人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
毎日が尊き愉悦の日々たるワタシにとっても、この日はとても特別な日。
ギルガシャナ=ギルガメシア…エア=レメゲトンがその名を英雄王ギルガメッシュより賜り、この世界に生誕した日であり、そしてアルクの誕生日…。
この特別な日に、どうかあなたとひと時を過ごす事をお許し願いたく思います。
至尊の旅路、その道筋を支え、照らし出す綺羅星のような貴方へ心からのプレゼントを。
さぁ、ワタシの手に掴まって……──。
ドスン(座る音)
プレシャス・ガーディアン・フォウ『乗ったね?ボクの背中に』
『もう、引き返せないゾ♪』
──さぁいざ参りましょう!
決戦のクリスマス会場へ!
〜
『100×100の200万プレシャスパワー!!更に5倍のプレシャスブーストで1000万プレシャスパワー!!そしてエアへの想いを込めれば!!地球の重力を振り切る∞プレシャスパワーだーッッッ!!!!』
──これもまた、あなたへ送るプレゼント…。
題して!『生身大気圏突破体験』となります!ご安心を、プレシャスパワーは万全安全ですから!
フォウ『まだだ!もっと!!もっと尊べえええええーッッッ!!!』
さあ、ご覧ください。
この宇宙で最も美しき至宝を!
──さぁ、到着いたしました。ワタシの手を取り、そっとフォウの背中からお降りくださいね。
エアはそっと手を差し出し、着地を促す。フォウの身体からは虹色の奔流が溢れ出ており、その生命を保証する。
──最早ここが何処かなどは一目瞭然ですが、それでも生身で至ることは新鮮だと思います。その驚きも兼ね、言葉に致しましょう。
そこは生命が至るは赦されぬ場所。孤独の黒き海にして、数多の星が浮かぶ場所。極点に満ちる、星の空。
──ここは宇宙。軌道衛星上付近の宇宙空間にワタシ達は立っています。フォウと、ワタシと、あなたの三人で……。そして、あれこそが。ワタシがあなたに捧げる、クリスマスプレゼントの全容となっています。
エアはそっと、柔らかく手を伸ばす。そこに在るのは──
──太陽系、第三惑星。数多無数の生命が満ち溢れる宇宙の奇跡。類まれなき万象織り成す王の庭。その名を…
『地球』。ガガーリンさんが『青いベールを懷いた花嫁』とも称した…素晴らしき蒼き星。黒き空に浮かぶ我等の故郷です。
遍く生命の故郷。
満ち溢れる生命の楽園。
万物が生まれ、育ち、死んでいく揺りかご。
英雄王の庭たる、輝ける青い星。
エア達は今、それを完全なる生身にて見据えている。防護服も宇宙服も存在しない、空を飛び出した姿のままで。
『あまりボクから離れちゃダメだよ。プレシャスパワーがないと、まだまだ人間に宇宙は厳しいからね!』
プレシャスパワー。人の願望、夢、希望が産み出した最高純度真エーテルに匹敵する七色の魔力。エアの魂に触れたフォウのみが生成できる、因果律にすら干渉する新エネルギー。
それは極限環境の踏破すら可能にする、人間の可能性そのもの。未来を作る希望であり、過去を未来に繋げる架け橋であり、今を明日にする原動力。それにて、フォウはエアと□□を守護しているのだ。
『ボクからもメリークリスマス!君はずっとずっとボクの悪友だよ!』
プレシャスパワーにて完全成長を果たしたプレシャスガーディアンたるフォウは、大型魔獣クラスに匹敵する神々しき身体を有する。親しげに身体を擦り寄せた後、エアの傍らに侍った。
──あの星は、ワタシにとっても本当にかけがえのない場所です。それが何故だか、おわかりになりますでしょうか?
エアは悪戯げにくすりと笑い、問いを投げかける。それは、分かりきった事を聞くことへの照れ隠し。
──リッカちゃんたちの旅路が始まった場所。マルドゥーク神が開闢し、慈悲の父が創造し、王が神代と訣別した、人の歴史が紡がれし場所。
でも、いまだけはそうじゃありません。それよりも、いまこの瞬間に大切なものは、たった一つ。
エアは□□の両手を取り、その目を見つめる。そう。エアにとっての大切な価値。
──
エアは深く深く頷いた。それこそが、かけがえのない大切な価値にして、真理の全て。
──人の一生は、星や宇宙に比べたらとても短く、必ず終わる。ゲーティアは終わりを何より嫌い、恐れ、克己しようと偉業を成した。
その左薬指には、指輪のレプリカ。ゲーティアが唯一自身のものとしてエアに託した、白銀の指輪。
──この広い広い宇宙であなたが産まれ、ワタシ達が出会い、そしてこうして絆を紡ぐ。それは一体、どれほどの奇跡なのでしょう。どれほどの偉業であるのでしょう。
この奇跡、その事象の根源は…果たして一体如何なるものか。貴方は得心に至れますでしょうか?
