人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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とある山


【─────ウ】


【ウウ、ウ………】


【─────ウウオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!】

?「……あぁ。狂い火は受け継がれた」

「全ては、焼き解け一つになる」

「あぁ、狂い火の覇王よ…世に混沌のあらんことを……」



セローシュ『グガアアアアアアアアアアアアアア!!!』

ミケラ『!』

ゴッドフレイ『───』

瞬間、ゴッドフレイが背負いし獅子の首を自らへし折った。

ゴッドフレイ『───ふぅう………』

そして爆発的に高まる、戦意と闘気。

「アスラと…我が友との約束を果たすため…行儀のよいふりはもうやめだ」

静かに、立ち上がる。

ゴッドフレイ『────オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

神に挑むため、ゴッドフレイは戦士に戻る。

ホーラ・ルー『今より俺はホーラ・ルー!!戦士よ!!!』

ミケラを、ゴッドウィンを阻むために。

かつての約束を…果たすために。


百を識る者

「────!」

 

レンの持つ、レナラより託された魔術杖より無数の魔術が放たれる。それは、カーリアの女王自ら薫陶を授けた最高の星の魔術。

 

レナラの領域に届かんとするそれを、ギデオンに向けて斉射する。それは、百智たる彼すらも目を剥く程の凄まじい精度。

 

「やはり、君は私の見たて通りのようだ」

 

「どういう意味かな」

 

「本来の君は、比類なき魔術の腕を持っている」

 

ギデオンは告げ、速やかに回避行動を取りながら反転し攻勢する。

 

「耳の亜人…。あの少女の世界では『エルフ』というのだったかな」

 

「!」

 

「だが、その予想もまた『識っている』ものだ」

 

ギデオンはなんと、赤き『呪いの血』を、引き裂くように展開してみせる。

 

「!モーグ卿の…」

 

血授。血の君主が行う外なる母の技を、なんとギデオンは振るい魔術を引き裂いてみせた。

 

「予想内であり、想定外ではない」

 

続けて放つ『ミケラの光輪』。かつてミケラがラダゴンに送った祈祷を、レンを切り裂く刃として放ってみせる。

 

「っ」

 

魔術障壁を展開し、受け止めるレン。その一撃は重くはないが鋭い。

 

「く…」

 

魔術障壁が切り裂かれ、しかし再び張り直す。

 

「君は何故、記憶を失った?」

 

畳み掛けるように放たれる【黒き炎】。かつてマリカとマリケスが討ち果たした、宵眼の女王が信徒たちに授けし異界の炎。それが、レンの障壁を焼く。

 

「っ…!」

 

それらを障壁を押し込む形で跳ね除け、素早く流星群を展開するレン。

 

「それは、外的要因によるものか?」

 

しかしギデオンもまた、魔術を展開する。『ほうき星』。魔力の大彗星を打ち放つ、魔術の歴史上数名しか扱えない魔術。

 

「君は絶望したのではないかね?」

 

「何に…?」

 

「自らが、人を知ろうとした理由にだ」

 

流星群とほうき星がぶつかり合い、打ち払われる。

 

「何もかも手遅れだと解り、末期の怨念に支配される亡霊…それが、君なのではないかね」

 

そして立て続けに放たれる、カーリアの円陣。ギデオンを囲むように、魔力剣が展開される。

 

「その絶望故に、君は生命を絶ったが故に狭間へと導かれた…。そんな仮説も、また立てられる」

 

「どうかな。私がそんなに繊細で、感情的なのかは分からないよ」

 

ふわりと浮き、飛来する魔力剣を迎撃するレン。

 

「それでも、一つ解っていることは…怨念になるくらいにまで私は人を知らなかった事を後悔し、怨念になろうとも人を知ろうと決めた事。それは間違いない」

 

魔術により剣を作る、カーリアの円陣。当然ながらレンも履修している。空中で魔術剣がぶつかり合い、へし折れていく。

 

「リッカ達の旅路の中で、その想いは満たされていった。これが私の知りたい事だったと確信できる程に」

 

流星群、ほうき星。レンは星の魔術でギデオンの魔術と祈祷に抗う。

 

「この魔術も、私の師匠であるレナラ女王のもの。人の持つ可能性は無限大だ」

 

それらはギデオンすらも押し退ける程の力と勢いを有する。彼女の弟子として、魔術師として。レンは最高峰の力を有する。

 

「怨念であろうと、亡霊であろうと構わない。私はこの旅に参加できた事を誇りに思っている」

 

「そうか。余程よい答えを得られたのだな、君は」

 

「お陰様でね。君は相変わらず、識ることをただ識るだけなのかな」

 

「お陰様でな」

 

その時、ギデオンは自身の笏に莫大な魔力を込める。それは、先程の魔術とは比べ物にならない程の魔力量。

 

(あれは…!)

