人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ラニ『あぁ。この死の氾濫、覚えがある』
レン「確か、ゴッドウィンという最初のデミゴッドが最初の死者になったんだっけ」
ルゥ『神の力は確かに感じるね。それと同じくらい、こわーい死の力が…』
ラスティ「おそらく猶予はそれほどない。各々集まり、最後の地へ向かおう!」
ラニ『兄上、リッカは無事に保護したのだろうな』
リッカラダーン【えっほ、えっほ】
ラニ『…問題は無さそうだな』
「そうか。角人殿は…逝ったか」
各自決着を付け、清めの間を抜け、リフトに乗る一行。そこからの階段を上がりきり、門に至れば其処は神の間であり、ミケラが向かった終着点へと至る事となる。
レダ、フレイヤ、ダンは生き残り、角人は息絶えた。すんでの所で死体を穢される事無く、数人の簡素な弔いにより角人は死んだと、レダは訃報を受け止めた。
『私の王から盗み出すとは、剛毅な者らだ。気に入った。低体温で勘弁してやろう』
【さむーい!!】
【お、温情、感謝の至り…】
【寒いのに温情とはこれ如何に…】
黒き刃達も、恨みを抱えはせずにレダ達を受け入れた。リッカの代わりにラダーンが、肉体の主導権を握る形となっている。
【どこまでも無茶をする娘だ。手は掛からぬが目が離せぬな!】
「人を助ける。その事に一家言あるのが我が弟子だからな」
【その心や如何に?】
「人を助けるとご飯が美味しい!だそうです!」
【わっはっは!それならば命を懸けても惜しくはない!まこと天晴!!】
『制さぬか、兄上は』
【ぐわぁあぁすまん!でも赤獅子的に誉れ高いんだもん!】
リラックスは忘れず、待ち受ける者への想いを馳せ最後の情報交換を果たす。
「我等ミケラ様の戦力は、リッカらを始めとした貴殿らに従いミケラ様を止める。…いや、先の状態と言い、救うと言った方が正しいかも知れん」
「最初の死者ゴッドウィン。その肉体を、依代にミケラは利用したんだね?」
ラスティの言葉に、レダは静かに頷いた。
ゴッドウィン。デミゴッド最初の死者。ゴッドフレイとマリカの間に生まれた最初の子であり、黄金樹の時代において、『黄金』の異名を有する程の傑物。
黄金の豊かな長髪をなびかせ、槌や斧を持ち、黄金の雷を駆使するその姿は貴公子の異名を欲しいままとし、その近衛兵は至高の騎士団として称えられるほど。
かつて王都ローデイルの防衛戦においては、攻め込んできた古竜の中でも最強たる『フォルサクス』と戦いの後に友となり、王都に黄金樹以外の信仰、『王都古竜信仰』を発足させるなど、心技体において完全にして完璧なる、まさに『神』に相応しい存在であった者。
しかし彼は、ラニやマリカが黄金律の時代の完遂を阻むために目論んだ【陰謀の夜】において黒き刃達の手にかかり、その魂を殺される事となった。
その肉体は黄金樹の根元に埋葬される事になるが、魂と違い肉体は生きていた(正確には二本指の傀儡から抜け出すために肉体を殺す刃はラニが自身に使用した)事により、黄金樹はゴッドウィンの肉体を介して【死】が狭間の地に飛散する事となった。
黄金樹に還り、また生まれるというサイクルから外れし、アンデッドやゾンビといった【死に生きる者】という理のバグを生み出す根源と成り果ててしまったゴッドウィン。
【死王子】と呼ばれ、穢れきり汚れきった変わり果てた肉体は、今も黄金樹の根元にあった…筈だった。
「ラダーン殿がリッカと迎合し、血の君主の肉体も手にできなかったミケラ様は、最後の手段として死王子たるゴッドウィンの肉体を依代として求めた。いや、正確にはそちらが狙いであった…というのが正しい」
「始めはゴッドウィン殿の肉体を、ラダーンの魂の器とするつもりだった。しかし、死王子になったゴッドウィンでは無理だと判断した…」
『あれは成長できん餓鬼だ。計画が破綻するくらいなら、とゴッドウィンの肉体を持ち出したのだろう。穢れきった死王子であろうとも、器には代わりあるまい』
レダは頷く。そしてそこには、狙いがあったと。
「死王子の肉体がある限り、死は消え去ることはない。正しい死、或いは取り払う為に、死すらも理に組み込むために必要な事であった」
「死を組み込む…あ、もしかして死を取り除いたから死ななかったの?黄金律」
ルゥは生命と森羅万象の権化。素早く、黄金律の真相を見抜く。
「……生と死あってこそ、生命足りうる。死を乗り越えるでなく、取り除いたからこそ、歪みは生まれた」
「ミケラ様は、死すらも取り込もうとしたのだ。さすれば、死に生きる者すらも理の外の存在ではなくなるからな!」
死に生きる者すらも救う。死ねないゾンビすらも助ける。
その為に、ゴッドウィンそのものを受け入れる決意に至ったのだと、三人は語る。
