人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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リッカ「ミカちゃん!誕生日おめでとうー!」

ミカ「あはは!ありがとうリッちゃん!」

セイア「まぁあくまでキャラ設定的なもので、学年が動いたり、成長したりはしないのだが」

ナギサ「メタ発言が過ぎますよ、セイアさん」

アダム「オレも嬉しいよ、ミカ。生誕の日とは、何よりも尊く在るべきなのだから」

ミカ「ありがとう、アダム先生。問題児だった私が、こんなにも変われたのはあなたの、皆のお陰だよ!本当に、ありがとね!」

セイア「だった、というのは間違いだね。今も破天荒な問題児さ」

ナギサ「外交を明るさで押し通すのは、はい」

ミカ「もー!1年一度しかない日なんだから、もっとヨイショしてよー!」

リッカ「ミカちゃんさいこー!ミカちゃんプリンセスー!!」
ミカ「えへへ〜。リッちゃんも、アダム先生の自慢の娘さんだよっ☆」

リッカ「ほわあああああああああ!!!」

セイア「逝ってしまったか…」

ナギサ「そういえばアダム先生、先生の故郷の、EDENとの御連絡は…?」

アダム「あぁ、それはかなり前から途絶えている。六千年前に出立したからな」

ナギサ「ろ、6000年……?」

アダム「リリスの事だ。上手くやってはいるだろう。……いつか、君達を招くやもしれぬ場所だからな」


遥か彼方たるエデン

アダムの故郷、かつての楽園、エデン。

 

それは、宇宙の彼方、異なる次元を経て400億光年離れた先にある。

 

それはアダム達のいる銀河の星の光が届かぬ宇宙の端であり、汎人類史が観測できる光の遥か向こうにある極点の位置に存在する。

 

エデンの構成は、一つの中枢区画たる天空区域、神が有したEDENを中心に三つの生態系を有する星と、それらを取り巻く銀河で構成されている。

 

一つは自然。古代の生態系を色濃く残す、藤丸立香が攻略した『ナウイ・ミクトラン』にきわめて近しい世界。

 

一つは科学。今の人類が数億、数兆懸けて辿り着く科学未来都市の世界。

 

一つは魔法。魔術や魔導を発達させたファンタジーの世界。

 

それら全てが、汎人類史における歴史の終着点に至ったとされる、アダムとその妻を中心とする統一国家こそが彼の故郷。

 

戦争や憎しみは過去のものとなっている。理由は二つ。

 

理想的な統治により不平不満が生まれぬこと。

 

戦争で生まれる利益より、交流や経済の利益の方が上回っていることだ。

 

それぞれの世界、それぞれの生命は、六千年前には歴史のゴールに辿り着いていたのだ。

 

アダム・カドモンとその妻、リリスによって。世界はこの二人のものであり、二人は自身の世界に完璧なる恒久的世界平和を齎した。

 

しかし、それは同時に世界の限界でもあった。

 

発展を極めた世界に進捗はない。

 

ゴールを迎えた物語に次はない。

 

それらの世界は、完璧という停滞に陥った。

 

アダムとリリスは気付く。それは自身らの存在が原因だと。

 

恒久的世界平和すら齎す超抜の覇者。

 

恒久的世界平和すら導く超抜の賢者。

 

それが生命の到達点。

 

それが生命の終着点。

 

誰もが二人を目指す。

 

誰もが二人を模倣する。

 

誰もが、アダムとリリスという完全なる存在のみを正解とする。

 

多様性が生まれるはずもない。

 

アダムという王が、世界を極め。

 

アダムという王が、世界の未来を滅ぼした。

 

『あなたこそ完璧なるもの。王の中の王』

 

『故に誰もが、あなたを目指し、あなたになります』

 

『あなた以外の可能性など、考慮する価値すら存在しない──』

 

……アダムはリリスに統治を任せ、楽園を出て旅に出た。

 

絶望からの逃避では決してない。

 

彼は可能性を求めた。

 

