人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
飛竜『………………』
アマテラス『ワフ(竜が寝ていますね)』
ルゥ『わざわざ起こす意味もない。そっと向かうとしよう』
道路
雷羊「メェー」
ルゥ『おお、羊だ』
アマテラス『ワフ(待ってください、帯電していませんか?)』
雷羊「メェー!(ゴロゴロゴロゴロ)」
ルゥ『ヒィン!?』
アマテラス『ワゥ!?(だ、大丈夫ですか!?)』
ルゥ『羊もタフなんだねぇ…』
そして二人は、大竜贄教会へとたどり着く。
フローサクス『我が王、プラキドサクスが見出せし異界の龍王よ。慈愛の龍よ。拝謁、光栄に思います』
そこには、岩肌の体を有した女性の竜人…
フローサクスの姿が在った。
『影の地に訪れし、慈愛の龍よ。私はフローサクス。我が王プラキドサクスに眠りを捧げ仕えし、古き竜が一人』
『ワフ(プラキドサクス?聞き慣れない竜ですがお知り合いですか?)』
『うんにゃ。しかし予想はつく。黄金樹の時代の先史、竜の時代の王たるものだというくらいはな』
ルゥ達を迎えしフローサクス、それが仕える存在はプラキドサクス。ルゥの予想通り、それは古竜達の王たる存在だ。
『我の知る古龍と古竜、飛竜の来歴は少し異なるな。こちらではプラキドサクスを祖としたのが古竜、ベールを祖としたのが飛竜という事であろうか』
『ワフ〜(ほぁ〜。よく解るのですね〜)』
『でなければ、竜贄等という文化が根付こう筈もない。であろう、古竜の巫女よ』
ルゥの言葉に、フローサクスは頷く。
『ベールは、古き時代、竜の王に背いた反逆者。王に挑み、大きく傷つけ、遂には敗れた凶竜。…いと憎き我らの仇…』
かつて黄金樹より前の時代、古き竜王が治めし竜の時代があった。
その竜王の名はプラキドサクス。嵐の中心に座す時の歪んだ狭間にて鎮座する四本首の王。彼は古き竜の始祖であった。
対する飛竜たる祖は、暴竜ベール。禍なる王、凶なる王。暴虐の化身。
その力はまさに王の極致。古き竜の大半は飛竜、暴竜ベールによってその数を1割以下にへと減らされた。
ベールはプラキドサクスと激しく戦い、争い、古竜の王たる覇権を争った。
果たしてベールはプラキドサクスの首二本を食いちぎったが、プラキドサクスの赤雷の槍に咆哮を受け、甚大なる手傷と被害を負ったのだ。
『以来ベールと、彼の一族…飛竜たちは、竜餐の贄となったのです。慈愛の龍よ。それにより我が王プラキドサクスが、人に示したのです。猛き心、その飢えを満たす餐を。かの小さな身に、竜を宿す高揚を』
ベール達飛竜の心臓を食らう儀式、竜の力を取り込む儀式をこそ、狭間や影の地にて竜贄と呼ばれる儀式。
圧倒的な竜の力、その偉大たる威容を自らの手に。
矮小たる人を止め、巨大なる竜への道を行く。
狂おしい力への渇望を満たす、野蛮で美しい竜を食らう儀式。
飛竜はそれにより、贄とされたのだ。
ドラゴン・ハーティドと呼ばれる、竜と成った者達の贄に。
矮小たる人間に、貪り食われ力を奪われ振るわれる。
それは偉大なる竜にとって、最大なる尊厳の侮辱となる。
故に、飛竜はそれを罰として受けた。
人に貪られる被食者。死に勝る屈辱こそが、古竜に敗北せし飛竜とその末裔への罰だったのだ。
『慈愛の龍王よ。かの竜の力を、手にしませぬか?最も古く、凶なる竜の、滾る心臓を。…それは至高の竜餐。あなたの認めし人間の、飢えを満たし…ひとつの竜と為すでしょう』
『竜となる…か』
ルゥに示されし、フローサクスの言葉。しかしルゥは毅然と返す。
『ベールは誅す。しかし、竜贄を我が知る誰かに施すつもりはない』
フローサクスはそれを聞き、訝しむ。
『慈愛の龍王よ、それは何故…?』
『我が知る人間に、人を捨てんとした惰弱は存在し得ないが為だ』
アマテラスをブラッシングしながら、ルゥは話す。
『我の知る人は魂を燃やし、人のまま竜や龍を『狩猟』した。弱さを認め、強さを磨き、創造性と独創性、勇気を以て大いなる龍らに抗い、勝利したのだ。人の弱さを直視できず逃げた者など我は知らぬ』
『…!』
『貴様の王は耄碌したか。弱さを認め強さを得るが故に命は強い。元から強い者に、鮮烈なる生命の輝きは宿らぬものぞ』
『ワフ(あ、そこは優しくお願いします)』
『ほい』
ルゥの言葉に、フローサクスは瞠目し、また告げる。
『壊れてしまった竜の戦士、エーゴン。覚えはありますでしょうか』
