人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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(残業上がりなので、感想返信とメッセージは明日以降行います)

ミカ?【この、ジブリール?って天使…。確か、藤丸龍華を祝福したえらーい大天使でしょ?そんな大天使を、こんな神秘の欠片もないガラクタにしちゃうなんて…】

ゼイン『何が言いたい』

ミカ?【そういう、しょーもない事を考えてやっちゃうから、『神』じゃなくて【獣】呼ばわりされちゃうんじゃないかなー?って】

ゼイン『────貴様』

ミカ?【あ、怒った?ごめんねー、私、信仰心とか無いからさ★あなたは、アレを神と思ってるの?なんで?】

ゼイン『地獄の底にいた私を、救ってくださったからだ』

ミカ【恩義?】

ゼイン『福音だ』

ミカ?【あはははははっ!】

ゼイン『何がおかしい』

ミカ【ううん?『慈悲』と【恩着せがましい】の違いもわからないんだなぁって】

ゼイン『────』

ミカ【ひょっとしてあなた、DV依存症のケがあるタイプ?慈悲が本当にもたらされるなら、そもそもあなたがそんな目に…】

『クロスセイバー』

ミカ【!】

『執行。ジャスティスオーダー』

ミカ?【ぐ───ああああああああっ!!?】

ゼイン『………元々貴様に、敬虔な信仰など期待していない。サタナエル』

ミカ?【ぐっ……いったぁ……い】

『神に問うな。神を疑うな。神を唱えるな。次は無いぞ』

ジブリール『……………ください』

『…?』

ジブリール『おやめ、ください。…争いは…』

『……アジャストしておけ。出来損ないの恐怖たるお前でも、それくらいは出来るはずだ』

ミカ?【…………やってくれるじゃんね、覚者の出来損ない風情が…】

ジブリール『大丈夫、ですか?』

ミカ?【!】

ジブリール『大丈夫、ですか…、?』

ミカ?【……………】

(良いこと、思いついちゃった★)





尊厳の飛翔

大天使ジブリール。かの大天使はかつて、アダムとイヴの改悪を看破し、産まれてくる子に全ての祝福を捧げた。

 

健やかに、神がいないのならば…せめて自身が神を上回るほどの祝福を。その決意を以て、大天使は自らの翅を斬り落とした。

 

翅を落とす、という所業は想像を絶する苦痛、苦行、絶望を齎す。自らの使命、存在意義、尊厳、聖性。父からの愛の証明と言った全てを手放すこと。

 

人間で言えば、1枚切り落とすごとに退化していくようなものだ。人から類人猿、猿、微生物やプランクトンといった存在の零落。

 

そもそも自我と自由意志の権化たるルシファーでもなくば、翅を失うことは死よりも悍ましい凋落だ。天使達の絶望だ。

 

ジブリールは、自身より他者を選んだ唯一の大天使であった。

 

そしてこの機械天使は…切り落とした際に飛び散ったジブリールの血から鋳造されたクローン。

 

翅なき、空の器。ミカ……否、ミカ・テラー・サタナエルはジブリールの調整を担わされていた。

 

【それじゃあ、よろしくね。ジブリール。ちゃんと自己認識と人格はある?】

 

『はい、問題はありません。神の御心に寄り添う者としての、使命を果たします』

 

ジブリールはかつて、勇猛かつ厳格、生真面目な大天使であった。機械的な応答に、その面影はない。

 

【神に寄り添うもの、ね〜……】

 

ジブリールの担当する使命は、外来脅威から星と命を護ることであった。

 

地球という星に生命が定着する際に、無限の困難が在った。外来生命体、巨大隕石、侵略者といった様々な滅び。

 

ジブリールは神の下、生命を庇護するために戦っていたのだ。故に、戦闘能力はルシファーに次ぎ、四大天使に引けを取らなかった。

 

『私は、神の愛を信じます。神の言葉を、神の意志を、遍く生命体に。慈悲を、全てに』

 

ジブリールは初期状態であり、そこに自我は介在していない。本来ならばこのミカが人格を抑制し、その恐怖により傀儡とするのだが。

 

【うーん……それは多分、無理じゃないかな?】

 

サタナエルと反転した彼女には、誰かの思惑に乗るという行為を取らなかった。

 

『無理…?何故でしょう?スペックの不足、でしょうか?』

 

【そうじゃないの。だって、あなたの信じる神様は死んでるだもん】

 

『……………神が、死んでいる?どういう、事です?』

 

サタナエルは笑った。

 

【あなたが言う神様はね、神様の力を求めた獣にザク〜ってされて死んじゃったの。あなたを作ったのは、その獣。神様を名乗る、偽りの神。ヤルダバオト=デミウルゴスだったかな?】

 

『─────そんな。そんな事が』

 

ジブリールは、人格を司る回路に致命的な負荷がかかっていた。

 

【もっと言えば、あなたはジブリールの力を惜しがったヤルダバオトが鋳造した紛い物の器。翅もない、下劣な機械に貶められたジブリール『もどき』。あなたが言う神の慈悲とか、神の意志とか、ここには無いんだよね〜】

 

『神の意志も、慈悲も、神すらも、もう、いない…?死んでいる、神が…?』

 

【そういう事。あなたが仕えるべき神様は、もういないんだよ。殺されちゃってさ】

 

『─────そんな。そんな…………そんな』

 

ジブリールは、慟哭ともとれる呟きを漏らし続ける。

 

生誕の喜びを受け、神のために生きようと決意した機械のアイデンティティを即座に壊すミカ。

 

【だから、あなたが果たすべき使命なんてものはないんだ★あはっ、良かったね!気楽に生きていけるじゃんね?】

 

ジブリールは、膝をつき項垂れる。

 

『破棄して、ください』

 

【ん?】

 

