人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
「いらっしゃい!ごめんね〜こんな格好で!でもお互い、遠慮するような関係じゃないよね!さ、入って入って!」
ここはリッカの部屋…のワープポイント経由で訪れし夏草の藤丸宅。グドーシが最期に託した、億相当の一軒家。彼女が有する固定資産。
ネグリジェと下着着用の傍から見れば蠱惑的すぎる格好と快活さの奇跡的なバランスを見せるリッカが、手を取りリビングへと案内する。そこには、クリスマスパーティーの装い様式が完璧に段取りされていた。七面鳥、チキンにシャケ(?)、シャンパンやクリスマスツリー…暖房も完備である。
「ふっふっふ。私はずっとずっと考えてたんだ〜。あなたに贈れるプレゼントってどんなものかなーって。ほら、私はまだまだ至らなくて、皆から貰ってばかりの女でしょ?それは良くないなー、私もお返ししたいなーって。で!」
考えに考えたのが、これ!そう告げたリッカはクリスマスパーティー会場を手を広げて示す。
「この料理とかね!ぜーんぶ私仕込みなんだよ!カルデアのママン達に教わりながら、形にしてみせたんだ!どうどう?凄いでしょ?」
スープやチキンは勿論、様々な料理は出来立てで手間暇がかかっており、どれも会心の出来であることが一目で解る。そして目を引く、巨大かつ緻密な出来栄えのストロベリーケーキ。
「これ!これね、じゃんぬに手伝ってもらって作ったの!えっへへへ…自分で言うのはなんですが、相当な出来栄えとなっております〜!」
マシュ、じゃんぬ、オルガマリー、ギル、エアの人形が置かれた豪勢極まるケーキを、彼女は手掛けた。それは、示したかった成長の証明。
「あのね。私、昔からがさつっていうか…女の子らしさを蔑ろにしてた事がたくさんあったでしょ?いっぱい無茶して怒られたし、カロリーメイトと野菜ジュースあればいいとか凄いこと言ってたし…」
性別リッカ、女ヘラクレス。それは彼女を表すワードであった。良くも悪くも彼女は性別に囚われぬ爽快さや快活さ、そして魅力を示してきた。
「それが魅力だよ、とも言ってもらえたけど…それに甘えて、自分磨きをしないのは、違うよねって。だから、見せたかったんだ。私が成長してるのは、力や技とか、戦闘技術ばかりじゃないんだよって!」
それがこの、クリスマスパーティーの様相。彼女は懸命に形にしてみせた。
可愛らしい女の子としてのスキルとアーツが、きちんと身についていることを。部屋には汚れ一つ無く、肌にはシミ一つ無く、髪には傷み一つない。
過酷な戦いの中で、彼女は『女子力』をも、身につけてみせたのだと。
「うん。あなたにはきちんと見せておきたかったんだ。ずっとずっと、私を見てくれたあなたには…うん、ちゃんとね」
□□の向かいに座っていたリッカは、そっと□□の隣へと移動する。
「さっ、食べよ食べよ!パーティーの催しはこんなものじゃないんだから!料理は出てきた瞬間が一番美味しいんだから!ねっ?」
そしてリッカは満足げに、クリスマス料理を共に平らげていく。どの料理も真心と誠実さ、修練の様相が籠もった大変に美味なものだ。
「我ながら美味しい〜!よく作れたもんだよ〜!成長したなぁ私〜!」
自分で作って自分で感動しているリッカだが、それも無理からぬと言える。特にじゃんぬ監修のケーキはプロ顔負けそのものの出来栄えだったが故に。
「この料理を作ったのは誰だ!!私だ!!あっはっはっはっ!」
リッカもまた、心から楽しげにパーティーを楽しむ。そして料理を食べ終わり、片した後の余韻を静かに味わう。
「……実はね。高校生活の時はあんまり電気もつけなかったんだ、私」
ぽつぽつと、リッカは自身の身の上を語る。
「縷々とかヤマトとか皆はずっと一緒にいてくれたりしたし、皆との時間は最高に楽しかった。でもどうしたって、皆には帰る家がある。私のこの家はグドーシがくれたものだけど…その時には、いなかったから」
故に、リッカは広い家の、静寂の中で膝を抱えていた事が何度も在ったのだという。長い孤独の夜を、そう過ごしていたと。
