人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

2813 / 3000
 小さな苗木、小さな苗木

 さあ、大地におかえりよ

 けれど忘れないでおくれ

 君は僕のものだって

 だからさあ、受け取っておくれ

 僕の豊穣、僕の雫を

 渇きを満たし、身体に巡らせ

 何度も、何度も、芽吹くといい

 そして大きく、大きくなって

 いつかきっと

 僕と一緒に夢を見よう


黄金への渇望

【■■■■■■■!!!】

 

顕現した影樹の化身は、ミケラの大ルーンを護るかのように立ちふさがり自らの捻くれた巨大な腕の如き触手を振り回す。

 

「先輩!」

 

びっしりとした棘を絡め作られたそれは、生身で触れれば余すこと無くズタズタにされる代物。マシュが素早く割って入り盾にて渾身のガードを行う。

 

「躾のなっておらぬヒマワリめ…!」

 

ヘラクレスが猛然とダッシュし、影樹の化身の懐を侵略する。戦士ならざる相手故か、対応が致命的に遅い。相手がヘラクレス、というのもあるが……。

 

「ふんっ!!」

 

ヘラクレスの渾身の石斧の一撃が、化身の向日葵が如き頭部の付け根を叩き斬る。それは首の寸断に等しい、致命の一撃。

 

【■■■■■■■!?】

 

汎人類史の誇る大英雄の一撃に、耐えきれる道理はなく。化身は無残にも胴体部分と顔面部分が両断、泣き別れと成り果てる。

 

「やった!」

【流石は大英雄ヘラクレス殿。狭間や影においてもまさに無双よ!】

 

そう称されるに相応しい一撃必殺を魅せ、まさに決着……。しかし、ヘラクレスは警戒を解かない。

 

(敵意と気配が消えぬ。もしやまだ機を伺っているか…)

 

そう、ヘラクレスが思案した…

 

瞬間だった。

 

「!!」

 

瞬間、足元より無数に黒き棘が湧き上がり、ヘラクレスらを突き刺し串刺しにせんと迫り来たのだ。それは明確に、殺意の籠もった攻撃。

 

「狸寝入りとは小賢しい…!」

 

【飛ぶぞ、マシュ殿!】

 

リッカの肉体を借りたラダーンが顕現し、素早く重力魔術を展開。マシュと共に斥力にて宙に逃れる。

 

棘は暴れ狂った後、落ちていた首が如き向日葵の肉体を形成し再び肉体を模し形成する。復活…。戦闘続行の意志を見せる、その戦いは次の段階へと向かったのだ。

 

【■■■■■■■!!】

「む…!」

 

次は自らが殴ることをせず、無数の茨を這わせるようにして遠距離攻撃を行う手段をとる。ヘラクレスは一転して距離を取らざるを得なくなる、が…。

 

「生憎だが、私に苦手な距離などは存在せぬ」

 

ヘラクレスは即座に弓を構え、化身へと撃ち放った。それは一射一射が、生命を抉り取る一撃必殺の射撃。

 

【■■■!!…!!】

 

即座に反撃を受ける憂き目を担った化身は、大きいよろけを見せる。それは猛者にとっては、致命的な隙だった。

 

【では、こちらにおいても食らうがいい!】

 

リッカの肉体を借り受けたラダーンが猛烈に回転。重力を纏った砲弾と化したラダーンが、ヘラクレスの作った隙に乗じて必殺な一撃を叩き込む。

 

【おおおおおおおお!!!!】

【───────!!】

 

その回転する一撃は、過たず化身を貫いた。ヘラクレスにも勝るとも劣らぬ猛者である覇者、そして最強のデミゴッドたるラダーン。そして最強の肉体であるリッカの力を借りた一撃は、これもまた耐えられるような生易しい一撃にあらず。

 

【───────】

 

轟音と共に倒れ伏す化身。見れば、先の姿よりあからさまに身体を構成する棘が短く細い。

 

「無理を押して、復活していたのですね…」

 

マシュの言葉にて決着………

 

かに思われた。

 

【…………………■■■■■!!】

 

「っ!まだ…!?」

 

化身は、なんと三度起き上がる。懸命に棘を束ね上げ自らを構成し、なんと三回も復活してみせたのだ。

 

「苦し紛れか。限界は近いぞ」

 

ヘラクレスの言うように、その構成された棘の肉体は哀れなほどに痩せ細っている。そして、向日葵の如き頭部もしなだれ、生気を感じられない。

 

「そこまで、ミケラさんの大ルーンを護るなんて…」

 

マシュの動揺と共に、化身は不可解な行動を執り行った。

 

【何をする気だ…!?】

 

