人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ラダーン【内にいて、君を見ている事になる身だが、君は本当に不思議な存在だな、リッカよ】

リッカ「そうかなぁ?私くらい解りやすい人ってあんまりいないと自負しているんだけどなぁ」

ラダーン【ははは、気負わず気取らずもまた魅力のうち、というやつか!…よし、人手と仲間が必要だというのならば私も当てと、心当たりがある!】

リッカ「おおっ!」

ラダーン【私が見出し、取り立てし戦士!『赤獅子のフレイヤ』に!会いに行くとしようぞ!】


終わりなき戦いへの誘い

【という訳だ。ミケラの行いとその真意を推し量る為にも、私たちと共にエニル・イリムへと向かおうではないか!】

 

リッカはラダーンの導きにより、影の地に滞在していた『赤獅子』のフレイヤへと相対していた。彼女は円卓にて顔を合わせていた、レダとミケラの同士のうちの一人。

 

「成る程な。ミケラ様を殺し、許すことこそが…ミケラ様が捨ててしまった愛たるトリーナ様の切なる願い。将軍、そして将軍が宿りし少女はそれを聞き及んだという事か」

 

フレイヤはかつて奴隷の剣闘士であったところを、ラダーンにスカウトされ赤獅子軍へと取り立てられた過去の経歴がある。そして、一人別行動を任されていたという目的も。

 

彼女はかつて、エオニアにて瀕死の重傷を受けた。腐敗により、腐りゆく傷。死を待つのみの恐ろしい傷を。誰にも治療はできず、仲間ともはぐれ、ただただ死ぬしかない恐ろしい運命に準えていた。

 

そんな時、彼女の前に現れしはミケラであった。ミケラは彼女の腐り爛れた傷に口づけを行い、その毒を抜き取り癒したのだ。それは神にしか出来ぬ、奇跡の業。

 

その日以来、ミケラを絶対の導きとして彼女は彼を信じ、崇めている。崇拝とも言っていいそれは、レダに同志として認められるほどの信仰に昇華されていた。

 

「かつてミケラ様は、私に仰った。将軍ラダーンと在る日に交わした約束があり、それを果たしに行くと。将軍、それは本当か?」

 

【神となり、私が王となるといった旨の話であるのならば…ヤツの思い込みにして、一方的な愛と誓いの強要と断じさせてもらおう。私はヤツの王になどならぬし、トリーナ殿の意志を聞いた以上、神になどさせぬ】

 

リッカの肉体に宿りながら、ラダーンははっきりとフレイヤに告げた。彼は、紛れも無く最強のデミゴッドであり、英雄であった。

 

【我が故郷を助けし大恩あるこの少女を始め、私が愛する者達は既に我が身の周りに数多いる。それらを護り抜き戦う為に我が魂は存在しているのだ。今更王座に興味などない】

 

「ミケラ様との敵対は、避けられないと?」

 

【然り!目を曇らせ、盲信し崇めることだけが愛ではない。視野狭窄に陥り、血迷った弟の横っ面をぶん殴って目を覚まさせてやるのもまた、私がミケラに捧げる愛の形というものだからな!】

 

ラダーンははっきりとミケラとの対立を表明し、リッカらと最後まで共に戦う事を示したのだ。それは、カルデア陣営において何よりも心強い将軍の決意にほかならなかった。

 

「そうか。あぁ、そうか。将軍とはそうでなくてはな」

 

それを受け…フレイヤは、納得したかのように笑みを浮かべた。

まるで、そう告げることこそが運命であるとも伝えるように。

 

「ラダーン将軍を祭りの中で弔い、名誉在る死を与えるというジェーレン爺の言葉を否定する訳では決してないが…私は、ラダーン将軍にそうあってほしかったのだ」

 

【?】

 

「荒々しく、猛々しく、常に燃えるような戦いの中で荒ぶる。私の見ていたラダーンとは、私のあこがれたラダーンとは、そういう絶対的な力の化身であったんだよ」

 

ラダーンへの想い。フレイヤはそれを他ならぬラダーンに告げ、続ける。

 

「だからこそ──今、私は将軍に言わなくてはならないな。私は、あなた達の仲間にはなれない。なる気は無いと」

 

【………何?】

 

「終わりなき戦い。燃えるような戦い。それこそがただ、あなたには相応しい。そして…その戦いにて尋常に、あなたと戦うことができるのであれば、私は喜んで、あなたの敵となる事を選ぼう!」

 

それは、荒々しい赤獅子が持つ闘志の発露そのもの。ラダーンとは、戦場における最高の誉れたる者だ。

 

