人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
遂に顕現せし『万象律の修復ルーン』…
マリカの力とエアの持つ至尊律を中核とし、新たなる修復ルーンとして生まれ変わりしそれは遂に一同に託され、そして新たなる世界の到来の形たる力を此処にもたらす。
【見て!死に生きる者達が!】
【消えて…いや、ルーンに還っていく…】
黄金律にて許容されないアンデッド、死に生きる者達。それらすらも、修復ルーンの輝きに包まれ、静かに在るべきところへと齎されていく。
「死は、遠ざけるものじゃない。近くに有りて想うものだよ」
リッカの答えを後押しするかのように、輝きはゴッドウィンすらも、死の王すらも包み込んでいく。
【死に生きる理…それが遂に、回帰する時が来たか】
ゴッドウィンを蝕んでいた死…それらもまた、正しい律の在り方として許容される。
そして同時に、ゴッドウィンの傍らに黒き巨大な竜の形が顯れる。
「あれは…」
【フォルサクス。ゴッドウィンと戦い、友となった竜だ】
ラダーンの言葉通り、無数の死の棘に貫かれし黒き竜の姿。フォルサクスもまた、死の理と共に律へと組み込まれる。
【お前が捧げた魂は、お前へと返す。…さらばだ、フォルサクス。我が永遠の友よ…】
ゴッドウィンを死の王としたフォルサクスは、静かに消え去り霧散する。友ゴッドウィンの目論見を、果たしたが故に。
そしてゴッドウィンもまた、黒き鎧から静謐なる白き装いに戻る。死の王は、その民全てが回帰した為無用となったが故だ。
『感謝しよう。母が求めし黄金の戦士達よ』
その振る舞いは変わらず、ただ重圧が消え、人当たりの良い貴公子たる本分が姿を見せた。それは何者にも愛された、黄金のゴッドウィンの本来の姿。
『君達のお陰で、死に生きる者達も蝕まれしフォルサクスも在るべき律に組み込まれた。本当に感謝するよ』
「いえいえ、託された使命を果たしただけですから!」
『ふふ、そうか。母はあまり縁や運命に恵まれぬと考えたが、揺り戻しというものは確かにあるのだな。安心したよ』
ゴッドウィンにもう敵意はない。死は、確かに生命に戻されたのだ。
『これで、その修復ルーンを母マリカとエルデンリングに掲げれば、狭間は真なる時代を迎えるだろう。そして、マリカ自身の口から聞けるはずだ。彼女が触れた神…。君達の不倶戴天の敵の在り方を』
「偽神……。黄金樹の向こうに、マリカはいるんですよね?」
『あぁ。エルデンリングを砕いた罪を問われ、マリカは囚われている。そこに、エルデンリングもまた然り』
「最大の懸念である修復ルーンは復活し、ゴッドウィン殿も取り戻した。漸く、この旅も終わりを迎えそうだね」
レンの言葉に、ゴッドウィンは思慮を見せる。
『ゴールは見えた。しかし君達には、倒さなくてはならない者がいくつか残っている』
「倒さなくてはならないもの…?」
『あぁ。一つは『百智卿、ギデオン=オーフニール』。…彼は円卓のまとめ役だが、今この壊れた世界を識ることに奔走している。そんな彼は、自らの探求が無に帰す新世界を許容しないだろう』
退けて、エルデンリングに向かわねばならないとゴッドウィンは告げる。彼は死の王として、世界を把握していた。
「なら、ギデオンは私がなんとかするよ」
そう告げたのは、レン。指巫女の代わりにリッカ達を支えてきた始まりの魔法使い。
「話をして、意見を交わした相手だ。引導は、きっちり渡してあげなきゃ」
『新世界に興味が無いのならば是非もない。老害には消えてもらうが定めだな』
(魔術師ポジションなのに血の気が多いなぁ)
『それでこそだ。……そして最も大きな障害となるのが、『最初の王、ゴッドフレイ』』
【ゴッドフレイだと!?】
ラダーンがリッカの身体にて声を上げる。衝撃で表層に現れてしまったほどの言葉であった。
『あぁ、ラダーン。かつてマリカは祝福を褪せ人やゴッドフレイから奪い、追放した。だがそれは強く、そして確かなる世界を作れる強さを死と戦いの中で身に着けさせるため。……修復ルーンの完成と共に、マリカはゴッドフレイに祝福を返すだろう』
