人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
(世界の全てを焼き尽くす狂い火の王。それは一体、誰が継いだと言うんだ…?)
『旧律の使徒たちよ。旧律の王よ』
ゴッドウィンを傀儡とし、遂に神として顕現せしミケラ。彼は神の魂として、ゴッドウィンの肉体を依代に現れ、此処に神の門を潜り帰還したのだ。
「成長、している……」
マレニアの言葉通り、ミケラの肉体には成長の跡が垣間見えた。永遠なる幼子であったはずの肉体、顔立ちは青年のものへ。髪は長さを増し、3メートルを越えるゴッドウィンの肉体の足元までへと。
「髪は神気の顕われと聞く。それにより、真なる成長を果たしたという事か」
ヘラクレスらの言葉に合わせ、一行が構える。ゴッドウィンは最早語らない。彼の魅了の力に、完全に支配されてしまったが故。
否、そうでもありそうではない。ゴッドウィンは始めから依代としての在り方を望んだ。ミケラを…独りでは何も為せぬ哀れな弟を、救う為に。
『兄様。やっと、戻ってきてくださったのですね』
ミケラは語り掛ける。その先の目線にはリッカ…。
否、リッカの宿すラダーンが在る。
『私は、約束を果たしました。神を目指し、全てを捨て…そして、辿り着きました』
幼き日の約束。自身は必ずや、神となる事を誓う。
それはミケラが、自身の身を以て立てた誓い。いつか全てを救う為に。
この残酷で壊れ果てた世界を、きっといつか救う為に。
『さぁ、兄様。共に参りましょう。あの日の約束を果たすため、私の王に、お成りください』
そして、手を伸ばす。かつてミケラが見出した、優しき王。
ラダーンにミケラは、憧れていた。圧倒的なる強さながらも、弱者や他者に気遣いを忘れることなき優しさを有する赤獅子を。
彼となら叶う。きっと世界を優しく出来る。その為に…。
【その為に、兄ゴッドウィンを蘇らせた上で肉体の依代としたか。彼の意志には関わらず、我が身を約束の王とするために】
ラダーンは、あえてリッカの意識の表層に出て問うた。それこそが、狙いかと。
『これで、約束は果たされる。やってくるのです。真に優しき楽園の世紀……愛に満ちた、理想郷が。神の力によって…』
ミケラの言葉に、ラダーンは静かに俯いた。
【……あの日の約束。童の戯言に過ぎなかった言葉にすら、お前自身には福音であったのだな、ミケラ…】
永遠に成長出来ないミケラ。そんな彼が、理想を共に出来る王を見出した喜びは如何ほどであったろうか。
それ故に、ラダーンは悔やんだ。戯言を戯言と切り捨てず、共に未来を、理想を歩む道を選んでやれていたら、と。
これほど思い詰めさせることも無く、ともすればこの最高の仲間達と、楽しい旅路を送らせてやれていたのではないか、と。
『兄上…』
【ラダーン…】
ラニとリッカの心配に、ラダーンは雄々しく返す。かつてマレニアに行ったように、重力魔術で剣を両脇に突き刺す。
【ミケラよ。我の答えはとうに決まっている。心を漂白し、全てを捨てさせる愛に満ち溢れた世界を我はけして望まん】
『兄様…?』
【世界と願いは、皆で紡ぎあげていくもの。マリカがそうであったように、一人の神、一人の王では破綻が生まれる。…敬愛せしゴッドウィンすらも傀儡とする今のお前には、与するわけにはいかぬな】
力強く、雄々しく刃を手にする。それこそが、返礼とするように。
【神となり、宿痾を捨て去ったのは良い。だが貴様は、捨ててはならぬものも捨ててしまった】
『……?』
【この場にいるマレニアを見ろ。お前を信じた者たちを見ろ。それこそが、お前が愛すべき者たちだ】
ラダーンに促されたミケラは、マレニアを見る。そして、レダ達を見る。
だが……
『…それらが、どうかしたのですか?』
「!」
ミケラの問いは、まさに神たるものだった。
