人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ゴッドウィン『……………』
ゴッドフレイ「マリカは、これすらも見抜いていたのか。…黄金では、豊穣の永遠は約束されぬ事を」
ミケラ『流石は始まりの王。脱け殻のゴッドウィン兄様すら退け、膝を付かせようとは』
ゴッドフレイ『ラダゴンの遺児か。憐れな独り善がり諸共ここで…』
セローシュ『……………』
ゴッドフレイ『セローシュ…?』
ミケラ『あなたの闘志を抑えし、獅子セローシュ。それらは、私と共に』
ゴッドフレイ『魅了…セローシュすらも、か』
セローシュ『…………………』
ゴッドフレイ『………よい』
『ずっと、苦労をかけたな。セローシュ』
「ここが、あのローデイル……?」
ヴィマーナ甲板。黄金樹の麓に坐す黄金の都。狭間の地における聖地とも言える箇所に帰還したリッカ達の、誰ともつかぬ言葉がその状況…
否、惨状を言葉に顕していた。
「瓦礫の、山になっている。あれほどの都市、建築物の街並みが」
黄金の威容を誇るように屹立していた数多の建物。黄金律の完全さを証明するが如き建物、建築物達。街並みを彩っていたものたち。
それらは、まるで破壊の嵐に巻き込まれたかのように瓦礫と化していた。うず高く積まれた瓦礫は、建物の屋根飾りに届くほど。それらはまるで、巨大なる嵐に根こそぎ奪われ、破壊されたかのようで。
「うわわわわ!?」
その時黄金樹が、狭間の地が激震する。地鳴り、そして輝き。暴力的な力のうねり、高まり、或いは爆発が無数に齎され空間を伝播する。
「これは、戦いの余波だ…!戦いの余波でローデイルは…!」
ラスティの言葉の通り、その力の波動はローデイルの王座…。
エルデンリングに繋がる黄金樹、拒絶の棘に繋がる間より絶え間なく響き渡り、狭間の地全てを揺らしているのだ。それらは、まさに神の裁きが如く。
『こちらカドック!リッカ、戻ってきたな!』
その時、狭間の地の探索を続けていたグランドマスターズのサブリーダー、カドックがリッカに通信を繋げる。彼は黄金の都の顛末を彼女らに告げる。
『結論から言うと、見ての通りローデイルは壊滅した。君の見たゴッドウィン、ミケラの両者…そして帰還した、最初の王ゴッドフレイとのぶつかり合いの余波でな』
「カドック達は無事なの!?」
『あぁ。モーゴットやモーグ、デミゴッドの皆が避難活動を済ませたから被害者はいない。だが…街並みだけは、間に合わなかった』
そう、モーゴットは最後の王としてグランドマスターズやデミゴッドと協力して、黄金の民達を救い避難させた。
それにより犠牲は免れたものの、神と王の決戦はまさに神話であり、それらに人々の積み重ねた営みはあまりにも脆弱だった。
街は吹き飛び、家屋は破壊され、無数の瓦礫と残骸が満ち溢れた『廃都』…廃都ローデイルに、成り果ててしまったのだと言う。
『現在進行系で、王座でゴッドフレイとゴッドウィンが戦ってる。黄金の一族の壮大な大喧嘩ってところだな…』
「ヴィマーナで近付けぬ事もないが…。試すまでも無かろう。1号機と貴様らを失うリスクは犯すに愚かというものよ」
決戦に降り立つのはギルガメッシュならば容易い。しかしリッカらの狙いはマリカである為、どう足掻いてもリッカらは王座には行かなくてはならず漁夫の利は危険すぎる。
『だがこっちも手をこまねいた訳じゃない。王座に繋がる徒歩のルートを確保してある』
グランドマスターズは狭間の地の探索を隅々まで終えている。それ故に、ローデイルの変わり果てた地理でも通用するルートを確保していたのだ。
『地下の忌み子連中もモーグウィン王朝の一員として協力してくれたんだ。リッカ、相変わらず君は困難な道筋にふさわしい成果を齎してくれるな』
「ハイリスクウルトラリターン!旅路の鉄則だよ!」
『キリシュタリア達は禁域の火の釜の方に行って火の監視をしている。誰かが来た形跡もない。……まぁ、マリカに呪われた火の巨人はキリシュタリアが介錯してあげてたけど』
「となれば、我等は徒歩で堂々と王座に至るべきだな」
『そういう事だ。だけど王座に繋がる道に立ち塞がるやつがいる。ギデオンっていう奴だ』
「ギデオン…」
ギデオンは、新たなる王座に向かう候補を阻む様に待ち構えているという。間違いなく、リッカらの到達を警戒しているのだろう。
『王都の外敵要因排除兵器もあいつが握っている。撃破しないと、制空権とルートを占拠されているようなものだな…』
