人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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巫子の村

リッカ「じゃあ皆、改めてカルデアと…私の故郷をよろしくね!」

黒き刃達【【【【【【はっ!】】】】】】

レン「助けられた皆は、カルデア直属の特殊部隊になる事を選んだんだね」

ラニ『ゴッドウィンを暗殺する際の実行部隊も、マリカは彼女らに頼んだ。まさに精鋭中の精鋭だ。心配はあるまい』

レン「夏草の政治家の手助け…頑張ってほしいね」

ラニ『うむ。………ん』

ラスティ「ただいま、ラニ」

ラニ『……。…おかえり、私の王。成し遂げたか?』

ラスティ「勿論だとも。……終わらせてきたよ」

ラニ『うん。…良かった』

レン(ほっこり)


王の帰還

狂い火の王、ミドラーを討ち果たしたラスティは、自らの拠点に戻る。それは凱旋とも呼ぶべきものではあったが、静かかつ確かな歓迎に留まった。

 

「お帰りなさいラスティさん!ルゥちゃん様とあまこー共々、お疲れ様でした!」

 

『うん、リッカちゃん。ギザ山の部隊もなんとかなったみたいだね』

 

ルゥとあまこーは一足先に帰り、すやすやと優しい黄金に包まれながら眠っていた。話によれば壮絶な戦いを終わらせてきたようなのだが、いやだからこそなのか。のんびりと眠りに落ちていたのだ。

 

(ベールを討ち果たした…。やはり祖龍と主神の力、凄まじいものなのだね)

 

ギザ山に何がいたのか。それを当然ラスティは知っている。だが、彼女達の武勇伝は彼女達が語るべきと、彼は詳しくを口にはしない。

 

「見て見て!回復したマリカの友達の皆、諜報部隊として志願してくれたんだよ!」

 

リッカの言葉を受け、跪く黒き刃の鎧を着用した巫子達。彼女らは角人の風習から助けられた者達だ。

 

【マリカを助け、私達を救ってくれた皆に恩返しをさせてほしいの】

【私達、運動は得意だから!】

【任せて!不可視の一撃で誰だって暗殺してみせる!】

 

ラスティはその言葉と自信に頼もしさと同時に背筋の冷たさを覚える。

 

彼女らの同郷の仲間たちもまた、かつてマリカ直属の【黒き刃】として暗殺部隊を結成していた。

 

その腕前と練度は凄まじく、マリカの長子たる『黄金のゴッドウィン』暗殺の実行部隊であった程。

 

【リッカちゃんの故郷の人達を陰ながら守る代わりに、私達の住居の面倒を見てもらえるの!】

【王様、アレクトーの娘の遺灰持ってるんだよね?】

【よろしく言っておいてね!】

 

無邪気な言動ながら、2メートルを越える体躯の少女達に取り囲まれ、ラスティは苦笑交じりに答える。

 

「勿論さ。君達も、取り戻した人生は大切にね」

 

【うん!それじゃあ皆、狭間と影の諜報に行ってみよう!】

 

おー!それだけを告げ、黒き刃は即座に解散する。その朗らかさとは裏腹に、影も捉えられぬ程の素早さにリッカとラスティは瞠目する。

 

「頼もしいなぁ…!じゃ、じゃあラスティさん!私もラダーンとマレニア、マシュとヘラクレスと行ってくるね!」

 

「行ってくる?どこにかな?」

 

「私はヘラクレスと影樹の根本に行って『ミケラの大ルーン』の調査をした後、マレニアが感じているミケラの気配を確かめに行くつもり!ミケラの大ルーンと、彼の『半身』?それを見に行くんだ!」

 

影樹、影の地に根付く捻くれた大樹。黄金樹と似て非なるその大樹の根元に、ミケラの大ルーンがあるのだと彼女は言う。

 

「レダさんが教えてくれたんだ。南の果てにある大穴にはミケラの封印があって、大ルーンが無いと通れないみたいだから、まずは回収をね!」

 

「私はルゥとワンちゃんを見ているよ。指の母サブミッションは終わらせたしね」

 

ミケラの大ルーン、そしてリッカが言う『半身』とは『トリーナ』の事であろうとラスティは耽る。

 

トリーナ。マリカとラダゴンのように、ミケラが有する半身の女性。眠りを司り、謎多き女性。

 

それが南端に存在するという事実を、ラスティは敢えて黙し告げる。

 

「気をつけて。影樹には意志がある。必ず戦いが起こるはずだし、南端は破棄された場所故に何が起きるか解らない」

 

【当然ながら私もリッカに助力をする!あまり心配する必要はないぞ、ラニの王よ!】

 

『あまり無茶をするな、兄上。兄上ではなくリッカの負担を心配している』

 