「だが、死とは戦って倒せるものじゃない」
ラスティが、その危険性を危惧する。
「フォルサクスは、死王子ゴッドウィンの内側で彼を蝕む死と戦い続けた。しかし、その戦いに勝利は出来ず…逆にフォルサクスは侵食を受ける事となった。死竜、フォルサクスとして」
【つまり兄上ゴッドウィンの死の力に、逆にミケラが押し負けており、このままでは死が影の地、ひいては狭間の地をも包む羽目になるということか】
ラダーンの問いに、沈黙という肯定が返る。
「ならば、討つしか無い。ゴッドウィン兄さまを」
マレニアが、最終目標を示す。
「ミケラ兄様も、死に取り込んでしまうほどに成り果ててしまったのなら、今も生きている肉体に、トドメを刺すほか無いはずだ」
死に生きる故に、死王子。意思と魂ない肉塊は、成長と死を撒き散らすだけの腐乱死体に過ぎない。
「あぁ。ミケラが神となるには、魂が足りない筈だ。その依代未満のゴッドウィンを討てば、ミケラの計画は完全に破綻する」
ラスティはかつて、ミケラとその約束の王とすら戦い勝利を収めた。
そこには、モーグの肉体を依代としたラダーン…そこに神となったミケラを相手取る壮絶極まりない戦いがあったが、それでもラスティは勝利した。
「アンスバッハさん、ティエリエ。それにムーアにダン、フレイヤにレダもいる。そしてカルデアの精鋭達も、もいる。ゴッドウィンが相手でも、不足は決して無いはずだ」
…アンスバッハとティエリエのみを仲間とした戦いにおいて、二人を喪うという死闘を越えた死闘の果てにミケラとその王、神と王をラスティは討ち果たした。
その時とはあまりにも違う。最強のデミゴッド二人に、伴侶もおり、至高の仲間達も存在する。ラスティは、確信していた。
「死王子を討ち、ミケラを救う。修復ルーンを掲げ、エルデンリングを直し、マリカを救い偽神の潜む場所を知る。……王を目指す旅は、終点を目の前としているね」
一同は頷く。…懸念は、未だ眠っているリッカであるが、それでも、彼女は必ず目覚めるはずだ。
「偽神の潜む宇宙。割り当てねば勝負すら挑めん」
「全ての世界と宇宙の為の戦い、グランドバトルを始めましょう!」
マシュとヘラクレスの気炎に、仲間も続く。
「無論、このアンスバッハも共に参ります。モーグ様の王朝、血の盟約の為に」
「ミケラ様が死ぬということは、トリーナ様も枯れ落ちてしまう。……せめて、その死は安らぎを以て」
「神に挑むなんて、怖い。でも…ずっと悲しいままは、もっと怖いから」
「敗残の将は勝者に従う!ゴッドウィン殿と戦えるなら異論はない!」
「………我等が、ミケラ様の救いになる」
「リッカに、我が友に救い出してもらったこの生命。必ずや無駄にはしない。……全てを捨てしミケラ様の、最後の希望とならねばならないからな」
【兄ゴッドウィンとは戦った事は無かったな…。あれほどの傑物が生き恥を晒すは忍びない。弔いの戦祭りと行こう!】
「兄様が求めた世界は、死の国ではない筈だ。…止めてみせる」
「うぅ……死が相手だなんて怖いよ〜…」
「生きている私達が、手を取り合って戦おうね」
【ファイトだよルゥちゃん!】
【レン様も、お気をつけて】
【一度仲間が殺した相手。臆することはありません】
「うん。三人も気を付けてね」
「や、やるぞ〜!人気投票15位、最上位グループドラゴンの力を見せてやる〜!」
「……リッカ、今は休んでくれ。君が立つべき舞台は、私が整えよう」
レダの言葉を締めに、一同は辿り着く。
無数の角人達の、石像化した生贄で構成された巨大な門とその広場。
───神を招く、その門。
マリカが神となった地へ、辿り着いたのだ。
?【──────来たか。待っていたぞ】
ラスティ「!!」
門の前に、立つものがある。
?【我が母マリカを救わんとする者達よ。ならば、乗り越えるべき試練がある】
【黒き竜の鎧】に身を包み、麗しき黄金の長髪をたなびかせし…
【それは、死。この地を蝕む死病の宿痾】
それは、友たるフォルサクスが、自らの肉体と魂を依代として新生させた【死の王】。
【我が身は既に死の化身。討ち果たさねば未来はない】
マレニア「……!」
ラダーン【!!】
圧倒的な覇気。今まで戦ってきた狭間の全てが、児戯に感じられる程の。
【故に討ち果たせ。【死の王】。それに成り果てた無様なるこの身を。黄金樹に…母の望んだ世界に不要なものを】
ゆっくりと、両手に黄金の……否。黒く蝕まれし槌を握る。
死の王、ゴッドウィン【我が名はゴッドウィン。お前達黄金の戦士達の未来を信じ……討てぬ死を身に留める者である】
ラニ『ゴッドウィン……』
ゴッドウィン【ラニよ。その伴侶と共にやり残しを清算しろ。……今一度、この肉体を滅ぼすのだ】
死、そのもの…否。死を【打倒できる現象】に引きずり降ろしたゴッドウィンが…
一同の前に、立ち塞がった。