『私はエデンに持ち帰る。私ではない、しかし私以上の可能性を秘めた生命体を』

 

馬鹿な、と重臣は止めた。

 

『エデンに新たなる可能性を齎す種を、福音と共に。後は頼むぞ、リリス』

 

『───はい、あなた。私はこのエデンを守り抜きます』

 

アダムに、リリスは告げた。

 

『どうか、私の事はお忘れください。新たなる妻、新たなる子をどうかこのエデンへと』

 

リリスは悔やんでいた。

 

『私はあなたの旅にて生まれた絆と愛を、何よりも誇りに思う事を誓います───』

 

アダム以上の子を、世界に必要な子を成せなかった自身を。

 

そしてアダムの見つけた可能性の子が……

 

必ずや、このエデンを救う福音になると。

 

リリスは、確信していた。

 

………そして、これはそのエデンでの一幕。

 

「ふぅ……」

 

艷やかさを極めた麗しい黒髪。男性が思い描く理想を体現した魅惑の肢体。

 

それらを神聖なる神衣で纏った神々しき女性が、息を吐く。

 

「リリス様。こちらが、全並行世界における銀河の総量となります」

 

側近たる天使に促され、リリスたる存在はリストに目を通す。

 

「……酷いわ。また新たに数千の銀河が消え、平行世界が消滅してしまっている…」

 

「既に偽神の勢力は、惑星間航行可能な文明レベルであれば機械天使のみでの殲滅を可能としています。投入されたのは、大天使クラスかと」

 

「自身らの『高次元世界』を保たんがための魂の確保に、宇宙の滅亡を早めるための生命の駆逐…。まさに、傲慢なる神を騙るケダモノの名に相応しいわ」

 

リリスが歯噛みする。

 

EDENは全並行世界、全宇宙、全次元の観測を可能とする技術力を所有している。それらにより情勢は把握しているが、彼女ら自体が手を出すことはほぼ不可能である。

 

(今、偽神と事を構えることはできない。あの人…アダムの力なくては、EDENを完全に取りまとめることも、神を殺すことも叶わない)

 

EDENは、あくまで異聞帯。完成してしまった歴史。

 

無限の可能性なくば、偽神を倒せず、倒してしまったとしても『補填』が叶わないのだ。

 

「汎人類史……否、太陽系第三惑星における『超特異点』たる地球には、未だ手出しは出来ていないようです」

 

「当然ね。あそこには『全能の聖杯』がある。『全智の聖杯』を血眼で探している偽神が、どうしても手に入れたい世界だもの」

 

400億年と七次元以上離れた青い星を、リリスは思う。

 

(あなた……。あなたはこの果てしなく広い宇宙の、今どこにいらっしゃるのでしょう)

 

可能性を見出す放浪の旅。アダムが旅立ってから、EDENは6000年が経過した。その間、ただの一度も戦争や混乱は起きていない。

 

完成した歴史とはそういう事だ。寿命と死を克服した世界は、凪のような平穏が永劫に続く。

 

資材と資産と資源を完全に自給自足できる以上、侵略をする必要もない。

 

完璧に完成され、全てを極めた世界。

 

故に、アダムが旅立った時と何一つ変わったものはない。

 

そう、何一つも。

 

(リリスは、私達は待ち続けます。偉大なる全ての先に在る王よ。あなたは必ず、我等に眩い可能性の福音を齎す事を)

 

そして、郷愁に馳せるばかりではいられない。彼女らには、彼女らの戦いがある。

 

「『エントロピー・コスモス』起動。喪われし宇宙のエネルギーを供給なさい」

 

『はっ!』

 

宇宙には『存在しようとする力』と【滅びに向かう力】が生誕と終焉のサイクルに備わる。

 

存在しようとする力は、生命の輝き。宇宙が広がるための力。

 

滅びに向かう力は、宇宙が新生するための力。これらは共に等価なるもの。

 

しかし偽神は、宇宙ごと生命を刈り取り宇宙の終焉を加速度的に速めている。

 