【うむ、全てを防ぎ全てを討ち果たせば無傷で済む!大丈夫だ、我が妹!】

 

『……ヘラクレス。頼んだぞ』

 

「任せてほしい。どこぞの船長のお陰でフォロー、サポートにも長があるためにな」

 

ラニとヘラクレス、ラダーンの会話から、自分が付いて行くような不足は無いと確信する。

 

……ならば、『もう一つ』。やるべき事がある。

 

「解った。ならオレも最後の用事を終わらせておくよ」

 

彼が焼き払うべきもの、抹殺すべきものはもう一つ存在している。

 

狂い火の王…それには即ち、『指』が関与している。マリカが二本指に見出され、神となったように。

 

そう、王都ローデイルの遥か深き地下。黄金樹の根元付近にすら位置しない遥か地の底に、狂い火をもたらせし存在が、最悪の元凶が眠っているのだ。

 

【狂える三本指】。絶望の呪詛により呼び出された狂い火の伝道者たる存在そのもの。ラスティが受領した地とは別の存在も、またこの地に存在かしている筈だ。

 

「えっ!?ラスティさんはもうゆっくりしていてもいいんじゃないかなぁ…!?」

 

「オレが休むのは、皆で勝ち取った世界でって決めていてね。その為にも、カルデア所属としてとことん頑張らせてもらうさ」

 

ラスティの決意に、リッカはラニと顔を見合わせ、頷きあった後に息を吐いた。

 

「どうか、ラニさんを悲しませないでね。ラスティさん」

 

「勿論さ。君もたった一つしかない命を…大切にね」

 

「はいっ!じゃあ、行ってきます!」

 

リッカはヘラクレス、マシュと共に駆けていく。どうやらマレニアは侵攻ルートの確保のために先行していたようだ。

 

『忙しないものだ。異なる世界ながら、元の世界以上に気を回してはいないか。私の王』

 

「そうもなるさ。……誰もが夢見た永遠の豊穣、白金の時代。それをオレも見たいと願っているのだから」

 

そう、マリカがかつて願い、そしてかつてほんの僅かに存在した、尽きぬ祝福。黄金樹の永遠の豊穣の時代。

 

この地は、その地の土壌となり得る世界である。であるならば、それは王となる道よりも過酷で遥かな、世界を救う旅。

 

「……リッカちゃんは、カルデアは。こんなにも険しい道を、あの小さい身体で突き進んでいるんだ」

 

走る後ろ姿を、ラスティは見つめる。

 

その小さくとも揺らがず、力強く駆け抜ける様。それは間違いなく、一つの王の…

 

いや。世界を救う救世主の器だろうと。

 

「留守番は受け持つよ。ラスティ、今度はラニも連れていきなよ」

 

「レン」

 

「いつまでも伴侶を持たせるものじゃない。何故だか、私の胸がそう告げているんだ」

 

レンの言葉通り、ラニには留守番を頼んでいた。狂い火に、万が一にも焼かせる訳にはいかなかったからだ。

 

だが……これ以上、寂寥に晒すのは忍びない。

 

「じゃあ、ラニ。この小さい方の人形に」

 

『うむ。……頼んだぞ、レン』

 

「任せてよ。いざとなったらルゥやアマテラスも叩き起こすし、メスメルも呼ぶから」

 

魂を小さいラニ人形に移し、懐にしまった後にラスティは祝福に手を触れる。

 

「すぐに戻る。きっと次に皆が揃った時…ミケラに至る機が整う時だろう」

 

「そうだね。そうしたら、狭間の棘を焼いてマリカとご対面だ」

 

旅の終わりは近い。それを確信し、ラスティはラニと共に立つ。

 

「目的は───遥か黄金の都の真下だ」

 

『………忌み捨ての地下だな』

 

忌み子が打ち捨てられし地下。そこに、封じられている三本指。それをこそ、ラスティは討ち果たす。

 

来たる永遠の豊穣の日に、それらを焼き尽くす火が燻らぬように。

 

狂い火の王たる存在が、その存在そのものを決して認めない。

 

絶望も呪詛も、継ぐ必要はない。

 

世界には、希望と生命が。

世界には、静寂と安らぎがもたらされるべきだと。

 

ラニの王にして、狂い火を宿せしラスティは揺るがずに確信と共に向かう。

 

遥かなる地下。

 

狂い火の三本指の下へと。

 

 




そして、ラスティとラニは見る。

ラニ『これは……』

狂い火の封印。三本指の封印。

ラスティ「そんな───馬鹿な」

その封印が……

既に、解き放たれており。

三本指が、消え去っている光景を。

それが意味するもの。

即ち…

この狭間にて、既に生まれているのだ。

ミドラーではない、真なる狂い火の王が。
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