人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ラダーン【そうだ、リッカ達。少し知人と会ってもらえるだろうか】

リッカ「知人?」

ラダーン【うむ。やつは共に重力魔術を師より学んだ、メスメルの宿将なのだ。確か近場にいたはずでな】

影の城外部

ラダーン【ここだったか…?】

?「─────ブモォオォオォオォオ!!」

リッカ「!」

ヘラクレス「魔猪…いや、猪か」

「ブモォオォオォオォオォオォオ!!」

リッカ「デカァアァイ説明不要!!」

マシュ「敵対エネミーですか!?対処を…!」

ラダーン【問題ない。身体を借りる!】

?「……む?」

ラダーン【我だ、ガイウス。久しいな】

ガイウス「貴様、ラダーンか…!?」

ラダーン【そうだ。訳あって…】

ガイウス「嘘をつけ!!フレイヤでもあるまいし、ラダーンがそのような可憐な女であるものか!」

ラダーン【それは説明する。様々な事象があったのだ…】


宿将ガイウス

「ワッハッハッ!!まさか、まさかラダーンに可愛らしい等という形容を使う日が来るとは夢にも思わなんだ!これこそまさに世代の、世界の変革と言ったところだな!!」

 

巨大な猪と共に猛然と突っ込んできた、重装の鎧に身を包む男。ラダーンを宿したリッカ、語りかけたラダーンに納得したように大笑いする。

 

「俺はメスメルの宿将にして、ラダーンとガイアと共に重力魔術を学びしもの!名をガイウス!猪の上から語ることを許せ!俺はしろがね人故、脚が不自由なのでな!」

 

ガイウスを名乗る将軍は朗らかにそう告げた。見れば確かに、重装なる鎧は下半身において脆弱さを見せている。

 

「しろがね人は足の代わりに動物と心を通わせる…。成る程、男性は力強い猪を脚に選んだか」

 

「おうとも!話が解るなデミゴッドよ!む?デミゴッドではない…?ワッハッハッ!まぁ細かいことは気にするな!」

 

ガイウスはその出自より、差別を受けていた。しかしその性格は豪放磊落にて、気にする素振りを一切見せないほどだ。

 

「ラダーンを宿せしものよ。察するに世界を手にする王の道を歩んでいると見受けるが、如何に?」

 

ガイウスは突如、リッカらに問いを投げかけた。それは真剣さを多分に孕んだもの。ラダーンではなく、リッカが回答する。

 

「うん。この停滞してしまった世界を変えるために、私達はエルデンリングを掲げてマリカを助けるつもりだよ」

 

リッカの淀みない答えを聞いたガイウスは、殊更力強く笑った。

 

「ワッハッハッ!!そうかそうか!大義を抱き、大志を憚る事無く告げるその勇壮さ!ラダーンが惚れ込むだけの事はある!!」

 

「先輩に惚れ込んでいるのですかラダーンさん!!」

 

【むしろ惚れ込まなくては失礼であろうとすら考える!】

 

「その通りです!!」

 

なんの話をしてるの!?リッカの困惑を他所にガイウスは告げる。

 

「それならば、未来の王よ。このガイウスの願いと想いを、ほんの少し、心の片隅より覚えておいてはくれまいか」

 

ガイウスは神妙に語る。自らの出自より生まれた願いを。

 

「ほんの少し、ほんの少しでいい。われらしろがね人を始めとした弱いものにも…居場所のある世界を作っておくれ」

 

「!」

 

ガイウスの願いは、差別がなく…とは言わないまでも、個性として容認される程度の慈悲が芽生えた世界であった。

 

「俺の鎧を見ろ。上半身は余すこと無く固められているが、下半身は軽装という歪なものだ。なぜか分かるか、紫の少女」

 

「か、下半身が不自由であり、上手く鎧を着れないからでしょうか!」

 

「その通りだ。だが、俺にはこのように立派な足甲が仕立てられている。それは何故か、解るか?」

 

ガイウスが言うように、彼はマシュに足甲を懐から取り出し渡す。マシュは首を傾げながら答える。

 

「えっと……脚が動かないハンデなんかに屈しないでほしいという激励!でしょうか!」

 

「────ワッハッハッ!!なんと真っ直ぐな心胆よ!流石はエルデンリングに導かれし者らだ!」

 

ガイウスは笑った後、静かに言った。それは嘲笑だと。

 

「俺は脚が動かん。そんな俺を侮蔑するために作られたのだよ。お前には不釣り合いだろう、履けないだろう。こんなにも勇壮な足甲を、哀れなことだ…とな」

 

「……そんな…」

 

