人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
アダム「ん?」
アオバ「ど、どういう関係なのでしょうか……?」
アダム「あぁ、すまない。そう言えば説明していなかったな」
ヒカリ「悪い人ー?」
ノゾミ「政界のビッグネームとか?」
アダム「そうでもあるな。彼は社会福祉、奨学金、学業支援を一手に担う実業家の方だ」
アオバ「………………はい?」
アダム「ではこちらのアダマンタイト、ヒヒイロカネ、オリハルコン、ダマスカス鋼の一式並び、アトランティス、ムー大陸の遺産を」
実業家「ありがとうございますアダム先生……!『キヴォトスの王』とすら呼ばれし貴方様の御厚意、必ずや生徒達の為に役立ててみせましょう…!」
アオバ「……………はい?」
「アダム先生のお陰で、チャリティーオークションを滞りなく続けられます。これ程の貴重な資源、最早生徒達の莫大な貢献に繋がることでしょう…!」
アダムと契約していた男性は、アダムより受け取った物資を受け取りその真意を説明する。アダムは、自身が集めていた物資を引き渡したようだ。
「スオウー。チャリティーオークションってなにー?」
「慈善事業を目的とした慈善事業だ。確かな流通ルートを通り、生み出された収益を奨学金、施設復興など正しき場所に活用する…」
「ぜんこうー?」
「そういう事だ」
「アダム先生のもたらせし異界の神秘なる調度品、貴金属、骨董品…。施設どころか街や都市の復興すらもできるでしょう!」
「私は経済や流通のルートを所有していない。アビドス復興の為に便利屋とは別にパトロンが必要だったのでな。放浪生活で集めた貴金属や物資を、生徒に還元してもらったのだよ」
「生徒は助かり、免税にも最適!まさに一石二鳥ですからな!がハハハッ!!」
…つまり。彼の意味深な笑みや態度は別に悪辣とか悪い大人とかでは全くなく。
「…………───紛らわしいんですけど!?」
単にそういうクセの強い存在だというオチだったのである。
「良く言われますが、全く覚えがありませんなぁ。クックック……」
「それ!それですよ!アダム先生も最初に言ってくだされば…!」
「すまなかったな。この方の溢れ出る『いい人』オーラは伝わっていたと思っていたのだ」
「いい人オーラ!?」
「アダム先生が契約してる相手が悪い人なわけないじゃん?」
「人間をー、みるめをみがけー、おろかものー」
「ぐっ……!こういう時だけ幹部っぽいことを…!」
「アダム先生、これで生まれた利益は必ずやアビドス復興の資金に回させていただきますよ」
「よろしくお願い致します。あなたと良い関係を築けたのは幸運でした」
「いえいえ、私もかつて最大のマンモス校と呼ばれるアビドス高校の真の威容…そして、『砂祭り』に『陸路』に『空路』!開拓しがいのあるフロンティアを目の当たりにしたかったのでね!クックック…ガッハッハ!!」
不幸のすれ違いは起こらず、やがて事業家は、スオウに叩き伏せられたブロロロ連合に向き直る。
「さて、キヴォトス・トランスポーター連盟……略してブロロロ連合の皆さんでしたかな」
(その呼び方付き合ってあげるんだ……)
「こうもトラブル続きでは、信頼関係を築き直す必要がありそうですなぁ…?」
「さ、先に裏切ったのはお前だろ!この積み荷だって、最初はあたしらに任せる手筈だったはずだ!」
「それは……貴方がたのサービスが悪いからでしょう…?昨日頼んだ寿司がシャリとネタがバラバラになって、もはや海鮮丼になっていましたからね…」
「うわ、ひっど」
「そんなあなた方に、貴重品の運搬を任せられると本当にお考えで?」
「ぐっ……。で、でもうちらはスピードが命なんだよ!」
「えぇ、それは勿論存じております。ですので……貴方がたの強みを活かせるよう、私がサポートして差し上げましょう」
それは即ち、スポンサーやパトロンが付くという事。個人活動より活動範囲や規模はぐっと増えるだろう。
「本当か!?」
「ただし!それはきっちり自らの行動の責任を取り、償いを果たしてからですよ」
「そ、それは……ウチらにまたチャンスをくれるってことか…?」
挽回の機会。それをふいにするほどリーダーは愚かではなかった。
「……解った。出来る限りの弁償をしよう。それから、初心に戻って一からやり直す……」
