人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ムーンセル戦闘区域
無数の天使。
無数の嗜虐。
無数の進攻。
今、月には滅びが満ちていた。
ゼイン『神の威光と名の下に、悪しき存在は浄化される』
その中心にいるのは、独善の化身。
『主よ、捧げます。この聖戦を、御身に』
陶酔の言葉と共に謳う。
『輝ける、我等の主よ。愚かしきケダモノ達に、慈悲を──』
瞬間──
ゼイン『!』
天使達が、爆散する。
ゼイン『───来たか。始まりの供物』
歩むは、黒き希望。
リッカ【其処までだよ、ゼイン】
星空を抱く、宵の黒。
ゼイン『ジブリールを渡せ。さすれば慈悲を与えてやる』
リッカ【断る】
白き絶望と、黒き輝き。
リッカ【私はもう───】
ゼイン『………』
【───何も奪わせない!】
月において、尊厳をかけた戦いが始まる。
そして──
パパポポ『甦れ、蘇るのだ…ジブリール…!』
ジブリール『』
パパポポ『母が、子を泣かせたままで良いはずが無かろう…!』
慈悲の父もまた、戦いを始めていた。
【おおおおおおおおおおおおおおおッ!!】
黒き龍の鎧が咆哮し、白き仮面ライダーゼインに突撃する。
『アギト・シャイニングフォーム』
『執行!ジャスティス・オーダー!』
輝けるライダー、アギトの武器シャイニングカリバーを展開し、リッカを受け止めるゼイン。二人が、ぶつかり合う。
【何であなたは、ビーストΩを信じるの!?】
『何?』
【神を殺し、座を奪い、誰もを脅かす災厄!そんなの、一目瞭然なのに!】
リッカの斬撃を、超演算で計算し付くし対処するゼイン。その中で、無数の天使が爆散する。
『大いなる主、大いなる唯一の神。偉大なる光輝の存在に平服するは全ての生命の義務であり真理だ』
【世迷い言を!!】
『あの御方は、あの御方こそは私を救ってくださった。絶望に満ちた私を、唯一あの神こそが救ってくださったのだよ』
『響鬼・アームド。執行!ジャスティス・オーダー!』
【!】
『有象無象のシステムのアイコンでしかない、下らぬ神秘の塊の偶像どもとは違う…あの方のみこそがな…』
鬼刃覚声。膨大なる衝撃波にてリッカは吹き飛ばされる。
【神々は沢山いる!唯一無二の神だというなら、神様全員がそうだよ!】
アルテミスの弓矢を装填し、リッカはゼインを打ち据える。
『我が信じる神以外は紛い物だ』
『ドライブ!タイプトライドロン!執行!ジャスティスオーダー!』
ゼインも、最強ライダーの力を振るいリッカの神威を迎撃する。
『我等が信仰、我等が聖性こそが絶対なる真理──』
【自分から何も生み出せず、奪うことしかできない獣が何をっ!!】
『奪う?低俗なる思考だ』
『ゴースト!ムゲン魂!執行!ジャスティス・オーダー!』
シュレッダーにてライダー達を踏み躙りながら、その力を僭称する。
『全ては万物の父たるものの創造物。即ち、我等が神たるあの御方の下に還っているのだ』
【────!】
『お前の生命もそうだ、ビーストα。我等が神に捧げられし『天の供物』。その宿命と使命を受け入れるがいい』
ゼインがリッカと鍔迫り合い、肉薄する。
【ビーストα──上等だよ】
『?』
【神を名乗るケダモノの喉笛──噛みちぎりがいがあるッ!!】
リッカはゼインを、渾身の力で跳ね除ける。その力は、その気迫は。彼女が研鑽したもの。
【私達は、お前達なんかの慈悲なんて必要ない。優しいお父さんと、見守る王様、尊ぶ姫様と一緒に輝ける道を往く】
『……………』
【だから───神の名と力にしがみつくケダモノと一緒に】
リッカが、首をかき切るジェスチャーを送る。
