人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
エーゴン「竜の戦士よ、お願いだ。あのギザ山に登り、暴竜ベールに対したその時に…呼んでくれ。儂の魂を」
ルゥ『おじいちゃん…』
エーゴン「あの場所に…儂の魂は置いてきた。どうか、竜の戦士よ…」
ルゥ『…解った。約束しよう。エーゴンおじいちゃん』
アマテラス『ワフ(ご自愛ください、エーゴンさん)』
エーゴン「おぉ、感謝する…。ありがとう。では、どうか勇ましく向かわれ給え、竜の戦士よ──」
〜
ラージャ『なんでお前、ギャルなんだよ』
シャガ『ん?ラージャっち、あたしが気になる系?』
ラージャ『まぁな…』
シャガ『アタシは古龍の中で、一番のリア充だから♪』
ラージャ『リア充…?』
ルナ『彼女の生態は…(耳打ち)』
ラージャ『……成る程、な』
シャガ『二人もガラピにならない?絶対絶対、幸せだよ!』
ラージャ『お断りだ。だが…』
シャガ『?』
ラージャ『狂竜の病。越えた先に何があるかは…気になるかもな』
ルナ『…』
ラージャ『…外付け強化に思うところがあるのか?』
ルナ『……少し、な』
シャガ『二人とも〜!はやくルゥっちに追いつかないと〜!』
ラージャ『まぁ、今は深く考えるな。サーヴァントの役目を全うしろよ』
ルナ『あぁ、解っている』
(…キュリアの事は黙しておこう…)
ギザ山の中腹から、山頂に至る道をアマテラスと、その背に乗るルゥは駆け抜けていく。
『道は険しい!あまこー、足は大事ないか!』
『ワゥン!(心配御無用!こう見えて、悪路の疾走は慣れております!)』
険しい岩肌を、アマテラスは駆け抜け疾走する。彼女はれっきとした神。異世界において、世界を救済した実績と下総を駆け抜けた記録は伊達ではない。
『むぅ……嵐と落雷が留まることを知らぬとは』
ルゥが告げるように、ギザ山の頂上、取り巻く環境の障害は険しい悪路だけではない。
嵐が絶えず逆巻き、止むことなき落雷が稲光と共に響き渡る。分厚い雲は日差しを遮り、至らんとするもの全てを拒絶する。
『ワフ!(上昇気流です、乗って上に参ります!)』
当然道など整備されていないが為、上昇気流が巻き起こる場所にてアマテラスの大跳躍が標高を稼いでいく。それを繰り返さなくば、上に、頂上に至る道筋は無い。
『飛んでいては撃ち落とされていたかも…あまこーいてくれて良かったぁ』
『ワンッ(いえいえ、人助けは私の生き甲斐ですので)』
大跳躍と疾走を繰り返す最中、ルゥとアマテラスは惨たらしい景色を目の当たりとする。
『クゥン…(これは…)』
そこに溢れしは、竜の亡骸。飛竜の大量の死骸が無造作に散乱している有様。
『…近くで目の当たりにすると、尚更に度し難い。ここまでする謂れが果たしてあろうか』
ルゥの目が細められる。近場で目の当たりにしてみれば、それはなんの糧にもならぬ死様だ。
誰かの役に立つこともない。自然に還ることも無い。刺々しい岩壁に抱かれ、腐り落ちてゆくのみ。飛竜、仮にも竜たる生命の至る末路とは言えない、悲しき末路。
『…あまこー、ちょっといいかな』
『ワン(えぇ、もちろん)』
ルゥがあまこーを制止し、そっと降りる。死体に近づき、暫し黙祷を捧げる。
『異なる世界とは言え、竜を名乗る者として無念であろう。せめて…』
ルゥは懐から、やや大振りのナイフを取り出す。
『ワフッ(それは、剥ぎ取りナイフですか?)』
剥ぎ取りナイフ。ハンターがモンスターの亡骸から素材を切り取るために使う、専用の道具。秘奥義に使われる以外は、戦闘用ではないものだ。
『うん。我も持ってるんだ。剥ぎ取りナイフ』
それはルゥの、人が森羅万象に向ける敬意として有しているもの。狩猟したモンスターから素材を剥ぎ取るのは、礼儀と言うべき儀式だ。
『無もなき飛竜達よ。せめて良い感じの武具となりて生まれ変わるがよい…』
サクサクと、飛竜達から素材を剥ぎ取るルゥ。その様子を、アマテラスもまたじっと見つめ…
『アオォォォーーー………ン』
魂を弔うように、遠吠えを示す。それはルゥ、アマテラスなりの生命の弔い。
異なる世界、異なる在り方とはいえ生命は生命。二人は生命を、労る存在であるが故に。
『………さすがは慈母だねぇ』
『ワン(あなたこそ、慈愛の龍王様)』
『むふふ。では、参ろうか!』
笑い合い、颯爽と駆け抜ける。竜達の魂の昇天を願って。
そして、山の八合目。間もなく天辺への踏破が叶うと見え始めたその場所。
『む…』
水辺のある空間、その中心に…飛竜とは異なる存在が待っていた。
『────………』
飛竜を上回る体躯。鱗なき飛竜と異なり、さざれ石の鱗を有せし竜。飛竜とは異なりし、竜の偉容。
『ワゥ…!?(飛竜、ではない…!?)』
『……古竜か。飛竜の膝下になぜ在している?』
そう、古竜。プラキドサクスに属するはずの、鱗ありし古き竜。
『キシャアァアァァァァァァ!!』
ベールへ至る道を阻むかのように、翼を広げ立ちふさがる。訝しむ二人に、突如声が響く。
