人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
(気負いから解放されたからかもしれません。ですので執筆したての最新話をどうぞ!)
ゴッドウィン【そして、お前達は識らねばならない】
ラニ『!』
ゴッドウィン【力を理をするのは否であるが、理を庇護するには力を要とするは道理である】
レン「何をする気かな…」
ゴッドウィン【そして、【理】において──】
瞬間、無数に湧き上がる死に触れし者達。
ゴッドウィンの近衛兵がいた。骸になりし竜たちがいた。
死して、尚も救われぬ者達が。死の王に戦の愉悦を叩き込まれ、蘇った。
【死は、絶対である事を】
即ちそれは、何れ程の武勇も覆せぬ死の河。
ゴッドウィンの内の死は、彼の遺志に関わりなく無限に死を広げる。
リッカ「!ギル!聞こえてるよね!」
ギル(声高に叫ぶな。充分に聞こえている)
リッカは、決断した。
(エア姫様にお願いして、『修復ルーン』を作って!死を組み込めば完成するくらいまでのを!)
ギル(ほう。勝敗ではなく許容を是とするのだな。だがいくらお前達であれど、死の大波濤を覆せるかどうか…)
リッカ(大丈夫だよ!ゴッドウィン様が教えてくれた!)
ギル(うん?)
リッカ(絆こそ、世界の故!私達皆で時間を稼ぐ!修復ルーンを、お願いね!)
ギル《──だ、そうだぞ。大任を得たな?》
──はい!行こう、フォウ!
フォウ(よーし、出番だね!)
【死は最早、黄金樹の根を伝い狭間に散った。猶予はない。急げ、お前達】
死の王の影から、吐息から、所作から、死が溢れ出る。ゴッドウィンは本来、魂は死に肉体は穢れきった膿である。本来ならば、話すことすら出来ぬ傀儡である。
それを、彼自身の力と友フォルサクスの献身により、魂と精神を取り戻した。力は全盛期に遠く及ばぬが、対話と自制の為に力を捨てて死の王を選んだ。
だが、死は止められない。神の門を満たし、やがて影、そして狭間を覆い尽くす。彼の意思とは、関わりなく。
【示せ。答えを。死を組み込むルーンを──此処に】
黄金の貴公子が、腐臭と穢れた死に塗れる尊厳の凌辱。それでも、ゴッドウィンは死を留める。
此処しかない。死を、広がり続ける死を世界から取り除くには、
「皆!円陣を組んで!ラニ様とルゥちゃん様、レンを守る形で!」
迫りくる死。生命の根元的恐怖に、リッカは勇気を以て声を上げる。
「修復ルーンを作り上げるまで時間を稼ぐ!死の軍団を乗り越えて!力を合わせながら!」
一同はリッカの指示に従い、四方八方から迫りくる死の軍団を留める壁となる。
【マレニア!負けられぬぞ、ミケラと兄を救うため!】
「それだけではない。生命を護るために」
「防衛戦か。丁度いい。戦は劣勢程度が燃えるのだ…!」
「ラニ様達には近づけさせません!ね、ラスティ様!」
「ありがとう、マシュ!信じよう、君達のマスター、そして王を!」
「阻めーーーーーっ!!」
迫りくる死。逃れ得ぬ蝕みを跳ね除ける、絶望の防衛戦が幕を開ける!
〜
場を変えて、巫子の村。黄金に包まれし、誰も住むものなきマリカの故郷。
花畑と、中央には小さな黄金樹。優しいだけの、律なき黄金。
「祝福もなき、ただ故郷への郷愁…。この美しさ、うら寂れた村には皮肉なものよ」
ギルガメッシュが、ヴィマーナより降り立つ。そこには、マリカが残した最後の神の力たる黄金樹。その小さな有り様。
「……これは、マリカが神となるため置いていった、人としての心や願い。少女の綺麗事、空虚な理想」
メリナが、黄金樹へと触れながら語る。
「けれど、理想に力が籠もったならば。マリカの稚拙な願いをも組み込んで、修復ルーンに変えれたならば」
それは、火の幻視による破滅でなく、黄金の律でもない。
当たり前の幸せの中で生きた少女が、無邪気に願う夢。
誰もが幸せでありますように。
世界が平和でありますように。
今日も明日も、幸せでありますように。
大人になるに連れ、消えていく。或いは、捨てていくもの。
だが、それを形に出来る手段は最早幻想に非ず。
「さぁ、この黄金樹の周囲に大ルーンを。そして、マリカに託された淡き白金のルーンを」
ギルガメッシュが手を掲げると、現れる大ルーン達。
ゴドリック、レナラの産まれぬ子。モーゴット、モーグ。ラダーン、ライカード、ミケラ、マレニア。全てのデミゴッド達の大ルーン…エルデンリングの欠片達。
──マリカ様。あなたが故郷に置いていくしか出来なかった思いを今、形にさせていただきます。
エアが、大切に預かっていたマリカより託されし至尊の修復ルーンを中央へと捧げる。
「エルデンリングの欠片は全て揃い、マリカの願いと、神の力もまた此処に。これならば叶う。これならば実現できる。黄金樹の黎明、真に豊穣が無限であった世界、その世紀を招く修復ルーンが」
(コーティングはボクに任せておいてよ!この為のボクさ!)
