人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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皆様、あけましておめでとうございます!

活動報告でも言っていますが、こちらでもよろしくお願い致します!


暴虐と反骨の竜王

「ぬぅうぅうぅうーーーッッッッッッ!!」

 

戦端の始まりを告げたのは、エーゴンが大弓により撃ち込む銛であった。彼の得物は、弓。大きい竜骨を、荒縄で乱暴に絞ったもの。

 

しかしそれは、怨念にすら通ずる執念の銛を撃ち出すことで竜を穿つ槍と成った。渾身の力で撃ち放たれたそれは、ベールを貫き穿つ。

 

【グガギャァアァアァアァアァァッ!!!!】

 

最早心弱いものは聞き及ぶだけで発狂しかねない狂気の叫びを上げるベール。彼はプラキドサクスとの戦いにて翼をへし折られ、片脚を失った満身創痍。

 

しかしその狂暴性は微塵も限らず、微塵も衰えぬ残虐性は決して止まらなかった。エーゴンに撃ち貫かれながらも、ベールは痛みすら介そうとしない。

 

「暴竜め…流石に一度では倒れんか!」

 

ルゥがアマテラスと共に疾走する。エーゴンが後ろならば、ルゥらは前。必然だ。

 

「だが何度でも!!このエーゴンの銛を撃ち込んでやるぞ!!!」

 

ルゥとエーゴン、アマテラスは同志だった。竜の戦士たる同志。

 

言葉無くても、通じていた。戦士として。

 

【ゴガギャアァアァアァアァッ!!!】

 

ベールの武器は、ギザ山の嵐と落雷、その身に宿る暴虐の炎雷。引きちぎられ、翼爪から剥き出しの骨をなんと叩き付けている。

 

そこに全てを灼き尽くす焔、抉り砕く雷を宿らせた一撃は、あらゆる古竜の鱗を砕き肉を焼く。同胞たる飛竜を灰燼と帰す。

 

【キシャアァアァアァアァァァアァアァァ!!】

 

手負いの竜。その常軌を逸した破滅的な暴力性は、それが根源。

 

彼は敗れてなお、自らを滅ぼす運命にさえも牙を剥いていたのだ。

 

「グルルルルルッ!」

 

アマテラスはそんなベールから、ルゥを護る顕如盤石の守護で有り続けた。

 

炎雷の翼爪は十拳剣により弾き、受け流し、無力化し、防ぐ。

 

口から吐き出された全てを融解させる炎雷のブレスは八咫鏡でいなす。

 

咆哮により呼び招かれた落雷と嵐は、筆しらべ『光明』により太陽がかき消す。

 

『───!』

 

ルゥは疾走するアマテラスの背後に乗り、ベールの周囲を駆け抜けながら竜狩の太刀を振るう。アマテラスの庇護と加護を信じて、竜達の無念を乗せてベールと戦う。

 

並の人間では、手負いかつ怒り狂う竜など相手は叶わない。紛れもなく今のリッカ達の一行に死人をもたらす強さを有す存在こそがこのベールだとルゥは把握していた。

 

これは人の無念ではなく、竜達の無念を背負うもの。

 

なれば異世界と言えど、応えてやらねばならぬもの。

 

故にルゥは、自らが太刀を振るっている。

 

打ち捨てられた竜達のため。

 

何より、調和を乱す側に、ベールが完全に行ってしまう前に。

 

これは狩猟であり………

 

狂い果てたベールにもたらす、裁定と最後の慈悲であった。

 

【グゴォアァアァアァァ!!】

「ガルルルルルルッ!!」

 

アマテラスとベール、翼爪と十拳剣が激しい鍔迫り合いを演出する。それはあまりにも体格の離れた勝負でありながら、アマテラスは退かない。

 

「グルルルァ!!」

 

アマテラスは、結果を残す斬撃、筆しらべ『一閃』にてベールを切り刻む。それは神の御業、防ぐこと能わぬ神域。

 

【グゴォオァアァァァァ!!!】

 

ベールはアマテラスを噛み殺すために炎雷、炎雷を宿した牙によるコンビネーションを展開した。殺すため、破壊する為の手練手管が多彩なところに、ベールの恐ろしさはある。

 

「ベェエェエルよ!!貴様の相手は我々だと言った筈だぞ!!」

 

しかしエーゴンも懸命にベールに銛を撃ち込み続ける。言葉に偽り無く、執念に底はなく、ベールの身体に、無数の銛は突き立てられる。

 

【グガギャァアァアォオァァァァァァ!!】

 

しかしベールもやすやすとはやられない。エーゴンに向けて地を這う炎雷を叩きつける。

 

「ぐわぁぁぁっ!!!」

 

エーゴンは直撃し、身体を焼かれる。並の人間なら塵芥となる灼熱であろうが、エーゴンは奮い立つ。

 

