人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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【世に混沌のあらん事を】
【世に混沌のあらん事を】
【世に混沌のあらん事を】

【全てを、大いなる一つに】

レダ「くっ……!」

ダン「レダ、負傷したか」

レダ「問題ない、この程度…!」

ダン「…ミケラ様のところに行け」

レダ「!」

ダン「今のミケラ様には、お前が必要だ。此処は任せろ」

レダ「…すまない、同士ダン!」



マレニア『キリがない、しかし…!』

フィンレイ『マレニア様!』

マレニア『!フィンレイ!?』

フィンレイ『はい!遺灰となりし身、仮初ながら受肉いたしでございます!そして伝令!』

マレニア『!』

フィンレイ『数多の軍が、こちらに向かっていると!』

マレニア『──そうか!』

(ならば、凌ぎ切るまで…!)


神の世界への意義

「……………」

 

数を増し、殺到する狂い火の信奉者達。無限の苦痛の中で見出されし、狂い火の覇王。

 

全てを焼き溶かす大いなる狂い火を信ずる者たちとの最終決戦の中で…一人、失意に沈む者がいた。

 

「僕は……」

 

それはミケラ。全てを捨て、楽園の世紀を作らんが為に奮闘し神となったデミゴッド。

 

彼は、世界を優しくするために神となった。

 

そして、その為に全てを捨てた。愛も、迷いも、恐れも、嘆きも。それは全て、世界を優しくするためのもの。

 

私利私欲は微塵もない。

 

しかし、其処には自らの願いや情熱もない使命以上の意味もまたなかった。

 

「……………」

 

皆、戦っている。

 

女王マリカの復活と号令の下、ゴッドフレイが、ゴッドウィンが、ラダーンが、あらゆる生命が戦っている。

 

そこに在るのは、世界を護るという崇高な意志。

 

誰もが自分の意志で、誰に問われるまでもなく戦っている。

 

それを導き、成し遂げるのは本来、自分の役割のはずだったのに。

 

「私は、何のために……」

 

半身を捨てた。何もかもを捨てた。

 

愛も、最初の目的の為に妹すらも。

 

その結末が、何も成せぬこの無様な在り方なのだとしなら。

 

自分は一体、何のために神に至ったのか。

 

世界を優しくする。それすら果たせなかった自分には、一体何があるというのか。

 

失意に沈むミケラ。もう自身には、何も残っていない。

 

もう、何も……。

 

「ミケラ様!」

 

その時、鋭く彼に捧げられる声がある。その声を、ミケラは良く聞き及んでいた。

 

「嗚呼、無事でございましたか。何よりです、ミケラ様」

 

それは、針の騎士レダ。彼が見出せし、ミケラの騎士。

 

「レ────」

 

その時、ミケラは見た。

 

狂い火の信徒達との激しい戦いにより、レダの顔面の一部が火傷を負っていることを。

 

「レダ!火傷が…!」

 

「この程度、些末です。まだ針は折れていません。戦えます」

 

レダはそれでも立ち上がる。

 

「私だけではありません。ご覧ください」

 

レダに連れ、顔を見上げる。

 

「…………!」

 

其処には、苛烈かつ熾烈に戦うマレニアの姿が在った。

 

そして、差別されていた筈のしろがね人達が、狼に乗り弓を放つ姿があった。

 

醜いと蔑まれていた混種たちが、ミケラの兜をかぶり戦う姿があった。

 

それらは皆、虐げられし無名の弱者。

 

ミケラが救い、祝福せし者たちであった。

 

「どうして……」

 

ミケラは呆然と呟く。

 

皆、自身が助けた者たちだ。

 

でも、自身はもう助けられない。神になれど、世界は作れなかった。

 

自分にはもう何もない。それなのに、何故このような場所にまでやってきたのか。

 

「ミケラ様。差し出がましいようですが、何も出来なかった等と悔やむ必要は何処にもありません」

 

レダはミケラを庇いながら、説く。

 

「ミケラ様はエルデンリングが砕け、壊れ果てた世界にて…私達に救いを齎してくださいました」

 

「救い…」

 

「はい。誰もが一顧だにせぬ弱者を。踏みにじられし無名の弱者を。その愛で、その優しさで」

 

私も同じです。そう、レダは傅く。

 

「ですがそれ故に、私達は全てをあなたに押し付けてしまっていた。私達が挑み、乗り越え、変革せねばならないものすらもあなたに押し付けてしまっていた」

 

その事に、レダは謝罪する。

 

「お許しを、ミケラ様。私達の不甲斐なさまで、貴方に背負わせることになってしまった不敬を」

 

「レダ…」

 

「ミケラ様。世界は変革を成し遂げようとしています。私の友たる彼女が、その仲間達が。マリカや皆、黄金と月と共に」

 

その世界の到来を信じ、レダは告げる。

 

「ミケラ様は、新たなる世界へとお向かいください。旧律の業は、その清算は私達にお任せを」

 

「!」

 

「もう、貴方は誰かの為に生きずとも良い。願わくば、あなたの失い、棄ててしまった全てをお取り戻しください」

 

手甲を外し、不敬を覚悟にてレダはミケラに触れる。

 

「私は、人を信じられぬ破綻した女でした。そんな私に、ミケラ様は救いを下さった。その御恩を、けして忘れることはありません」

 

