人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ベールは見た。
『暴虐の果て、凶暴の極み』
矮小たる矮躯の女が、変質…
否。
ミラアンセス『我が、森羅万象に調和を成そう』
有翼、そして竜王が赤雷。
それらを有した──
比類なき、王へと進化している事を。
【グォオォオォオォオォオォオォオォオッッッッ!!!】
凶暴と狂気が頂点に達し、最早ギザ山の荒れ狂う噴火、嵐そのものへと成ったベール。坩堝の力を呼び起こし、翼を興し荒れ狂う。
『天照大御神。これを』
『ワフッ!?』
更なる神代回帰を果たしたルゥ…ミラアンセスが、天照大御神にそれを渡す。
それは、『唯我独尊の宝珠』。アマテラスがかつて全盛期で在った頃の力、飛び散ってしまった100の宝珠を重ね合わせたもの。それをミラアンセスは、生み出したのだ。森羅万象の龍の名の下に。
『新生せよ。慈母たる太陽、昇りゆく陽よ』
アマテラスの身にそれは回帰し───
『アオォォォォオォオォオォオォオン!!!』
神話礼装たる宝珠、並びにグランドグラフ進化したアマテラスは、グランドルーラーの姿たる天照大御神へと再臨する。
『征こう、竜の戦士』
『おぉっ……!最期まで、共に参らん!!』
アンセスは翼にて、天照大御神は神気にて虹の足場を以て天空のベールへと肉薄する。それは、ギザ山の覇を競う最後の戦い。
【グゴォアァアァアァァァアァアァァッ!!!】
怒り狂う、猛り狂うベールはその全てを以て暴虐を成した。天を震わせ、山を噴火させ、アンセスと天照大御神を諸共にその狂気に飲み込まんとした。
『─────』
アンセスはその攻撃を、なんと構え、いなすという形で無力化する。青と白の神気と覇気が齎す『イナシ』は、放たれし暴虐を全て受け流してみせたのだ。
「ベェエェエルよ!!決着をつけるぞ!!お前に恐怖を!儂の勇気を以て刻み込んでやるぞ!!」
エーゴンは吠え、無数の銛を放つ。身体に刻まれた熱や裂傷など気にも…。
否、それすらも奮い立つ勇気に変えて撃ち放つ。彼は、確かに勇気を持って暴虐を、恐怖を乗り越えんとしていた。
エーゴンは、かつて卑しい死体漁りであった。その生き方は、とにかく卑小で、矮小で、浅ましかった。
しかし彼は、竜に魅せられた。弱小、卑小ゆえに心から魅せられた。
儂は、竜になりたい。
強く、強く、猛々しい竜になりたい。
強い、逞しい存在でありたい。
勇気ある、何者かでありたい。
故にこそ、彼は恐れず挑む。
折れようとも、奮い立つ。
彼の恐怖とはベールそのもの。
そして……勇気ある竜の戦士とは。
「ベェエェエェエェエル!!我等こそが、お前の恐怖だ──────!!!」
竜狩の太刀を構え、白く輝く龍が如き戦士。
それこそが、彼の勇気そのものだったのだ。
『ウォオォオォオォオォオォオーーン!!』
呼応するように天照大御神も吠える。
彼女は当たり前のように誰かを助ける。
見返りや、使命などではない。
それは、彼女の心。
日輪が照らす世界は、皆がニコニコ笑顔のほうがいい。
そう信じるが故の、決して揺るがぬ神威。
エーゴンが勇気であるならば……。
天照大御神の力とは、『博愛』であった。
【ガァァアァァァアァアァァァアァアァァァアァアァァッ!!!】
天照大御神とベールの恵みと嵐が、ギザ山を覆い尽くす。それは太陽の輝きと、炎雷の目を潰す光。
嵐は恵みの水を巻き起こし、ギザ山を巻き込む暴風雨となる。
『アォォオォオッ!!!』
天照大御神は、それでも尚ベールの、ギザ山の暴虐を抑え込む。
暗雲を切り裂き、噴火を鎮め、嵐を吹き晴らし、エーゴンが銛を撃ち込みやすいように環境と地相を変化させる。
【グガギャァアァアァアァアァァァアァアァァ!!】
『──────』
そしてベールは、最後の決戦の相手たる前に立つ。
紅き目、蒼炎のオーラ『ブレイブスタイル』の覚醒オーラを纏い、さざれ石の太刀を自らの鱗で打ち直せし神刀を握る、神龍の領域の一端を魅せし祖龍ミラアンセス。
最早ベールに残る理性は僅か。このままアンセス達を打ち払えば、崩壊した理性は暴虐の化身にベールを変える。
アンセスは知っている。崩壊した自我、解き放たれた本能が如何なるものになるかを。
『その狂乱、鎮め奉ってやろう』
ミラアンセスが右腕を高々と掲げる。
瞬間、ギザ山と周囲そのものがアンセスの領域と成った。世界そのものを変容させる『固有結界』──。
