「やはり遺体は無い、か。あのキングゥとやら、肉体はまごうことなきエルキドゥのもの・・・」
(――・・・英雄神に仕留められたのかは知らんが、目撃例は無い。――生きていたのならば、下す裁定は決まったな)
『ガルラ霊』
「ぬっ・・・!」
『物陰にかくれる賢王』
(我ならともかく、エアは必ず我を気にかけ現れる!慈愛と慈悲と好奇心と寛容を形にしたような者だ、こんないたいけな我を見捨てる筈がなかろう!信じるのだ我!過労死を免れさせたやつめの整体を信じるのだ!)
「時間は無いぞ、エア・・・!頑張って我を助けよ!(小声)それと魂は器にしまうのだ、冥界は極めて寒いからな!腹を冷やすなよ・・・!(小声)」
『ほふ、ほふ』
「・・・美味しいのかい?それ」
『熱い、けど・・・美味しい』
「そうか・・・人間はそんなものも作るのか・・・少し、気後れしてしまうな・・・」
(エルキドゥさん、上手く作れたでしょうか・・・きっと美味しいと言ってくれます!友達の為に作るのですから!)
「食べた金ぴか死んだみたいよ」
「えっ!?そんな!?」
ウルク
「トモエ殿!衰弱、不調を訴える者達が増加しております!」
「はい。前々から現れていた冥界の呼び声ですね・・・倉庫を解放なさい!アレを配給します!弁慶さん、牛若丸さん!」
『大量のマンゴー』
「大量発生、栽培した太陽の祝福をたっぷりうけたまんごぉを、皆様に食べさせてください!必ずや迅速に!」
「「承知!」」
巫女所
「・・・やはり。『召喚された神は、一柱ではない』・・・」
「小太郎クン。分かったかい?私もひいきの女の子からようやく聞き出せたよ。――早速、英雄王に伝えにいこう」
「はっ」
「おばあさん・・・!」
「私も、そろそろお迎えが来たみたいだね。・・・あの、元気な子にまにも・・・よろしくね」
「・・・諦めないで!」
「・・・お嬢ちゃん?」
「まだ・・・あなたは死んではいけない・・・!」
「・・・あぁ・・・」
「・・・?」
「・・・あんたの将来は、町一番の美人だねぇ・・・」
「魂が抜けた遺体はぁ!丁重に運ぶのです!!丁重に、丁重に行くぞぉ!!」
「元気だよな、レオニダス王」
「いつものことだろ」
ひとまず硬直している賢王の遺体をそっと安置し、丁重に扱い、大切に保管する体制を整える
――ぐすっ、えぐっ、えぐっ・・・賢王・・・ギルガメッシュ王・・・
泣きじゃくるエアの頭を、優しく撫でる王。涙を、フォウが舐めとる
(あんなに元気だったのになぁ・・・)
「本来なら盛大に笑い飛ばすところだが・・・まったく笑えぬな。他人事ではないからな」
「うん。白眼剥いてるもんね」
「はい・・・大層苦しめられていましたから、英雄王」
見るからに珍妙な死に様なのだが・・・一同は知っている。聖女の麻婆の恐ろしさを・・・カルデア一行は噛み締めていた。二人は実際に死にかけていたので尚更である
「では、死因は・・・この、真紅の料理という事ですか?王はこの料理があまりに・・・・・・で、亡くなってしまったと?」
「若作りではあったが、ヤツは晩年の姿・・・相当に老いさらばえていた。胃腸も弱っていた筈であろう。それにこの劇物など・・・死ぬのも止む無しと言えよう」
したり顔で呟くギルガメッシュ。
――・・・御老体!益々以てまずい事を・・・!
『――僕のミスだ。名乗り出よう。シドゥリ、実は・・・』
フォウの飾りに扮していたエルキドゥが正直に名乗り出ようとしたとき・・・
《いや、良い。――ここは任せよ、友よ》
そっと友を制し、頷く・・・ニヤリと笑う
(え?)
――王?
その顔に浮かんでいたのは・・・『愉悦』の笑みであった
「――お前達、気付かぬのか。我の眼は、既に真実を見通したぞ?」
英雄王の言葉に、ウルク組は目を見開き、カルデア一行は空気を察し口をつぐむ
「なんですって!?英雄王、それは一体!?」
シドゥリの言葉に、厳かに頷く英雄王
「よいか。今のウルクには『死の香炉』が蔓延している。これらは衰弱したものから魂を抜き取る冥界の業だ。それが我が都市に満ちている。それに加え、この血の華のような料理――シドゥリ、イシュタルの祭祀長たる貴様には思い至る節があるのではないか?」
(ブフッ――ww)
飾りに扮したエルキドゥが小刻みに揺れる
――?王は、何を・・・?