突如、背後の捻くれた影樹と同じポーズを取り始めたのだ。捻れ曲がり、狂い歪んだ似姿。それは、化身が本体と共に在ることを示唆するもの。

 

末期の祈りか。そう判断する間もなく、それは間違いだと気付く。

 

【!マシュ殿!防御を展開するのだ!】

 

ラダーンの言葉と同時に、影樹の化身の身体に莫大なエネルギーが蓄積膨張を始める。それは末期ではなく、まだ戦いの意志を有していることをラダーンは看破したのだ。

 

「はいっ!!皆さんは私達の後ろに!」

 

「ぬっ…!」

 

ヘラクレスは距離が遠い。爆発に間に合うか、巻き込まれるかの瀬戸際の距離。致命的な爆発の瞬間は、そこまで迫っていた。

 

【間に合わぬか…!?】

(大丈夫!マシュ、そのまま宝具開帳!)

 

ラダーンの中のリッカが、マシュの心胆にそう告げる。それを聞いたマシュは一瞬戸惑いながらも、リッカの声を信じ宝具を放つ。

 

「顕現せよ!『今は遥か』───」

 

(ラダーン将軍!!重力魔術!!)

 

瞬間、ラダーンに指示を放つ。ラダーンもまた、即座にその意図を理解する。

 

【おおおおおおおおおおっ!!】

 

それは周囲の物を吹き飛ばす斥力の発生。本来ならば全てを吹き飛ばしてしまうが、ここにはリッカの機転がある。

 

「!!」

 

マシュが、化身に向かって猛烈に吹き飛んだ。それは、ヘラクレスすらも追い抜き背後の庇護下に入れるほどの速度と距離。

 

「『理想の城』─────!!!」

 

リッカの指示を信じたマシュが展開する、キャメロット。全てを通さぬ白亜の城は、臨界寸前の化身の前にて展開され、そして……

 

【■■■■■■■■■■──────!!!!】

 

大爆発を起こす化身。自らの全てをかけた、化身らしからぬ黄金の大爆発が衝撃と共に周囲を吹き飛ばす。

 

「くうううううっ!!」

 

マシュは踏ん張り、歯を食いしばる。壮絶な勢いではあるが、決して防ぎきれぬものではない。これ以上の衝撃を、マシュは阻んできたのだから。

 

一瞬、或いはとても長い時間の拮抗の末に、決着は訪れる。

 

【────────……………】

 

全てを使い果たした…。そう告げるかのように、化身は倒れ伏した。見る影もなく痩せ細ったその姿は、戦闘続行など不可能であることは明白である。

 

この戦いは、リッカらの勝利であった。

 

「見事だ、マシュ」

【柔肌に似合わぬ堅牢ぶり!ローデイルの城壁にも劣るまい!】

 

ヘラクレスとラダーンの称賛を受けながら、倒れ伏す化身を見やる。

 

「この化身は、なぜこうまでしてミケラさんの大ルーンを護りたかったのでしょうか…」

 

その気迫は、その意志は極めて強固であった。三度も復活し、自らの全てを懸けて立ちふさがった。

 

【もしや、ミケラに既に魅了されていたか…?】

 

ラダーンの予想に、リッカは首を振る。

 

「……きっと、彼も輝きたかったんだと思う。黄金樹みたいに」

 

それは、化身……ひいては、影樹そのものの願いであったのだろう。

 

真っ直ぐ、堂々とありたい。屹立し、ねじれること無く輝きたい。

 

最後の爆発には、輝きの奔流には、その切実さを感じさせる程の力と勢いを確かに感じさせた。

 

(きっとミケラは、その願いを汲んでいた)

 

だからこそ、ミケラは大ルーンを渡した。そのどうしようもなくねじれながらも懷いた、真摯なる願いに。

 

報われぬものへこそ、ミケラは祝福する。それは、ミケラが全てを捨て去る前に行ったが故か。

 

確かなる愛を、まだミケラは宿しているのなら。本当の意味で対話は果たせるのなら。

 

「…願うなら、間に合ってくれればいいんだけど…」

 

あるいは、それも含めた全てを捨ててしまったなら、戦う他無い。

 

その懸念と願いを抱きながら、一同は手にする。

 

ミケラの力の根幹…

 

その、大ルーンを。

 




ミケラの大ルーン

淡く、静かに輝くミケラの大ルーン
魅了し、心の全てを支配する力が宿っている。

ミケラは、影に隠された塔に向かった
その黄金の身体も、力も、宿命も
全てを棄てて

はじまりから続く因果を超えて
全てを抱く、新しい神になるために

そしてこの大ルーンは影樹に捧げられた
憐れなる影、愛されることなき黒き影に

せめてもの祝福と、全てを愛する誓いとして
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。