人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
(レナラの言葉が引っかかる。ラダゴンにばかり気にかけてはいられないだなんて…。あんなに強いのに、まだ何かあるのかな)
「…神、大いなる意志。………!」
(そう言えば、エルデンリングはどこから来たんだろう。メーテールは大いなる意志に送られた端末。エルデンリングももしかして同じ?)
「……そもそも、マリカが神になった時に授かったものはエルデンリングだけ…?」
(マリカを神にした力は、ラダゴンが今振るっているもの…?)
ラスティ「フリーレン!」
フリーレン「!」
ラスティ「今は、ラダゴンを討つことに集中するんだ。全ての疑問はその先にある」
フリーレン「…解ったよ。ラスティ」
(考えごとをしてる場合じゃない。私も全力を尽くさなくちゃ勝てない、きっと)
フリーレン「……ラスティ」
ラスティ「うん、どうしたの?」
フリーレン「何があっても、何とかしてよね」
ラスティ「勿論さ!」
【──────】
ラダゴンを、暗月の空間が包む。そこはラニの神たる領域、暗月の間。
『貴様は此処で下す。この世界では私の手も下してやろう。この世界の私の分も含めてな』
そこは黄金律でなき、夜の律の空間。それにより、明らかにラダゴンの動きが精彩を欠き始める。
【─────、─────】
黄金律のバックアップにより十全に動けていた肉体は、壊れかけの宿痾をカバーしきれなくなったのだ。新たなる律の到来によって。
【ウオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!】
渾身の気合を以て、ラダーンが跳躍する。彼は再現する腹積もりなのだ。かつて星を砕いた、全身全霊の突撃を。
「父上。私は大切な仲間達の手により宿痾から解き放たれました」
マレニアが構える。やはりそれは、必殺の構え。
「黄金律の完全が無くとも、我々は歩いてゆける。それを、貴方に今示します!」
水鳥乱舞、その構え。先ほどとは違い、ラダゴンは完全とも言える防護は叶わない。
「感謝するぞ、ラダゴン。久々に懐かしい感覚を思い出した」
そしてヘラクレスもまた、必殺の奥の手を解禁する。
「イアソンには悪いが…やはり私は頂点よりも挑戦者でありたいものだ!」
赤き柄の刀を抜き、宙に円を描く。其処より黄金の狼の鎧が現れ、ヘラクレスの霊基が変化する。
夏草の金狼寺により託されし、黄金騎士の鎧。セイバー、ヘラクレスがマレニアと並び立つ。
『金狼よ、私と共に在れ…!マレニア、ゆくぞ!!』
「承知!!」
そして放たれる、剣技の超絶『射殺す百頭』。並びに渾身の水鳥乱舞。
『ぬうぉおおぁあぁあぁぁあぁッッッ!!』
「はぁあーーーーっ!!!」
セイバーと化したヘラクレスの一撃は、九撃。
多重次元屈折現象の回避不可能の斬撃を三つ。
事象飽和の全く同時の刺突を三つ。
そして剛力無双の大破壊斬撃を三つ。
それら全てを全く同時に九つの一撃としてラダゴンへと叩き込む。
マレニアの、全身全霊を賭した水鳥乱舞の手数と含め、それは最早受けきれる現象ではなかった。
【────────】
切り刻まれるラダゴン。パリィと見切りはできない。夜の律は、黄金を封じ込められる。
「今だ、魔術師達。私に続け!」
覇王ライカードが魔術…ゲルミア火山の呪術を編纂した魔術を、フリーレンとラニと共に放つ。
「一度破れたのはレナラじゃない。私の未熟だ。レナラの力はこんなものじゃないぞ」
『私は貴様を認めんよ。無様な傀儡の貴様はな』
暗月、彗星アズール。それらに並びゲルミア火山の大噴火そのものを、ライカードは聖剣に束ね放つ。
