人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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シャーレ

ミカ「ちょっとー!これ、どういう事!?」

『潰れたミニケーキ』

ミカ「配達頼んで!届いたのがこれって何かな!?」

配達員「あ?こっちは配達の速さを売りにしてるんだよ。食べちまえば同じだろうが」

ミカ(ムカッ)

配達員「ほら、さっさとお代払えよ」

ミカ「やり直して?」

配達員「は?なっ───」

ミカ「配達を、最初から、やり直して?」

配達員(こ、拳が壁にめり込んで──)

ミカ「ね?」

配達員「は、はいいいっ───!!」

ミカ「………はぁ……」

(せっかく、アダム先生と食べようと思ってたのになぁ…)




プチコラボイベント〜そして列車は無くなった〜

『では、アダム先生。滞り無い契約をお願いしますよ』

 

「えぇ、こちらとしてもあなたとは素晴らしい関係を…」

 

『クックックッ……』

 

「フフフ…」

 

シャーレの穏やかな昼下がり。いつもの様に仕事を朝に終わらせ、23時間暇な時間を生み出したシャーレの先生、アダム・カドモンは端末を手に会談を交わしていた。

 

「せんせ〜〜。ケーキ諸事情で届かなくなっちゃった〜…」

 

チェアに座るアダムに、落胆しながら声を掛けるは聖園ミカ。彼女はアダムのシャーレ当番の日にちであり、デザートを注文していたのだ。

 

「そうか、それは残念だ…。そして先程の拳が壁にめり込んだ様な音は聞き間違いか?」

 

「えっ!?あ、あはは…。仕事を舐め腐った配達員に再配達の御依頼を、ね?」

 

「成る程、キリエ・エレイソンだな。殴らなかっただけ偉いぞミカ」

 

「偉いのハードル低すぎだよ!?もー、せっかくアダム先生と食べさせっこしたかったのに〜!」

 

アダムの腹に飛び込むミカ。ぐっ、と固めた腹筋がミカの重みを完全に弾き返す。

 

「まぁそういうなミカ。オレは今日予定を入れていない。ゆるりと午後を共に過ごそう」

 

「うん、知ってる♪だから再配達お願いしたから、すぐにやってくるはずだよ♪その時は最高のお茶でもナギちゃんから──」

 

その時、シャーレ内部に呼び鈴の高い音が鳴る。それはインターホンプログラムの起動。

 

「?もう再配達が来たのかな?」

 

「君の誠意の拳が効いたな」

 

しかし、様子がおかしい。インターホンの鳴らす音が増え、間隔が増えていく。

 

「……イタズラかな?アダム先生にイタズラとかいい度胸じゃんね♪」

 

「ミカ?」

 

「ちょっと黙……ううん、お話してくるね☆」

 

だが、インターホンの音は直ぐ様鳴り止む。顔を見合わせるアダムとミカ。

 

「人に会う予定は無かった筈だが…?」

 

───その時。

 

「アッダム先生!みつけたーっ!」

「とつげきー。ダイナミック、エントリー」

 

「ひゃっ!?」

 

ミカの両脇をすり抜け、アダムに突進した影。

 

そしてそのまま───

 

「おっと」

 

アダムは立ち上がり、軽々と二人の少女を受け止める。

 

「おお〜。オベリスクの巨神兵〜」

「パヒャヒャ!噂通りにパワフル〜!」

 

「君達は……」

 

トリニティ、ゲヘナ、そしてミレニアムとも違う制服。車掌の意匠を持ち、緑髪金眼の小柄な二人の少女。

 

「お前達……待てと言った筈だが」

 

そして後より来たる、軍服の様な鉄道服を着用し、右目に眼帯をつけくすんだ金髪の少女。

 

「あ!ハイランダー鉄道学園の!」

 

ミカの問いに、眼帯の少女は答える。

 

「……シャーレのアダム・カドモン先生。アポイントも無く来訪してしまい申し訳ない」

 

「パヒャヒャ!サプライズってやつ!」

「だが私達は謝らない〜」

 

「だが…緊急事態が起きた。ぜひとも、アダム先生の力を借りたく思い、やってきたのだ」

 

「緊急事態…?」

 

こうなれば、アダムに自らの時間を優先する思考はない。

 

「──話を聞こうか」

 

(あ、仕事モードだぁ…)

 

後半の余暇が消えた事を覚悟し、空を仰ぐミカであった。

 

 

「改めて自己紹介を。私は朝霧スオウ。ハイランダー鉄道学園の管理監督官を務めている。お前達も挨拶しろ」

 

「はーい。私は橘ノゾミ!よろしくね♪」

「同じく橘ヒカリー。今後とも、よろしくー」

 

人を弄ぶ様な態度のノゾミ、そしてのんびりとしたヒカリ。スオウ含めてハイランダー鉄道学園よりの使者と彼女は締めくくる。

 

「ハイランダー鉄道学園…。まんま読んで字の通りの電車屋さんだよね?」

 

「あぁ。アビドス区域にも大いに勢力を持った学園と聞いている。その様な学園の監督と幹部がシャーレにわざわざ来てくれるとは光栄だ」

 

「幹部って一発でわかっちゃった!」

「やはりー、天才かー」

 

「……アダム先生に解決してほしい問題。それは、我等ハイランダーの下から独りでに動いた列車の捜索、並びにそこに積まれた重要物資の奪還となる」

 

「独りでに列車が?動いたの?」

 

興味無さげにソファに寝ていたミカが、驚いたように聴き返す。

 

