人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
アデューラ・ラスティ『皆、落ちないように気を付けてね』
レン「聖地、というだけあって…雲海に日差し、神聖な雰囲気が満ちているね」
ラダーン【尻がむず痒くなるな!】
ラニ『女体でくだらぬ洒落を言うな兄上』
ヘラクレス「ショートカットか…試練もショートカットできたらなー」
ラスティ(ぐっ)
ヘラクレス(ぐっ)
リッカ(通じ合ってる…)
マレニア「件の角人達だが…眼下にすら見かけないのは一体どのような…」
ルゥ「…ん?」
〜
ラージャ『お〜〜〜〜〜〜い!』
シャガ『やっつけといたよ〜!』
ルナ『皆様、御武運を』
〜
ルゥ「三人共、いつの間にぃ!?」
レン「先回りしてたのかな。まさか、エニル・イリムが現れた瞬間に…?」
ラスティ「うぐっ、ううっ……!」
ヘラクレス「ラスティ殿」
ラスティ「泣けてくるくらい仲間達が頼もしい!!」
リッカ「わかるよぉ…」
そして皆は、辿り着く。
清めの間の、控室へと。
『全ての迷いを、ここに棄てる』
そう記されし、最後の十字。ミケラが捨て去った最後の十字を見やり、リッカ達は辿り着く。
白き広間。穢れの一つもなき、全てを赦す空間を。神に至るものが、全てを払い落とす間を。
神聖なる空間に、声が響く。
「…龍華。やってきたか」
レダ。針の騎士にして、ミケラの刃。
「…君は、ミケラ様と、黄金樹に導かれている。優しい世界を、作る者として」
「…レダさん」
「だからこそ、君は来る。信じていたよ。ミケラ様が、黄金樹が望んでいる。優しき世界の為に、雌雄を決することを」
…リッカは何も口にしない。語るべき事は、言葉ではない。
リッカの刀が、レダの針が、語らう為の言葉を紡ぐ。
「この先に、ミケラ様の元に向かうというのなら。君は示さなくてはならない。──神に挑む勇気を」
「…うん、解ってる。解ってるよ、レダさん」
「……待っているぞ」
短いやりとりの後、気配は消える。そしてそこには、レダ達の領域に向かうための朱きサイン。これを使い、リッカらはレダのいる世界にて雌雄を決する。
「いよいよ、ですな。リッカ殿。そして皆様」
アンスバッハが、静かに自らの得物たる鎌を構える。
「モーグウィン王朝のため、モーグ様のため、何よりリッカ殿と世界の為…。このアンスバッハ、全霊にて鎌を振るいましょう」
アンスバッハは、最後までリッカ達の味方である。
「皆様に勝利を。今こそ、血に狂わん」
老練さと、滾るような血の熱狂を孕ませた声音にて、アンスバッハは意志を示す。
そして味方は、彼だけではない。
「……私も、共に戦わせてください」
背後より響く、静かながら確かなる決意の声。その声に、リッカは覚えがあった。
「ティエリエさん!!」
歓喜と共に、リッカは駆け寄る。トリーナの信徒、ティエリエ。彼はなんと、レダたちより離反したのだ。
「…ミケラ様のルーンの力が残っていて、私もトリーナ様の声が聞けました。…あなたは、正しかった」
「トリーナ様…」
「疑ってしまい、すみませんでした。…刃で斬れず、鎧で防げぬティエリエの毒…ただ、トリーナ様の願いの為に。そして、同じ想いの皆様の為に」
アンスバッハが、ティエリエの肩を叩く。仲間が、更に加わる。
「私だけではありません。彼も、ここに」
緑青の鎧の、大盾を構えし巨漢。ゆっくりと、リッカ達の前に現れる。
「自分も、一緒に戦う」
「ムーアさん…!!」
「悲しみが終わる未来を、作るために」
周りには、彼の仲間たる拾い虫が回復役や料理を作り同伴している。戦いが嫌いな彼らもまた、決意を固めたのだ。
「一緒に行こう、ムーアさん!ティエリエさん!ミケラを止める為に!」
アンスバッハ、ムーア、ティエリエ。彼等はミケラの魅了を受け集まった者たちだ。
だが、愛するを強いるだけの魅了では決して譲れぬ誓いと信念は、神の力すら覆した。忠義、決意、信仰。それらは、揺らがぬ魂から生み出されるが故に。
「この血の貴族、ナタンも忘れてもらっては困りますよ?」
「ナタンさん!!」
「血の君主の知られざる愛、ナタン。助太刀致しましょう。血の舞を魅せますか…」
誰もが知る血の貴族ナタンも加わり、盤石を見せるリッカ陣営。着々と、決戦の時は迫る。
【あ、あの……皆さん】
その時、黒き刃達がおずおずとリッカらに声をかけた。伝えたいことを、言葉にする為に。
【あたし、ラトリアって言います。名前は、ラトリアです!】