「大ルーンを撒き、家族にすら浅ましい奪い合いを強いた黄金律よ!全ての尊厳の為に今此処で討つ!!」
【─────】
「滅びるがいい!!独善の旧律よ────!!」
それは溶岩の灼熱となり、月の冷気となりラダゴンに向かう。ラダゴンは、槌を振りかぶる。
「黄金砕き!?」
『此処に来てか…』
完全なる黄金の一撃。ライカードのそれらがあわや相打ちと成り得るか───。
その時だった。
『いっけー!!私のブーメラーン!!』
ルゥが死角から、ラダゴンに向けて渾身のブーメランを撃ち放った。それは鋭い軌道を以て───。
【───────】
ラダゴンの……否。マリカの槌をラダゴンより奪い取ったのだ。
『やったあっ!上手く『ぶんどり』できたよー!』
これこそが、オトモアイルーの里にてルゥが血の滲むような練習を積んで身に着けしオトモサポート『ぶんどりブーメラン』。
アイルーが使えば宝玉、天鱗すらぶんどりできるものを、祖龍が使えばどうなるか。
それは即ち『神の武具すら』奪い取れる絶対的な徴収ぶんどりとなる。
ルゥの博愛が、此処に結実。ラダゴンは、最後の得物すら失った。
【──────】
だがそれでもラダゴンは神である。
力の限りの足踏みで空間を揺るがし、致命の魔術を微かに相殺する離れ業を見せつける。
「やはり生半ではいかぬか、神め。だが────」
【────────】
「貴様は砕ける。必ずだ!天を見よ!」
ライカードが、天を指す。
【─────仲間達よ、感謝する】
そこには、龍がいた。
【今こそ我、神に挑まん!!】
其処には、リッカの全てを解放せしアジ・ダハーカ・アンリマユが、金色の鎧と赤きマントを纏っている。
ラダーンと、依代のリッカ。それら全ての力を結集した龍獅子の姿。両手に星砕きの大剣を携え、ラダゴンに向けて飛翔する!
【【おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!】】
ラダーン、リッカの全身全霊の突撃。黒き龍と赤獅子の、渾身の突進。
【───────】
ラダゴンは、それをも受け止めんと手を広げる。交錯は次の瞬間。
「うあああっ!」
『わぁ〜!』
大爆発、大轟音、大激震。夜の空間が揺れ、揺らぎ、衝撃が世界へと伝播する。
『兄上め…はしゃぎおって』
「!ラニ!身体が!」
『案ずるな、人形にヒビが入った程度だ。だが───』
【ぬうぉおおおおおおおおおおおお………!!】
【────────】
止めていた。それでもなお、ラダゴンはラダーン達を止めていた。
尋常ならざる衝撃に、身体の崩壊を受けながら。それでも神は、獅子と龍を止めていた。
『─────勝ったな』
衝撃の光景だが……、ラニは、勝利を確信する。
何故なら。
「───────」
…突進するリッカ、ラダーンの背に。
ゴッドロードが、乗っていたのだ。
『私の王は、次いでで止められるような男ではない』
肉薄する。その両手に構えるは、ラダゴンが打ちし『黄金律の大剣』と、もう一つ。
「はぁあぁあぁあぁあァァッッッ!!!」
力の限り、黄金律の大剣で斬りつける。大上段、渾身の一撃。唐竹割り。
【────────】
それは、ラダゴンがレナラの大剣を模して作ったもの。
ラダゴンの不完全さの証明。そして…。
「でぇぇぇえぇえぇえぇえぇえぇえやぁあぁあぁあぁっ!!!」
ラダゴンの胸に目掛けて、突き刺せし。
【─────────!!!】
暗月の大剣。
歴代のカーリア女王が、その伴侶に贈る月の大剣。
かつてレナラがラダゴンに、そしてラニがラスティに有らん限りの愛情を込めて贈った剣。
『私が……心の底から、愛している男なのだから』
神の愛が宿る、完全なる絆の証明。娘の、幸福の証。