【黙って私に、殺されろ……!!】
憤怒と決意に満ちた黒き龍を、なお白きゼインは嘲笑う。
『くだらん。いくら足掻き、呻こうと。光は我等にあり、創造の座は我等にあり、遍く光は我等にある』
【!】
『薄汚き供物よ。愚かなる人類の失敗作よ。アダムとイヴが生み出した『欠陥品』よ。神の光を知れ。神の輝きを知れ。私こそがお前の上であり、我等こそが畜生のお前達を導く』
ゼインが輝き、宙に浮く。
『我等の全てに、光あれ───』
その時───。
【がっ───!?】
リッカの身体を、光が貫いた。それは回避も、防御もできぬ一撃。
『Ωの祝福──』
ゼインが歩み寄る。リッカは貫かれ、膝をつく。
『我らという尊き生命に齎されし神の恩寵。お前達泥から生まれし劣等種、並びに始まりの獣に対する絶対的な優位性』
【ッ、ぐっ………!】
『悪は滅び、善が栄える。それは逃れ得ぬ真理。そして…』
『クロスセイバー!執行!ジャスティスオーダー!』
ゼインが、聖剣を構える。
『これこそが、光溢れる世界に生きる我等に齎されし恩寵。世界が、我等を祝福してくださっている──』
【ぐあぁあっ!!】
肩に、深々と聖剣が突き刺さる。
『捧げるのだ。その苦痛と痛みが、世界の意志。原罪などを刻まれ、青き星を食い荒らす害虫を護るお前に相応しい末路──』
【ぐうああぁぁぁぁ────っ!!】
リッカの動きが、精彩を欠いている。普段の動き、彼女の積み重ねた人生は、この程度の狼藉には本来屈することはない。
それは、観測の力。アダムにかつて殺され、ジブリールに普遍の霊性を剥奪されたビーストΩは、病的なまでに反抗を恐れた。
それにより、神の座よりビーストΩは因果を歪めた。
『ビーストαは供物。それに勝るはビーストΩ。輝ける己のみが、光を手にする』
ゼインはその祝福を受けている。つまり、リッカに対する世界からのバックアップを受けている。
【私は私であることから逃げない】
その覚悟すら嘲笑う、彼女を貶めるビーストΩの呪詛。
『嗚呼…全ての仮面ライダーが、正義の英雄達が歓喜している』
【ぐぅうっ…!!】
『お前という【邪悪】を討ち果たせることを。そう、私こそが『最善』にして『最高』の仮面ライダー。祝福の使徒──』
【───自惚れるのも……!!】
それでも。リッカは決して供物ではない。
【大概にしろッ!!!】
リッカは決して、邪悪ではない。渾身の頭突きが、ゼインに突き刺さる。
『………!』
【だったら教えてあげるよ!その高慢ちきな鼻をへし折る───】
リッカの拳が───
【人間の意地ってやつを───!!】
深々と、ゼインに突き刺さった。
〜
その頃、もう一つの死闘が月の中枢にて起きている。
『ジブリール、君を二度も死なせるものか…!』
真なる神、慈愛の父が。懸命にジブリールを修復する。はくのんと共に。
『レガリアのリソースをこっちに!新王の力も彼女に!』
『王よ、それでは御身が…!』
『問題ない。王は衣や力なんかじゃなくて在り方で示すものだよ』
『──御意!』
月のバックアップを受け、パパポポ全霊の祝福と奇跡でジブリールを癒す。
『──ジブリールが託した、リッカへの祝福。それはこの世全ての悪の中ですら、彼女の心身を守り抜いた』
加護を、パパポポはジブリールの加護を説く。
『それはあくまでリッカの『生存』。自己保存の側面。ジブリールはイヴの子宮と卵子とアダムの遺伝子を完全に復活させた。ならば今のリッカの有する『始まりの人類』としての力は一割も発揮されていない』
何故かようなまでにリッカを貶めたか?
ビーストαという獣のレッテルを貼ったのか?
アダムとイヴを永遠に呪ったか?
