『・・・とも、だち?』
「そんなんじゃない。ただ・・・彼女は征服者に、文明を滅ぼされた憎しみがあるから、気になっていただけだよ」
『・・・』
「・・・人間は解らないな。神に、絶対の存在に、何故、挑めるんだ・・・」
『・・・人は、前に進む。自分が、人であるかぎり・・・』
「進化する、ということか。・・・弱くても、生きているのはそれが理由なのか・・・」
「さぁやって参りました。エリドゥにて行われる、人対神。炎のルチャリブレマッチ!メソポタミア初となるルチャ試合に観客は沸き立っております!実況は私、アクティブモンスターことエルキドゥ。解説は我等が王様、英雄王ギルガメッシュでお送りいたします!」
マルドゥークの掌の司会席にて流暢に捲し立てるはエルキドゥ。パイプ椅子に座り机に足を投げ出しているは英雄王ギルガメッシュである
(そして内緒の捕捉、リアクションにはエア、フォウくんをお呼びいたしております!今日はよろしくお願いいたします、二人とも)
――よろしくお願いいたします!出来る限り頑張ります!
(よろしく~)
眼鏡をかけ、スーツに身を包みビジネスウーマンめいた格好を取るエアに、肩に乗るフォウ
「無駄にノリが良いではないか。衣装まで見繕いおって。何か悪いものでも食べたのか?」
王が苦笑いにて追求するがさらりと友は流す
「たまにはテンションあげなくちゃね!おっと!早速軽快にリングインする影がひとつ!あれは誰だ!蛇か!?翼竜か!?いや違う、あれは――!」
側転バック転三回捻り宙返りにてリングインするは『翼ある蛇』――
「ハーイ!楽しみマショウ!」
「ケツァル・コアトルだー!宇宙よりやって来た大人のお姉さん!慈悲深き太陽の女神!イシュタルと交換してほしいとの声が堪えないケツァル・コアトルが軽やかにリングイーン!」
観客席から射撃が飛んでくるが王と友は片手でいなす
「さて、今日の挑戦者のマスターちゃんは――、!?」
瞬間、エリドゥの空が漆黒に覆われ、黒き雷が降り注ぎ、風が巻き起こる
「おっと突然の天変地異!これはどうしたことだ!?いや、リングに何かが、何かがあります!」
エルキドゥの指摘通り、ケツァル・コアトルの目の前には【黒い球体】が浮かんでいる
其処へ――凄まじい雷鳴と共に、黒い雷が落ち、球体がひび割れる
其処から顕れしは――黒き、龍をイメージしたコスチュームに身を包み、また黒き龍のマスクを被りし人類最後のマスター・・・
「リングネーム・・・ウルティモ・ルーダ・ドラゴン!よろしくお願いいたします!」
沸き上がる周囲のジャガーフレンズ、カルデア一行
「ドラゴンがリングイーン!!なんと派手なパフォーマンスなんだー!これがプロレス!これがルチャというルールなのか~!?これにはケツァル・コアトルもご満悦の模様!ニコニコしながら手を振っている~!」
――カッコいい~!
《形から入るタイプであったか。この手の競技は華の無いものは受け入れられぬ。塩試合などもっての他。観客も湧かせてやらねば一流とは呼べまいよ》
エアがフォウをだきよせ興奮のまま抱きしめる。エビフ山の双峰に圧殺され御満悦のフォウ
「レフェリーはジャガーマンとかいう変なの!さぁ役者は揃いました!今――ゴングです!」
リングにて睨み合う、二人の戦士
「会場を盛り上げてくれてありがとう!でも、善玉の私に対してルーダ・ドラゴンだなんて・・・ちょっと悲しいわ。自分を貶めなくても良いのに・・・」
「邪龍的にこれでいいの!見せてあげるよ姉さん。悪は悪でも『善を輝かせる悪だって事をね』!」
「ハイ!楽しみにしてまース!」
二人は笑いあい――
「では、開始です!」
マシュが高らかに、試合開始のゴングを打ちならす――!
