人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

2784 / 3000
ギザ山麓

飛竜『………………』

アマテラス『ワフ(竜が寝ていますね)』

ルゥ『わざわざ起こす意味もない。そっと向かうとしよう』 

道路

雷羊「メェー」

ルゥ『おお、羊だ』

アマテラス『ワフ(待ってください、帯電していませんか?)』

雷羊「メェー!(ゴロゴロゴロゴロ)」

ルゥ『ヒィン!?』

アマテラス『ワゥ!?(だ、大丈夫ですか!?)』

ルゥ『羊もタフなんだねぇ…』

そして二人は、大竜贄教会へとたどり着く。

フローサクス『我が王、プラキドサクスが見出せし異界の龍王よ。慈愛の龍よ。拝謁、光栄に思います』

そこには、岩肌の体を有した女性の竜人…

フローサクスの姿が在った。


竜贄の巫女、フローサクス

『影の地に訪れし、慈愛の龍よ。私はフローサクス。我が王プラキドサクスに眠りを捧げ仕えし、古き竜が一人』

 

『ワフ(プラキドサクス?聞き慣れない竜ですがお知り合いですか?)』

 

『うんにゃ。しかし予想はつく。黄金樹の時代の先史、竜の時代の王たるものだというくらいはな』

 

ルゥ達を迎えしフローサクス、それが仕える存在はプラキドサクス。ルゥの予想通り、それは古竜達の王たる存在だ。

 

『我の知る古龍と古竜、飛竜の来歴は少し異なるな。こちらではプラキドサクスを祖としたのが古竜、ベールを祖としたのが飛竜という事であろうか』

 

『ワフ〜(ほぁ〜。よく解るのですね〜)』

 

『でなければ、竜贄等という文化が根付こう筈もない。であろう、古竜の巫女よ』

 

ルゥの言葉に、フローサクスは頷く。

 

『ベールは、古き時代、竜の王に背いた反逆者。王に挑み、大きく傷つけ、遂には敗れた凶竜。…いと憎き我らの仇…』

 

かつて黄金樹より前の時代、古き竜王が治めし竜の時代があった。

 

その竜王の名はプラキドサクス。嵐の中心に座す時の歪んだ狭間にて鎮座する四本首の王。彼は古き竜の始祖であった。

 

対する飛竜たる祖は、暴竜ベール。禍なる王、凶なる王。暴虐の化身。

 

その力はまさに王の極致。古き竜の大半は飛竜、暴竜ベールによってその数を1割以下にへと減らされた。

 

ベールはプラキドサクスと激しく戦い、争い、古竜の王たる覇権を争った。

 

果たしてベールはプラキドサクスの首二本を食いちぎったが、プラキドサクスの赤雷の槍に咆哮を受け、甚大なる手傷と被害を負ったのだ。

 

『以来ベールと、彼の一族…飛竜たちは、竜餐の贄となったのです。慈愛の龍よ。それにより我が王プラキドサクスが、人に示したのです。猛き心、その飢えを満たす餐を。かの小さな身に、竜を宿す高揚を』

 

ベール達飛竜の心臓を食らう儀式、竜の力を取り込む儀式をこそ、狭間や影の地にて竜贄と呼ばれる儀式。

 

圧倒的な竜の力、その偉大たる威容を自らの手に。

 

矮小たる人を止め、巨大なる竜への道を行く。

 

狂おしい力への渇望を満たす、野蛮で美しい竜を食らう儀式。

 

飛竜はそれにより、贄とされたのだ。

 

ドラゴン・ハーティドと呼ばれる、竜と成った者達の贄に。

 

矮小たる人間に、貪り食われ力を奪われ振るわれる。

 

それは偉大なる竜にとって、最大なる尊厳の侮辱となる。

 

故に、飛竜はそれを罰として受けた。

 

人に貪られる被食者。死に勝る屈辱こそが、古竜に敗北せし飛竜とその末裔への罰だったのだ。

 

『慈愛の龍王よ。かの竜の力を、手にしませぬか?最も古く、凶なる竜の、滾る心臓を。…それは至高の竜餐。あなたの認めし人間の、飢えを満たし…ひとつの竜と為すでしょう』

 

『竜となる…か』

 

ルゥに示されし、フローサクスの言葉。しかしルゥは毅然と返す。

 

『ベールは誅す。しかし、竜贄を我が知る誰かに施すつもりはない』

 

フローサクスはそれを聞き、訝しむ。

 

『慈愛の龍王よ、それは何故…?』

 

『我が知る人間に、人を捨てんとした惰弱は存在し得ないが為だ』

 

アマテラスをブラッシングしながら、ルゥは話す。

 

『我の知る人は魂を燃やし、人のまま竜や龍を『狩猟』した。弱さを認め、強さを磨き、創造性と独創性、勇気を以て大いなる龍らに抗い、勝利したのだ。人の弱さを直視できず逃げた者など我は知らぬ』

 

『…!』

 

『貴様の王は耄碌したか。弱さを認め強さを得るが故に命は強い。元から強い者に、鮮烈なる生命の輝きは宿らぬものぞ』

 

『ワフ(あ、そこは優しくお願いします)』

『ほい』

 

ルゥの言葉に、フローサクスは瞠目し、また告げる。

 

 