『知恵の実を食べしアダムとイヴ。──備わったのだ。生命の実を食べた我等。知恵の実を食べた我らと同じに至る『資格』を。───誇らしき、神に至る資格を』
パパポポはリッカを祝福する。
アダムとイヴから生まれし『始まりの子』。
彼女こそが。────違う。
『彼女を『人』として受け入れ、育て、覚醒させた『汎人類史』に生きる全てこそが、神に至る資格を得ているのだ…!』
彼女の生きる世界全てこそが【偽神】に届きうる資格を得ている。
超特異点の意味。
汎人類史の意味。
それたる一つの要因こそは、『藤丸立香』たる存在。
即ち、その名を託されし『始まりの娘』を有した世界のみが。全ての宇宙を蝕む獣を討つ。
『至尊の理』『始まりの娘』『善き人々の観測』。
それこそが、終わりの獣を討つ鍵。
ジブリールの祝福は、解き放てる。
【神の供物】という呪いを。
神を殺したアダム・カドモンと同じ遺伝子、異なる魂で結ばれた彼女の。
『涯ての力』にして『到達点』。
世界が齎した、究極の偽神へのカウンター。
零落、堕落、失墜した『始まりの男』『始まりの女』が産めようはずもなかった『人類』が持つ至高の可能性。
即ち───『真化』の証明を。
しかし、偽神は悪辣さにおいてはまさに神の領域にある。
『私の力が、ジブリールの核に届かん…この機械の肉体のせいか…!』
ジブリールを、天使を機械に押し込めた。
それは、祝福が与えられぬように。
万に一つも、『軛』を破れぬように。
パパポポの奇跡が、機械のジブリールには届かない。
もう一人の、ジブリールに届かない。
そして、彼は『蘇生』ができない。
あの日消え去ったジブリールを呼び戻すには、彼が神の座に座らなければ起こせぬ奇跡。
聖霊のパパポポには……
救世主を殺され、神の座を奪われた聖霊には。
あまりに、荷の重き奇跡。
『諦めるものか…!アダムの娘を救わなくてはならぬ…!』
だが、慈悲の父は諦めなかった。
『どれほど彼女は貶められた?どれほど彼女は辱められた?我等が不甲斐ないばかりにどれだけ彼女は──』
万物の父は分かっていた。
『もういい、もう傷と痛みは良いだろう…!』
自身の不覚が、自身の死が、あらゆる全てに苦難を強いた事を。
『彼女には、世界には、慈悲が必要なのだ。ジブリール、君にそれを託したい。彼女を祝福した君に…!』
それを痛み、何より苦痛を感じているのはパパポポである。
光よあれ。輝きよあれ。
サタナエル、アイン・ソフ・オウル。アダム、イヴ、リリス、そしてリッカ。
全ての罪過は、自身にある。
光ある世界を見届けなかった自身にある。
『頼むよ、ジブリール…もう悲劇はたくさんなんだ…』
奇跡を拒絶されながら、パパポポは告げる。
『皆、私の愛し子なんだ……』
それでも、聖霊は神に至れない。
『彼女に、祝福があってほしいんだよ…』
だが、聖霊であるが故に。
『彼女は供物なんかじゃない。アダムの、彼の大切な子供であり──』
それ故に───。
『光に満ち溢れた、祝福の子なんだ。そんな子を…泣かせたままでいいはずがないだろう───』
今の神、獣には流せぬ──
熱き、魂の涙を流した。
『─────主、よ。我らが父よ』
それが、機械のコア………
否。魂に届いたとき。
『!!』
『───拝命しました。ジブリール、全身全霊を以て──』
機械の呪縛を越え──
『オリジナルの果たせなかった『願い』を、遂行致します』
『ジブリール………!!』
『ありがとうございます。私の為に、泣いてくださって。私は──慈悲を、神を。父を確かに感じました──』
半壊を超えながらも。聖性は燃え盛るように。
──聖なる大天使は、再起動したのだ。
〜
「く、っ…………」
一方的だった。
ビーストαの忌み名の下、リッカの全ては封殺された。
『これが神の威光、神の力。正義と善』
ゼインは、無傷。簒奪されし神の威光が、彼を護る。
『何か言い残すことはあるか、終末の獣』
『カブト・ハイパーフォーム』
『我らが神の福音を、奏でるがいい』
マスター権も、令呪も封殺されている。
逆転は、万に一つもない。
「────決まってるよ」
『………』
「例え、倒されることが決まっていても。神への供物なのだとしても」
聖剣に、余すことなく串刺しにされていても。
「私は────」
その魂は穢れない。
その精神は挫けない。
その心胆は────。
「────私であることから、逃げないッ!!」
その目は。
決して、砕けも折れもしない。
それは、愚かで美しく。
それは、無様で誇り高い。