宇宙の生命が無くなれば、待つのは世界と宇宙の崩壊。偽神はそれを、人為的に加速させているのだ。

 

「真化人類、そしてその子たるアーキタイプ・アカシック…この二方がいなければ、全宇宙はとうに終わっていた…」

 

リリスが、中枢区画を見やる。

 

『──────』

 

一際煌めくそこに在るのは、『真化人類』が共に歴史のゴールに辿り着いた子供たる生命体『アーキタイプ』

 

全宇宙における『アカシック・レコード』の大本体たる、エーテル・マテリアル。全宇宙における因果律と事象を司るに至った存在。

 

「アダムが楽園を去った1000年後。真化を選んだ皆様は、私達にこの子を託してくれた……」

 

 

あんたらなら大丈夫そうだ。

 

俺達は宇宙を支えるから、この子を頼むよ。

 

大切にしてやってくれ。

 

俺達の、自慢の子供だ。

 

 

「相互理解を極め、宇宙と合一した人類が、汎人類史の因果と事象を守護している。かの偽神が、血眼になって求めた理由が分かりましたな」

 

「愚かな事です。自身を唯一至上としか認めようとしない矮小な精神では、真化の極致には決して至れない」

 

リリスは、輝くアーキタイプ・アカシックに語りかける。

 

「あなたの親達は、本当に立派。今も、世界と宇宙を守り抜いてくれている」

 

『─────!』

 

「ふふっ、アダムに会ってみたい?私も、アダムにあなたを紹介したいわ。本当に素晴らしい方なの。あなたもきっと愛してくれる。必ずよ」

 

真化人類は意思と、精神と、肉体を高次元に置き、全ての宇宙の存在する力を高めている。

 

故に、今も宇宙は滅びずに在る。偽神の消滅よりも、遥かに強く速いためだ。

 

しかし、リリスはそれを決して楽観視していない。

 

「銀河は、宇宙は消されている。そして魂は、死ぬよりもおぞましい目に…」

 

「リリス様…」

 

「止めなくては。私達に資格はなくとも、あの偽りの神を討ち、世界の全てに未来と可能性を…」

 

『─────!』

 

「ええ、そうすればきっと叶うわ。EDENは、そのためにあるの。全ての次元と、全ての世界を繋げる『楽園』…」

 

アダムの帰還を、待ち続ける。

 

「あなたがあなたの妻や、たくさんの子孫を有して帰ってくるときは、たくさんの祝福を。……負けないで、あなた。私も……」

 

私も、頑張るから。この、あなたの世界と生命を護り抜く。

 

六千年経った後ですらも…

 

始まりの女は、アダムの帰還を。

 

王にして、夫の帰還を待ち続けていた。

 

 




アダム「…………………」

ミカ「アダム先生?」

アダム「む、ミカか。どうした?」

ミカ「ぼーっとしてたよ?大丈夫?」

アダム「すまない、少しエデンの事を考えていた」

ミカ「あ、それって私達が卒業したら向かう場所だよね!?」

セイア「そうなのかい?」

ナギサ「は、初耳ですが…」

リッカ「それと、修学旅行も!だよね!」

アダム「あぁ。最後に見たのは六千年前だが……」

変わらずに、皆は在るだろうか。

アダムは、今は途絶えし楽園と、その記憶を思う。


………そして。

ミカ?【やっとできたんだ?】

ゼイン『付着していた血から製造した低次元の再現だが、これでも銀河系の一つは壊滅可能だ』

ミカ?【再現、って、見た目ロボアニメの主役ロボットじゃん…。まぁいいや、頼もしい〜!じゃあ起動しよっか!】

『───────』

ミカ?【おはよ〜。あなたの名前と、作戦目的は?】


『────私の、名前は………』

『───ジブ、リール。作戦、目的、は……主に、そぐわぬ、生命体の、抹殺……』

【そうそう!よろしくね、ジブリール♪】

『……主の、御心の、ままに……』

翅を持たぬ、一人の機械の大天使が…。

今、産声の如き起動音を上げた。
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