「ギルガメッシュ、アンタ、何を――」
「解らぬか駄女神!これはショック死ではなく、れっきとした他殺!自らの神威を料理に変換させ王の魂を抜き取り冥界に連れ去った卑劣なる女神!――『三女神同盟』最後の女神!エレシュキガルの仕業に他ならぬ!!」
大々的に、盛大に宣言する王。飾りが小刻みに震え、全身バイブレーション状態となったフォウはくすぐったさにのたうち回る
「な、なるほど・・・!エレシュキガル様ならば納得がいきます!この料理は、エレシュキガル様の権能を再現した料理・・・!」
――な、なんだか物凄い話にー!?王よ!その真意は!?
《何、冥界に行く大義名分が欲しかったのでな、魂を囚われている部員のついでに、賢しき我の魂を回収してやろうではないか》
ふはは、と笑いながら王は事実をでっちあ・・・紡ぎあげる
「事の真偽は(恐らく)こうだ!」
~~
「おおっ!?リッカめ高さを身に付けたか!見事だ!後は意地を見せるのみ!」
「ギルガメッシュ、これを献上するのだわ(しめしめ)」
「えぇい寄越せ!良いところなのだ、水を差すな!ぬぅっ!激突か!ダウンはどちらだ!(パクっ)カウン――――」
「計画通り、なのだわ・・・」
~~
「おのれエレシュキガル!なんと卑劣なるエレシュキガルよ!これが女神の行いとはな!」
――酷すぎる責任転嫁を見ました――!!
王が高らかに叫ぶなか、あまりに清々しい責任転嫁ぶりに頭を抱えるエア
――なな、なんと言う神を恐れぬ・・・いや、王は神など恐れていないのは解りますが・・・!
(敵に容赦ないのは分かるけどさぁ・・・)
(・・・華の一輪でも持っていってあげなきゃ・・・)
――ワタシもついていきますエルキドゥさん!お詫びの品を!
《ふはは、これはいわゆる、コラテラルダメージというヤツだ。冥界制覇のための、致し方ない犠牲よ》
「な、なんですって――!?エレシュキガル!?いるの!?」
ノリノリの英雄王に対し、エレシュキガルという名に愕然とするイシュタル。――彼女は知らなかったのだろうか?
「この地に残ってる神性は私だけの筈よ!?どうしてあの陰気で根暗な女神が現界してるわけ!?」
「――それはね、イシュタル。君が召喚された時、エレシュキガルも召喚されたんだよ」
爽やかな雰囲気、華を咲かせながらジグラットに現れしは、華の魔術師マーリン。傍には風魔小太郎が控えている
「確認した所、イシュタル殿を召喚したとされる巫女長は死亡していました。――僕たちはこれを、『イシュタル召喚の無理が祟った』と見ていましたが・・・」
「『召喚された神は一柱ではなかった』。そうだな、マーリン」
(マジかよクズ)
ははは、と笑うマーリン。面白いイベントをみたかのように告げる
「キミの依り代になった少女は愉快な性格をしたのだろう。彼女の善性と悪性はキレイに分かれるものであり、そのどちらかがキミになり、もう一方がエレシュキガルになった」
「そう!つまり――悪のイシュタル!善のエレシュキガルと言うことよな!全く優雅にも程があろう!!ふはははははははは!!」
「誰が悪か――!!善のイシュタル!悪のエレシュキガルでしょ!?」
「ははは、そうですね。ははは」
乾いた声で笑うシドゥリ。其処には『否定する気は無いが手放しで賛同しかねる』といった様子だ
――心中お察しします。シドゥリさん・・・
『神話上、イシュタルとエレシュキガルは犬猿の仲。天の主人たるイシュタルは理由なく冥界に向かい、冥界の七つの門によってその神性を剥がされ、エレシュキガルに殺されることもあったみたいよ。・・・穏やかじゃないわね・・・』
「・・・そうよ。悪い?対エレシュキガル用に備えた権能も、あの忌々しい七門によって剥がされて、最後は裸のままアイツの前に引きずり出されて」
「無様よな」
「うっさい!・・・容赦なく槍で滅多刺しにされたわよ。ソレ以来大の苦手なのよね、アイツ・・・でも、なんでアイツが甦ってるのよ!?しかも『三女神同盟』なんかに入って!」
(手緩いなぁ。五体を引き裂いて深淵に投げ捨てて、達磨になった身体を飾ればよかったのに)
エルキドゥの恐ろしい物言いは、一先ず置いておいて・・・
