人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
オルガマリー「皆、集まったわね」
ロマニ「ど、どうしたんだいマリー。神妙な顔で…」
オルガマリー「今から見せる存在は、他言無用よ。そして、非人道的な扱いを禁ずるわ」
ダ・ヴィンチちゃん「非人道的な扱い…?」
オルガマリー「彼女の事よ」
ユメ『』
ゴルドルフ「ぬおっ!?」
シオン「彼女は…?眠っているのですか…?」
オルガマリー「彼女は梔子ユメ。2年前に命を落とした、小鳥遊ホシノの先輩よ」
シバ「ひわわ、2年前に…!?」
ロマニ「おかしいぞ…?腐敗も損壊も見られない。まるで…」
オルガマリー「えぇ…」
「まるで、眠っているかのよう…」
オルガマリーは、ユメの遺体を丁重にカルデア首脳陣達の下に運び込んだ。
変わらずユメの遺体は、眠るように横たわっており美しさすら感じられる。死が二年前でありながら、だ。
「そうか…。彼女は自らの母校、後輩、そして故郷を守り抜くために、命を…」
ゴルドルフが、静かに俯く。
「だが早すぎるだろう…。遺されたものの心も救いなさいよ、バカモンが…」
我が身のように震えるゴルドルフの背中を優しく撫で、オルガマリーは告げる。
「彼女が戦った『セト』と呼ばれる神格の顕現。アビドスを苦しめていた砂嵐…それは、二年前にこのユメ生徒が討ち果たした存在が引き起こしていたものと、私とケイオス・カルデアスタッフは断定したわ」
「セトと戦ったユメ生徒…もしかして彼女は『オシリス』なのかい?」
ダ・ヴィンチちゃんの理解はまさに天才のそれ。オルガマリーは続ける。
「エジプト神話において、神々の王を巡り争ったオシリスとセト。その神秘を持つ者達はまさに不倶戴天の宿敵であったのでしょう。言うなれば、セトの抑止力として彼女があった。アビドスは、我々の世界で言うエジプトの神々の神秘を有する地域…」
「わ、私は常々思っていたのだがね?キヴォトスには生徒はいるが『親』がいない。アダム先生以外にも人の男性も見受けられない。ありふれた学園生活とするには不自然多すぎないかね…?」
「百合に挟まる男がいなくていいよね!」
「ロマニは給料カット」
「これにはやはり神々の神秘がカタチを取っているとしか思えない…!!」
ロマニの醜態にため息一つ漏らし、オルガマリーは続ける。
「キヴォトスの神秘の解明はアダム先生が生徒達や黒服達に任せましょう。問題はこの、ユメ生徒よ」
「に、二年間も死体を保管していたのかね小鳥遊ホシノは…?あ、アダム先生に至急メンタルケアの要請をしなくては!」
「いえ、彼女は結果的にファインプレーをしてくれました。火葬でもしようものなら、アダム先生ですら奇跡を掴めなかったかも」
「───あーあーあー!!そうかそうか!そういう事ですか!成る程、確かに!」
シオンが合点のいったように手を叩く。ゴルドルフはロマニに耳打ちする。
(常々思ってたんだけどね?ここには神域の天才ばかりいるじゃん?)
(ボクらには肩身が狭いですよねぇ…)
(黙りなさいソロモン男!君もそっちなんだよ!)
「オシリスは妻の手により蘇り、やがて冥界の王ともなった。その神秘を宿すユメ生徒はつまり…!」
「えぇ、そうよ。『梔子ユメは死んでいない』。正確には、新たなる生を持っている状態という事…!」
オルガマリーは確信を込めて告げる。
「本当かね!?彼女はまた学園生活を送れると!?」
「えぇ、副所長。その通りです!」
「良かった…。アダム先生といる生徒達は皆幸せそうでねェ。この娘も是非リッカの父親たる彼に……、いや待ちたまえ、生き返るのは嬉しいのだが…」
なぜ、この子だけが?ゴルドルフは告げる。
「恐らく彼女とセトは、互いが互いを確実に殺せる存在だった。互いの命に、届きうる一撃を相討ちに近い形で受けた」
「それならばこのユメ生徒の勝ちなのではないかね!?」
「いいえ、オシリスは本来セトに八つ裂きにされ敗北を喫しています。本来ならば勝てる見込みなどなかった。…本来ならば」
「……このようなあどけない彼女が、神の運命すらも変えたのか…」
「彼女はヘイローという神秘の輪を砕かれ、死に至った。しかし……彼女はまだ腐敗もせず、損壊もなくこうして眠っている」
「そ、それは良いことなのではないかね?」
「勿論、そして凶報でもあります。──セトも、恐らく生きているのですから」
驚愕の事実。オルガマリーは続ける。
「アビドスの敷地は、キヴォトス最大。リッカが緑地にしてくれた事により復興は進んでいますがかつてはほとんどが砂漠地帯…」
(リッカ君はもう立派な規格外マスターだね!)
