時間を割く価値』を認めたが故の事だ。故にエンキは、何かを期待されているのである。
『……王様…』
エンキからしても、それは懐かしき王。
水浴びをしている中でゆったり揺られたかと思えば、呵々大笑して泳ぎ回ったり雄叫びをあげたり、奇行を繰り返していた金色の王。
かつて自分は、その持ち物を食べた。封も空いており、乱雑に置かれていたそれを食べた。
くれたんだ、と思った。そこに、食べられるように置いてあったから。でも、それは違った。
それはとても大切なもので、王様が一生懸命に獲得したもの。それは、自分が掠め取ってはいけなかったもの。
『………あの時……』
言うべきことは分かっている。ただ食べる事と、美食は全く違うと教えてもらった。
もう自分は名無しの蛇ではない。きちんと名前のついた生命として、しっかり生きていかないといけない。
なら、獣のような気ままな生き方は卒業する。
美食や、一人前の生命として。無かったことには出来なくとも。
『あの時、勝手に草を食べて…』
しっかりと、意志を見せなくてはならない。責任を取らなくては。
あれはきっと、自分だけが美味しかった。
その食べ方は、ダメなものだと教わった。
だから──
『王様のごはん、勝手に食べて…ごめんなさい』
エンキは頭を下げた。自分の否を認め、謝罪を口にした。
「……………………………」
王はそれを静かに聞いていた。リッカも、シドゥリも、ラマッス仮面も、言葉を発さなかった。
長い沈黙がジグラットにあった。城下の喧騒が遠く感じられるほどの。
「……何かと思えば。そのような下らぬ些事をこの世の終わりのような顔で絞り出すとはな。知恵を持つのも善し悪しよ」
『え…』
王は静かに息をつき頷く。真意を掴めず、目を丸くするエンキ。
「ラマッス仮面!アレを選定し我が手に載せよ!」
『はっ』
ラマッス仮面に賢王は天命の粘土板、即ち賢王版王立鍵を投げ渡す。ラマッス仮面は即座にそれを展開し、王にそれを授ける。
「貴様の盗み食いの対象はこれであろう?そら、検分せよ」
乱雑に投げ渡したのは、中に草の入った瓶。エンキにはそれが大いに心当たりのあるものだ。
「藤丸龍華。面を上げ共に見るがよい。それがギルガメシュ叙事詩後半の中核だ」
賢王に促され見たそれは、まさに…
「不老不死の…霊草!?あれ、失くしたんじゃなかったの!?」
「ふはは、我のコレクター魂を侮るな人龍!ウルクを完成させた後、こっそり深淵に行って回収していたのだ!それはそれでレアな宝だったからな!」
「成長したんじゃなかったんですか賢王!?」
「仕方ないのです。王にとって収集とは本能。リストは埋めずにいられないタイプなのですから」
シドゥリのあきれ声を笑顔で流し、賢王は告げる。
「知恵なき獣は省みなどせぬ。本能のままに今日生きるを繰り返すのみだ。しかし、知恵ある者はまず他者への交流を覚える。それが生きるに必須な社会的行動たる故な」
賢王の言葉に怒りや棘はない。真摯な言葉であった。
「貴様はまず己の非を認め、詫びることを選んだ。それは自尊でなく、協調の意を宿した事の証。小賢しいと詰りはすまい」
賢王は静かに頷き、纏める。
「善き名を貰ったと見える。これからもその名に恥じぬよう、己を律し生きるがよい。不老不死の故を思いながらな」
『王様……』
ありがとう。そう、エンキはギルガメッシュに続ける。
なんの因果か、果たして偶然か。
ギルガメッシュの本来忌避するべき相手と、細やかなる和解が成立したのだった。
「よし、ではそのしみったれた面を喜色満面にしてくるがよい。此度の宴、それなりに余裕を持ったスケジュール故な」
『うん。ありがとう、王様』
「フッ、当たり前の事にいちいち礼など要らぬ。では下がれ、者共!此度は遥々ご苦労であった!」
それだけを告げ、王の謁見は終わりを告げる。時間にしてみれば短くとも、その語らいには大いに意義があった。
「かつてようやく目を開けたばかりの赤子が、今や名付け親か。時が経つのは早いものよ」
「ピシュム・エンキとされていますね。終末剣や、深淵の仙人から取ったとされるのでしょう」
「うむ。どちらも我に縁深い響きだ。全くあやつめ、相も変わらぬ我大好きっぷりよ。面映ゆいではないかふはははは!」
高笑いを響かせた後、賢王は天井を見上げる。
「では、巣立ちもそう遠い未来ではあるまい。いずれカルデアめは星の大海へと漕ぎ出す。愚かな我と共に、庭を飛び出してな。我の知見届かぬ先へ、旅立つのだろうよ」
「王……」
「ま、それくらい好奇心旺盛でなくば姫は務まる事なかろう。如何なるものも永遠に幼くはいられぬもの。望まぬ内に、子は大人となるのだ」
それはそれで良いことだ、と王は締めくくる。
「世界の外でなく、内側にこそお前はある。やがて全能にたどり着く時、それを理解していなくばならんが…、まぁ、それは我が気遣うものでもない。子育ては愚かな我に任せるとしよう」
「ふふ…。そう残念がらずとも大丈夫ですよ、王」
シドゥリが笑い、王の懸念に釘を刺す。
「おじいちゃんやおばあちゃんは、いつになっても愛おしいもの。遠く離れど、御身の焼いた世話のアレコレはきっと必ず、心に残り続ける事でしょう」
「…フン。いつにもまして余計な世話を回すではないか、シドゥリよ?」
「ふふ、あらいけない。これではまるで王と同じおじいちゃんおばあちゃんですね?」
「ええい、年寄り扱いはよせというに!我はまだ120付近!あと十年近くは戦えるわ!」
賢王の怒鳴り声に、シドゥリのさらりとした弁論が響き渡る。
ジグラットにて起きたささやかなる過去の清算は無事にわだかまりの氷解、和睦と相成った。
そして、本当の意味でギルガメシュ叙事詩は新章に突入するといっていいだろう。
それは過去ではなく、遙か未来の出来事。
遙か未来に現れし王と、傍らの姫が織りなす叙事詩。
その顛末を思いながら…。賢王は玉座にて仕事に耽るのであった。
市民館
リッカ「それじゃあ皆、手を合わせてー!」
ラマッス仮面「いただきます!」
「「「「「いただきまーす!!!」」」」」
エンキ「いただき、ます…!」
蛇は名を得て、王の旅路にまたふらりと現れる。
盗み食いの下手人でなく…
王の確かな、財として。