フォウがプレシャスパワーを解放し、全ての大ルーンと修復ルーンを包んでいく。それは、エルデンリングを修復するための最大の養素を鋳造しているのだ。
「誰もが奪い合わず、誰もが分かち合い、助け合う。少女の見た夢でしかないその願いは、今やエルデンリングを、世界を修復せしルーンへと」
フォウの回転は勢いを増し、大ルーンたちが激しく回転する。それらは激しくなり、やがてマリカの修復ルーンと重なり合い、
そして───。それは、神々の力たる大ルーンの全てを以て、神秘と幻想のままに誕生する。
───これが、エルデンリングの修復ルーン……
中心に白金の真球。周囲を黄金の揺らぎなき円環が形を成し、虹の輝ける竜たる翼が形を成している。エルデンリングと合わせて、完全なる調和の様相を示すルーン。
「誰かを思いやり、尊ぶ至尊の律を中核に…全ての世界に幸福を齎す神の願いを遍く齎す修復ルーン。エルデの王が、壊れたエルデンリングを掲げる時にしそれを直すもの。遂に出来上がった」
(これが……)
「『万象律の修復ルーン』……。かつて僅かながらも、確かに存在した黄金樹の尽きぬ永遠の恵み。マリカが望んだ本当の律を、世界に齎せる窮極の修復ルーンよ」
メリナの説明と共に、ギルガメッシュらはそれを手に取る。
〜
万象律の修復ルーン
全ての神々の願いを受け、王と姫、獣が見出したルーン
エルデの王が、壊れかけのエルデンリングを掲げる時
その修復に使用できる
それは、かつてほんの僅かに存在した、黄金樹の永劫の恵み
窮極にして完全なる繁栄と豊穣を世界すべてにもたらす
かつてのマリカの願いを形にしたルーンである
誰もが争わず、分け隔てなく平和でありますように
尽きぬ恵みを、笑顔と共に分かち合えますように
神が懐いた優しいだけの無垢なる願いは
旅路の果てに黎明となり
世界を照らす開闢の星と成った
〜
「──あとは、此処に死を組み込めば完成する」
メリナが、封じられし宵闇の女王からの眼を拓く。
「ゴッドウィン兄様の肉体に、今、運命の死が封じ込められている。それこそは、ラダゴン、ゴッドフレイが取り除いていた死を、回帰させる」
(回帰かぁ。ティアマトが喜びそうだね。まぁあくまで胸に飛び込んできて!みたいなニュアンスだけどさ)
輝けるルーンを、ギルガメッシュとエアは静かに受け取る。
「これは、マリカが望んだ世界の形。王の妻として、願いを叶える器でしか無い神たるマリカの望んだ世界。…王の望む世界の前に、消されてしまうだけのもの」
「……………」
「でも、あなたたちなら。自らでなく、世界の為に王座を目指し、けして座を手にしようとしないあなたたちなら、きっと、叶う」
メリナは、静かに跪いた。
「マリカの、願いと想いを。どうか、そのルーンで世界に満たして。…母が現実に屈し、神になるために捨てるしか無かった本当の想いを」
「…それは、種火の少女としての使命から来る嘆願か?」
ギルガメッシュの言葉に、メリナは顔を上げた。
「娘としての、願いです。血は繋がらず、殺すべきであった私達すら子と呼んだマリカの、娘として」
(メリナ…)
「…生まれ、育ち、産み、育み、そして死ぬ。この壊れてしまった世界を、マリカの真なる願いにて救ってほしい」
それは、一人の娘である願い。
種火が最早不要になろうとも。
自らが、望まれぬ大罪の使命を有し。世界に存在を赦されずとも。
「私のお母さんを…よろしく、お願いします」
そこには一人の娘があった。
そこには、『生きなさい』と抱き上げられた子があった。
神として狂い、罪を犯し、
しかし人として愛し、夢を見た一人の女。
その願いの、本当の想いの成就を切に願う……
マリカの、心の繋がった子が在ったのだ。
「母を頼む、か。それを口に出されてはこのゴージャスは腰を上げねばならん」
ギルガメッシュは笑った。酷薄さもなく、下卑たものもない。突き抜ける青空が如き、獰猛な笑み。
──はい。全ての切なる願いを、皆の手で叶えましょう!
エアは微笑んだ。柔和でありながら、無責任な扇動の意を一切持たぬ…
慈愛と決意の笑みを以て、メリナの願いに応えたのだ。
マシュ「第44波、来ます!!」
ヘラクレス「スパルタ人って凄い。改めてそう思った」
アンスバッハ「これは中々に凄絶です。喪失感と高揚感を味わいながら、戦い続ける」
レダ「並では狂死は免れまい。…死の王、ゴッドウィン。運命の死を有す王が、これほどとは…!」
ゴッドウィン【死を、武では凌駕出来ぬ】
レン「キツイ、のに不思議だね。まだまだやってやるって気になるよ。これは、おかしくなったのかな」
ラスティ「それは立派な人間の力だよ。『ド根性』ってやつさ!」
レン「ド根性。ありがとう。また一つ、人間を知れた…!」
ムーア「限界が、近い、かも」
ティエリエ「死にながら戦う……このままでは…!」
ラダーン【諦めるな!!】
マレニア「勝機は必ず──!」
───リッカちゃん!!
リッカ「!!」
──これを!フォウ、お願い───!
フォウ「フォーーーーーウ!(リッカー!世界を変えるルーンよー!!)」
ゴッドウィン【!】
リッカ「あ…!」
リッカの手に、それが手にした時。全ての死者が、光に昇華される。
ゴッドウィン【───良くぞ、やった】
その手には──
万象律の修復ルーンが、握られていた。