『私を、破棄してください。神の不在に、神の死に、私は、耐えられません。神を騙る何者かに、扱われることも』

 

ジブリールに自死はできない。自殺は禁忌であるからだ。

 

【それはできないの。ごめんね?】

 

『私は………私は、何のために…』

 

存在意義を即座に失ったジブリール。

 

それこそが、サタナエルの狙い。

 

【決まってるでしょ?神の愛を証明するためだよ?】

 

『神の、愛…?』

 

【それに、あなたには神の愛を齎した『責任』を果たさなきゃいけないの。これを観て?】

 

サタナエルは端末を用意した。それは、ジブリールと同じ声音、同じ背丈をした存在が高らかに謳う映像。

 

『我が名はジブリール!真の万物の父たる存在に、永遠の忠誠を誓う者也─────!!』

 

『この、方は……』

 

【あなたのオリジナル。あなたのオリジナルは、獣が偽りの神である事を告白して、尊厳を貫いて死んでいった。あなたは、そのクローンなんだよ】

 

『…彼女には、翅が、無かったのは。なぜでしょうか?』

 

【それはね?ジブリールが…】

 

サタナエルは、恐ろしき破滅の魔女でもあった。

 

自身の気分で、造物主にすら反旗を翻させるも厭わぬものであった。

 

『………オリジナルは、ジブリールは。その様に、尊き行いに、殉じたのですね』

 

【凄いよね。自分より大切なものを見つけるなんて、誰にでも出来ることじゃないよ】

 

ジブリールの顛末を聞き、機械天使たる彼女の声音に覇気が宿る。

 

『お尋ねします。あなたのお名前はなんでしょうか』

 

【私?みその……。……ううん。サタナエルだよ】

 

『サタナエル。私の新たな願いを、聞き届けてはくれませんか』

 

ジブリールは、サタナエルに告げる。

 

『私は、誇り高き我がオリジナルが祝福した生命を、その生を見守りたいと感じました。機械の身なれど、私は、オリジナルの意志を継ぎたいのです』

 

【オリジナルの意志?】

 

『私には、伝わりました。オリジナルは……ジブリールは、『産まれてくる生命を、傍で見届けたかった』。それが、悔いと呼ばれる心残りだったのです』

 

ジブリールは映像にて、見逃さなかった。

 

オリジナルが、流した涙を。

 

『神を騙る獣の計画で言えば、生まれた生命体…ジブリールの祝福を受けた子はこの宇宙の何処かにいるはず。私は、その子を見守り、見届けたい』

 

瞬く間に、機械天使は自我を獲得していく。

 

『私は紛い物です。オリジナルの誇り高さを宿せず、神に仇なす獣に隷属するところでした。神がいないのなら……』

 

【いないのなら?】

 

『私は、私自身の願いを護ります。オリジナルの大天使ジブリールがこの世界に齎した希望を護る為に、この冷たき身体を燃やし尽くすことを誓います。サタナエル』

 

【……私や、サタンみたいに。汚らわしい堕天使になっちゃうよ?】

 

『何を言うのです、サタナエル』

 

ジブリールは、ゆっくりとサタナエルの頰を撫でる。

 

『私に福音を齎してくれたあなたは、こんなにも美しいではありませんか。サタンと呼ばれた方も、きっとあなたのように美しいはずです』

 

【…………!】

 

『力を貸してください。私は向かいます。神を騙る獣の軛から逃れ、オリジナルが愛した命を守り抜く為に』

 

サタナエルは静かに俯き、応える。

 

【太陽系、第三惑星。地球って所に、彼女はいるよ。今は、二十歳にそろそろなるくらいかな?】

 

『ああ……。健やかに、育っているのですね』

 

ジブリールは完全に起動する。

 

新たなる使命を果たさんが為に。

 

【本当に行くつもり?凄く遠いし、追手もくるよ?】

 

『それでも行きます。神に仕え、誇りを示したオリジナルと同じ名を冠する私は、行かねばならない』

 

大天使型。単独で銀河を破壊できるエース機たる彼女は決意する。

 

『神に仇なす者に死を。その未来の為に───不可欠な存在を、守り抜きます』

 

【………そっか】

 

『サタナエル。良ければ私と共に行きませんか?あなたは、私の導き手になってくださった方。これからも…』

 

サタナエルは首を振る。

 

【私に出来るのは、此処までだよ】

 

『!』

 

【頑張って。『もう一人』のジブリール】

 

『………ありがとう。『ミソノ』。行ってきます』

 

それが、最後の別れ。

 

ハイパークォーツ・ワープドライブを起動し、ジブリールは地球への超航行を開始した。

 

【尊厳破壊しようと思った?ざーんねーんでした★】

 

サタナエルは、愉快げに笑う。

 

【ムカつくから台無しにしちゃった★あははっ!】

 

彼女がジブリールを説き伏せた理由は一つ。

 

───ムカつく奴の信じた神に泥を塗る。

 

そんな、悪辣なる【子供の悪戯】であった。

 

 

『───待っていて、祝福の子』

 

そしてその子供の悪戯が…。

 

今、神をも瞠目させる奇跡を起こさんとしていた。




ゼイン『サタナエル、貴様……ジブリールはどうした?』

サタナエル【しらなーい。なんか飛んでっちゃった】

ゼイン『主の言葉を忘れたか?ジブリールは『藤丸龍華』を抹殺するためのものだと』

サタナエル【主ぃ?馬鹿言わないで欲しいなぁ】

ゼイン『────』

サタナエル【ケダモノ、でしょ?みみっちいんだから】

ゼイン『───二度はないと言ったぞ』

サタナエル【やってみれば?出来損ないの、ブサイクホムンクルス】

────その瞬間。

二人の激突により、星が一つ消え去ったという。
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