人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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マレニア「………トリーナ様は、その様な事を……」

リッカ「彼女は少なくとも、ミケラを憎んではいなかった。むしろ心配して、案じていたよ」

ラダーン【トリーナはミケラの愛。紛れもなく…それは本当だった、というのか…】

リッカ「行こう。エニル・イリムっていう場所…マリカが神になった場所に、ミケラもきっと待っているから」

マレニア「…それが、トリーナ様の意志であるならば」

ラダーン【いよいよ、影の地巡りも終わりが見えたな!】

リッカ「……その前に…教えてあげなくちゃ」

マレニア「?」

リッカ「トリーナ様の、言葉を。ちゃんと…信徒さんに」


微睡みのティエリエ

「なぜ、声をお聞かせ下さらないのですか…?ああ、もっと貴女の毒をください。ずっと深く、微睡むために…そうして、どうか声を聞かせてください…」

 

ティエリエは、未だに微睡んでいた。トリーナの声を聞き、彼女の心に触れる為に。

 

リッカは先程、トリーナへと見え、その願いを知った。彼女はミケラを案じ、その魂の自由を願った。

 

そして同時に、彼女は言った。「あの人にもよろしく」と。それは彼女が、決して敬虔なる者を見捨てていないことを意味している。

 

だからこそ、リッカは彼に伝えるのだ。トリーナの意志を。トリーナが何を想い、考えていたのかを。

 

トリーナが、信者には応えぬ冷酷なる聖女では無いということの証明の為に。

 

「……ティエリエさん」

 

リッカはそっと、ティエリエに近付く。彼は、蹲り丸まっている。胎児のように。

 

「聞いたよ。トリーナ様の声。そして、あなたにも伝えたい事が…彼女は伝えたいものがあったんだよ」

 

そのリッカの声に、ティエリエはか細く反応する。

 

「…謀らないで、ください。私は、選ばれています。貴女ではなく、私だけが、トリーナ様に微睡めるのです」

 

その声には拒絶と、矜持があった。自分が、一心に信じる自分のみが彼女の心胆に、本心に触れる事ができる。

 

だからこそ、自分の前でその様な偽りは許さない。リッカはそれを「同担拒否」という概念として知っていた。

 

「私に聞こえぬ声が、貴方に聞こえるはずがない。…もう二度と、醜い偽りを口にしないでください。その時、私は、貴方を許せそうにありません」

 

【何をむにゃむにゃと…!トリーナは貴様をも案じて言葉を託したというのに!その不遜なる態度は何事か!】

 

ラダーンの怒りをなだめつつ、リッカは辛抱強く問う。

 

「トリーナ様は、ミケラを止めてほしいって言っていたの。彼を神にしてはいけない。神は、牢獄のようなものだって」

 

「…やめて、ください…」

 

「ミケラに、神に挑むことが…トリーナ様が、私達に望んでいる言葉と、思いなんだよ」

 

「やめてください……」

 

「あなたも、私達に力を貸して。牢獄に、ミケラとトリーナを囚えさせる事が無いように……」

 

その時、ティエリエがゆっくりと起き上がった。リッカに向けて、声を上げる。

 

「…それは、侮辱です」

 

「………」

 

「私はもう……あなたを…、……!」

 

その時、ティエリエは見る。リッカの髪に差された、髪飾りを。

 

「これ、は………トリーナ様の……?」

 

「うん。トリーナ様から貰ったんだよ。貴方のことも、よろしくねって」

 

「………トリーナ様…あなたは、騙ってなどいないというのですか……?いや、そんな……」

 

ティエリエは、動揺と困惑を見せる。その髪飾りの細工は、紛れもない神のものであったからだ。

 

 

「…教えてください」

 

長い長い沈黙の中、ティエリエは告げる。

 

「貴方の言う事が、もし本当だとしたら…トリーナ様は、なんと仰ったのですか?」

 

先に聞いてはいた。先に問うてはいた。それでもなお、ティエリエは問わずにはいられなかった。

 

「……トリーナ様は、ミケラを…殺してほしい。そう言っていたよ」

 

「………!」

 

「自身も一緒に死ぬことになったのだとしても…。それでも。それでもトリーナは、ミケラのことを愛して、心配していたんだよ」

 

それが、ミケラの愛たる所以。

 

「それにトリーナ様は、ティエリエさんの事もちゃんと見ていたよ。だから言われたんだ。だから伝えたんだ」

 

「…………」

 

「あなたの事も、よろしくね……って。それが、トリーナ様が伝えてくれた想いの言葉。…ミケラを、許してあげて…って」

 

リッカは確かに伝えた。彼女の真意を。確かに、余すこと無くティエリエへと。

 

 

「ああ、貴女は、本当に酷い人だ。悪夢のような人だ」

 

それを……ティエリエは、受け止めきれなかった。それは、トリーナ自身の死をも意味しているから。

 

崇拝する神が、自死を望む。それは、悪夢のような宣告だったからだ。

 

「そんなことが……あるはずがない……そうですよね?トリーナ様……」

 

ふたたび、ティエリエは蹲る。

 

「貴女の声をお聞かせください。永遠の眠りの中で…」

 

彼女の微睡みに、触れるために。

 

「永遠の、眠りの中で…」

 

「…………行こう。二人とも」

 

リッカは、ティエリエの判断を尊重した。

 

「大ルーンは揃った。ミケラを止めて、エルデンリングを直さなきゃ」

 

歩みを進める。

 

牢獄の中に向かうミケラを、止めるために。

 

 




ラダーン【あれで、良かったのだろうか?もしかすれば、あやつの力も借りれた筈やもしれんが】

リッカ「信じた相手を殺す…。そう簡単に判断できる事じゃないっていうのは、凄くわかる事だから」

ラダーン【………】

リッカ「きっと、トリーナ様の真意を理解できる瞬間がやってくる。その時、私達の道はきっと交わる筈だよ」

マレニア「その時、互いを殺し合うのではなく…助け合えるのだと、思うのだな」

リッカ「うん。だって、トリーナ様の心は本心だって確信してるから」

マレニア「……兄様。神へと至る前に……」

リッカ「エルデンリングの欠片、大ルーンは揃った。さぁ行こう。マリカと世界を、救うために…!」
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