『彼等も、彼女らも。全て私が救うべき生命に他ならない。ならばそこに、なんの代わりも、差異もない。ならば全ての中の一に、何の意味がありましょう』
「………兄様……」
『全ては我等が救うのです。全てを救うのだから、それが誰か、何かなど、気にかけることも無いでしょう』
愛を捨てるとはそういう事だった。神の名の下、全てを救う。
故に、そこに違いや差異など必要はない。誰かなど、何かなど語る意味はない。
誰もを等しく救うのだから、誰かを誰かと認識する必要もない。
『全ての弱いもの、全ての名も無き者に揺るぎない救いを。私が齎し、全ての愛を形にしましょう』
故にこそ、マレニアにすら心は動かない。
神となったミケラにとって……
『故に……誰かが誰かなど、どうでもいいのです。私は全てを、救うのですから』
救いを求める誰かであれば、そこに差異は必要ないのだから。
愛なき救いの神たるミケラは、全てが大切であり。
全てが、救うべき有象無象でしか無いのである。
【──そうか。お前は本当に、捨ててはならぬものを捨てたのだな】
ラダーンの声に、最早親愛の情は宿っていない。
そこに滾るは、ただ覇気のみ。
【ならば我が、我等が今一度神たる座から貴様を引きずり下ろそう。今や、真なる修復ルーンは我らの手にある!】
力強く、重力の大剣を両手に握りしめる。
【最早神の庇護は要らず!世界とは、一人一人が懸命に紡ぎあげていくものだからだ!!】
一同がラダーンの言葉を肯定するように、並び立つ。
「ミケラ様。そのように追い詰めたのは我々です」
「あなたも、救われてほしい。ミケラ様」
「えぇ。……孤独な神がどうであるかは、マリカが教えてくださいました」
ミケラの信徒たちもまた、ミケラの為に剣を執る。
「ミケラ様。…孤独の神の座に、あなたを招いた責任は此処に」
『レダ…』
「我等の弱さは、我等が背負います。ですからどうか…我等と共に、お歩みください」
ミケラを信じた者達が、ミケラに刃を向ける。
「トリーナ様の為に…ミケラ様、あなたを止めます」
それはミケラの、ミケラを想った愛である。
『…………道を譲らぬというのなら、仕方ありません』
だがそれは、ミケラが捨ててしまったものであり…
『私は、新たなる世界にてあなた達を迎えましょう。旧律の神から、エルデンリングを取り返すことで』
「ッ、兄様!」
『新たなる世界で、また会いましょう。旧律の、戦士達よ……』
ミケラとゴッドウィンは、跳躍し光となって消え去った。それは、在る一点を目指すもの。
『ミケラは恐らく、ローデイルへと向かったのだろう。エルデンリング…マリカの力を手にする為に』
「何れにせよ、もう激突は避けられない。黄金樹の麓が、決戦の地だ…!」
その時、一同の前に黄金の帆船、ヴィマーナが現れる。
「いよいよ役者が出揃ったか。あの餓鬼めが神となり、何を観たか…我等の手掛かりも握っていよう」
「ギル!」
「乗れ、者共!長く続いたこの旅の終着にして決戦の地、特別に我等が送り届けてやる!ファストトラベル・ギルガメタクシーとしてな!ふふははははは────!!」
───言葉の意味は良くわかりませんが、ギルも昂っているのです!さぁ参りましょう!ローデイルへ!
一同は頷き、ヴィマーナにて向かう。
ミケラが飛び去りし地…
即ち黄金の都ローデイル。エルデンリングとマリカが待つ、始まりにして終着の地へと。
ローデイル、王座の間
ミケラ『──ついに、この時が。これで世界は救われる』
?「…………久しいな、ゴッドウィン。それに、ミケラ」
ミケラ『!』
?「私は、帰ってきた。再び、偉大なるエルデンリングに見えるために」
ミケラ『あなたは……』
ゴッドフレイ「私は、ゴッドフレイ。最初のエルデの王として……お前達と、戦う運命にあるものだ」