「おおっとケツァル・コアトルルーダ・ドラゴン共にロープに跳んだー!その反動を使ってなんと――!」
二人の体は跳ね、リング中央にてぶつかり合う。その衝撃で大気が震え、リングがぐらぐらと揺れる
「ショルダーアタックのぶつかり合い!体と体による意地の見せあい、ファーストコンタクトからの凄まじい衝撃ああっとこれは――!」
直ぐ様距離を離し、クロスレンジにて二人はにらみ合い――
「だぁあぁあぁ!!」
「ムーチョ!ムーチョ!」
凄まじい打撃戦を繰り広げる――!
「足を止めた殴りあいだーっ!激しい打撃音がここまで伝わっているようです!これは凄まじい試合運び、波乱の幕開けとなりましたね解説のギルガメッシュ!」
「打撃はもっとも手間のかからぬ原始的な戦いだ。立ち上がりには丁度よかろう。派手さより、そら。奴等の技術に注目せよ」
鋭く重く、急所を狙うパンクラチオン仕込みの技をケツァル・コアトルは的確に捌き、無力化する。受け止め、かわし、避ける。
派手さと大振り、ダイナミックな拳や足技をリッカはスウェー、スリッピングで的確にいなしている
見た目は派手ながら、お互いにダメージは全くない。互いが互いを魅せあう意思疏通の打撃だ
「一週間みっちり勉強してくれたのね!スリッピングアウェーまで身に付けちゃうなんて!」
「受け身三年。基本だけど奥が深いから・・・三倍勉強したよ!」
その打撃技の応酬を繰り広げ、均衡を破ったのはリッカであった
「ああっとリッカ選手動いたー!半歩下がり力を込めての――!」
空中に体を投げ出し、両足をそろえケツァル・コアトルを蹴り飛ばすリッカ
――ドロップキック!大技です!ケツァル・コアトルさんたまらずロープにまで吹き飛ばされまし――ああっ!?
「――オーレ!」
ドロップキックの直撃を受けたケツァル・コアトルは、ロープを巧みに使う。トップロープとセカンドロープを掴み、間にて体をぐるりと回転。そのままロケットのように飛び出し――
「がふぅっ――!!」
渾身のラリアットを受け、空中で一回転しながらマットに叩きつけられ、反動でバウンドしながら場外へ吹っ飛ぶ
――いい、一回転しました!人が!空中で!一回転!
《案ずるな。あれは受け身の一環よ》
――受け身!?
「うぅうぅ・・・」
リッカが場外にて呻き声をあげ、仰向けに寝転がる。それを確認したケツァル・コアトルは助走をつけ、ロープにて跳躍し回転を加え――
「トペ・プランチャー!!」
体全体でリッカに降りかかる――!
「がはぁっ――!!」
更に追い討ちをくらい、『誰が見ても大ダメージ』を負った様子を見せるリッカ
「大ダメージが決まったー!!大丈夫か!?リッカ選手これは大丈夫なのかー!?」
のたうち回りながらうずくまり、ダメージを申告する。――が
「まだまだ!ムーチョムーチョ!」
リング中央に立ったケツァル・コアトルが笑顔で手招きし、それを見て覚醒し、飛び起きるリッカ
「まだまだぁ!」
高速ダッシュし、ケツァル・コアトルにタックルをかます
「見切りま――えっ!?」
そのままリッカは『スライディング』してケツァル・コアトルの股をくぐり、背中に回り込み足を掴む
「ああっとリッカ選手ケツァル・コアトルを転ばせた!そして両足を取り、回り、回り、回り――!」
ぐるぐると回転し、六回転した後に空中に放り投げ――
――じゃ、ジャイアントスイングからの――!
「地獄の九所封じ、その一!」
ケツァル・コアトルの頭と足を掴み、ロックし
「大雪山落とし――っ!!!」
リングに、背中から叩き付ける――!
「っっっっ~~!!」
たまらず背中を抑え、ダメージを伝えるケツァル・コアトル。更にリッカはケツァル・コアトルの腕を取り
「地獄の九所封じ、その二と三!スピンアーム・・・」
回転し、両腕を粉砕せんと技を繰り出す、が――!
