人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
アマテラス『ワフ!(彼女達に先んじて、私達は向かいましょう!)』
ルゥ『うむ。どうせ中腹にも敵はいよう』
アマテラス『ワフ(はい。急を要し…むむっ?)』
『サイン』
ルゥ『これは…』
『ベールよ、儂は再び来たぞ…』
ルゥ『おじいちゃん…!』
アマテラス『ワフ…!(あれほど傷を受けて、なお…!)』
ルゥ『ふふ、だから人間は推せるのだ…。行こう、あまこー!竜の戦士と合流するのだ!』
アマテラス『ワフ!(はい!)』
『『『ガァァアァァァァァァァァ!!』』』
ベールの眷属たる三体の飛竜。巨大な体躯を持ち、三人の人型たる侵入者を威嚇する。
『手間を掛けてはいられん。アンセス様の期待に御応えせねば』
白き鎧に身を包む女騎士、ルナ・クレイドル。原初を刻むメルゼナの人間の姿が、厳かに白き盾、槍を構える。
『ルナ・クレイドル。いざ!』
『ガァァアァァァァァッ!!』
飛竜が三者三様に分かれ、襲いかかる。ルナに向かった飛竜は、その口より炎のブレスを吐き出しルナを焼き尽くさんとする。
『ふっ!』
それに臆することもなく、頑然と盾を構え立ちはだかる。身体を覆う盾は、確かに飛竜のブレスを受け止めた。
『グォオォオォオォオォオォオ!!』
『…………!』
防ぐ盾、吐く炎。拮抗する火花散らぬ戦い。それは一見して飛竜が有利。
しかし、矮小な人ではなく、ルナはルゥ直々の眷属。『古龍』たる一つ。深淵の悪魔ガイアデルムすらも叩き伏せる気高き誇りの古龍。
『はぁあっ!!』
瞬間、ルナは大地を蹴った。勢いを殺し、肉薄し、懐に入るために。
だが、その勢いと膂力は尋常ではなかった。大地は、一体を崩すほどに踏み砕かれる。
『!?』
飛竜のブレスの勢いすらねじ伏せる程の踏み込み。古龍でありながら、なんら特殊能力は使用していない。
単純なる膂力。身体に漲る力と強靱さで、飛竜のブレスと伝わる衝撃すらもねじ伏せて見せたのだ。
『貰ったぞッ!!』
『!!』
気付いた瞬間には、メルゼナは飛竜の眼前にいた。それは瞬間移動もかくやの瞬迅。
『ぜぇいっ!!』
瞬間、ルナのパリィの要領の盾殴りが飛竜に炸裂する。それは刃を弾くに留まらぬ、必殺の一撃。
『────』
脳を揺らされ、飛竜は即座に意識を手放した。それほどまでに気迫と威力の込められた一撃。
『はぁあぁあぁあっ!!!』
片方の手に握られたランスが、ダメ押しとばかりに飛竜を貫く。
そしてなんと、ランスのみで飛竜を持ち上げた。数十メートル、トンはあろうかという飛竜そのものを。
『でやぁっ!!!』
全身打撲を加える、必殺の追撃。飛竜はこれで、完全に沈黙を果たすこととなった。
『他愛ない。古龍と覇を競う栄を賜りし事を、アンセス様に感謝せよ』
ランスの血を払い、王国の守護龍は高々と掲げた。勝利をルゥに捧げる故に。
『二方!加勢は必要か!』
ノブレス・オブリージュ観点から、二人に向けて助力を問うルナ。
『いるか。しかし武具を使ってその馬鹿力…中々騎士っていうのもいい強さを持ちやがる』
ラージャンの人型、ラージャ。怒れる金獅子たる彼女は徒手空拳にて飛竜と向き合う。
『悪くねぇ、異世界の飛竜相手なら…別に加減はいらねぇな』
『グォオォオォオォオ!!』
飛竜への接近戦。振り下ろされた爪を、ラージャはなんと生身で受け止める。
『ふんっ!』
髪は黒いまま、冷静にその手を受け止めたまま、次の手を待つラージャ。
『ガァァアァァッ!!』
飛竜の次なる手は体格と遠心力を活かした尻尾の一撃。人間なら鎧ごと砕け散る覇者の一撃。
『馬鹿が。今の一撃でオレの気質を見抜けないのか』
ラージャは冷静かつ論理的に、当然のように尻尾を阻み…
『捕まえたぜ』
ガシリ、と掴んだ後、全身に力を込める。
『ふぅッ────』
刹那…黄金の気が、ラージャから溢れた。
『おぉおおッ!!!』
『─────!!!』
黄金の覇気を纏った瞬間、ラージャはその規格外の剛力を解放し、ジャイアントスイングの要領で飛竜を持ち上げ振り回す。
『舐めるなよ、トカゲ風情が…!』
ジャイアントスイングを行いながら、彼女はなんと片手で回転を継続し──
『うぉらァァァッ!!』
ハンマーを振り下ろす要領で、飛竜の身体を地面へと叩き伏せたのだ。
『カ────』
全身粉砕骨折、三半規管の不調により完全に沈黙する飛竜。ラージャは静かに、黄金の気を収め立ち上がる。
『相手見て喧嘩を売れ、馬鹿が』
『見事な剛力だ。牙獣種も中々侮れんな』
『フン。古龍だからと上からモノを言うんじゃねぇ』