否。その原型となる『世界卵』。世界を生み出す、形作る前の原初の混沌の更に前──。
神域の鳥、神域の龍のみが目の当たりとする『無謬の秩序』に、ベールとギザ山は招かれたのだ。
『『創生原典・開闢斬』』
自らの血肉で打ち直した太刀を、ベールに向けて振るう。
それは、人が生み出せし剣術『居合』。
【ガァァアァァァアァアァァァアァアァァッ!?】
それが振るわれるたび、『世界ごと』『ギザ山ごと』真っ二つに両断されるベール。
そこは、アンセスが内包する権能。『生命を生み出す無限の可能性』そのものの世界。
法も、秩序も、理も、理屈も、条理も、何もかもが存在しない。
否。『その瞬間瞬間、ミラアンセスが創造する』事で、世界の絶対法則と定義されるという方が正しい。
ベールを表す嵐と、炎雷もまたアンセスを穿たんとするが、それは示されるばかりでアンセスには届かない。
それが意義あるものか、世界の事象かは全てアンセスが決定する。
神域の龍とは、『次の瞬間には自らの世界にて今ある世界を塗り潰す』権能を持った超越的絶対存在。
本来なら戦うどころか、知覚できる存在ですらない。肉体を有している時点で、その身は芥子粒のように矮小たる存在だ。
だが、アンセスはその一端をベールに見せた。
【グォオォオァアァアァァァアァアァァッッ!!!】
これ程の力を見せようと、これ程の神威を、存在の隔絶を見せられようとベールは止まらない。
誰にも屈さない猛々しい魂。自らを滅ぼす運命にさえも。
竜王たるプラキドサクスにさえも。
異世界の、神域の祖龍にさえも。
誰にも屈さない。誰にも属さない。誰にもかしずかない。
暴虐の果ての果てに有する──『誇り』そして『矜持』を、アンセスは見定めたからだ。
だが───その暴虐と狂気は、世界を滅ぼす領域にある。
ならば──誰かが、受け止めてやらねばならない。
『狂暴の果て、我が受け止めよう』
「───────!!」
『参れ、暴竜』
【───────グゥウォアァアァアァアァアァァッ!!!】
無垢なる無謬の秩序を、炎雷の赤が塗り潰す。
ベールはその力と魂の全てを以て、アンセスへと、神域の龍へと挑んだ。
【ガァァアァァァアァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!】
それらは、世界のテクスチャの全てを吹き飛ばす一撃。森羅万象の龍でなくば、受け止めきれぬもの。
アンセスは世界を以てベールを抱擁する。トドメを刺すは、アンセスではない。
「ベェエェエェエェエルよ!!!これで最期だ!!!」
天照大御神に乗りしエーゴンが、炉心融解爆発せんとするベールに向かい、極限まで銛を引き絞る。
『お前はもう!!我が恐怖ではないぞ────────!!!!』
『──────』
アンセスは思う。
ベールとエーゴンは、互いが互いの半身なのではないかと。
ベールも、エーゴンも、傷つきながら折れず、折れながら立ち上がり戦い抜いた。
勝ち目のない敵と、戦い抜いた。
勝ち負けではなく、己の生き様を貫く為に。
ベールは、エーゴンは。
共に────
竜や龍が忘れた、魂の輝きを有している者たちなのだと。
極限まで引き絞られし銛。
おのれの全身全霊を込めた、世界を叩き潰す暴虐。
天照大御神と、森羅万象の祖龍の見守る世界卵にて。
刹那の瞬間、その全てが真紅に──
輝ける、光に染まった。
─────そして。
『…………………』
傷一つ無く輝く、ミラアンセスが堂々と歩み寄る。
ベール【……………、…………………】
精魂全てを使い果たし、抜け殻となったベールへと。
『もう、いいでしょう?』
アンセスは、手を伸ばす。
『おやすみなさい、ベール』
慈悲と慈愛の、手を差し伸べる。
ベール【─────グ、ァ】
ベールはそれに応え、高々とへし折れた翼の骨を掲げる。
【ガァァアァァァアァアァ……………ッッッッ!!】
そして───拒絶と反抗の炎雷を宿し、アンセスに振り下ろさんとして───
【───────……………ガ………………─────】
そのまま───
アンセスにもたれかかるように、力尽きた。
『………………』
最後の最期まで、ベールが示したのは反骨の暴虐。
これが我だ。
これこそが我だ。
死して尚、己は曲げぬ。
慈愛にすらも、暴虐を。
全ての尊重に、反逆を。
しかし─────
『…………──』
倒れ伏したベールの炎雷の雷槍は…
『………やんちゃなんだから、もう』
確かに、アンセスの手へと重ねられていた。