『壊れてしまった竜の戦士、エーゴン。覚えはありますでしょうか』

 

 

『ワフ!』

『おそらく元気なおじいちゃん!知己であるのか!?』

 

フローサクスが告げた、心折れし竜の戦士。その名はエーゴン。ベールに挑みし、竜の戦士。

 

 

『砕け、破れ、狂えてなお飢え、猛き心を燃やす人。我が王が貴き竜餐を示した由、そして慈愛の龍たるあなたが人を愛すは、まさに、あのようなあり様なのでしょう』

 

『……もしや』

 

ルゥは、プラキドサクスの真意をおぼろげながら感じ取る。

 

『若きがゆえの、そして卑小がゆえの、燃え尽きぬ飢えと、猛き心。それは、あのベールにも似て…老いた我らに、到底抱き得ぬものです』

 

炎のような猛き心。現状の卑小を認めず、前に進まんとする燃え尽きぬ上。

 

竜の心臓を食らってでも、貪欲に自らを高めようとするがむしゃらな克己心。

 

そのような幼く未熟ながらも若々しい魂の有り様は、竜達の永遠に生きる魂の老いには眩しく映ったのであろう。

 

『プラキドサクス……案外趣味と話が合うやもしれんな』

 

『ワゥ〜(人間の可能性や信仰心は凄いですものね。私も窮地の際には助けてもらいました。イッスンの…かつての相棒の助けもあり、ね)』

 

三者三様の人間の評価を語り、ルゥが最後に取りまとめる。

 

『よし、では直接いずれプラキドサクスに会いに行ってやるとしよう。人のあり方、それに竜王たる者と話してみるのも悪くなかろうものだからな』

 

その為にもベールは誅す。自然と調和、矜持に反するかの邪智暴虐の竜は既に、ルゥにとっても看過できぬ存在であったが故に。

 

『それは…。…!』

 

瞬間、フローサクスが背を伸ばす。

 

『………我が王、プラキドサクスが言葉を授けられました。慈愛の龍よ、崩れ行く霊廟、嵐の中心で待つ』

 

『おぉ、プラキドサクス。噂をすれば』

 

『空の墓床にて横たわり待つが良い。嵐は巻き戻り、我が間へと導くであろう。………そして』

 

フローサクスの意識に乗り移るプラキドサクスは告げた。

 

『ベールを討ち果たした暁に、フローサクスを託す。ベールの力を無用とするなら、せめて同胞を列させるが道理』

 

『ワフ(おや、つまりフローサクスさんを我等が旅路にという事ですか?)』

 

『然り。我へと至る道筋は、其奴が導き示すであろう。慈愛の龍よ、ベールの誅伐を。我等が悲願の成就を──』

 

遠く離れし竜王の気配は消え、フローサクスに意識が戻る。

 

『……我が王は、異なる世界の竜王たる貴女と語らいを願っているのですね』

 

『年食ったおじいちゃんだから、人が恋しいのだろうよ』

 

『ふふ、不遜な方。……私はここにて、我が王への奉仕をつづけます』

 

『ワゥ(奉仕とは…)』

 

『私は竜王に眠りを捧げています。眠りを引き換えに、私は王の代弁者たりうる』

 

フローサクスはそう言うが、それでは使命を果たした後にどうなるのか。

 

『堕したものは、古竜ではあり得ない。ご理解を、慈愛の龍王よ』

 

『まぁ、信仰の形は人それぞれだ。それに、その不健康な奉仕ももうすぐ終わる』

 

『…?』

 

『いずれ解ることだ。じゃあ行こう、あまこー』

『ワフ!(えぇ、いざギザ山へ!)』

 

颯爽と飛び乗り、ルゥはアマテラスと共にギザ山へと駆けていく。

 

『……無邪気で、奔放なる龍の王。異なる世界の竜は、こうも異なる物なのですね』

 

フローサクスは、その後ろ姿を見つめていた。

 

人を愛し、人を信じ、人を懸命に庇護する…

 

憧憬とは異なる、尊重の形をしめす王の姿を。

 

フローサクスは、じっと見つめていた。




飛竜『『『グガァアァアァアァアァッ!!!』』』

アマテラス『ワフゥ…(起きてますね…)』

ルゥ『しかも数が増えているぞぉ…』

飛竜『『『グガァアァアァアァッ!!!』』』

アマテラス『グルルル…(どうします?戦いますか?)』

ルゥ『まつのだ天照大御神。今我等が戦えばベールを挑発することになる』

アマテラス『ワフ(確かに。いわば縄張りを侵していますからね)』

ルゥ『カナメのように戦うのはまだだ。ここは、リッカのように戦おう』

ルゥは告げ、自らの手により縁を辿り──。

『──我の代わりに、頑張ってくれ』

サーヴァントとして、眷属達を召喚する。

ルナ『メルゼナ、ルナ・クレイドル。此処に』
シャラ『ちゃお〜♪シャガルマガラだよー。ルゥっちおひさ〜♪』
ラージャ『金獅子、ラージャ。……いや牙獣種だぞ?』

アマテラス『ワフ(私に引っ張られましたかねぇ)』
ラージャ『じゃあ仕方ねぇ…』

ルゥ『よろしく』

飛竜『『『ガァァアァァ!!』』』

ギザ山踏破が、幕を開けた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。