人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
考えていることは多分、明日活動報告で報告させていただくと思います!
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お陰様で仕事を無事乗り切りました!本当にありがとうございました!!
影の地。マリカの故郷であり、メスメルによって焼き払われた場所。捻くれた影樹が聳え立ち、見捨てられた地であることを強調する焼き払われた地。
『煤けてるなぁ〜…』
その空を、悠々と飛び立つ白き翼があった。見棄てられた土地に似つかわしくない、麗しく雄々しい龍の翼。
『上から見ても、すっごい念入りに焼かれたんだって事が解るねぇ〜…』
それは、祖なる龍ミラルーツ。一時的に本来の姿に戻り、空を悠々と飛行し下界を見下ろす。それは種族を見下す神気取りとかそんなふうではなく、単に地理を把握することと、もう一つ目的がある。
『暴竜ベールの住む山はギザ山って言うんだよねぇ。きちんと見ておかなきゃねぇ〜』
そう、威力偵察として、影の地における暴竜ベールの縄張りや様相を確認しておきたいと個人的な思惑が存在していたのだ。マリカの巫子村から飛び立ち、ギザ山と呼ばれる険しい山を眺めている。
暴竜ベール。影の地におけるギザ山の頂上を根城とした、暴れ狂いし暴虐の竜。その存在は影の地を焼き払うに留まらず、古き竜王にすら挑み、深き手傷を負わせたとされる筋金入りの問題児。
その咆哮は炎と雷を操り、怒れる本能は山の噴火に匹敵し、あらゆる飛竜達の王とされし恐ろしき竜。リッカらが挑む存在であれば、情報の把握は急務であるとルゥなりに考案したという事だ。
見ればギザ山は高く、積乱雲から常に雷が落ち、嵐が逆巻く常人が登るべくもない山だ。疾走する脚がなくば、徒の踏破は不可能であろう。
『どうだろ。イビルジョーみたいにお話通じないタイプかなぁ…』
出来れば力を貸して欲しいと頼み、了承してもらう対話による平和的解決を望みたいルゥだったが、暴竜等というやんちゃ極まる渾名をつけた竜がそこまで理性的かを甚だ疑問視する。
彼女の知る暴竜とは恐暴竜イビルジョー。食べるために生き、生態系を破壊するレベルの大食い。その竜は当然、話など通じる相手ではない。
『とりあえず、お邪魔してみようかなぁ』
ルゥは持ち前の気楽さで、ベールとコンタクトを取らんとする。
しかし、その必要は無用であると即座に思い知る事となる。
【グギャガァアァアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!】
突如響き渡る、狂気すら孕んだ暴虐の響きたる咆哮が影の地の空へと響き渡る。
『おぉっ?』
天雷を思わせるそれは、ルゥの眼前…ギザ山より一直線に飛来した。
鉱物を思わせる黒き外殻。マグマを思わせる熱き灼熱のエネルギーの奔流。
折れた翼、血走った真紅の眼。食らいついた二本の首が纏わりつく異形の竜。
【グコガァアァァァァァァァァァァァァ!!】
『向こうから飛んできたぁ…!』
暴竜ベール。無高き暴竜たるそれが、ルゥを縄張りの侵入者として排除せんと現れたのだ。
『ちょっと、お話できる〜?戦いに来たわけじゃないんだよ〜』
ルゥは言葉通り、理知的で平和たる穏便な対話を試みる。対話は人の持つ強力な力であり、リスペクトの対象である故に。
しかし、件の暴竜の狂乱と暴力性は常軌を逸していた。
【グギャァアォオォオォオォオォオォオッッッ!!!】
問答無用とばかりに、敵対者たるルゥに執拗に攻撃を仕掛ける。無数の炎雷を叩き付け、何度も何度も翼爪を叩き付け、白き龍を排除しに襲いかかったのだ。
『やっぱり話の通じないタイプだったかぁ〜…』
ルゥ自身にはまだベールの命を奪い去る意志は無いため、回避や防御に徹している。しかし、それでもなおベールの攻勢は苛烈を極めた。
『あ痛!?』
ベールが炎雷を込めし牙にて、ルゥへと噛み付く。全てを食い千切らんと頭を振る、デスロールならぬデスファングだ。
『いたたた…!』
炎雷を込めた、肉を焼き骨を溶かし砕く無数の牙がルゥの首筋へ深々と食い込む。一切戦意の無い振る舞いから、対処が遅れたのだ。
『ちょ、ちょっと元気が良すぎかなぁ…?』
空中で揉み合いながら、肉を溶かす牙がルゥには深々と食い込んでいた。離れなくては多少の手傷になりかねない。