「本来ならば当然この様な事はあり得ない。しかし……」

 

「ちょーっと目を離したら、あった場所に列車が無くてさー」

「青天の霹靂ー、カルチャーショックー」

 

「……この様に、運転と操舵のみで成り上がった二人には解決の荷が重いと理事会は判断した。故に…」

 

「へるぷみー。アダム先生、助けて〜」

「アダム先生、とってもつよつよなんでしょー?列車持ち運んで取り返すなんてへっちゃらだよね!パヒャッ☆」

 

「アダム先生をなんだと思ってるのかな…?」

 

「楽勝ではあるが…」

 

「一応否定くらいは入れておこうよ!?」

 

「其処には、とある要人より託された極めて重要な物資が搬入されている手筈だ。事を荒立てず、決して損害を出さずに指定の要人に渡さなくてはならない」

 

「大変だね、スオウ!」

「ノルマをこなさなくては立ちいかぬー」

 

「誰のせいだと思っている……。そしてこの二人に問題解決の能力は皆無だ」

 

「ちょっとー!酷いじゃんー!」

「事実陳列罪でー、たいほするー」

 

 

「故に、このキヴォトス最大にして最強の存在、アダム先生に一生徒としてお願いにやってきた、という訳だ」

 

「成る程、事情は理解した」

 

アダムは立ち上がる。

 

「生徒の願いとカラオケのリクエストは断らない主義だ。ハイランダーの乱れたダイヤ、私の掌で正しい形に戻してみせよう」

 

「「おぉ〜〜〜!!」」

 

瞬間、アダムの胸にノゾミとヒカリが飛び込みアダムは勢いで回転する。

 

「頼もし〜!よろしくね、アダム先生♪」

「人の心の光ー、垣間見たヒカリー」

 

「感謝する。解決の暁には、ハイランダー学園の協力を約束させていただく」

 

それだけを告げ、スオウは立ち上がる。

 

「私はクロノス報道部の追及をかわさなくてはならない。同行は出来ないが…作戦の無事を祈っている」

 

「私を頼ってくれた事、嬉しく思う。お陰でミノリにも良い報告ができそうだ」

 

「よろしくお願いする。…お前達も、事の重大さを受け止め解決に努めろ」

 

「「はーい!」」

 

一礼を返し、スオウはノゾミとヒカリを置いてシャーレを後にする。

 

「忙しないなー。急ぐのは車両だけでいいのにねー?」

「君行き急ぐ事なかれー」

 

「すまない、ミカ。一仕事終わらせて戻る」

 

「シャーレの先生だもん、しょうがないよ。晩御飯作って待ってるからね♪」

 

「おぉー!通い妻だー!」

「やまとなでしこー、わびさびー」

 

「そう見える?そう見えるー?あははっ、お上手なんだからー!」

 

「あ!お菓子だー!」

「手付金でー、ちょうだいするー」

 

「折角だ、皆でティータイムと行こうか、ミカ」

 

「さんせー!☆」

 

そんな訳で、ハイランダー鉄道学園の生徒達と関わる機会を得たアダム。

 

(ハイランダー鉄道学園……。キヴォトスにおいて、多種多様の行動範囲を得ている学園だ。きっとホシノらのプラスにもなるはずだ)

 

「ロールケーキだー!ふっとーい!」

「あごが外れちゃうー」

 

 

「ちゃんと切り分けてあげるから、大人しく待ってること!」

 

「「はーい!」」

 

消えた列車。積み込まれた大切な積荷。

 

ハイランダー鉄道学園の生徒達との出会い。

 

(それに、個人的にも今この時期にダイヤを乱されるのは困る。個人的な『取引』があるからな…)

 

今、アダムの壮絶な昼下がり……

 

一つの列車を巡る、プチ騒動が始まろうとしていた。

 




キヴォトスにおける鉄道の管理と、それに関する教育に特化した学園。

ヴァルキューレ警察学校と同じく、キヴォトス全土を活動圏とし、土地としての自治区が存在しないという珍しい性質を持っている。ハイランダーの場合、代わりに学園が管理している路線そのものが自治区としての役割を果たしている。

現在活動が確認されている地域はD.U.やゲヘナ自治区。最近はアビドス自治区への進出も目論んでいる。

銃撃戦上等の学園都市で交通機関の運営に携わっているだけあって、問題のある乗客への対応も日常茶飯事であり、マナーを守らない客、特にキセル行為などをする相手には容赦しない。

生徒達も走っている列車内外での戦闘に長けており、車両に火器を搭載した装甲列車にしている路線も存在する。

路線管理の他、鉄道関連の工事などを請け負う事もあり、業務上各地の外部組織と提携する事も多い。

一方、学園内では路線単位で明確な派閥や部署が形成されており、各々が独自に路線を運営する体制となっている。

それ故、異なる部署同時は必要以上に交流を行う事はないらしく、協力はおろか相互牽制や軋轢も珍しくない模様。

故に地区ごとの気風・方針にも差が出易く、例としてゲヘナ担当の乗務員たちは、日頃ゲヘナ生による無賃乗車といった蛮行に晒されているせいで相当に鬱憤が溜まっており、闇組織の提携や営利目的のダイヤ変更など黒い部分も目立った。

体制のホワイトブラックぶりも同様に差異が大きい。

尚、迷惑客を銃火器で制圧する事についてもする部署としない部署があるらしく、前者には説得でどうにかしようとしていたが、銃器でどうにかするのが一番早いと考えるようになった所もある。
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