人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ルシファー『え、本当に!?それは嬉しいな!』
──えっ?嬉しい?
ルシファー『だって、その翅はきっと僕の背中にあるよりずっと美しく輝いていただろうからね!』
──ルシファー…
『いつまでも、明星の翅が似合う君でいてね。僕からのお願いだよ、エア』
──うん!
ルシファー『それじゃあ、パーティー会場で会おうね!演奏担当なんだ〜!』
──ルシファー……ありがとう。皆を好きになってくれて…
アスモデウス【…………】
──あ!アスモデウスさん!
アスモデウス【あなた……】
──?
【素晴らしいわ…!あんなに眩しいルシファー様の笑顔を引き出せるだなんて…!】
──!?
【私も、あなたを見習わせてもらうわね!それじゃあ、長旅お疲れ様!】
───アスモデウスさん……
レヴィアタン『羨ましい……』
──!?
レヴィアタン『ルシファー様と対等に認められているあなたが……』
──レヴィアタンさん。
それは嫉妬ではなく羨望です!
レヴィアタン『…あ』
──妬みではなく望みなら、叶えられます!
『……!』
──見ましょう!ルシファーと同じ景色を!
『……ポジティブ』
『ふふ。噂通りに、羨ましい…』
「まずは、正式にカルデアの皆様に謝罪を。本当に…御迷惑をおかけしました」
ミケラはカルデアに赴き、謝罪を述べていた。神を目指し、神に至り、それでも届くことの無かった救済…。
ミケラにとって、ミケラが望んでいた救済の形はカルデアの旅路であり、それを邪魔してしまった自身の過ちを、彼は自らの足で詫びにやってきたのだ。
「うーん、そんなに気にする必要ないんじゃないかな?子供はやらかすのが仕事っていうじゃない?」
「ロマニ、彼は真面目に謝意を告げているのよ。茶化さない」
「うぅ、聖杯にムードメイク能力もお願いするんだったなぁ…」
こほん、と咳払いを行い、オルガマリーはミケラに向き直る。
「……人の心を持つ神。それが過ちか魅力的かは、人によって大きく答えを変えていく命題だと思います」
「君は……カルデアの、長だね」
「オルガマリーといいます。ミケラ様。もしあなたが心を間違い、過ちだと思うなら…私個人として、異を唱えたいと思います」
神が心を持つ。人の心を以て接する。
それは、奇跡でもあるのだと彼女は語る。
「物言わぬ機械、物言わぬ神はあくまでそういった機構でしかありません。我々は、ミケラ様を慮る様々な方々の想いに触れてた自覚があります」
「あなたの半身、トリーナでしたよね?ちゃんとお願い!受け取っていましたよ!」
『トリーナから……』
「ゴッドウィン様もそう。あなたの妹のマレニア様もそう。あなたが救ったレダ達もそう。この方々は、あなたの苦悩や悩み、また齎した救いを抱いたからこそ、あなたを決して諦めなかった」
オルガマリーは、締めくくる。
「あなたが間違えたことは、全てを捨てて神となろうとした事。それを過ちと踏みとどまり、至っていただけたのであれば…。今一度、私達や世界と共に歩んでいただきたく思うのです」
『もう一度…』
「君が神になろうとした理由や、囁いた…或いは、諭した相手。そういった存在を教えて貰うのも助かるしね!」
神として一人になるのではなく、人とともに歩む道を選んで欲しい。
それが、カルデア側の示した戦後処理。
「あー、こほん。ミケラ君だったかね?」
『!』
「私はカルデア副所長、ゴルドルフ・ムジーク。あー、その。神に対してこういう物言いは烏滸がましいにも程があるのだが…」
ゴルドルフがそっと、ミケラの肩を叩く。
「やりたいこと、やるべきこと。それらが噛み合わずもどかしい想いをしてしまう気持ち、私にはよく分かる。魔術師のクセに魔術師以外はなんでも出来る男と専らの噂だからねェ」
「言ってて虚しくならないかおっさん」
「黙りなさいボイルド君!…というわけで、ほら」
そこに用意されていたのは、ビッグ・ボギーとゴルドルフが協力して作った…。
「エビグラタンだよキミィ。神様だってお腹は減るだろう?その…頑張りの労いとして、食べるとよいよ」
『…………』
ミケラはそっと受け取り、口にそのグラタンを運ぶ。
『…………美味しい……』
それは神の味や、神の味付けなどといったものはない、ただ一流の味付け。
それは、神となり、全てを捨てたはずのミケラの心にも暖かく響くもの。
『美味しい………』