「そうはさせまセーン!」
叩き付けられる瞬間、足を踏ん張り、ブリッジの体勢で技をカットする。そのまま腕を力付くで解放させ、側転しながらコーナーポストに上り――
「トペ・プランチャー!」
大の字になりながらリッカめがけて飛び出す。直撃し、マットに叩きつけられるリッカ。
「まさかまさかの切り返し~!地獄の九所封じを華麗にカットし渾身のフライングボディアタックー!魅せてくれるぞケツァル・コアトルーっ!」
――ああっ・・・!
《案ずるな。ダメージは互いに致命的なものは入っておらぬ。が――》
「あっとまだまだ攻撃は終わらないようだぞ!?ケツァル・コアトルが仰向けのリッカ選手の両足を四の字状にクロスさせ、自分の足ではさんで固定し・・・!」
そのまま、前方へ回転し、丸め込む――!
「ぐぅうぅうっ!!」
リッカが固められ、苦悶の声を漏らす
――あれはミ・アモール・デ・ミ・ノビア!スペイン語で恋人やフィアンセ、愛しい人を意味する固め技!あのままではー!!
「1!2!」
「だあぁあっ!!」
カウントが入るところを、力付くで抜け出すリッカ。素早くケツァル・コアトルを引き起こし
「地獄の九所封じ、四と五!」
足をたたみ、ケツァル・コアトルの膝に自らの膝を叩き付ける――!
「ダブルニー・クラッシャーッ!!!」
骨も砕かん勢いで叩きつけられたケツァル・コアトルの脚に、甚大なダメージが与えられる
「あいっつ――っ!なんの!まだまだ!」
上半身の力のみでリッカを軸に回り、回転を加え、破壊された脚でリッカの頭を掴み
「ウラカン・ラナーッ!」
力の限りマットに叩き付ける。バウンドし、吹っ飛んでいくリッカは・・・
「ロープを!ロープをつかんでいます!そしてそのまま――!」
「飛鳥文化アタックー!!!」
丸まり回転。自らが珠となりケツァル・コアトルにぶち当たる!
「っっっっ――!ムーチョ!ムーチョ!」
「まだまだぁあ!!」
「二人の闘志は萎えていない!この戦いの行方はどうなるのか誰にも予測できなーい!」
エルキドゥの言う通り、二人の解り合う為の戦いは、果てることなく続いた
ケツァル・コアトルが打撃を繰り出す。ラリアット、ラッシュ、キック。ドロップキック。それを受け、流し、タックルにて潜り込み、それをまた切られる
リッカが投げる。地獄の九所封じ、ラストワンと握手を除く全てを食らい、また完璧な受け身でダメージを殺す
ケツァル・コアトルが飛ぶ。ロープを、コーナーを自在に使い、思うがままに飛び回る
リッカはそれらを全て受け止め、また反撃に転じる
観客は熱狂し、声援が飛び交う
――頑張れー!マスター!ケツァル・コアトル!どっちも頑張れー!!
最初は怖がっていたエアも熱狂し、応援し声を出す
其処には、リッカとケツァル・コアトルが織り成す――『自由なる闘争』が、形となっていたのだ――
「楽しい!私今!すっごく楽しいデース!」
ケツァル・コアトルは昂っていた。技を繰り出し、繰り出され、体力を削られながらも。ハイになっている
「技をかけたりかけられたり!これ!これが私がやりたかった『自由なる闘争』!楽しすぎて狂ってしまいそうデース!」
「――、――」
リッカは身体がズタボロとなっていた。ケツァル・コアトルの技の掛けは完璧そのもので、リッカの受け身が完璧でなくばダメージが降りかかる。そのダメージの蓄積は、並大抵のものではない
だが――そんなズタボロでも、リッカの闘志と目の輝きは、欠片も翳ってはいない――
「リッカちゃん!あなた最高!ルーダであっても技術を疎かにせず、相手にしっかりと敬意を払う!互いに試合を作り、観客を湧かせる!」
「ルチャの事、勉強したから・・・ね」
「それデース!『相手を知り、解り合う!』私と戦った中で、ルチャを勉強してくれたのはあなただけ!もう、本当に最高よ!」
あはは、と力なく笑うリッカ。――気力はあれど、身体は少し、元気がないのだ
(外れた関節や脱臼を入れながら戦うのは無理があったかな・・・)
「――ね、リッカちゃん!どんな戦いであれ、喜びを忘れないでね!」
