人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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黄金律の空間、上部

ルゥ『こんなに高くて、大丈夫…?』

ラスティ「ありがとうございます、ルゥ様。これなら充分にやれます!」

ルゥ『そっかぁ。……』

ラスティ「ルゥ様?」

ルゥ『ううん。人間はもう、神に挑むとこまで来て…神だけが神の時代は終わるんだなって』

ラスティ「………」

『ふふっ。モンスターと競っていた荒々しくも眩しい世紀を識っているから、感慨深くなっちゃってね』

ラスティ「狩るか狩られるか。あなたの時代は、そうだったんでしたね」

『うん。生命の律って感じかな?…きっとこれから、人間は更に進歩していくだろうから…私の夢、叶うかもしれないんだぁ』

ラスティ「ルゥ様の夢…お聞きしても?」

『勿論。龍と人、竜とハンター。その関係も嫌いじゃないけど、私は、私本人はね?』

ラスティ「はい」

『───人と、絆を結ぶ…『ライダー』を乗せて飛ぶ龍に、なってみたいってずっと思ってるんだよねぇ』

ラスティ「素敵な夢です。そして…」

ルゥ『うん。──もう、叶ってるんだぁ』

『皆の、優しい皆のお陰で──ね』




雪華の守護、黄金たる破壊

【──────!!】

 

リッカとマシュを乗せたマリケスが、咆哮と共に疾走する。或いはそれは、疾走とは異なる在り様やもしれない。

 

鋭角な軌道を描き、小刻みな跳躍を繰り返しながら猛進する。それはマリケスという存在の、尋常ならざる身体能力の産物。彼はマリカに託されし、影の獣。

 

マリケスはマリカの義理の弟の契を結ぶほどにマリカと親しかった。そして黄金律から死を取り除いた際には、彼に管理と守護を命じたほどに信頼していた。

 

しかしマリカは黄金樹の支配を脱するために死のルーンをマリケスから盗み取り、ゴッドウィンを殺しエルデンリングを砕いた。マリケスは、マリカの真意を見抜けなかった。

 

マリケスの由来は大いなる意志、二本指の使徒。黄金律に翻意あれば、マリケスは意志を奪われマリカを殺す絶対の宿痾があった。

 

故にマリカはマリケスに何も伝えず裏切りという離別を選んだ。マリケスが、神に惨たらしく意志を奪われ尊厳を踏み躙られぬよう。

 

マリカの真意を共有していたカルデアから聞き及んだマリケスは迷いを捨て、運命の死を持ち馳せ参じた。

 

『その死のルーンには、果たすべき意味がある。世界の滅びの運命に、死を。マリケス』

 

遥か昔、マリカに託された言葉を刻み生きた。それが今、成就せんとしている。

 

『───────────』

 

エルデの獣が、天の鎖を振り払う。神の力を宿すも、獣たるもの。絞め殺すには暫し時が足りなかった。

 

「前方から反応!来ますっ!!」

 

マシュの言葉と同時、エルデの獣が持つ神の遺剣から光の刃が振るい放たれる。黄金の波動──。振れれば即座に両断される。

 

【盾よ、主を護れ!】

 

マリケスは言葉と共に跳躍を繰り返す。二度、三度。絶望の黄金から、希望を護り抜く。

 

【──────!!】

 

目指すは遠くも、マリケスは決して止まらない。跳躍に跳躍を重ね、光波から逃れてみせる。

 

「オルテナウス起動!先輩、失礼します!」

 

全ての防護ユニットを総展開したと同時、剣を振るい終わったエルデの獣の左手に光が集まる。

 

「エルデの流星ってやつだ!」

「防ぎますっ!!」

 

リッカらに向けられる黄金の流星。一つ一つが生命に届く死兆の流星群を、マシュが迎え撃つ。

 

「宝具モード・ロードカルデアス!全防護開始!」

 

マシュのオルテナウスに付けられた飛来ユニットの全てが、ロード・カルデアスを展開する。何重もの人理の礎が、リッカとマリケスの生命を守護する。

 

「はあああああああああっ!!!」

 

「………………」

 

激しく叫ぶマシュに対し、リッカは凪いでいる。

 

頑張れとは言わない。彼女は既に誰よりも頑張ってくれている。

 

万に一つも彼女を疑わない。彼女は守護する。

 

自分達は、こんな黄金よりもあまりに激しい嵐、戦争たる概念を乗り越えたのだから。

 

【────!!】

 

その時マリケスは跳躍した。リッカ達を乗せながら、得物たる黒き剣を振るい、死の光波を飛ばす。

 

それらは黄金の流星に過たず届き、真っ二つに両断する。彼の剣には【運命の死】が宿る。

 

それは神すらも殺す、ゴッドウィンが宿していた死の概念を生み出す根幹。エルデンリングに組み込まれし死の全て。

 

故に彼はデミゴッドにすら恐れられし【黒き剣のマリケス】である。彼は、神々の死そのものだったのだ。

 

【成し遂げろ。死を、ヤツの首元へと】

 

運命の死を有すれば、神であれど殺めることが叶う。

 

それを理解している故か、決して獣は近づこうとしない。時空を歪め、死を遠ざけんとしているのだ。

 

【埒が開かぬか】

 

持久戦、千日手では敗北は必須である。今のリッカ達に神の連戦は不可能。そして更に、ミケラもまた突入の可能性がある。

 

「でもこれ、間違いなくマリケスを警戒してる動きだよ」

 

「はい!過剰な引き撃ちは、腰の引けている動きです!であるならば!」

 

マシュは高らかに盾を振り上げる。

 