「ぼ、ボス……」
「総長…」
「今度こそ、プロの配達員として誠実に働いてみせる。…流通配達でトップになる。…その夢を諦めたわけじゃねぇよ。お前達がいりゃあ叶えられる。今はただ、ゆっくり歩くだけだからな」
「あのー、いい話っぽいですけど…全然そんな事無いですからね?」
「ぐっ…!あ、あぁ。そうだったな…。一週間使える送迎無料クーポンを受け取ってくれ」
「じ、自分達の評判聞いてましたか?いらないんですけど…!!」
「そ、そう言わないでくれ!二枚、三枚でどうだ…!?」
ブロロロ連合は心を入れ替え、スポンサーを得るために誠実に働く事を選ぶ。
そして契約は果たされ、これからのアビドスは飛躍的に復興していくだろう。
線路や列車は修復可能。取り返しのつかない損傷は皆無。
つまり、万事は滞りなく。
「………任務、完了だな」
「疲れたー!でも楽しかったー!」
「ガス欠ー、美味しいもの食べたいー」
「皆、良く頑張った。本当にお疲れ様だったな」
「先生も凄かったー。よしよしー」
「また呼んでもいいよね、先生!」
「無論だ。生徒の呼び声あるところ、いつでもどこでもやってこよう」
「「わーい!」」
「……ハイランダー学園の上層部には、ありのままを報告致します。本当にありがとうございました」
「あぁ。ハイランダー学園の労働環境の改善にも着手するつもりだ。遠くない未来、また会おう」
「……はい。感謝致します」
「………あ、あの…」
ハイランダー三人衆のあと、アオバは声を上げる。
「わ、私が呼んでも……来てくれますか?」
本来、誰にも頼っても意味がないと諦めていたアオバ。
だが、今回は…信じられると、信じたいと思ったアダムにへと声を掛ける。
「勿論だ。いつでも呼び、いつでも頼ってくれ」
「…もう一つ、聞いてもいいですか?」
「勿論だ」
「どうして、ここまでしてくれるんですか…?」
「生徒の未来への道を切り拓く。それが、私の使命であり、喜びだからな」
「………。…………これじゃあ、皆…期待しますね。今の私みたいに…」
「お前達。報告書と始末書を製作するぞ」
「あー、そだね。それがあったねー」
「書類仕事やだー。アダム先生ー、助けて〜」
「………皆さんも、ちゃんと責任感を持った人達だったんですね。ちょっと…ほんのちょっとだけ見直しました…」
「もっと大きな声で言ってー」
「い、嫌です…!」
「ヒカリ達、友達でしょー」
「!友達……」
「あ!スオウ!良いこと思いついた!シャーレに行って業務やらない?」
「!…シャーレか」
「私は構わないぞ。辛く面倒な事こそ、誠実に早急に終わらせる事が結果的にたくさん楽ができるものだ」
「おおー、アダム先生のうんちくー」
「アオバ、君も来るといい」
「!」
「───ノゾミ達の、友達なのだから」
「………。わ、私はアダム先生に憧れただけで、別に二人は尊敬してないですけど…」
差し出された手を、アオバは握る。
「もう少しだけ……よろしくお願いします」
アダムは共に帰還する。
アオバを肩車に、ヒカリとノゾミと手を繋ぎ、スオウと肩を並べ、壊れてしまった線路を伝い。
「アダム先生本当に凄かったねー!またアレ、やってよね!」
「ウルトラマンー。今度は一息に止めてー」
「ああなるのは緊急事態だからな…。あまり披露する機会には恵まれてほしくないものだ」
「この線路…確かに壊れちゃったけど…名物になるかもしれませんね。アダム先生の、武勇伝の……」
「……時にアダム先生。あの映像は本当ですか?戦車とヘリを振り回し暴れたのは…」
「事実だ。同じ大人ならば容赦は不要だからな」
「………成る程……」
「こ、今度は普通に、何事もなく……列車を、ハイランダーをご利用くださいね、アダム先生…」
「アオバ」
「その……、私も、整備している列車も、たくさんあります。アダム先生には、たくさん乗ってもらいたいですから…」
「フッ───それならば、一日中乗り回すのも悪くはないな」
沈みゆく夕日に向けて……
鉄道を司る者達は、歩みを進めて帰路を歩いていった
ミカ「あ!お帰りなさい!アダム先───」
アダム「ただいま、ミカ」
ノゾミ「やほー!」
ヒカリ「おー」
アオバ「こ、こんにちは…」
スオウ「…邪魔をする」
ミカ「……」
「……託児所…?」