――イシュタル様、本当に嫌いなんですね・・・
(うん。滅びればいいと思うな)
『豊穣の女神であるイシュタルは人間の生を表すグレートアースマザーと言える。対して、エレシュキガルは人間の死を表すテリブルマザー』
「この面倒な二柱は表裏一体、同一の神性から生まれたものなのだ。生を育んだ女神はその後、死を象徴する女神に変生する。日本の女神も同じであろう?つまり――」
『イシュタルが召喚されたのなら、それに連鎖してエレシュキガルも召喚される。しかもどちらも同じ神性だから、カウント的には『シュメル神は一柱のみ』となっていたのね』
ロマン、ギルガメッシュ、マリーが真相を追求していくなか・・・
「うっわぁ・・・じゃあなに、アイツ今までこっそりこの器を使っていたかも知れないの!?」
「――心当たりがあるかどうかは知らんが、可能性はあるだろうよ。エレシュキガルめは冥府より出られぬ。世界を見聞するため・・・貴様の器を利用するのが最適であろうからな・・・貴様が、眠りに落ちている時などにな」
その言葉を聞き、リッカは確信を得たかのように頷く
「――――なるほどぉ・・・」
「ウルクに満ちているのは死の香気ね。結界を突き抜けるように充満し、体力の無くなった者からガルラ霊が魂を抜き取っていく。ギルガメッシュ王の魂もまた、料理にて冥界に連れ去られたのでしょう」
――いえその、エレシュキガル様は無関係だと・・・王は単純に・・・
『解ってマース!けれど、冥界に行くには丁度いい理由!あの女神の力もきっと、必要になりますネー!』
・・・ケツァル様もエンジョイ勢でしたか・・・
「ならばまだ間に合います!王の遺体は安置したばかり!魂さえ冥界の檻から解放すれば、王は再び目を覚ますかと!」
「然り!ここで賢しき我を失うわけにはいかぬ!冥界にて暇を堪能する前に、仕事を全てこなさせねばな!む、我はやらんぞ。我が治めるはカルデアのみなのだからな!――方針は定まった!」
ババン、と高らかに歌い上げる
「これより我等は冥界に下り、エレシュキガルに連れ去られし賢しき我の魂を取り戻す!我が絢爛なる叙事詩のよい話の種となろうよ!寒さに凍える事など無いぞ?案内は我に任せておけ!案ずるな、冥界には何度も足を運んだからな!ふはははははははは!!エレシュキガルの陰気な顔、是非とも拝みに行こうではないか!」
これよりカルデア一行は、神話の再演に挑む。王が為し遂げ、イシュタルが盛大に惨殺されし『冥界下り』に力を合わせ、挑むのだ
――冥界にて囚われし、王を助け出すために・・・!待っていてください賢王!今、ワタシ達が向かいます!
(やば、これやばい流れだわ。今のうちに逃げないと――)
神話の再演に録な思い出がない為、そそくさと逃げようとするイシュタル。それを――
「ハーイ、そうはいきまセーン!イシュタル?冥界の行き方知ってるわよね?ならトットと案内するデース!大丈夫、リッカちゃんなら三柱目も落としマース!」
ヘッドロックにて拘束する。勿論暴れるが、ルチャマスターの女神の力は振りほどけない
「物理的か友好的にかは、話が変わってくるけどね?」
シュシュっとシャドーボクシングをかますリッカ
「はい!先輩の溢れるヒーロー力に、誰彼構わずノックダウンです!」
「せめて、せめてヒロインと言ってほしいよマシュう!」
『心配しないでリッカ。ヒーローでもヒロインでも、あなたはリッカよ』
「リッカを概念みたいに言うの止めてぇ!?」
(エレシュキガルか・・・うん。酷い濡れ衣を着せちゃったけど、また会えるのは・・・嬉しいな)
(エルキドゥ、エレシュキガルは好きなのかい?)
(うん。とても真面目で、心優しい女神だからね。僕もキチンと礼は尽くしたよ)
「ちょっ!?このバカ力ラテン系!離せ、は――な――し――て――!!」
「良くやった金星の女神!その駄女神を放すなよ!」
「冥界よ冥界!どんな英霊だろうが神性だろうが無力化する世界よ!?あそこじゃ御兄様だって例外なく囚われてしまう、エレシュキガルが絶対法律の世界!何をしてもつかまって、串刺し刑にされちゃうのよ!?もう
――其処に王がいるからです!