ワタシは知っています、とエアは語る。その言葉に、なんら迷いも淀みもない。
──あなたが世界に産まれ落ちた事。あなたが今日という時間まで懸命に懸命に生き抜いてくださった事。そして、輝ける明日へと生命を運んで向かうこと。それこそが、万象織り成す奇跡の根源であるのです。
ご覧ください、そうエアは星を指す。青くきらめく、奇跡の星を。
──あの星の輝きと同じくらい、あなたの生命と人生は輝きを放っています。輝かしく、煌めかしく、眩かしく、とても尊いあなたのいのち。
巡り会えたこの奇跡に、心から嬉しく思います。何億、何兆と呼べる生命のたった一つから、ワタシ達は絆と想いを結び、巡り合う事が出来た。
自らの胸に手を当てるエア。そこには、感無量の想いが在った。
──あなたという存在に、こうして出会える事が叶った事。それが何よりも嬉しく、誇らしく、尊い事だと。ワタシは想って止まないのです。
エアの言葉は、熱と感動に震えていた。それ程の奇跡と、確信しているが故に。
──ワタシは、転生者です。本来ならこの世界にはいない異物……いらない不純物ですらあったかもしれないもの。
無銘とされ、ギルガメッシュを器にした転生者。自身はかつて、右も左も解らなかった。
──ですが、ギルが見せてくださったこの世界はとても美しく、ワタシをそっと受け入れてくれたのです。人類の歴史、カルデアの旅路、王の叙事詩。
ですが、ワタシをそれよりも早く受け入れてくださった存在がいらっしゃいました。それこそが、貴方であるのです。
エアの周囲に浮かぶ『部員届』。正確にはそれは部員届の形をした、『希望』と『想い』そのもの。
──『こんな物語を見てみたい』『この物語を応援したい』『この人物たちを支えたい』『こんな未来があってもいい』……
──たくさんのもしも、たくさんの空想、たくさんの荒唐無稽。それをあなたは、いつもずっと『尊重』してくださいましたね。
楽しげに感想を告げてくれた。
理不尽に怒り、悲劇に悲しみ、共に喜んでくれた。
物語が動かぬ幕間も、手が回らぬ窮地も、ずっとずっと助けてくれた。
──今や、貴方がたの紡いだ感想は極致にして頂点。あらゆる物語にて、最も積み重なった大偉業。並ぶ者なき、最も素晴らしき功績。
貴方がたは、最も素晴らしき『共演者』。傍観者という冷たい関係から、先に進んだかけがえのない皆様。
エアは、笑顔を浮かべる。
──ありがとう。あなたがいたから、ワタシたちは愉悦に満ちた
毎日を過ごせています。
──ありがとう。あなたがいるから、ワタシたちの旅路は素晴らしいのだと胸を張ることが出来るのです。
──ありがとう。あなたのおかげで、ワタシたちの旅路は一歩一歩進んでいけるのです。
──ありがとう、ありがとう。本当に、本当に。心の底から、ありがとう…。
エアの祝辞は、プレシャスパワーを更に強く産み出す言の葉となる。そして、彼女が最も告げたい祝福は此処に。
──ワタシが振るう宝物は、全て王に帰属する財宝。ワタシの持ち物と言えば、王より賜った玉体と、色付いたばかりの魂に名前、そして大切な親友たるフォウのみです。
『あ、ボクはだめあげられない。あげられるものか断じて!!』
──はい。ですから……ワタシが最も価値あると信じるあなたに、精一杯の祝福を。
エアが告げる、心よりのプレゼント。
───生まれてきてくれて、本当にありがとうございます。
──あなたと出会えて、ワタシは本当に幸せです。
──どうかこれからも、共に歩んでまいりましょう。
──かけがえのないあなたへ、なんでもないワタシより。
──あなたの全てを、心の底から尊び、重んじます。
──嬉しい事も、悲しい事も、楽しいことも、腹立たしいことも、ワタシはあなたに寄り添い、分かち合える事を願います。
──ありがとう。尊いあなた。
──今年も本当に、ありがとうございました。
──来年もまた、どうぞよろしくお願い致します。
──ふわふわした頼りない魂から、かけがえのない尊い魂のあなたに。
──ハッピー、メリー、クリスマス。あなたの生が、これからもずっとずっと至尊の輝きを放ちますように──。
蒼き星を眺めながら……
エアは唄うように、寿ぐのだ。
かけがえのない、物語の共演者。
あらゆる物語の観測者達の頂点に立った、万を越える王の至宝たち。
煌めく言の葉を告げし…
かけがえのない、