対空兵器、そして縛鎖等といった兵器を彼はいち早く掌握し、リッカらの道を…祝福の道筋を阻んでいる。それが、ギデオンという要因であった。
「ギデオンは、どこにいるの?」
それを訪ねしはレン。カドックはレンに座標を送り示す。
『屋内の聖堂にいる。でてこない以上、乗り込んで倒すしかない。だけど外からは壊せないような術式を張っている。穴熊ってやつだな』
「よほど世界を新しくしたくないと見えるね」
レンはそれを聞き及び、静かに頷く。
「モタモタしている暇はない。私だけが地上に降りてギデオンを討ち取る。その後、兵器がダウンしたら戦いの余波を縫ってそのまま王座に直行して」
「レン…!」
「あれも一応人間なのだから、きっちり知ってあげなくちゃ。知識を集め、古い世界に固執する人間なのだとしても…」
それは立派に、人なのだから。レンは確かに、そう告げる。
「…人間を知りたい。それが失われた貴女の、持っていた自分だもんね」
「大丈夫?いけそう?」
リッカ、そしてルゥの心配を孕んだ声音に、レンは笑みと共に頷いた。
「人間を知る。それは皆のお陰で殆ど果たすことが出来た。…いいとこだけじゃない。悪しきところもきちんと知らなくちゃ、全てを知るとはいえない」
「レン…」
「百智。私は彼と同じで、でも確かに違うってこと…証明するための譲れない戦い。狭間の地で締めくくる、知る為の戦いの心最後の相手に相応しいよ」
負けない。自信に満ちた声音は、確かにそう告げていた。
「リッカ。こんな時に言うことじゃないかもしれないけれど…私、君の巫女として旅を出来た事に感謝してる」
「!」
「自分以外に…それこそ、敵のためにだって一生懸命に戦える。リッカという人を導いて、人はそういう素晴らしいものだと知ることが出来た」
レダを助けるための戦い。それをレンは確かに見ていた。
それは、彼女が知りたい…知ろうとしていた人間の、善なる側面の極致。
「願いを叶えてくれてありがとう。旅を終わらせたら、正式に私の弟子にならない?」
レンの言葉に、リッカが笑う。
「身元不詳のエルフは危なっかしすぎるから、全てを取り戻した後に弟子入りさせてください!」
「リッカ…」
「戻ってきてね。皆で旅を終わらせて、素敵な一杯で乾杯しようよ!お師匠様!」
お師匠様。レンの弟子入りの言葉に合わせた、勝利の後の再会の約束。
「………うん。解った。お師匠様として、頑張ってくるよ」
縁に、レンが立つ。
「大切な人達の為に戦う。これもまた、君達が教えてくれた人の魅力だ。…ルゥ」
『ん?』
「ひょっとして、君が人間にベタ惚れなのもこういうところかな?」
ルゥは胸を張り、応える。
『そう!』
「やっぱり、そっか」
レンが、足を踏み出す。
「私も、そうだよ」
「レン───!」
「行ってきます。パワフルな弟子0号」
瞬間、ギデオンの対空兵器魔術がレンに向けて放たれる。
「負けられない理由が、今出来た」
レンはそれらを、レナラとトープスと共に編み上げた魔術の全てで無力化する。
「凄い……」
黄金の都市の防護を、青と白の魔術が薙ぎ払う。
それはかつて、ローデイルと戦ったリエーニエの、たった一人での再現であった。
「…ギル!王座の真上に行こう!」
自らの巫女の決断、決意を汲みリッカは告げる。
「迎撃が止まったら…一気に行こう!」
「そうさな。あやつは無愛想ではあるが、約束を違えはせぬだろうよ。この場で足踏みなど凡夫の愚行。我等の戦いとは、神殺しにあるのだからな!」
リッカの言葉に、ヴィマーナを走らせるギルガメッシュ。
(勝って、レンお師匠様。まだ、教えたいことがたくさんあるから!)
願いと祈りを手向けに残し……
リッカ達を乗せたヴィマーナは、王座直上へと飛翔する。
礼拝聖堂
ギデオン「……あぁ、君だったか。他の者たちはどうしたのかね?」
レン「……」
ギデオン「エルデンリングに見え、王になるのだろう?…しかし、残念だ。その意志は果たされるべきではない」
レン「何故?」
ギデオン「私は識っているからだ。……人は王となれど、神には勝てぬ」
レン「……」
ギデオン「人は、ただ人では神を殺せぬのだ。…宇宙に浮かぶ星が、宇宙を支配できないようにな」
レン「…百智卿。君はそう呼ばれているんだね」
ギデオン「?」
レン「教えてあげるよ。何故君が『全智』になり得ないのかを」
ギデオン「…それは、僥倖だ」
レンとギデオンは、杖と笏を向け合う。
……智慧を求めし者達が…
停滞と黎明を望む者達が、今相対する。