【つまりゴッドフレイもまた、エルデンリングに見える為に帰還するのか…!】
『あぁ。力こそ王の故を体現した王だ。君達も力を、示す必要がある。だが…マリカの真意を識る君達なら、或いは』
ゴッドウィンはそう告げ、更に最後の願いを告げる。
『そして、これはお願いだ。……ミケラを、救ってやってほしい』
「!そうです、ゴッドウィン兄様。ミケラ兄様はどこに…!?」
『神の門。まもなく帰ってくるだろう。…新生した神として。しかしそれは、ミケラを救うチャンスでもある』
ミケラは全てを捨て、神として帰還する。それを、ゴッドウィンは好機だと語る。
『ミケラは神として王が必要だ。そしてその王をラダーン、君にするつもりだった』
【はい。丁重にお断りしましたが!】
『そうだね。そして私が依代に選ばれ、死の王として変化した。死は回帰したが、王たる依代と魂はフォルサクスが身を以て用意してくれた。降臨の、そして『撃破』の条件は揃っている』
『………ゴッドウィン。お前は…』
『そうだ、ラニ。私はミケラの依代、肉体となる。それを討ち果たし、彼を正気に戻せ。そうすればミケラは、私の肉体を真なる身体として宿痾から脱却するだろう』
ゴッドウィンは、それが狙いだった。ミケラに、自身を使った新生を狙い、神の座からの引き戻しを狙っていたのだ。
『あいつは、崇高な願いや想いを何一つ叶えられなかった。成長しない、できないとはそういう事なんだ』
「ゴッドウィン様…」
『だからこそ、せめて神になる事くらいは叶えさせてやりたかった。トリーナには悪いが、ぶん殴って神から引きずり下ろす事で勘弁してくれよ?』
「それじゃあ、ゴッドウィン様はどうなるのでしょうか!?」
ゴッドウィンは笑う。それは、麗しい美丈夫であり気遣いの長けた兄のもの。
『リッカとラダーンのように共存するか、または魅了で消されるか…未知数だが、どちらにせよミケラが主役なのは間違いない。心配するな』
「…ミケラ様のために、これ程の無茶を?」
『何も不思議じゃないだろう。弟の為に兄が身体を張ることは』
彼は元から、王座や神などに興味はなかった。
『…俺の夢は、この世界では難しいものだったようだからな』
ゴッドウィンはただ、家族や仲間達と世界で生きていられる事が望みであった。
ただ、兄として家族を支えることを由とする男であり、それが叶わぬとも理解していた。
ならば、せめて妹や弟の為に身体を張り、命を懸ける。
それが、せめてもの夢の成就だと定めた。
『向こうの世界では、仲良くできたらいいな。私達も』
そう笑うゴッドウィンに……悔いや迷いは、何もなかった。
【無論です!存分に、存分にお手合わせ願いたい!】
「フォルサクスともお話したいねぇ。ドラゴン交流会として」
「ゴッドウィン様。あなたが黄金を冠する意味、理解できました!」
「ありがとうございます、ゴッドウィン兄様。必ずや、兄様を救います…!」
『あぁ、それでいい』
その時、神の門が輝き出す。それは、帰還の光。
『帰ってきたか。……最後に言葉を贈らせてくれ』
光に……魅了の光に包まれるゴッドウィンは、最後に告げる。
『王となれ。神の決意、王の力。そして…人の優しさを身に着けた真なる王に』
「ゴッドウィン!」
『さらばだ。ラニと幸せにな。夜の王ラスティ・エングウィン──』
それを告げ──
ゴッドウィンの肉体は、完全なる光にへと包まれた。
?『我は誓う』
そして響く、神の声。
『すべての生命と、すべての魂に』
光り輝く門から、神が出でる。
『これよりは楽園の世紀 優しき理、千年の旅』
ラニ『……………』
神となりし者が誓う、宣誓の句と共に。
『すべてよ、愛だけを思うがよい。何者も、何ごとも、排することなく、罪することなく 私が全てを抱こう』
ゴッドウィンの肉体に背負われるように…
ミケラ『…共に行かん ゴッドウィン、そしてラダーン。我が約束の王よ』
神たるミケラが、皆の前に現れたのだ。