真心という、人が心に持つ黄金の宝であった。
「これからどうするかは、ゆっくり決めるとよい」
「今はただ、疲れた心身を癒やしてもバチは当たらないさ」
「えぇ。好きなだけ動いて、倒れたように眠る」
「それが子供の特権!というやつなのですから!」
ゴルドルフ、ロマニ、オルガマリー、シオン達の言葉がミケラに届けられる。
ミケラは、それこそが人が持つ心の暖かさ。
自分が捨て去ろうとした、世界に必要不可欠なものだと知り…。
一人、静かに涙を流すのだった。
そしてその頃、リムグレイブにて。
「エルデンリングの譲渡式と調印はローデイル。和睦と償いは教会……これからの会合は、やはり円卓が良かろうな」
ネフェリ・ルーはゴドリックより引き継がれし王座にて、新たなる勢力としての王の責務に追われていた。
「今や黄金、月に肩を並べる勢力となった事を鑑みて、やはり私の目に狂いはなかった…!」
ケネス・ハイトはネフェリの補佐、側近として彼女を支える。
「狭間の地はエルデンリングと黄金樹の新生により生まれ変わり、自然も蘇りつつある。しかし、このリムグレイブは最初から自然豊かなる土地であった!それは一重に我等が高貴なる自覚を持って」
「これからは狭間の地の外よりも数多の者らが来ると考えれば…、観光業に力をいれるのもいいかもしれんな」
「か、観光業!?ネフェリ、貴殿ほどの王が観光業…」
「なんだ、もう名物は考えているのだぞ?勇者の肉塊というとびきりの…」
「……君の王たる才覚に微塵も疑いは持っていないが、せめて上に立つ為のあれこれは覚えてほしくあるな……」
「なんだ?疑っているのか?なら振る舞ってやろうとも。勇者の肉塊!王都ではカニとエビが流行っているようだが負けてはいられん!よし!リムグレイブはグルメに力をいれるとしよう!!」
「ネフェリ・ルー!?方針はよく考え給えネフェリ・ルー!」
持ち前の戦士メンタルにて、奔放かつ型破りな統治を繰り出すネフェリに、胃痛と頭痛は絶えなくなったケネス・ハイト。
「全く……」
王の補佐として各地を巡る事としたギデオン……かつてのネフェリの義父は、遠巻きにため息をつくのであった。
「………………」
「ご照覧あれいはいいのかね」
「!?」
いつ黄金の一族達に顔合わせをするか、決めかねるゴドリックもまた、リムグレイブにて駐屯しているのであった。
………そして、皆とはかなり異なった道を選んだ者も存在する。
「成る程、ここが狭間の地の外…。リッカ達の、故郷か」
リッカ達の世界。その故郷の夏草に降り立つは、赤髪のミリセント。
「彼女達には本当に世話になった。恩を返したいが、彼女の剣の腕前には私ではとても及ばない…」
故に彼女が思い立った事。それは彼女達の故郷を守護する事だった。
かつてマレニアが矜持を捨て、腐敗でケイリッドを汚染した際、そこには地獄が生まれた。
土地が穢れ、壊される地獄。それを友たる者達に味わって欲しくない。それが、ミリセントを狭間の地の外へと導く事になった。
「刀や刃物は御法度…と聞いたが、それでも警護や警備として、やれることはある筈だ。身近な事から、出来る事を見つけていこう」
「…お前が、リッカ達から報告があった異世界のエージェントか」
「…!」
瞬間、冥府の神が如き気迫と剣気にミリセントは驚愕する。
「今からお前の引き取り手になる伊藤無慙だ。共に正しく生きる者達の盾となり、全ての悪を滅ぼす剣となるぞ」
(……成る程、リッカが強くなった理由が解った気がする)
これほどの修羅が当たり前のように存在しているのならば、彼女が比類なき力を有することになるのも至極道理であるだろう。
「……ミリセントという者だ。どうか、よろしく頼む」
凄まじいな、狭間の外は……。
ややズレ気味の確信を得ながら、ミリセントは就任する。
あの狭間の地で出会った友の……
命を懸けて護るべき故郷の、牙城へと。
更にその頃。
ミケラ「これが、制服……」
マレニア「よくお似合いです、兄様」
ミケラ「僕はともかく、君まで…」
マレニア「良いのです、兄様。共に学びましょう」
ミケラ「……解ったよ。ここでいいのかな?」
?「新入生、ようこそシャーレへ。歓迎しよう」
ミケラ「!」
マレニア「貴公が、噂に轟けし『神殺し』…」
?「少し違う」
マレニア「!」
「私はアダム・カドモン」
「─────柴犬らーめん愛好会、名誉会長だ」
ミケラは人を、世界を学ぶために…
アダムの下を、訪れるのだった。