きっぱりと答えるエアに満足げにギルガメッシュは笑う
《良く言った!王は民を気まぐれで救うが、民や姫は王を必ず助けるもの!――だが、一つだけ制約を課すぞ、エア》
――制約?
《『冥界にいる間、我が器から一歩も外に出るな』。彼処は魂が振る舞えるようには出来ておらぬ。――生きた氷にならぬよう、我が言葉を遵守するのだぞ、エア》
(ギルから離れちゃダメだよ、エア)
――はい!さぁ行きましょう!賢王を救いに!
暴れるイシュタルを引きずり、一同は冥界への道へと向かうのであった――
クタ市
『と言うわけで、エレシュキガルを都市神とし、一晩で900人が死んだと言われるクタ市に到着だ』
「うう、ケツァル・コアトルさえいなければ力づくで逃げられたのに・・・」
「そう不安がるな。最悪貴様が再び串刺しにされるのみだ。どうしてもと言うならば逃げても構わぬがな。貴様に期待するはグガランナのみ。駄女神なぞただのオマケよ。道案内御苦労。疾く失せるがよい」
「(ムカッ)――いいわ。冥界下り、付き合ってあげるわよ。冥界に落ちるのはリッカ、マシュ、フォウ、で、あんただけよギルガメッシュ。御兄様もここで待っていてもらうから、ケツァル・コアトルもここに」
「?
「冥界では神性は役に立たぬ。弱きものは弱きままだが、強きものは貶められる。冥界で力を振るう神はエレシュキガルと決められているのだ。――それは例え英雄神としても例外ではない」
「そう。『私が死んだなんてふざけるなー!』なんて暴れられて地上に戻っちゃうでしょ?生死の取り決めは、極めて厳格なのよ。――神であれ、死んだなら冥界へ。死は平等なの」
「故に、冥界は神を戒め、貶める取り決めが厳重に敷かれている。――マルドゥークを持ち出すならば、冥界を乗っとる気概で全力を尽くさねばならん。そのような手段は取れぬが自明の理であろう?」
「でも、そんな冥界なのにイシュタルさんは果敢に挑んだんですね。凄いです」
「マシュ・・・嫌みじゃなくて天然なのね・・・怒るに怒れないわ・・・。私が冥界下りをしたのは傲慢だったから。神話上での私は甘やかされて、もてはやさはれて、怖いもの知らずだった。だから冥界の怖さも鼻で笑って、七つの権能を持って冥界に挑戦した。エビフ山を攻略した私に出来ないことは何もない、ってね」
「で、結果はエレシュキガルの逆鱗に触れ惨殺か。とことん無様で、浅慮で、愚かな女よな」
「それはそれで見てみたかったデース!」
「ふん。言ってなさい。――じゃあ始めるわよ、リッカ」
「いざ冥界へ!地獄よりはマシでしょう!」
「いい気合いね!いいわ、私もその勢いに乗りましょう!手を出さないで、御兄様!私のフルパワー、見せてあげる!」
イシュタルは上空へ飛び立ち、マアンナの照準を、『大地』に合わせる
「むぅ。ここはイルカルラの出番と言うに・・・まぁよい。働く気概があるならば任せてやるか。本格的に何のためにいるか解らぬしな」
「アンタは退かなくていいわよ金ぴか!ついでに消し飛ばしてあげるから!――マアンナ船首砲門に潮汐収束弾、装填!出力ラピスラズリの三分の一の二等辺!――砕け冥界の蓋、空無き地に天の光を!要するにぃ・・・!地面を吹っ飛ばして!風穴を開けるのよ!!」
放たれる超絶威力の砲撃。クタの大地のみならず辺りの建造物を吹き飛ばしながら、イシュタル渾身の射撃が荒れ狂う――!
《エア、先に伝えた通りだ。片時も我が器から魂を出すなよ》
――はい!ギル!
《さて、久方ぶりの冥界よ。ジョークにて来た気がしないでもないが・・・ゆるりと楽しむとするか――!》
そしてカルデア一行は、地続きの冥界に墜ちる――
どのキャラのイラストを見たい?
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コンラ
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桃太郎(髀)
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温羅(異聞帯)
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坂上田村麻呂
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オーディン
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アマノザコ
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ビリィ・ヘリント
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ルゥ・アンセス
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アイリーン・アドラー
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崇徳上皇(和御魂)
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平将門公
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シモ・ヘイヘ
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ロジェロ
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パパポポ
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リリス(汎人類史)