「でもね、今はもう違うよ。夜もぐっすり眠れるし、怖くも寂しくもない。カルデアにも、夏草にも、そしてあなたもいてくれるんだもん」
自分にはたくさんの、たくさんの絆が出来た。それは宝物であり、生きる意味であり、戦う理由。
「辛い事は本当にたくさんあったよ。親だった人には見捨てられて、たくさんの呪いを引き受けて、親友と別れて、いじめられて、自分を否定されて……」
苦しみは余すこと無く、悪意はとめどなく。だが、それでも。
「それでも、私は逃げなくて良かった。『藤丸立香』を名乗るにはちょっとハードすぎたけど…でも私は、私から逃げないで本当に良かったって…今は思ってるんだよ」
そっと、手を握る。
「ありがとう。ずっと見守ってくれて。あなたがいてくれたから、私は私でいることが出来たんだ。世界を救いたい。護りたいって…そう思うことが出来たんだよ」
彼女の瞳は金色に輝いている。奥には獣の紋章が浮かぶが、それは燃える決意の焔に燃えているのだ。
「ちょっと待っててね。クリスマスには、プレゼントが不可欠でしょ?」
リッカが引っ込み、そしてプレゼント…箱には入っていないそれを差し出す。
「じゃーん!リッカブランド防寒具ー!アスカに習って編み込んだ手作りなんだよこれー!」
手袋、マフラー、セーター。丁寧に丁寧に編み込まれ作られたそれが、リッカが贈るプレゼント。
「それにこれ!香水!メイヴちゃんと鈴鹿と一緒に作ったオリジナル香水なんだー!」
嗅げば麗しくも、力が湧き立つ勇壮な香りがする特注コロン。それらは全て、戦闘には関係のない日用品。
「えへへ、これを通して伝えたいこと…というかプレゼントはね!『藤丸龍華は、ちゃんと女の子が出来ています!』ってこと!着実に、性別リッカは卒業しつつあるんだよってことをね、こうして伝えたかったの!」
それこそが、彼女の成長の証。
「こっちで半年、そっちで七年もかかっちゃったけど……皆の願いや期待は、裏切らなかったつもりです!これは、それを形にしてみた…ってところかな!」
どれもこれも、性別リッカや男勝りなままでは何一つ作れなかったもの。
彼女は戦いの矢面に立ちながら、決して日常のことを忘れてはいなかった。
無茶をすれば叱り、自虐をすれば怒ってくれるかけがえのない存在を忘れることはなかった。
いつまでも優しさに甘え、成長しないわけにはいかなかった。
絶対に思いやりを無碍にしてはいけない。失望させてはいけないという決意があった。
自身を好きになってくれた想いに報いたい。その一心を形とした。
その成長の一端が…こうして、結実したのだ。
「改めまして。いつも応援してくれて、本当に本当にありがとう!」
……ただ、彼女の魅力にして魔性たる部分は。
「私は君のこと、ずっとずっと大好きだよ!これからもずっと、よろしくね!」
アジ・ダハーカらしく、親愛も友愛も情愛も、等しく彼女の中ではあるが故に。好きの言葉がスムーズに出過ぎてしまうところだろうか。
「あ、マフラーしてみてよマフラー!私が巻いてあげようか?絶対暖かいよ〜!風邪引いたりしないでね!ずっとずっと元気でいてね!」
それと肉体の魅力が最早少女と言えるそれではなく、女神の領域に到達していることに全く無自覚な彼女故の距離感の近さもまた…
「ええ〜っ!?オレの傍に近寄るなって、なんでさ〜〜!マフラー巻かせてよ〜!」
彼女の魅力であり、危険な龍の牙であるのかもしれない。
リッカ「時に君!夜も更けてきたし外も寒いし、まさかこのまま帰るだなんて言わないよね?夜はこれからだよ〜?」
「せっかくのクリスマスイブ…女の子一人暮らしの家に招かれた以上…何をするかは…」
「解るよね?さ、私の部屋で……」
「……………いいコト、しよっ♡」
リッカの部屋
リッカ「あっちょちょちょ待ってください!!待って!!助けて!!お願いします!!」
「わぁぁぁぁぁーーーーーーーッッッ!!!(トゲゾー甲羅直撃)」
カルデア&キヴォトス大ゲームクリスマスオンラインパーティーにて、夜通し騒ぎ続けましたとさ。