「永遠の豊穣はとうに終わりを告げ、世界には苦痛と不理解が蔓延っている。同胞たるしろがね人が、安寧の地を探し始めるも無理からぬ話よな。ラダーンの義兄弟に上り詰めてすら、このような悪意は俺を…弱きものを苛むのよ」

 

それでもガイウスはそれを持ち続けた。差別に屈せず、悪意に負けぬがために。強く、誇らしく生きるが為に。

 

「若人よ。理不尽に頭を垂れることは無いのだ。過ちは、いくら強さと数を得ようとも過ち。それは決して、真なる強さを挫く事はかなわぬ。そしてその真なる強さを持つものこそが、新たなる世界を作ると俺は思う」

 

「ガイウスさん…」

 

「願わくばその強さに、更に優しさを有してほしい。博愛までとは言わん、弱いもの、醜いもの、名もなきものの存在を知り、ただ認めるだけでよい。世の中に僅かななりとも居場所がある…。そう知ることが出来るというだけで、救われる生命もあるのだ」

 

ガイウスと共に、猪が声を上げる。半身の相棒もまた、主の心に寄り添っている。

 

「……うん。約束するよ。強いだけじゃ意味がない、優しさもちゃんと忘れないようにするって」

 

それにリッカは迷うことなく返す。

 

「弱きを助け、理不尽と邪悪を憎む。そして護るべき小さな幸せと未来を護るために力を振るう!私はこれからもそうやって生きていく事を誓う!」

 

リッカからしてみれば、それは誓いだ。そういう生き方こそが、藤丸龍華たる所以にして根源。

 

彼女もまた、虐げられる痛みや辛さを誰よりも知っている。今のように輝くには、たくさんの試練と救いと、愛と奇跡があった。

 

ならばそれを、自分もまた誰かに捧げる側に。彼女の生き様と誓いは、決してブレず揺らぐことがない。

 

「今より強く、優しくなる世界を掲げてみせるよ!ガイウスさんが、ただ強さと誇りに人々を惹きつけられる世界を齎してみせるから!」

 

リッカの答えに、満足したようにガイウスは笑う。

 

「ワッハッハッ!まさにラダーンの如き勇壮ぶりよ!見た目の愛くるしさはまるで似ておらぬのに、確かに赤獅子の覇気を有しているとは!」

 

【だろう?今は可愛らしさと、雄々しさが共にあれる世界が有るのだ】

 

「ますますもって愉快なり!では未来の王らよ、私はお前たちの世界の、猛々しき牙となろうぞ!」

 

ガイウスは誓いの形で猪を伏せさせた。

 

「未来の世、守護する将たらん。我等が師、白王に誓って」

 

「ガイウス…」

 

「しろがね人故、まともな血は流れておらぬ。それでも尚、我が忠義を受け取ってもらえるか。王たるものよ」

 

「──勿論!ラダーンの兄弟弟子なんて、こんなに頼もしい人はいないよ!」

 

リッカは当然ながら、ガイウスの忠義を受け入れた。これで、世界の守護は更に盤石となることであろう。

 

「よろしくね、ガイウスさん!猪共々、頼りにしてるよ!」

 

「うむ、任せておけ!ラダーンに勝るとも劣らぬ重力の冴え、見せつけてやろうとも!ワッハッハッ!!」

 

ガイウスの朗らかな笑い声が影の地に木霊する。

 

「ラダーンたる娘よ、ラダーンの破天荒ぶりは傑作でな。重力に飽き足らず自らが浮かび回転し切り刻むなどを始めた時の師の困惑は傑作であったぞ!」

 

【いやそういうものかと思ったのだ…そうしたら師も『知らん、何それ…怖』などと告げてくるし…】

 

「やはりデミゴッドにして最強の存在は格が違ったという事だな」

 

「凄まじい人ばかりが仲間になってくださり、頼もしい限りです!ね、先輩!」

 

「うん!またラスティさんが、『オレの知ってる冒険と違う!』って悲しみそうだけど…」

 

【おぉそういえばガイウス!我が妹ラニが結婚したのだ!聞いて驚け、それがまた凄まじい傑物にして美丈夫でな…!】

 

しばし一行は、ラダーンの友たるガイウスと存分に語り合い、歓談した。

 

そこにはガイウスを苛んだ差別と侮蔑の声はなく。

 

ただ、友らと語り合う喜びの笑い声のみがあった。




ガイウスの足甲

宿将ガイウスの黒鉄の足甲
悪意ある嘲笑のためだけに作られた
彼に纏うことができぬもの

猪を半身とし、その背に乗る
ガイウスはしろがね人であった
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