『───!』
なんとかしよう。そう決心した瞬間、ルゥの霊眼は遥か遠く、ギザ山の山頂や中腹付近を目の当たりにした。見通した、見据えたと言ってもいい。
『あれは…』
そこにあったのは無数の飛竜の死骸であった。竜種、飛竜の王たるベールの配下である筈の飛竜たち。
人に狩られたのかと見れば、そうではない。その死骸には皆焼け焦げた後や、牙で噛みつかれ、爪で抉られた痕跡があった。
『…………』
あれは、生命の輪廻に組み込まれるような死に方ではない。ルゥはそれを看破した。
単純に殺したいから殺された。暴虐の限りに命を奪われた。そしてあの場所に、乱雑に打ち捨てられた。
人の礎になるのも、魔の糧になるのも許されず、ただ腐り、塵に帰るだけの死骸の山。
そこには尊重も、調和もない。ただひたすらな暴虐と殺戮の跡が在った。
あの飛竜たちは、何も遺す事なく塵になる。
生命の輪より、神羅万象より無作為かつ無意味に消え去っていく。
生存競争ですらない、一方的な殺戮により。誇りも尊厳も消え去った上で。
自分に食らいつくベールを見るに、ただただ生命を奪っただけなのだ。それらになんら、関心も興味も持たない上で。
狩猟でも討伐でもない、殺戮と暴虐の権化。
そこからは何も生まれる事がない、無人の果て。
それはいつか、影の地や狭間の地すらも飲み込みかねない暴虐。
そして、ハンターでなきリッカ達には手を焼く相手でもあるはずだ。
ルゥは静かに思案した。
オトモミラルーとして裏方に徹するつもりでいたが……。
この生き物に『調和』をもたらしてやらなくてはならないのではないか、と。
【グコガァアァァァァァァァァァァァァ!!】
尚も深く深く、ルゥに噛み付くベール。完全に、敵対者としての姿を示している。
『────』
ルゥは噛み付くベールを、軽く一瞥した後。
───ほんの軽い、『手打ち』の一撃を雷撃をベールへともたらした。
【!?!?!?】
落雷の何億倍も強力な神罰の原典たる紅い赤雷。ルゥからしてみればねこぱんちのような一撃だが、ベールの肉体は著しく貫かれ、全身が硬直停止する。
『───頂にて、裁定を待て』
厳かに、ルゥはそう告げる。
『竜餐が、貴様を待つ』
そのまま即座にルゥはくるりと回転し、尻尾を確かに叩きつける。
【!!!!!】
ベールはその一撃を受け、遥かギザ山の頂上にまで送り返される。吹き飛ばされたのだ。
『よし──』
ルゥはあえて飛行をやめ、地表に向けて落下していく。それは生命活動の放棄ではない。ただ、ギザ山を自ら踏破する気になったという事だ。
『カナメ…はまだいいかな。なら、頼れるパートナーを呼ばなくちゃ』
落下しながら、ルゥの肉体は人間へと変化する。
いつもの幼女たる姿ではない、身の丈程ある武具を軽々と振るえる体格の、祖龍の力を人の器にて再現した、美しく厳かな女王が如くの肉体へと自らを変える。
『オトモガルクの経験もある彼女こそがふさわしい。来て!』
ピュイ〜、と口笛を確かと鳴らす。それだけで彼女は召喚術式を展開し、自身に必要なパートナーをカルデアより呼び出す。
その仲間とは、ハンターの手助けも行った経験のある麗しき慈母たる毛むくじゃら。
『ワォオォオォオォオーーーーンッッッ!!!』
慈母にして太陽神、アマテラス。ルーラークラスたるアマテラスが華の足場にて疾走し、落下するルゥを確保し颯爽と駆け抜けたのだ。
『きてくれると信じていたぞ、慈母!力と健脚をどうか貸してくれ!』
『ワフ?(それは構いませんが、あなたが自ら戦うのですか?)』
『うむ。少しばかり無益な殺生に物申さなくばならなくなったのでな』
『ワン!(解りました。オトモガルク、アマテラス。ニャンターのサポートとしてあなたの足となりましょう!)』
アマテラスは納得し、ルゥを乗せて地上に降り立つ。
『暴竜ベール…此度は
二人が降り立ったのは、ギザ山に繋がる道。
古竜の道筋たる、ギザ山へと至るための道であった。
ルゥ『さて……』
?「うぅ、うぅう……!」
ルゥ『む?』
?「いてぇ、いてぇえぇ……!!」
アマテラス『ワフ…?』
?「いてぇえよぉおぉおぉおぉお!!」
ルゥ『……瀕死なのか元気なのかわかんないのがいるな…』
アマテラス『ワフ(おそらく元気、というやつですか)』
人を見捨てぬ二人は、その自己主張の激しい瀕死の声へと歩を進めるのであった。