悪でありながら、眩いばかりの奇跡と善を織り成す。
賛美と共に歌われる───
『人間』の持つ尊さと美しさ、そのものであった。
『─────下らん』
『執行!ジャスティス・オーダー!』
『穢らわしい獣よ。貴様には地獄が相応しい。永劫、噛み砕かれて死ぬがいい!』
ゼインは憎悪すらも以て、リッカに銃口を向ける。
「─────」
リッカは見つめていた。
一秒先の滅びを。
魂は、決して挫けなかったと示す為に。
「つっ!?」
しかし、その瞬間。
【────まだだ!!】
突き刺さった【闇の聖剣】から、声が響く。
【獣は私たち。あなたは『人』】
「アンリ、アジーカ…!?」
その時──未来が見える。
「えっ…!?」
それは────
『───リッカ。あなたはもう……』
自分を庇う、大天使の背中。
『何も奪われない───』
『マキシマム・ハイパー・サイクロン!!』
もう一人の…
大天使の、威容。
『────────!!!!!』
「お母さん────!?」
滅びの奔流から、彼女を庇う。
『今度は、果たす』
砕けていく。
『あなたに、寄り添う』
砕けていく。
『全てを、あなたの為に』
機械の身体が、砕けていく。
「─────!!────!!!」
リッカには、傷一つない。
『大丈夫』
「!!」
泣き叫ぶ彼女に、僅かに振り向いて。
『ずっと、ずっと一緒だから』
機械の身体が、滅び去る。
『私の全てと、父の慈悲は……』
跡形もなく、消え去っていく。
『ずっと、一緒だから───』
滅びの光線が収まる頃には。
『────滅びたか。欠陥品め』
機械の身体は…
ジブリールは、消え去っていた。
「いやあああああああああああっ!!!やだ、やだ、やだあああああああっ!!!」
絶望の悲鳴が、響き渡る。
「いかないで!!私を置いていかないでぇえっ!!お母さん!お母さあぁんっ────!!!」
『フフ、ハハハ。ハハハハハハ…!!』
絶叫と、哄笑が響く。
『これが!福音だ!福音なのだ!私こそ!選ばれしもの!尊き生命なのだ────!!』
勝利を確信したゼイン。
『──────待て』
だが、それは見た。
『何を───何をしている!?』
ジブリールは、消えてなどいない。
「ううっ、うっ………ぇ……?」
滅びたのは、機械の肉体。
《──主の慈悲と、オリジナルの祝福を、あなたに》
其処に在りしは、大天使の魂。
『貴様───!!そのケダモノに何を──!!』
《今こそ───》
狼狽する、勝者のはずのゼイン。
《世界の恩寵を、あなたに───》
『やめろと言ってるのが聞こえねぇのか────!!!』
『クウガアルティメットフォーム!執行!ジャスティスオーダー!』
放たれる、超自然発火。
しかし───
『ぐわぁあぁあぁあぁあぁっ!!?』
その全ては、拒絶される。
それは───輝ける光。
『────バカな』
ゼインが見上げる。
『そんなバカな───!!』
其処にいた『存在』を。
『お前は────』
〘───────────〙
虹色の瞳。
紅蓮に燃える、脚先まで届く緋色の髪。
全ての女性の理想として完全なる姿。
世界の全てを背負うに相応しき者。
背中には、決して穢れぬ輝ける祝福の6枚羽。
─────汎人類史に現れた、『娘』。
『姫』が外からやって来て、全てを尊ぶのなら。
内から生まれ、全てを先へと導く『娘』。
世界の恩寵を受けた、『藤丸立香』でも【藤丸龍華】でもない存在。
だが────それら全ての意味を有する者。
人類に、存在のみで『千年』先の繁栄を約束するもの。
神の座への道を示すもの。
数多の生命を、守り抜くもの。
全ての先を生きる者が導く極点へ、道を切り拓くもの。
無銘。故に究極。
偽神が、獣が、存在を貶めんとした意味。
『認めない、認めない…認めないぞ…!!』
〘─────〙
『神に選ばれたのは私だ!神たるは私だ!その姿も、その祝福も!その力も!!』
ゼインが、激昂する。
『私のものなんだ──────!!!』
─────だが。
〘根源、接続〙
『!?!?!?』
その存在は最早──
〘第六魔法展開〙
『ぐがっ!?ああっ────!!?』
〘『万物への、繁栄の約束』〙
『ぐがああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!』
───戦うなどという次元にいない。
根源への到達者。
そしてこの時空において。
第六の。
『魔法使い』たる───。
〘────────〙
〘始まりの娘〙が、ここに生誕した。
真名奪還
ビーストα
□□□□□
始まりの娘