「ま、だだ……!ベールよ、貴様に恐怖を………!!」

 

「ガァァアァァァァァッ!!!」

 

エーゴンの執念に応えるように、素戔嗚にも劣らぬ覇気を以て吠えたアマテラスが、エーゴンが撃った銛や刺さった銛に向けて『燃神』の筆しらべを奏でる。

 

【グガァアァア!?】

 

銛の全てが連なり、爆発し、火焔をもたらす。ベールの予測せぬ世界改変の御業が、筆しらべとして炸裂する。

 

【グァアァアァァァァァァッ!!】

「アオォォォーーーーンッ!!」

 

ベールがギザ山の天候を操り雷雲から無数の雷霆を放たんとするも、アマテラスが素早く天気を晴れとし目論見を挫く。

 

【ググゥウァアァアガァァ!!】

 

瞬間、『桜花三神』の筆しらべにより、ベールを蔦や花といった植物が縛り付ける。それはベールと同じように、アマテラスの地形、地相を活用したもの。

 

 

「アオォォォオォオオォオオォオオォオーン!!!」

 

アマテラスは全ての力を解放する。風神、撃神、凍神による嵐、落雷、氷雪がベールを一挙に襲いくる。

 

【グガアアアッ………!!】

 

十八番としていた天候操作。自分とは異なる天然自然の覇者に圧倒されるベール。

 

そして遂に、ルゥが動く。

 

『─────』

 

ルゥは自身の鱗を使い、竜狩の太刀に鞘を作っていた。抜き身の太刀に鞘をつける意味は、むろん伊達ではない。

 

『貴様と同じ古龍ならざる竜にも、剣戟を得手とする者はいる』

 

飛竜の無念を晴らす。その為に彼女が選んだもの。それは渾身の剛力抜刀。

 

『見せてやろう。一刀剛断の極意を』

 

そのまま太刀を収め、アマテラスの背後より構えを取る。

 

それが奇妙な点は、収めた筈の刃があまりにも重い事だ。抜き放てない程に、その納刀は固く閉じられていた。

 

『──────…………!!』

 

ルゥはその刃を力任せに引き抜かんとする。完全に閉じられたそれを、力付くで引き抜き抜刀する。

 

凄まじい過負荷がかかり、途方もない腕力が必要であった。そしてそれは、飛竜の業であった。

 

ディノバルドという竜は、尻尾が刃になっており、牙で噛み合わせ鞘から抜き放つ要領で万物を両断する。

 

それをルゥは、己の腕力のみ、膂力のみで再現したのだ。その刃は、重く閉じられた鞘より抜き放たれんとする。

 

『はあぁぁぁぁっ!!』

 

ベールが動き出すより速い。抜き放たれた一閃は、祖龍により絶技と化す。

 

【─────】

 

ギザ山が断ち切られた。そう錯覚するかのような事象が起きた。

 

真っ二つにされし、周囲の岩壁。

 

そしてそれは影の地の暗雲や、捻れて聳え立つ影樹の上層の枝すらも叩き斬った。

 

雷槌が如き抜刀。

 

森羅万象を断ち切らんとする、さざれ石の太刀の竜殺しの刃。

 

【─────】

 

まるで、落雷に打たれたかのようであった。

 

ルゥの渾身の斬撃。『滅尽・紅龍斬』。

 

先の覇竜斬とは違う、正反対の憤怒に満ちた龍が如き居合の抜刀。

 

ベールは、倒れた。

 

竜の特効が満ちた、命に届きうる一撃であった。

 

『ワフッ!!』

 

「やったか、竜の戦士よ…!」

 

『………──』

 

ルゥは、警戒を解かない。

 

竜王に重傷を負わせた暴竜を、彼女は侮っていない。

 

そしてそれは現実となる。

 

【───────…………………】

 

不気味極まる静寂の後、

 

山が、揺れる。

 

天が、慄く。

 

倒れたベールから、膨大なるエネルギーが溢れ出る。

 

【───────………………】

 

そしてそれは、爆発噴火する火山が如くに膨張する。

 

『あまこー!おじいちゃんを!』

『ワフッ!』

 

アマテラスがエーゴンをかばうと同時に…

 

 

【────グゴガギャアァアァアァアァァァーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッ!!!!!!】

 

ギザ山の大噴火と化したベールが。

 

暴虐と恐怖そのものが、折れ砕けた筈の翼を広げ。

 

影の地全てを恐怖させる、戦慄の咆哮を響かせた。

 

 

 




そして、天空へと飛び上がる。

ルゥ『!』


【グガギャゴォォァァァァァァァァァァァァァァァァアァア!!!】

狂ったように火炎ブレスを撒き散らすベール。

そしてその肉体の質量ごと、ルゥに飛びかかり…

ルゥ『!!』

着弾した瞬間───

ギザ山頂上の全てが、吹き飛んだ。
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