そんなリッカに、ケツァル・コアトルは問いかける
「!」
「私は楽しいから戦うのです!人間だって楽しいから戦うのです!憎しみを持たなければ相手を殺すまではいかないわ!それがルチャ・リブレの美点だわ!だからアナタも、この戦いを楽しんでね!そうすれば、もっと解り合える筈なのデース!」
・・・それは――
~~
【・・・努忘れるな。楽しみを持つものに・・・――】
~~
「――ううん。戦いなんて楽しいわけないじゃん」
リッカは、はっきりと口にした
戦いは命の奪い合い、怖いものだ。間違っても楽しくなんかない
だって、戦いでは誰かが死ぬ。死ぬものだ、必ず
戦いそのものは決して美化してはいけない。戦いを、『楽しんではいけない』
それは、自分を『外道』に落とす行いに他ならないからだ――
「――――――――――ハッ!?」
リッカの答えを聞き、ケツァル・コアトルは硬直し、我に返る
「あまりの悲しさに固まってしまいました・・・戦いを楽しめないとか、それ、私の全否定デース・・・」
リッカはその様に心を痛めるが、撤回はしない
「ごめんね。――私は、戦いを好きにはなれないよ。どうやっても」
「ムムム、いいわ!逆に訊いちゃうから!リッカちゃんにとって、戦いとは何なのかしら!?」
「――」
――・・・――
《・・・》
・・・あぁ、
「決まってるじゃん」
それなら、解りやすい・・・――
「――『解り合う』為に、全力で乗り越えるものだよ。姉さん」
そう告げ。真っ直ぐに構える
全ては、解り合う為。
ぶつかり合い、高めあい、そして・・・解り合う為
そのために乗り越えるもの
不可欠なもの
「そして――それを恐れないのが、私の生きざま!!」
それが、藤丸リッカの意地なのだ――!
「・・・そう。そういう人間でしたか。――素敵な答えね。本当に――」
その言葉を聞いて、慈しみの笑みを浮かべるケツァル・コアトル
「いいわ!なら見事、私を乗り越えて見せなさい!あぁ、楽しみね!楽しいわ!あなたの世代まで育ってくれれば、私達が夢見た人類が生まれるなんて!」
爆発的に高まる闘気――来る!
「あなたは本当に努力家で、頑張り屋で――一直線!でも、あなたには欠けているものが一つだけあります。それは――」
側転を繰り返し、一瞬で懐に潜り込まれ、身体をがっしりと掴まれる
「――!」
「あなたには――高さが足りマセーン!!」
そのまま巻きこった風と共に――
「~~~~!!!」
遥か彼方、上空200メートルにぶち上げられる
「ああっとケツァル・コアトルが決めにいった――!!高い!高く高く投げられた――!どこまでいったんだ――!?」
《ケツァル・コアトルめ、決着をつけるか》
――マスター!
「先輩!!」
『リッカ!!』
一同が絶望を顔に浮かべるなか・・・
(――来た!!)
リッカは――勝利の確信を浮かべる!
「私は蛇!私は炎!!シウ・コアトル・・・――えっ!?」
技をかけていた筈のケツァル・コアトルが、驚愕に目を見開く
「――そう、私には高さが足りなかった。どうしても、私には此処まで届かなかった。でも――!」
姿勢を反転し、自らの魔力で生成したコスチュームから、泥で編み込んだ『翼』をはためかせ――
「あなたなら、『届かせてくれると信じていた!!』」
一息に、真下にいるケツァル・コアトルに突撃する――!!
「な、まさか――!あなたは、最初からこれを狙って――!?」
ケツァル・コアトルは――思い至る
今までの試合、彼女はただの一度も・・・
「うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお――――ッッッ!!!!」
『ルチャの技を仕掛けてきていない』――!
《ふはははははははははははは!!!全てはこの為の布石と来たか!よいぞ!かましてやれ!大馬鹿めが!!》
ギルガメッシュが大笑いするほど、リッカの行動は大それていた
必ずケツァル・コアトルは大技を仕掛けてくれる
必ずケツァル・コアトルは全力で来る。
だって、それがルチャリブレ
互いの信頼と情熱で織り成す闘争!