『ワフ!』
『おそらく元気なおじいちゃん!知己であるのか!?』
フローサクスが告げた、心折れし竜の戦士。その名はエーゴン。ベールに挑みし、竜の戦士。
『砕け、破れ、狂えてなお飢え、猛き心を燃やす人。我が王が貴き竜餐を示した由、そして慈愛の龍たるあなたが人を愛すは、まさに、あのようなあり様なのでしょう』
『……もしや』
ルゥは、プラキドサクスの真意をおぼろげながら感じ取る。
『若きがゆえの、そして卑小がゆえの、燃え尽きぬ飢えと、猛き心。それは、あのベールにも似て…老いた我らに、到底抱き得ぬものです』
炎のような猛き心。現状の卑小を認めず、前に進まんとする燃え尽きぬ上。
竜の心臓を食らってでも、貪欲に自らを高めようとするがむしゃらな克己心。
そのような幼く未熟ながらも若々しい魂の有り様は、竜達の永遠に生きる魂の老いには眩しく映ったのであろう。
『プラキドサクス……案外趣味と話が合うやもしれんな』
『ワゥ〜(人間の可能性や信仰心は凄いですものね。私も窮地の際には助けてもらいました。イッスンの…かつての相棒の助けもあり、ね)』
三者三様の人間の評価を語り、ルゥが最後に取りまとめる。
『よし、では直接いずれプラキドサクスに会いに行ってやるとしよう。人のあり方、それに竜王たる者と話してみるのも悪くなかろうものだからな』
その為にもベールは誅す。自然と調和、矜持に反するかの邪智暴虐の竜は既に、ルゥにとっても看過できぬ存在であったが故に。
『それは…。…!』
瞬間、フローサクスが背を伸ばす。
『………我が王、プラキドサクスが言葉を授けられました。慈愛の龍よ、崩れ行く霊廟、嵐の中心で待つ』
『おぉ、プラキドサクス。噂をすれば』
『空の墓床にて横たわり待つが良い。嵐は巻き戻り、我が間へと導くであろう。………そして』
フローサクスの意識に乗り移るプラキドサクスは告げた。
『ベールを討ち果たした暁に、フローサクスを託す。ベールの力を無用とするなら、せめて同胞を列させるが道理』
『ワフ(おや、つまりフローサクスさんを我等が旅路にという事ですか?)』
『然り。我へと至る道筋は、其奴が導き示すであろう。慈愛の龍よ、ベールの誅伐を。我等が悲願の成就を──』
遠く離れし竜王の気配は消え、フローサクスに意識が戻る。
『……我が王は、異なる世界の竜王たる貴女と語らいを願っているのですね』
『年食ったおじいちゃんだから、人が恋しいのだろうよ』
『ふふ、不遜な方。……私はここにて、我が王への奉仕をつづけます』
『ワゥ(奉仕とは…)』
『私は竜王に眠りを捧げています。眠りを引き換えに、私は王の代弁者たりうる』
フローサクスはそう言うが、それでは使命を果たした後にどうなるのか。
『堕したものは、古竜ではあり得ない。ご理解を、慈愛の龍王よ』
『まぁ、信仰の形は人それぞれだ。それに、その不健康な奉仕ももうすぐ終わる』
『…?』
『いずれ解ることだ。じゃあ行こう、あまこー』
『ワフ!(えぇ、いざギザ山へ!)』
颯爽と飛び乗り、ルゥはアマテラスと共にギザ山へと駆けていく。
『……無邪気で、奔放なる龍の王。異なる世界の竜は、こうも異なる物なのですね』
フローサクスは、その後ろ姿を見つめていた。
人を愛し、人を信じ、人を懸命に庇護する…
憧憬とは異なる、尊重の形をしめす王の姿を。
フローサクスは、じっと見つめていた。
飛竜『『『グガァアァアァアァアァッ!!!』』』
アマテラス『ワフゥ…(起きてますね…)』
ルゥ『しかも数が増えているぞぉ…』
飛竜『『『グガァアァアァアァッ!!!』』』
アマテラス『グルルル…(どうします?戦いますか?)』
ルゥ『まつのだ天照大御神。今我等が戦えばベールを挑発することになる』
アマテラス『ワフ(確かに。いわば縄張りを侵していますからね)』
ルゥ『カナメのように戦うのはまだだ。ここは、リッカのように戦おう』
ルゥは告げ、自らの手により縁を辿り──。
『──我の代わりに、頑張ってくれ』
サーヴァントとして、眷属達を召喚する。
ルナ『メルゼナ、ルナ・クレイドル。此処に』
シャラ『ちゃお〜♪シャガルマガラだよー。ルゥっちおひさ〜♪』
ラージャ『金獅子、ラージャ。……いや牙獣種だぞ?』
アマテラス『ワフ(私に引っ張られましたかねぇ)』
ラージャ『じゃあ仕方ねぇ…』
ルゥ『よろしく』
飛竜『『『ガァァアァァ!!』』』
ギザ山踏破が、幕を開けた。