人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
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【………!】
死の王、ゴッドウィンは、神の門の空を見上げる。そこには黄金の雲が広がるばかりの光景であった…が、変化が確かに其処に生じていた。
【月……暗月か】
青く、暗い冷たい月が、空に浮かんでいる。満月のように美しくありながら、冷気を浴びる暗い月。それは、レナラの血を受け継ぐ神人を司る者の象徴。
『兄、ゴッドウィン。思えば、この旅路に私が付いてきたのはこの為なのやもしれぬな』
ラニが、その身に宿せし力を振るったのだ。暗月、即ち自らの夜の律を解放したのだ。
ラニは神人を経て、既にエルデンリングを得て神となった夜の律の体現者である。ミケラの目指した境地を、体現を、既にラスティと成し遂げているのだ。
それは即ち、王を有した神たるもの。それ故に、彼女はゴッドウィンのもたらす【死の理】を、上から書き換える事が叶う。それは『神座』を巡る異世界の神々のルールにも近しい道理。
「皆、大丈夫?しっかり〜!」
月の律に合わせ、ルゥが素早くレダ達に救出の脚を向かわせる。それは、レダ達への文字通りの起死回生の一手。
「くっ、うぅ…っ」
「ぶはあっ!流石に今のは死んだと思ったぞ!」
レダ、フレイヤらミケラの戦士たち。それらが続々と、息を吹き返す。ルゥの赤雷により、棘を祓われたのだ。
「ルゥ様、限りない感謝を。ラスティ様の伴侶、ラニ様にも助けられましたな」
ラニの月、ルゥの生命力。それにより、彼等の死の運命と棘は祓われたのだ。神たる力というならば、決してこちらも劣ってはいない。
「ごくり……」
無論それは、ルゥがゴッドウィンの前に立つことを意味する。それは死の王に肉薄し、一戦を交える事を意味するかと思われたが…
【夜の律、星の世紀…そして、生命の世紀。神たる理をも、お前達は有するのだな】
ゴッドウィンは、ルゥやラニらの行動を阻まなかった。それは死の亡者には決してできぬ、王者の風格たる所作。
【それでいい。助け合い、支え合い、励まし合う。それこそが、世界には必要なるもの】
「そ、そうなの?じゃ、じゃあとりあえず…!」
ルゥは速やかにレダ達を救い、レンとラスティが敷く魔法陣の中に確保する。その間、ゴッドウィンはそれらを決して妨害することはなく、泰然と構えている。
【これはどういう事か!兄ゴッドウィン!ゴッドフレイの血を引く、最初の子よ!】
その不可解とも言える行為を、ラダーンは問い質す。死の王足りながら、理性そのものたるその行い。それは、父ゴッドフレイの掲げた理念とは異なるものであったからだ。
【力こそ王の故!ならば、敗者や弱者たるものへの慈悲は不要!ゴッドフレイが敷いた理はそうであったはず!でありながら、貴方は敗者への慈悲を看過した!】
【ラダーン。父祖を見上げしあの者が、何やら変わった姿に…いや、互い様か】
【力こそ王の故…その理念を、貴方は同じくしていないというのか!?】
ラダーンの問いと、リッカの姿に重ならぬ面影に僅かに笑みを零しながら、ゴッドウィンは問う。
【力こそ王の故。確かにそれは、混沌の時代に、黄金の黎明を齎すに相応しい理であったろう。強く人を、民草を惹きつけただろう。我が父は、それの体現者であったからな】
ゴッドウィンが語るは、最初の王ゴッドフレイ。マリカの夫であり、初代エルデの王。自らの父。
【だが、力を故とした王の末路は、それを理とした母の末路はどうであったか。好敵手を失いし王の瞳は色褪せ、母マリカは力で他を統べた報いを、我が兄弟に払わせた】
「モーゴットに、モーグ…」
【やがてラダゴンなる人格を植え付けられ、母は狂い、エルデンリングを破壊した。黄金は砕け、世界は壊れた。……息子として、宣言しよう】
それは、死の王であるからか。黄金への叛逆とすら言えるそれを告げる。
【母は、神は誤っていた。力を、憎しみを、恨みを、哀しみを抱き王となった。父は母の力とはなれど、救いにはなれなかった】
「…ゴッドウィン、兄様…」
【力で敷く黄金は誤りだ。だが俺は、その黄金を盤石にする為に産み落とされた子であった。力の支配では、統制は生まれど自由と博愛は生まれぬ】
ゴッドウィンは気付いていたのだ。とうに壊れていた世界の事を。とうに歪んでいたマリカの事を慮った。
【故に、俺は死んだ。黒き刃の手に掛かり、魂を殺した。黄金律という、選ばれし者のみが黄金樹の祝福を受け、影を落とす魂達が救われぬ世界もろとも…破壊するために】