だから、必ず――私を高みに連れていってくれる――!!
「あーっと加速!加速!ぐんぐん加速する!!真下にいるケツァル・コアトルめがけリッカ選手が加速する――!!」
――マスター!!
叫び、全身全霊で祈るエア
どうか、『二人とも』無事で――!!
「ホントに落ちてきたわね・・・!?その高さ、私がルチャマスターでも死ぬしかないわよ!?それでも――」
飛来する、落下する
其処に、ケツァル・コアトルは姿を見る
「それでも――この私に!プランチャを見舞わせると言うの!?」
「勿論!!これが私の――!!」
黒き――邪悪なる龍の姿を見る――!!
「
凄まじい衝撃の中、蛇と龍がリングにて正面衝突する――!!!
爆音、衝撃、吹き飛ぶジャガー
辺りにメガトンクラスの運動エネルギーを撒き散らし、破壊的衝撃の威力が吹き荒れる――!
「これは!これはどうなった――!?」
巻き起こる風の中、リングに視線が集まる
――マスター・・・!
「先輩・・・!」
「――やっぱり、生きてる」
ケツァル・コアトルを下敷きに、リッカが声を漏らす
「ハァイ、生きてマース。私が伝説級のルチャドーラだったことに感謝してくだサーイ・・・」
「くらくら、はっいけね!カウント――1!」
カウントの、大合唱がはなたれる
「空を飛ぶ技は、あれですよ?受ける側と、仕掛ける側、どっちも一流の腕がないと人死にが出るのデース・・・リッカちゃん、受け身は一流なのに仕掛けるのは素人だからメチャクチャ緊張しちゃいました・・・」
「「「「「2――!!」」」」」
「でも、どうしてこんな無茶を?私が避けたら、とか・・・考えなかったデスか?」
「あはは、まぁね。技は、あれだけってきめてたから。全部受け身を練習したの。そうすれば、姉さんの技が派手に見えるし、何より――」
・・・それが、理由
「受け止めてくれるって信じてた。互いを信じ、信頼し、殺さないように解り合う自由なる闘争。それが、ルチャリブレ。――でしょ?」
リッカは、最初から・・・信じていたのだ
「~~~~~~っっっ!!!」
リングにて戦う、最高のパートナーを・・・
「「「「「3――!!!」」」」」
「あ――――――もう!リッカちゃん大好き~~~~~~っっっ!!私、女神同盟に入ってよかった~~~~!!うん!そして女神同盟から抜けるのでした!だってリッカちゃんと契約するからネ!ありがとう!――負けたわ!マスター!私を、こんなに打ちのめした人ははじめて!南米の女神、ケツァル・コアトル!ここからはあなたのために、この力を振るっちゃうから――!」
「決まった――――!!此処に決着――!!勝利したのは――藤丸リッカ選手だ――っ!!」
「ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
――ぐらしあーす!!むーちょ!むーちょ~~!!
(エアがメキシコめいてる!?)
「勝っちゃった、本当に人間が、女神に・・・」
「先輩~~~~!!!!」
・・・此処に、女神と人の戦いは幕を閉じる
「ナイスファイト!ケツァル・コアトル!」
「そちらこそ!グラシアス!リッカ!」
固い固い握手と、胸の昂りを残して――
「いやぁ、燃えた燃えた。オーバーヒートめいて動いた甲斐があったよ、うんうん」
『麻婆』
「待て、貴様何を食べている?」
「麻婆。栄養価抜群で美味しいよ?ジグラットの君にも差し入れしてきたから、きっと滋養強壮になるはずさ」
「――やけに昂っていたのはそれが理由だったか――」
――待ってください!それを、賢王にですか!?
「うん。美味しかったから」
――あわ、あわわ、あわわわわわ・・・
「おのれ、貴様――何を馬鹿なことを――!」
「・・・此処はどこだ、中継はどうなった?シドゥリめが用意した料理を、赤い風味を口にしてから、我は・・・」
冥界
「――――なるほど。王が何者かに献上された料理を口にすれば、冥界に堕ちるほどの衝撃であった、か――死ぬほど不味かったか?・・・などと言っている場合か!!本当に死んでいるではないか我――!!!!」
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