人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ラニ『目を開けろ。此処は安全だ』
リッカ「ラニ…?それに此処は…」
ラニ『暗月の世界。神たる私が持つ、神たる領域だ。本来なら私と私の王のみの空間だが、緊急避難にお前達を招いた』
ラダーン【成る程、つまり愛の巣というわけか!!】
〜
ラダーンの氷像【】
ラニ『あの不愉快な男の対策を練るぞ、お前たち』
ルゥ『ハイ!』
フリーレン(容赦無いけど仲良しだなぁ…)
「ルゥちゃん様、私をぶってください!」
『ほい(ぺちん)』
「はうっ!り、理由も聞いてほしかったですがありがとうございます!」
ラダゴンの黄金砕きにより、一掃されたかと思われしリッカ一行。しかしそんな旅路の終わりなど容認される筈もなく、神たるラニがその力を解放した。
此処は星の世紀の広き空間。夜空にラニの象徴たる暗月、足元には水が満ちる神秘的なるラニのみの空間。ミケラと同じく、ラニは既に神なのだ。
「大丈夫?ヘラクレス、生命の方は…」
「問題ない、フリーレン。ラスティらの尽力で残り10にまでは回復することが出来た」
『一撃で五つも消費しちゃうんだったら、セーフなのは一発だけ…怖いなぁ、ラダゴン…』
「尻尾の一撃、ありがとうございます。流石は祖龍様でございました」
『よしてよぉ〜。まだまだ皆には勝機があるんだから、諦めないでねぇ』
勝機。ルゥは自信を以て告げるが、ラダゴンの実力は事実圧倒的であった。
「父上、壊れかけでありながらあれほどとは…」
マレニアの言葉通り、神たる力は想像を絶していた。マレニアを見切り、ヘラクレスを撲殺し、魔術を弾く。それはまさしく英雄たる力そのもの。
『フン。さっさと滅びていれば話は早かったものを。どの世界においても不愉快にさせる男だ』
不満げに鼻を鳴らし、ラスティに人形の身体を手入れさせるラニ。
『ルゥ、勝機とはなんだ。お前は惚けているが、虚言は口にしまい』
ルゥは頷き、しかし語らない。
「それはねぇ、リッカが識ってる筈だよぉ」
ルゥはリッカに語り、話を託す。リッカなら、ラダゴンの突破口…その手段を知っていると。
「うん。私の予想する限り…ラダゴンは黄金律そのもの。だから、黄金律に生まれた生命に強いアドバンテージが在るんだと思う」
「律、壊れかけのエルデンリングからのバックアップみたいな感じかな」
「うん。だからあんなに生命離れした対処が出来るんだと予想して……あの精度を鈍らせるには、黄金律の世界から無理矢理引き剥がすとかが有効なんじゃないかなって」
黄金律のルールが敷かれた世界。切り離すとは即ち……。
『………あの男を、此処に招く…という事か………』
(死ぬ程嫌そう)
『………………良いだろう。私の王以外の男を招くなど御免だが、アレを完膚無きまでに殺せる達成感で補填する』
渋々と言った様子で、納得しかねるとラスティに身を委ねるラニ。ギリギリで殺意が勝ったようだ。
『それで、いくつかの内の次策はなんだ。他にどの様な殺し方があるのか聞かせてもらおう』
「うん。……突破口は、ラダゴンの【不完全】だよ」
一同が首を捻る。ラダゴンの完全なる強さは今知ったばかり。
壊れた身体で祈祷と魔術、武力を完璧に扱うそれは、まさに黄金律の体現者。不完全なのは身体のみ…。
「思うんだけど、ラダゴンはなんでレナラさんを愛したのかな。本当に、神人を授かるためだけ?」
『………何が言いたいのだ』
「ラニ、貴女は解っているはずだよ。誰よりも、何よりもラダゴンを…ひいては二本指や神を憎んでいる貴女なら」
リッカは真っすぐラニに告げる。
『………………』
ラニは黙する。しかしその表情は、真意を悟った顔だ。
「人はどうでもいい相手を憎んだりしない。人は、なんでもいい人を恨んだりしない。ラニがラダゴンを憎んでいるのは、つまり……」
『……………』
「ラダゴンがレナラさんを悲しませたのが一つ。そして何より…二人を引き裂いた元凶の分も憎んでいるから、じゃないかな」
面食らったように、ラニが目を丸くする。
つまりリッカは、ラニの本心が憎悪ばかりでないと告げたのだ。
憎悪の反対の…愛情がきちんとあるのだと、ラニに問う。
『…………、……………』
(凄く二の句に悩んでる…)
(図星だったみたいだ)
「…私は、レナラ氏の子ではないので分からないが…確かに、貴公の振る舞いや言葉は全て、暖かいものがある」
マレニアも説を補足する。
「あなたは、レナラ氏とお父様が本当に……」