「……!」

 

「マレニア様は、変わらず貴方をお慕いしております。人であれ、神であれ、何かを完全に捨て去ることは容易でなく、きっとできない」

 

だからこそ、レダは告げる。

 

「あなたが棄ててしまった全ては、私達が拾い集めていただきました。どうか、貴方は貴方の成したいことを、成したいままに」

 

それはきっと、今生の───。

 

「さようなら、ミケラ様。心から、お慕いしておりました」

 

「レダ!」

 

振り返らず、レダは死地に戻る。虹色と黄金、破滅の黄色が乱れる戦場へと。

 

「うう……っ」

 

ミケラは項垂れる。自身は、この期に及んで何をしているのか。

 

彼等は皆、自身を慕いやってきた者たちだ。

 

きっと、自らを助けるために、力になりたいと思い立ってくれた者たちだ。

 

自身は彼等を、彼等の全てを背負っているつもりでいた。

 

自らが、救われぬ全てを支えているつもりだった。

 

だが、実際は全く違う。

 

〜〜

 

「ああっ……!」

『グルルルッ……!』

 

「大丈夫か!」

 

「はい、すみません!」

 

「しろがね人は足が悪い、不用意に近付きすぎるな!近接は頑丈な混種に任せろ!」

 

「はい!ミケラ様の為に、勝利を!」

 

 

誰かが全てを背負う必要はない。

 

皆が、少しずつ誰かの何かを背負ってあげればいい。

 

神に全てを任せずとも、人は自らの足で立っていける。

 

「………私は……」

 

その時、全てを捨てたはずの心に想いが灯る。

 

「私は、護りたい。彼等を」

 

それは、弱くとも懸命に生きる生命を。

 

それは、支え合い助け合う生命は。

 

今、理解した。

 

世界は、生命は。神が思うままにしていいものではない。

 

大切な、かけがえのない生命が紡ぐ世界を護るためにこそ神がいる。

 

ならばこそ、自分は立ち上がらなくては。

 

「何も成せなかった、だからこそ」

 

何も成せなかったとは、全てが終わり、絶えたという意味ではない。

 

何も成せなかったからこそ、出来ることはきっとある。

 

「だから、成し遂げなくては…!」

 

神ではない。

 

魅了ではない。

 

ただ、この世界に生きる一つの生命として、成すべき事を成す。

 

その為に、立ち上がらなくてはならない。

 

神となった者として。

 

無力ではない自分として。

 

皆に救いを、その夢を。

 

輝ける聖樹を、見せつけた責任を果たさなくてはならないのだから。

 

「っ、くっ………!」

 

誰の力も借りずに立ち上がる。

 

それだけの事が、これほどに難しい。

 

だが、それでも。自分は立たなくては。

 

自分は───。

 

「ああっ……!」

 

足がもつれ、無様に倒れ伏さんとするミケラ。

 

───しかし。

 

『フッ、いい目になり、いい気迫を宿したがまだまだだな』

 

ミケラを、優しく受け止める者。

 

「ぁ───」

 

それは、朗らかな笑みを浮かべし黄金の貴公子。

 

『独りで立つのはいい。しかし、誰にも頼らぬというのは強さではないぞ。ミケラ』

 

ゴッドウィン。黄金のゴッドウィンが、ミケラを支えたのだ。

 

「どう、して…」

 

あれほど侮辱を繰り返し。

 

あれほど利用を繰り返し。

 

あれほど尊厳を踏み躙った。

 

そんな自分を、何故兄様が。

 

『兄が弟を助ける』

 

ミケラを、約束の形態と同じ様に背負い立つ。

 

『それが、そんなにも不思議な事か?』

 

「…………!!」

 

『おいおい、泣くのは勝利にとっておくものだぞ?』

 

「すみません……すみません、ゴッドウィン兄様……」

 

黄金の貴公子。黄金のゴッドウィン。

 

『気にするな。手間のかかるくらいが弟は可愛いものだ』

 

そう告げ、両手に斧を掲げゴッドウィンは構える。

 

『さぁ行くぞ、ミケラ!世界を優しくするんだろ?』

 

ゴッドウィンの身体に、再び黄金の神威が満ちる。

 

「はい、ゴッドウィン兄様!……たくさん酷いことをいい、たくさん酷いことをしてしまったカルデアの皆様には後で償いを。ただ、今は!」

 

遍く生命の為に、戦うべき時だと。

 

再び、楽園の神と王の似姿は蘇った。

 

 

 

 




マレニア『くっ………!』

【世に混沌のあらん事を】
【世に混沌のあらん事を…】
【世に混沌のあらん事を!】

『あまりにも数が多い…!凌ぎきれるか…!?』

マレニア、レダ達が数の劣勢に攻めあぐねていた…

その時。

マレニア『!!』

狂い火の全てを吹き飛ばし、滅する光。

戦場の全てを蹂躙する黄金の雷。

それらが、狂い火を薙ぎ祓う。

マレニア『これは!』

マレニアは見る。

『───ああ……』

其処には、マレニアが歓喜する光景があった。

『ミケラ兄様。ゴッドウィン兄さま…』

そこには、力を合わせ…

神として、生命を護らんとする…

優しいミケラの、奮闘せし姿が在った。
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