「モード・ロード・キャメロット!顕現せよ、遥か今は理想の城────!!」

 

マリケスの眼前に、城壁が出でる。それはマシュの宝具の、即時展開。

 

「マリケスさん!まっすぐそのまま突っきってください!」

 

【何………】

 

「全て私が防ぎます!ですから、どうか…!」

 

マシュの問いに、マリケスは疾走で応える。

 

エルデの獣が、運命の死を畏れているのは明白だ。

 

ならば近付き、恐慌を誘発する。マリケスは、其処にこそ勝機があるのだと確信する。

 

「マリケスさん、ありがとうございます!どうかそのまま、まっすぐ───ッ!?」

 

しかし、エルデの獣はそれでも尚世界の理たる存在。

 

「宙に浮いて……」

 

高く、高く獣は飛翔した。そこには、空中にエルデンリングの紋章が浮かび……

 

「きゃあぁっ!?」

【!】

「っ…!」

 

空間から、爆発が生じる。物理法則を完全に無視した、爆発の発生。前触れも予兆もなく、世界が即座に爆ぜてみせる。

 

【…………!!】

 

マリケスに爆発が集中する。足を奪われれば最早届かぬ。それが願いというように。

 

「マリケス!!」

 

【案ずるな、この程度など傷にもならぬ】

 

マリケスは言葉通り、意に介さず爆風の中を猛進する。マシュに阻まれ、ただの衝撃と閃光であるならば取るに足りない。

 

【進み、止まらぬと知れば如何とするか。迫る死に、獣はどう向き合うか】

 

マリケスの言葉に答えが宿る。

 

『───────』

 

最大の時空位相大爆発ですら死なぬと解った獣は、直接的な排除についに打って出る。

 

距離と位置を以て死を遠ざけていたが、やがては必ず追い付かれる。

 

ならば、死を今度こそ破壊する。消し去り、無くす。隔離などは生ぬるいと言わんばかりの、斬撃態勢。

 

「マシュ!!」

 

リッカは見据えた。勝負の機運を。

 

「はいっ!!」

 

マシュは即座に応える。

 

「オルテナウス、スプリーム・モード・ディフェンス!!」

 

全ての武装ユニットを全装着。それにより、オルテナウス搭載聖杯を全力運転。

 

「行きます、先輩!マリケスさん!!」

 

『────────』

 

空中より翼を広げ、剣にエネルギーを満たす獣。

 

疾走する背において、最後の切り札を使うマシュ。

 

超巨大なる神の剣。

 

勇気が生み出す概念の防護。

 

それらが今、覇権を決める時が来た。

 

「『此処に在りき(カルデアス)』─────!!」

 

力の限りに、マシュは叫ぶ。

 

「『理想郷(アヴァロン)』───────!!!!!」

 

マシュが辿り着けし、最高にして最硬の概念防御。

 

それが、壮絶な負荷と反動と引き換えに───

 

「はぁあぁあぁあーーーッッッ!!」

『─────────』

 

エルデの獣を防ぎ、留め、相殺していたのだ。それは、神の質量と力を完全に比肩したという事実。

 

『───────』

 

マシュの気迫が、エルデの獣に肉薄する。

 

護るべき者への感謝と責任。

 

生命への敬愛と感謝。

 

隣人への誓い。

 

それらがマシュの力となって、破滅の黄金を雄々しく受け止める。

 

「おぉお────────ッ!!!」

 

展開されし防護は、神の刃すら通さない。

 

それは、神への比類なき冒涜たる神体への防御。

 

「マシュ、大丈夫」

 

「!」

 

「あなたなら出来るよ。──私の大切な、メインサーヴァントのあなたなら!」

 

「────勿論です、先輩!!」 

 

マシュは、リッカの声に奮い立つ。

 

独りでは叶わぬとも、二人でならば。

 

皆の旅路を、敗北のままでは終わらせない。

 

「うおおぉおおぉおおぉおおぉおおぉおーーーーーッッッ!!」

 

マシュの魂を込めた、全身全霊の宝具最大展開。

 

決して死ぬはずも、滅びるはずもない。

 

比類なき神が、やがて───

 

『──────!!!』

 

完全に、拮抗し、相殺が成ったその時。

 

──否、その時にこそ。

 

 

『!?!?!?!?』

 

獣が展開していた──

 

黄金律が、世界ごと砕け散った瞬間であった。




ルゥ『今だよ!』

ルゥは、遥かなる上からマシュと獣の激突を見ていた。

ラスティ「承知!」

ラスティは全てを知り、ルゥの背中より飛び降りた。

ラスティ「マリカ!貴女が砕き、ラダゴンが直した相反により果たせなかった無念を此処で晴らす!」

壊れかけの槌に、渾身の全身全霊を込める。

ラスティ「力こそ王の故───!我等褪せ人の真理をこの一撃に!!」

それは、マリカの万感が詰まった槌を読み取り、永劫砕き失う事により世界に畳み掛ける一撃。

「これが─────新世界に奉らんとするもの!!」

全存在を込めて放つ、その戦技の名は───!

「『黄金砕き』ーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!」

ラスティの、驚天動地の才覚。

マリカの狂おしいまでの次世代への精算。

そして、褪せ人たる戦士の末裔。

それらすべてが、奇跡的に備わった時。

『─────』

空間の地面に、深々と叩き込まれたマリカの槌。

『─────!』

───それら全てが、一堂に介した渾身の一撃は。

『!!!!!!』

『世界そのもの』、たる黄金律の空間を。

───完膚無きまでに、叩き壊した。
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