『慈愛の龍王よ。王の言葉を伝えます』
フローサクス。プラキドサクスの巫女が、かの竜の詳細を語る。
『彼は古竜セネサクス。古竜でありながらベールの暴虐に魅せられ、古竜を裏切りし存在』
『裏切り……成る程、道理で此処におるはずだ』
得心した様にルゥは頷き、セネサクスへと向き直る。
『愚か者め…。力に溺れ匪賊に堕ちようとは』
『キシャアァアァァァァァァッ!!』
竜狩の太刀をゆっくりと抜き放ち、八相に構える。
『誇りと矜持なき竜に生きる世界無し。プラキドサクスに代わり、我等が葬ってやろう』
『グルルルル……!!』
アマテラスから降りる。アマテラスもまた、口に『十拳剣』を構え、セネサクスへと向き直る。
『ガァァアァァァァァァァァァァァ!!』
匪賊たる古竜、セネサクスが古竜の赤雷、雷槍を振るい2人を打ち払わんと襲いくる。
『ガゥッ!!(ルゥさん、共に決めましょう!)』
アマテラスが跳躍。神気を漲らせ、かつて見た秘技を再現する。
『(スサノオ流、七字の印契!)』
アマテラスが超高速の軌道を見せながら、セネサクスに斬りかかる。かつてヤマタノオロチの七つ首を寸断した、超高速の剣技。
『グォオォオァァァァァァァァァ!!』
槍の振り回しにより、セネサクスはそれを応戦する。槍と剣、凄まじき激突と剣戟が、ギザ山の落雷よりも激しく響き渡る。
『ガアゥッ!!』
『グォオォオォオォオォオ!!』
互いに激突。剣戟は互角──。
しかし、『手数』においてアマテラスが勝った。
『────!!?』
瞬間、受け止めていた筈のセネサクスの両腕、両足、両翼、そして胴体が切り刻まれる。
『筆しらべ…!』
ルゥの言葉通り、それはアマテラスの神業、筆しらべの『一閃』。刀の一撃の他、世界そのものを六度『一閃』したのだ。
斬るのではなく、斬ったという結果が残る。防ぐこともかわすことも叶わぬ斬撃が、セネサクスを切り刻んだのだ。
『ワンッ!!(今です、ルゥさん!)』
『見事だ、あまこー!ならば我も抜かねば無作法!』
八相に深く腰を落とすルゥ。それは、彼女がカムラの里長にこっそりと教えてもらった秘技。
『竜を斬り捨てしは人の業。見せてやろう。猛き焔の太刀筋を!』
刃に、気炎が宿る。立ち昇る神気は天の御柱の如く。
『禍群秘伝──『覇竜斬』!!!』
一撃、二撃、三撃。ルゥはその立ち昇る神気を宿し、太刀を厳かに振り上げ、振り抜き、振り下ろした。
それはカムラの里の長、フゲンの秘奥義。百竜夜行の厄災に打ち勝たんとしたが末に編み出されし対竜の奥義。
神気はそのまま刃となり、竜の肉体ごと、岩壁ごと、山の峰ごとを叩き斬る巨大なる気炎万丈の大斬撃。
古竜イブシマキヒコをも跳ね返せし、必殺たる人の極致である。
『──────』
セネサクスの首が、胴体から離れる。しかし、古竜はそれではまだ滅びない。
『(陽派スサノオ流───)』
瞬間、アマテラスは神気を踏み台に跳躍するという神業を魅せ、今なお生きる首にトドメを刺す。
『(衝天七星───!!)』
大跳躍から繰り出される、画竜点睛の一撃。それを受け、セネサクスの首は真っ二つへと叩き斬られる。
『凄まじい太刀筋だったね、あまこー…!剣術もいけたのぉ?』
『ワフン(義兄弟の技、その見様見真似ですよ。人間のクズから、偉大なる竜殺しの英雄となった…ね)』
ルゥに撫でられながら、アマテラスは遠くを見やる。かつての冒険、そこにて出会った一人の男の事を思い起こしながら。
『人に歴史あり、神に歴史ありだねぇ』
『ワフン(歴史なら、宇宙創生から生きているルゥさんの方が上手でしょう?)』
『むふふ、イザナミおばあちゃんと同期よ。…この先か』
最早阻むモノはいない。山頂…嵐と、炎雷の頂上にて待っている。
暴虐の竜。
古竜の敵対者。
ベールという存在そのものが。
『──行こう、あまこー』
『ワフ!(はい!)』
意を決して、ルゥはアマテラスに飛び乗り駆ける。
竜達の生命の尊厳…
並びに、人をその暴虐から護らんが為に。
ギザ山、山頂
ルゥ『……………』
アマテラス『グルルルル………』
ベール【…………………】
三者は、遂に相対した。
ベールは、その身に怒りと破壊衝動を漲らせていた。
自身の領域に至った……
かつての竜王が如き生贄を滅ぼさんがために。
【グガギャァアァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッ!!!】
狂気すら孕んだ咆哮が、山を震わせ空を穿つ。
ルゥ『──共に行こう、竜の戦士よ』
そしてルゥは、『彼』を呼び出す。
誇らしき竜の戦士…エーゴンの魂を。
『ベエエエエルよオオオオッ!!!!』
天を貫く、雄々しき咆哮。
『今度こそ!思い知らせてくれるぞ!竜の戦士が!エーゴンが!
お前の恐怖だァアァアァァッ!!!!』
手に銛撃つ弓を構え、エーゴンは吠える。
龍と神、そして人による──
竜への誅伐が、始まった。
(皆様、良いお年を!)