ルナとラージャが合流する。それぞれ技と力にて、完全に体格差を覆し勝利を収めた。
『さて、シャガの首尾は……』
『こーら、暴れないの。全然怖くないんだから』
ルナとラージャ以外に呼ばれし、シャガルマガラのシャガ。大学生ギャルのような見目の彼女は、しかし異形の特徴を有していた。
『!!……!!』
シャガの背中より生えた一対の翼腕……人間のスタイルには合わぬソレが、完全に飛竜を抑え込み地に叩き伏せていた。騎士の様相のルナ、ワイルドなレンジャー仕様のラージャとはあまりにも違う、人から龍が飛び出たかのようなフォルム。
『ルゥっちから話聞いたんだけどさ、アンタが仕えてるベールってDQNじゃん?そんなんに義理立てするなんて無くない?』
『…!?』
『ルゥっちの眷属になりなよ。可愛くてゆるくて、マジ推せるから!ね?』
なんとシャガは飛竜に裏切りを勧めた。ベールを裏切り、ルゥ…ミラルーツにつけと。
『ガァァアァァ……!!』
当然、飛竜はベールの恐ろしさを知っている。そんな事をすれば殺されるは必至。拒絶の咆哮を上げる。
『あちゃー…DV受けちゃった系かぁ。それは可哀想かなぁ』
うんうん、と頷いたシャガは囁く。
『じゃあ……せっかくだから、あなたも『ガラピ』にしてあげる♪』
『…!?』
瞬間、シャガから無数の黒き波動が溢れ出る。
『ラージャ殿、我が背後に!』
『噂のアレか…!』
ラージャとルナすら警戒する『ソレ』……シャガルマガラとしての権能を、シャガは振るった。
『!!………!?』
ソレは辺りに瞬時に満ち、吸い込んだ飛竜に変化をもたらす。
目は血のように充血し、身体は痙攣し始める。口からは泡を吹き、まな板の鯉のように跳ね回るも、シャガの翼腕に抑えられ離脱が叶わない。
『暴れない暴れない。大丈夫大丈夫。全部忘れちゃうから』
『………!!!』
『全部忘れて…全部生まれ変わるんだよ、良かったね♪アタシみたいに、ちょーイケてる古龍になれるチャンスをあげる♡』
瞬間、飛竜の身体が変化する。鱗なき肉体は、黒き龍鱗が生える。尖っていた角や爪、翼、顔、それら全てが変化していく。
いや……それは生物学上には『変態』と呼ぶべき不可逆の変化。体の内側から食い破られるかのように、作り変えられるように。飛竜は新生を果たす。
『はい、おっけー♪イケてる感じになれたじゃーん♪』
シャガが撒き散らしていたのは、『狂竜ウィルス』。シャガルマガラが生殖細胞としても活用する、彼女の権能。
それを吸った生物は、おぞましい事にシャガに苗床にされたに等しい。やがてそれは形となり、孵化する。
【ギシャアァアァア!!!】
飛竜は面影を失い、その姿をシャガルマガラの幼体…【ゴア・マガラ】に変える。そう、狂竜ウィルスに感染した生命体は皆、遅かれ早かれゴア・マガラとなる運命なのだ。
『よしよし♪これでアタシら、ズッ友じゃん♪』
シャガルマガラはこうして同族や子孫を増やす。その生態は、生物というより菌類、バイオハザードめいたウィルスの体だ。
【ギシャアァアァア!!】【ガァァアァァ!!】
だが、そのウィルスに秩序などない。生物的強靭さを持たなかった飛竜は皆、ゴア・マガラへと姿を変えた。
『わー!ガラピ三匹になったー!うれしー!テンアゲー!』
『……バケモンが…』
『本人に悪意は微塵もないが…だが、悍ましいほどに合理的な生態だ…』
生命の法則を無視し、即座に自らの同族とする。
『おーい!二人とも、ゴアに乗ってルゥっちに会いに行こうよー!早く早くー!』
ラージャとルナの戦慄を他所に、朗らかなるシャガは呑気にギザ山を背後に写真を撮っていたのであった。
飛竜『ガァァアァァァァァ!!』
飛竜『グォオォオォオォオ!!』
ルゥ『ここにもいるか…』
アマテラス『ワフ(三人は間に合いませんね…』
ルゥ『仕方あるまい。竜狩りの太刀…慣らしておこう』
『『ガァァアァァァァァァァァ!!』』
〜
飛竜『『ガ……』』
ルゥ『悪くない。太刀というには小振りだが…』
アマテラス『ワフ(堂に入った太刀筋でしたね?)』
ルゥ『でしょ?カムラの里で学んだんだぁ』
?『はは、ははは…』
ルゥ『うん?』
エーゴン『わーっはっはっはっ…!見たことか!これこそが、戦士よ!竜の戦士よ!』
ルゥ『エーゴンおじいちゃん…!』
アマテラス『ワフ!(やはり来ていたのですか…!)』
『エーゴンよ、お前もかつてそうだったろう!思い出せ!思い出せ!恐怖など、知りもしなかったはずだろう!うわーっはっはっはっ…!』
アマテラス『……ワゥ(……話しかけてみます?)』
ルゥ『…うん』
元気だなぁ。ルゥたちはそう思わずにはいられなかった。