『よせ。皆まで言うな』
はぁ、と観念したかのようにラニが息を吐く。
『…その通りだよ。私は知っていたし、見ていた。我が母レナラと、あの男が互いを心から愛し合い、私達を産み落とした事をも知っている』
「ラニ……」
『例え、始まりが神人を我が母の子宮に仕込む目論見だったのだとしても…確かにそこには愛が生まれ、奴は償い、結ばれた。私も、兄ラダーンも、ライカードも呪いなく健やかに産まれたのがその証だとも』
使命と運命があったとしても、レナラをラダゴンは自らの意志で愛した。ラニは語る。
『だからこそ、私は許せなかった。母を、家族を裏切ったラダゴンが…いや。使命のために、母を利用した二本指、大いなる意志、そして神の全てがな』
【おぉ、我が妹ラニよ!なんと情の深い…!!】
『大した観察眼、洞察力だ。対話の龍は伊達ではないな。…だが、我が真意を暴き立てたのには理由があるのだろう?』
無いとこうだぞ。ラダーンの霊体を凍らせるラニ。ぬわああああと凍結されるラダーンの傍らでリッカは語る。
「だからこそ、勝機はラニと、ラダーンと、マレニアと、もう一人。ラダゴンが自身の意志で授かった、ラダゴン自身の子供たち。それが今の黄金律の犬になってるラダゴンの完全を崩す力だよ!」
「我々が、突破口……」
『───えぇ。リッカ。とても素敵な言葉だわ』
瞬間、フリーレンの持つ王笏から響く声がする。それは、満月の女王レナラのもの。
「うわびっくりした」
『ラダゴンは自らの罪を嘆き、償いの儀式を行った。この琥珀もそう。黄金律の大剣もそう。例え、マリカを縛る半身だったとしても…彼は、彼だったのよ』
「師匠レナラ…」
『ラニ、ラダーン。マレニアも思い出してみて。ラダゴンが、何を残したのかを…』
ラニは思い出す。
〜
お前は素晴らしい魔術の才覚を持っているな、ラニ。
母によく似た、素晴らしい娘だ、誇りに思う。
〜
ラダーンは思い出す。
〜
お前は赤き髪を…この絶望の呪を誇ってくれるのか。
ありがとう。お前は私の自慢の子だ。
〜
マレニアは思い出す。
〜
黄金律はいいぞ、最高だ。
今は効かないが、きっと腐敗にも効く。必ずだ。
〜
『………フン。母に似ているからなどという理由で溺愛されていたよ』
【赤い髪の何がいけないのだ!?超かっこいいぞ我が父!】
「碌な思い出がない……」
『その思い出が、あの人の全て』
「碌な思い出が…」
『貴方達なら、きっと崩せるわ。ラダゴンを縛る、黄金律の完全を』
「碌な思い出…」
リッカとマシュ、ルゥがマレニアの肩を叩き、フリーレンが頭を撫でていた。
【我が母よ、そしてラニは最高の伴侶を手にしているのだ!】
『えぇ、そうだったわね。ラスティ、あなたも大切な存在よ』
【何せこの地を愛の巣に】
ラダーンの氷像が出来上がった後、レナラは告げる。
『貴方達の望む世界はすぐそこ。ラダゴン相手に手間取っていてはならないわ』
「ラダゴン相手に…?」
『勝ちなさい。信じているわ、私とあの人の子供たち…』
「……言うだけ言って帰っていった…」
方針は固まり、リッカが締め括りの言葉を告げる。
「必ずラダゴンを止められるよ!黄金律の傀儡より、完璧な存在より、あの人の本質はきっと別にある!」
リッカはそれを確信していた。
「だって三人は、親と心が繋がった家族なんだから!血の繋がった親子の絆は、絶対に分かりあえる道に繋がっているよ!」
血の繋がらない家族を知るからこそ、リッカはそれの強さを知る。
いや、信じているのだ。
「さぁ、反撃開始だよ!」
そして一同は再び挑む。
完全なる黄金律の化身に…
かつて彼が残した、宝物達と共に。
石御台
ラダゴン【────────】
リッカ「はい帰還!」
ラダゴン【─────】
リッカ「ラダゴン、必ず貴方を乗り越えてみせる!」
ラニ『八つ裂きにして黄金の排泄物にするまで終われんな』
リッカ「────来て!」
リッカは、満を持して召喚する。
「『ライカード』!」
それはかつて、英霊として招きしデミゴッド。
ライカード「…呼ばれたかと思えば、かつての冒涜の道の終点ではないか」
ラダーン【久しいなぁライカード!!お前も来たか!】
ライカード「サーヴァントとは、忙しないものだな…」
マレニア「お父様すらも、乗り越える…!」
ラダゴン【──────】
リッカ「あなたが遺した最高の
ラスティ「──行こう、ブライヴ、イジー、アデューラ…!」
黄金律の体現たるラダゴンの前に…
再び、リッカ達は舞い戻った。