その戦いと、その誇らしさに赤獅子軍の誰もが魅了された。その強さに、誰もが歓喜の咆哮を上げた。

 

敵ならば勿論、味方の赤獅子すらも想いを馳せるだろう。戦士であるのであれば。

 

『最強たる者に、挑むこそを誉とする。ラダーンという最強こそ、戦士の目指す頂そのもの』だと。

 

【フレイヤ……】

 

「それに今、あなたは異世界の誉れ高き【大和撫子】を依り代としている。武芸百般を修め、世界を何度もその手で救いし救世主にして至高の戦士たる藤丸龍華に」

 

(いやあの、私自身は普通の女子高生というスタンスは崩したくはないんだけどね!?)

 

「最高の肉体に、最強の魂を宿した今のラダーン将軍は…生前の頃すらも遥かに凌駕した強さと雄々しさを誇る筈だ!そうだろう!?ならば、同じ轡を並べるなどという勿体ない真似ができるものか!」

 

血のたぎりが抑えられぬとばかりに、フレイヤは告げる。それは、獅子の咆哮にも似た宣誓。

 

「戦士よ、将軍よ!私はミケラ様の戦士として、あなた達と相見えよう!燃えるような戦いを、燃え盛るような戦いを繰り広げよう!赤獅子たる誇りをこの胸に抱いて!」

 

【……………】

 

「ありがとう、ラダーン将軍。完全に私は吹っ切れました。次に出会う時は、尋常なる戦場にて。そこで存分に……私達は燃え上がる事となるでしょう!」

 

鼻息も荒く、フレイヤは去っていく。ラダーンとの名誉在る戦い、ラダーンとの終わりなき戦い。それこそが、フレイヤの願いと。

 

【……悲しいものだ。人は、愛ゆえに時に目を曇らせる】

 

ラダーンの胸に去来しているものは、戦いの高揚などでは無論無い。そもそも、彼自身は戦いを愛するが、戦いそのものが終わらぬことを望んだことは一度もない。

 

戦いとは、己が大切な全てを護り抜く為に自らの全てをぶつけて勝ち取るもの。自身の生き様、全身全霊を注ぎ込むその瞬間こそを彼は愛する。

 

そしてその先には、必ず平和と平穏、大切な者たちの笑顔がなくては意味がない。常勝無敗のラダーンにとって、戦いと愛する者らの笑顔はセットであるのだ。

 

終わりなき戦いなどの何処に笑顔がある?終わりなき戦いが満ちる世界のどこに平和がある?彼にとっての戦いとは『手段』にして『事象』であり、『目的』ではない。

 

【フレイヤ……お前は今、戦いというものを見誤っているのだぞ…】

 

戦う為に戦う。戦いそのものを愛する。それは、ラダーンの本意でも望みでも決してない。

 

彼が望むものは、戦いの先にある平和と平穏。愛する者たちと共に歌う凱歌であるのだから。

 

【リッカよ。我が不手際と不始末、教育の不届きがこの結果を招いた事を謝罪する】

 

仲間に迎えるはずが、敵を増やしてしまったことを静かに詫びるラダーン。

 

【決して、このままにはせん。……正気に戻してやらねばならぬ者が一人増えてしまったな】

 

ラダーンは、決意した。

 

戦いの狂騒に取り憑かれてしまった馬鹿者を、糺してやらねばなるまいと。

 

「うん。……教えてあげなくちゃ。戦いなんて、永遠にあっていいものじゃないんだって!」

 

信仰に縛られしレダ、闘争に酔ったフレイヤ。少なくとも、立ちはだかる相手は二人となった。

 

ミケラへと至る為に……

 

その戦いは、避けて通れぬものとなることは、明白であった。




サリア【ヒヒン】

ラダーン【おぉ、慰めてくれるか…リッカよ、私はショックなのだ】

リッカ「ショック…?」

【……私が、なんかこう朝も昼も夜も戦いに明け暮れているようなバトルジャンキーに見られていた事実が、こう、ネ…】

リッカ「あぁ〜〜……」

サリア【プルル…】

背中を丸め、愛馬たるレナード・サリアに慰められるラダーン。

しかし、リッカの耳にははっきりと聞こえていた。

ラニ『自業自得だぞ、兄上』

という、呆れの混じったラニの冷たい目線と言葉が。

この後、ラダーンにリッカは身体を引き続き貸し、愛馬との時間を過ごさせメンタルを回復させたのは言うまでもない。
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