「やっぱり、わざとだったんだ」
【負け惜しみの様に聞こえたならそれは間違いだ。母の同胞たち、その恐るべき刃…。逃れるすべはない。ただ、覚悟を決めたというだけで、逃れられたという意味ではない】
故に、そう睨むなと。シフ達をゴッドウィンは讃える。彼女らの刃は、素晴らしい陰謀の刃であったと。
「それなら、ゴッドウィン。あなたはどのような世界を望むのです。死王子だったあなたとは、かつて話すら出来なかった」
ラスティの言葉に、ゴッドウィンは静かに頷く。
【ラニの伴侶たる王。貴方ならば理解できる筈だ。優しき月の光の様に、ラニを愛する貴方には】
「!」
【俺が望む世界の故。それは愛と優しさ、絆たる故だ。人も、神も、そうでないものも。全てが認め合い、世界を織り成していく。その様な在り方、その様な世界をこそ…私は望む】
ゴッドウィンは空を見上げる。
【我が友、フォルサクスと語り合ったものだ。人も竜も、神もまた同じ生命。一つの解でなく、多くの是を由とする世界があれば良い。また、それを望めたならと】
かつてフォルサクスと戦ったゴッドウィン。
その触れ合い、その絆の中で、ゴッドウィンの目指すべき世界は輪郭を捉えていた。
【強さのみの世界では序列を生み、学のみの世界では差別を生む。そうでない世界を、俺は望む】
「その世界とは、つまり…!」
【そうだ。『尊重』の世紀だ。忌むものを生まず、強弱を強弱のまま受け入れ。自らと同じ様に他者を愛する。その様な世界こそ、俺が望むべきもの】
彼は既に、自らの世界を見ていた。それは強さと優しさが、互いと互いに尊重を生む世界。
強いものが弱きを労り、弱きものが強きものに産めぬ何かを作る。そういった、愛や絆をもたらす世界。
しかし、それはゴッドフレイ、ラダゴン、マリカには生み出せぬものであり、同時にその王政は神と共に盤石であり過ぎた。
ゴッドフレイとラダゴンがいる限り、万に一つも王政転覆は無い。大古竜グランサクスや、フォルサクスすらもその牙城を崩せなかった。
そのまま王座を継げば、齎されるは傀儡たる神のマリカの祝福されし王政。力と、歪んだ完全。
そうでない世界を作ることは出来ない。『黄金』を冠するものが、優しく柔らかな『白金』を作ることは出来ないのだ。
虹がかかる白金の世界を夢見ながら、齎す世界はまばゆい黄金。
黄金のゴッドウィン。それはマリカと同じく…何処までも運命を縛られし神たる者の名であった。
【故に、お前達に立ちはだかるは俺の願い】
ゴッドウィンが槌を構える。
【お前たちは、果たして黄金の先を目指す者らか?我等が皆、果たせなかった真なる黄金を識る者らか?】
故に、厳かに語る。
【そうであるならば、俺を越えろ。俺の夢見た、フォルサクスの夢見た、互いを認め合う世界を見せてくれ】
それは、死の王になった彼には叶わぬ願い。
【輝ける、黎明の時代を。……然し。お前たちが、新たなる時代でなく、再来せし壊れかけの時代を望むのであるならば】
ゴッドウィンに、黒き雷が迸る。
【此処で、屍となりて果てろ。誰もが苦しみ嘆く世界など、最早何処にも必要はない──】
死の王は、待っているのだ。
黄金を越えた、輝ける時代を。
リッカ『───はっ!』
ラダーン【おぉ、起きたか!だが…】
ヘラクレス「ただ戦うという相手でもない。お前の判断を仰ごう」
マシュ「こちら会話記録です、先輩!」
リッカ「!……ゴッドウィン様…」
ラスティ「傑物だ。マリカやラニが殺めるしかなかったのも頷ける」
ラニ『マリカも苦渋を極めた判断だったとは言っておこう。黄金律を完成させてはならないと、合意の暗殺であったそうだからな』
レン「リッカ、君はどうしたい?ゴッドウィンを…あの死の王を、どうするべきだと思う?」
この場にいないギルガメッシュも、エアも、リッカのサーヴァント。
決断するのは、リッカである。
ルゥ(テガソード、上手くやってくれたんだ)
リッカ「──ゴッドウィンさん!」
ゴッドウィン【うむ】
リッカ「黄金律は、死を取り除いて始まったんだよね!」
ゴッドウィン【然り。死のルーンが取り除かれ、死はなくなったのだ】
リッカ「なら、『私達のルーンに死を戻す』!」
ラスティ「!」
リッカ「あなたの中の死を全部、【死の王の大ルーン】として私達の修復ルーンに組み込むよ!死だって受け入れて、世界の理にする!」
ラニ『フッ。そう来たか』
リッカ「全てを受け入れるなら、死の王だって!でしょ!ゴッドウィン様!」
ゴッドウィン【…………フフ、成る程。我が母は…】
最後の最期に、正しき者に祝福をもたらしたのだと。
ゴッドウィンは、万感の思いで笑みを浮かべた。