「かつて貴方を、王たる故で討ち果たした」
ラスティが、告げる。
「今貴方を討ち果たしたのは…あなたが遺した、かけがえのない愛の故だ」
【──────、───────】
致命は迎えた。最早ラダゴンに戦う力はない。
槌を奪われ、壊れかけの身体を支える黄金律は機能しない。
ラニ達の、レナラの子供達が。仲間達がラダゴンを討った。
【─────レナラの、血を引く者達よ】
「!!」
その時、ラダゴンが口を開く。
否。漸く傀儡、黄金律の犬から逃れたのか。
【見事、だった。その仲間達も、また見事】
倒れるラダゴン。もはや勝敗は決した。
【流石は我が子達。流石は子の仲間達】
「────」
【………ラニを、頼んだぞ。夜の、王…………】
それだけを告げ、ラダゴンは……
黄金律は、ついに倒れ伏した。
『………やっ』
「ルゥ、ストップ」
「大丈夫だよ、フリーレン。致命の一撃は、確かに届いた」
【うぉぉぉぉぉおぉおおぉおおぉおおぉおおぉお!!!】
ラダーンが勝利の咆哮を挙げる。
遂に、神たるラダゴンを討ち果たした。
『フン。貴様に心配される義理などない』
ラニはそれでも、彼への軽蔑を緩めない。
彼女にとって、母こそが親。ラダゴンは既に、家族を捨てた男でしかない。
…それでも。
『……さらばだ、父よ。新たなる世界の到来を、精々見届けるがいい』
手向けの言葉を贈る程度には。
彼女は、情を捨てきれていなかった。
マシュ「お疲れ様でした、皆さん!フリーレンさんとラニさんのガード、マシュ!任を解きます!」
ルゥ『これで後は、エアちゃんにルーンを掲げてもらうだけだねぇ。長かった旅ももう終わりかぁ〜…』
ラスティ「待った」
一同を、鋭く制するラスティ。
ラスティ「……皆には、ラダゴンを全霊で乗り越えなくてはならない理由があった。だからこそ、黙っていたオレを許してほしい」
ルゥ『な、なになに?どうしたの?』
フリーレン「……倒すべき相手は、まだいる。でしょ、ラスティ」
ラスティ「──あぁ」
マシュ「それは、どういう……」
その時。
ラダーン【なっ……】
安息もつかの間、
ラダゴンの遺体の身体の下から、湧き上がりし黒い穴。
そこから巨大な、『五本の指を有する異形の腕』が現れ、ラダゴンの身体を、地面の下へ沈める。
フリーレン「これは……一体……」
もはや黒い湖と化した地面から、姿を現した”それ”。
のっぺらぼうの巨人か、頭のないドラゴン、もしくは手の生えたウミウシ。
その体色はまるで宇宙そのものが閉じ込められているかのよう。
背中には筋の通った無数の羽らしきものが生えている。
その右手には、たった今倒した黄金律ラダゴンを素材として組み上げられし「神の遺剣」を携える。
体内の頭から尻尾にかけて、羽、両腕には神経や血管、はたまた葉脈とも見受けられる黄金の筋のようなものが通っている。
また、手の部分では筋が5本に分かれ、胴体では複雑な根のように全体に張り巡らされている。
首は長く伸びているが、その先端に頭はなく、筋の先にひとつの輝く光点があるのみ。
ラニ『これは……何だ?』
ライカード「我が父、ラダゴンすらも道具とせし、これは…」
”それ”は、音なき咆哮と共に宇宙色の光をまき散らし、ラニの律中であったはずの風景を湖の異空へと変える。
ラスティ「────これこそが、オレがかつて討ち果たした神の真の姿」
『それ』は、首を擡げ──。一同を睥睨する。
「『エルデの獣』。黄金律の始まり。エルデンリングそのものたる、この世界の法則そのものだ」
神すら武器とする、真なる狭間の地の理が──
今、リッカらの目の前に現れたのだ。
かつて、大いなる意志は
黄金の流星と共に、一匹の獣を狭間に送り
それが、エルデンリングになったという。