【私はグィネヴィア。グィネヴィアと申します】
【我が名はシフ。黒き刃の暫定リーダーたる者です】
選抜されし三人の黒き刃。退路の確保に回った仲間達より選ばれた三人が、自らの名前をリッカらに名乗ったのだ。
【我々はあの忌々しい角人を討ちます。しかし、そんなものは前座でしかありません。ミケラに…神にも、皆様と共に挑みます】
【あたし達、そんなに真正面からは強くないからさ。もしかしたらも…あるかもしれないからね】
(弱いかなぁ)
(ルゥ、しーっ)
【もしかしたら、此処が私達の死に場所かもしれません。だからせめて…】
【あたし達が、ちゃんとまた生きていたってこと…皆に覚えていてほしいなって…!】
【我等は最後の最期まで、皆様と共に戦い抜きます。命が尽きる、その時まで】
それは覚悟と、決意の表明。彼女達は、それほどの覚悟だった。
【あたし達を壺から救い出してくれて、本当にありがとう…!】
【その慈悲と優しさこそが、世界を救うべき資格と信じています】
【我等の忠義、死の刃。皆様の懐刀としての使命を全うする事を誓います!】
その決意を聞いた皆は頷く。
『それでは不足だ。お前たち』
その時、ラニが三人の決意に物申す。
『死ぬ為に戦うな。残された者の心に傷を残す』
【【【!】】】
『生き抜け。生きる事こそ長き旅。迷いと恐れを抱きながら歩む生こそ、全うするべき戦いだ』
ラニはかつて、彼女らの力を借りた立場。その存在には、思うところがあるのだろう。
「それに君達は、年端もいかない女の子たちじゃないか。死ぬなんて有り得ないを通り越して、許されないよ!」
ラスティも、力強くラニに同意する。
「この世界にはねぇ。素敵なこと、楽しい事がいっぱいあるんだよ。それを楽しみ抜くまで…皆には死んで欲しくないなぁ」
ルゥが三人の頭…はそのままでは撫でられないので三人に屈んでもらい頭を撫でる。
「新しい世界で、皆が出来ることは必ずあるよ。だからそれを見つけるまで、死んじゃだめ」
【ルゥ殿…】【ルゥちゃん…】【ルゥ様…】
「私が全力でサポートするよ。だから…健やかな心と体で、未来に行こうよ」
【【【……はっ!】】】
シフ、ラトリア、グィネヴィアが涙を隠し頷く。その言葉は、身体に似合わぬ慈愛に満ちていたからだ。
【うむ、昂ってきた!さて、誰が誰を殴る?私はフレイヤを担当したい!】
「リッカ、君が決めるんだ。誰が誰と戦うのかを。この旅路の主役は、君だからね」
ラスティに促され、息を吐いた後にリッカは思案し告げる。
「…相手はレダ、フレイヤ、ダンさん、角人の四人。対してこっちは数で勝ってる。だから、可能な限り利を活かすよ」
【【【………】】】
「まず、角人はシフ達黒き刃に任せるね。ダンさんはヘラクレス、マシュ。フレイヤはアンスバッハさん、ナタンさん、ティエリエさん、ムーア、マレニアと、ラダーン。そして……」
「レダは、君かな?」
「…うん。そしてルゥちゃん様はアイテムで全体のサポート。ラニ様、レン、ラスティは魔術と祈祷のバッファーで回復と援護を」
「任せて。後衛職の面目躍如だよ」
『私の王に、母の弟子。そして私…ある意味、最強だな』
「体力や傷は気にしないでくれ。徹底的にフォローしてみせるさ!」
配置分担は決まり、後は決意を固め、レダ達に見えるのみ。
「私達の旅路はここで終わりじゃない。ミケラを止めた後、エルデンリングを直してマリカに会わなくちゃいけない」
「「「「「「「………………」」」」」」」
「そんな生易しい相手じゃない事は解ってる。でも私は、傲慢な指示を皆に送るよ」
リッカは深く深呼吸し、拳を掲げる。
「皆、絶対に死なないで!この旅路は…皆で笑顔で終わらせよう!!」
剣を持つ戦士はその剣に誓い、
杖を持つものはその杖に誓い、
信を置くものはその信に誓う。
「いくよ皆!ミケラを止めるために……神に勝つために、戦おう!」
「「「「「「おーっ!!」」」」」」
高く、鬨の声が上がる。
黄金樹勢力と、ミケラの信徒たる者達。
優しき世界に至るための戦いが…
今、始まろうとしていた。
レダ「……………」
リッカ「……………」
レダ「……ミケラ様の下には、行かせない」
リッカ「ここで、私達の旅路は終わらせない」
レダ「──我が剣の神髄を、君に」
リッカ「雷位、開帳」
レダ「針は、君を死に繋ぎ止める」
リッカ「全てを、過たず乗り越える!」
「「────いざ!」」
白き清めの間が…
今、血に染まらんとしていた。