(イザナミ神がぶっ壊れてるのもありますがね!)
「砂嵐や暴風雨を巻き起こしたのがセトであり、それが復活するのであれば。その被害はやがてキヴォトス全域に降り注ぐでしょう。即ち、キヴォトス全域が壊滅的な被害を負うことになります」
「かつてマンモス校だったアビドスが、今や未開の僻地扱いに成ってしまうほどの嵐、か…」
「かつてのユメ生徒の尽力で討ち果たされた…相討ちとなったセト。その剥き出しの神性が再び剥き出しになった時、キヴォトスには未曾有の危機が訪れる…。人の生活圏は、嵐により脆く崩れ去るものですから」
「む、迎え撃つ事は可能なのかね?ほら、銃社会だし…」
「台風を打ち払える兵器を、人間は開発できたでしょうか?」
「……絶望的、という事か。アダム先生なら絶対何とかするであろうが、生徒達の学園やアビドスは間違いなく…」
ゴルドルフの言葉を、オルガマリーは覆す。
「今恐らく、アビドスは神秘のせめぎ合いが起きています。セトの嵐、リッカの揮ったイザナミ…いえ、伊邪那美命の豊穣の力。それは、オシリスの代わりのファインプレーを果たしてくれていた」
〜
セト「───────!!!」
イザナミ『ババアバリアーーーーーーーー!!』
〜
「忘れがちだけど、最高神格の一人なんだもんねぇイザナミ様は…」
「後でミカンをお供えですね!」
「でも、真なるアビドスの繁栄には、嵐と災厄のセトを倒さなくては到来しない。セトは悪辣な面を持つ。その神秘を宿してるならば、必ずやアビドスの繁栄を阻むはずよ」
〜
セト「オオオオオオオオオオオオ!!」
イザナミ「あなやぁ〜〜〜〜〜!?」
〜
「故にこの梔子ユメの遺体は、私達が厳重に保管しなくてはならないわ。オシリスの神秘が奇跡となり、新たなる目覚めを迎えるために!」
「────えぇ!その通りです!」
その時、管制室に入室するサーヴァント。それは…
「ニトクリス、オシリスの名を聞き挟みやってまいりました。神秘を宿せし娘はそこに?」
「あ、あぁ。そういえばニトクリスはホルスの化身!何か感じられる事が在るのかね!」
「えぇ勿論。皆様の言う通り、彼女の肉体は死んでおりません。戻る魂を迎えるため、待っているのでしょう。怨敵セトを討つために」
エジプトのサーヴァントお墨付きにより、湧く一同。しかし。
「まだ喜ぶのは早いですよ。オシリスが男根を食われ完全な復活はならなかったように、彼女は死んではいませんが逆にこのままでは決して復活はしません」
「なんだって!?」
「オシリスと同じなのです。彼女には、取り戻すべき何か…復活するために不可欠な何かが失われている。それがなくば、この麗しきオシリスは目覚めないでしょう」
「オシリスと、同じ……」
「はっ!まさか、───ふたな」
「ロマニ、給料なし」
「そんなぁ!?真面目に考えたんだよ!?」
「彼女が失った、或いは見つけてほしい『何か』。それを触媒にすれば、魂は身体に戻りきっと目覚めましょう。いと高き死と再生、冥府の神。オシリスなるこの少女は必ずや」
「……キヴォトスを滅ぼす嵐の神、セト……」
「その活路となる彼女、ユメ……」
キヴォトスの生徒の遺体という、黒服達垂涎の神秘の結晶。
「……まぁ、それはおいおい探していこう。今はひとまず、彼女を尊厳をもった、一人の人間として扱おうじゃないか」
「ゴルドルフ副所長…」
「彼女は一度アビドスを、世界を救った救世主なのだろう?すぐに叩き起こしては可哀想じゃあないか。寝ているのなら、寝かせてやろうともさ」
「ふふっ、そうだねゴルドルフ君。心のぜい肉、絶好調さ!」
「……目覚めなさいよ、ユメ君。若い身空で死ぬなんて、28のおっさんが許しませんからね……」
もし、自身が結婚していたら。子を持つこともあっただろうか。
ユメを見るゴルドルフには、そんな柔らかな博愛があった。
(頼みます、アダム先生。彼女と、ホシノが…)
アビドスの命運を左右する。
オルガマリーには、そんな確信があった。
アビドス、砂漠地帯
ホシノ「アダム先生がハイランダーや便利屋に頼んで、交通網を切り拓いてくれるんだって。うへ〜、おじさん頼もしいよ〜」
『ユメの盾』
「生徒会も畳んで、対策委員会一本でやっていかなくちゃ……………ねぇ、先輩」
(……手帳、どこにあるんですか?ヒントくらい残してくださいよ。イジワルだなぁ…)
ハイランダー&アビドス編
『新生せしオシリス』
前日譚
To Be Continued … … … … …