 

レナラが放ちし『彗星アズール』。星の源流に到達するレベルの、比類なき魔術の最高峰の一つ。学んだ最高魔術師アズールが、人間を辞めねばならない程の禁術。

 

相殺しかない。レンもまた、彗星アズールの構えを取る。

 

「っ───」

 

放たれる、莫大なる魔術の大彗星。余波にて聖堂の外部が吹き飛んで行くほどの、魔術の頂上を争う相殺。

 

「人とはそう言うものだ。知りたいように知り、解りたいように理解する。自身の認識以上の物差しを持たぬ痴愚…それが、君の知ろうとする人間の本質だ」

 

「知った風な口を利く」

 

「識っているからだ、憐れなる亜人よ」

 

相殺が終わり、再び静寂が戻る。戦いとは思えぬ程の、知性に満ちた語らいと共に。

 

「君の探究には憧れが見える。人間とは美しいものである。人間とは素晴らしいものである。そうであってほしいと、君自身が夢想している節がな」

 

「客観的じゃないって言いたいのかな」

 

「いいや、違う。忠告だよ」

 

ギデオンは独白する。

 

「人は想像力を有するが、それは時に現実を歪める。知りたいものを正しく知った時、人はそれに対して満足する事は得てしてないものだ。想像を超える事実など、そう無いのだから」

 

「………」

 

「エルフである君なら尚の事だ。長きに渡り知った事、識った事実。それを知り、正しく納得した時。君が何を思うかを私は識っているぞ」

 

それは、彼が智慧を、知識を知った際に必ず思い浮かべるもの。理論の帰結。

 

「『こんなものか』、だ。人は想像力を有するが故に、人の想像力を超える事実を容認しない。知りたいように、知りたい事実を事実とする。君もまた、必ずそうなるだろう」

 

「私はエルフだと、識っていながらそれを言う?」

 

「君は人だとも。何故なら──」

 

その時、ギデオンから再び魔術が湧き上がる。

 

「『識りたい』などと求める愚者が、自然の精霊などではあり得んからだ」

 

それは、腐敗の爆発。マレニアがかつて苦しめられた宿痾の再現。

 

「言ってくれる…!」

 

レンが退いた箇所により着弾し、爆発を起こす。

 

ギデオンは、デミゴッドの業すらも使いこなす。

 

「此処で君を終わらせるは、慈悲なのだよ。レンを名乗る欠けた亜人」

 

ゆっくりと身体を起こす、かつて最も王に近かった褪せ人の一人。

 

「齎される真実は、必ず君に絶望を齎す。その前に君は終わるべきだ。人を愛しいと思うまま、終わる事こそ理想の幕引き」

 

彼は、全てを識る者。

 

己の全てを、識ろうとするものなのだ。

 

「余計な御世話をしてくれるものだね」

 

レンもまた、ゆっくりと起き上がる。

 

「私はそれでも人を知る。知らなくちゃならない。心が、そう叫んでいるから」

 

杖を構え、睨み合う。

 

「死んでも忘れられない想いを懐いた理由を、忘れたままではいられない。私がどんな存在か、私が何を求めていたのかは私が決める」

 

レンもまた、譲るものは何もない。

 

「私の旅は、私が終わらせる。そしてその終わりは、今此処じゃない」

 

「………」

 

「ギデオン。悪いけどその慈悲は受け取れない。私はこう見えて、強情で頑固だったみたいだ」

 

その点だけは、礼を言う。そうレンは、不敵に微笑んだ。

 

「………あくまで、識る事を希望と捉えるのだな」

 

そのギデオンの声音には、諦観と……

 

「──では、真理を私が教えよう」

 

静かな、羨望があった。

 

「当然、君の知りたい事、識るべき事を私は識っている。人間とは、何なのかもな」

 

「!」

 

その時、ギデオンより更に爆発的な魔力の高まりが溢れ出す。

 

「知りたいと言ったな。ならば私が、真理を教え賜そう」

 

それらはレンを……

 

否。『世界』を塗り潰していく。

 

「これは…!」

 

「『固有結界』。君の識る少女の世界ではそう呼ぶものだ」

 

離脱は叶わない。レンは、ギデオンの世界に呑み込まれ──。

 

「『百智の』世界。君に、全てを理解する絶望を齎そう──」

 

聖堂における全ては…

 

ギデオン=オーフニールの世界となった。




レン「………………」

レンは、図書館にいた。

図書館で、本を読んでいた。

『人間』。そう書かれた本を読んでいた。



ヒトは、約37兆個の細胞からなる多細胞の真核生物である。
ヒトは哺乳綱サル目(霊長目)ヒト科に属し、サルの仲間との共通祖先から進化して誕生した。
ヒトは、直立して二足で歩き始めてから、自由になった手を使って道具を作り、言語を獲得し、文化文明を築くに至った。
ヒトは、他の動物にはない稀有な道のりを辿り、特異的な生物学的特性を備えている。



レン「…………」

黙々と本を読み。

やがて、静かに本を閉じ…

「こんなものか」

落胆したように、天井を見上げた。
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