人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

2927 / 3000
はくのん「『自分のために魔法は使わない』って縛りがあって、だから始まりの娘のあなたは喋れない。いや、自己表現ができない」

始まりの娘〘─────〙

はくのん「リッカにつられてアンリマユやアジーカも行方不明。根源に今いるってことかな」

始まりの娘〘──────〙

はくのん「なら大丈夫。リッカならそのうち戻ってく……どったの?」

始まりの娘〘──────〙

はくのん「世界を壊す呪詛を止めに行く?え、どこ?どこに?」

始まりの娘〘──────〙

はくのん「……消えてしまった」

(まぁ、必ず帰ってくるはず。始まりの娘だってリッカだし)

はくのん「カルデアに連絡しておこう。あ、もしもしゴッフ?リッカが根源に至って魔法使いになって今戻れなくなってる。今カルデアに一緒に行くから……」

(誰かが倒れる音)

はくのん「………誰かがぶっ倒れたみたい。なぜゆえ」

「それにしても、魔法使いかぁ〜〜〜………」

(山盛りのプレミアムロールケーキとか…アリかな。むふふ)


齎す約束

【──────……………】

 

時空の果て。概念の底。

 

其処に一人、呆然と空を見上げる者がいた。

 

【…………………】

 

色を失った桃色の髪。折れた腕に、潰れた片目。その痛ましい姿は、壮絶な戦いの果てに刻まれたもの。

 

彼女は戦った。この宇宙に巣食う根源的厄災…その眷属と。

 

【……あー…、やっぱり、こうなっちゃったか】

 

彼女は感じる苦痛や痛覚も、何処か他人事のような感覚で受け止める。

 

彼女は、ゼインと戦った。独善の権化にて、全ての生命を抹消する存在と。

 

理由は、幼稚なもの。ただ傲慢な態度が鼻についた。

 

自分こそが優良、自分こそが絶対。そんな風に振る舞っていたのがムカついた。

 

戦いはした。しかし、やはりヒーローは強かった。

 

倒されるだけの魔女がヒーローに負けた。当たり前の結末。

 

自分に出来たことは、幼稚な思いつきの幼稚な反逆。

 

それが実を結ぶわけもなく、やはり現実は残酷なもので。

 

【何がしたかったんだろ、私…】

 

返り討ちにあって、今に至る。

 

自分が成し遂げた事は、何もない。ただ、当たり前の様に処分されただけ。

 

ふと口にした言葉が、自身の生まれた意味を問う。

 

何がしたかったのか。

 

何をしたかったのか。

 

それを思い立った時には、懐のスマートフォンを取り出していた。

 

【…………】

 

操作する。それは、彼女が秘蔵していた映像。

 

並行同位体の生活を、少しだけ覗けるもの。

 

『アダム先生〜!次のショッピングは、夏草でどうかなっ?』

 

楽しげに、朗らかに跳ねる画面の向こうの『彼女』

 

『そうだな。荷物持ちは任せてくれ。衝動買いもいいぞ』

 

『わーい!ナギちゃんやセイアちゃんにも自慢しちゃおー☆』

 

目が潰れてしまいそうな程に、輝く『彼女』が、画面の向こうにいる。

 

【………あはっ】

 

乾いた笑いが漏れ出る。羨ましい、とか。妬ましいとか、そんな些末な呪詛すら出ない。

 

こんなにも違う。こんなにも、画面を隔てた世界が違う。

 

同じなのに。

 

向こうの『彼女』と、こちらの【自分】は、哀しいほどに違う。

 

どうして、こんなにも違うのだろう?

 

『彼女』と【自分】は、どうしてこんなにも違うのだろう?

 

向こうの『彼女』は、最愛の人と幸せにしていて。

 

こちらの【自分】は、最悪の神に使い潰される。

 

何が、違ったのだろう。

 

何を、違ったのだろう。

 

【酷いよ、神様】

 

神様に向かって堪らず出た非難、そしてすぐに思い当たる。

 

【そうだった。今の世界の神はアレじゃんね…】

 

酷いのも納得だ。

 

あんな神様が世界を統治しているのなら、酷くない筈がない。

 

ヤルダバオト・デミウルゴス。

 

世界を造った、最低最悪の神。

 

それなら、こんなにも世界に救いがないのも納得だ。

 

そして、もうすぐ全ての世界が不要になる。

 

今ある全ての世界を糧に、礎にして真の世界が作られる。

 

今の世界の、何が気に入らないのかは知らないけど。

 

今の神様もどきは、躍起になって『ちがう世界』を作ろうとしている。

 

全ての世界の、全ての存在に居場所はない。

 

だからきっと……

 

ここで死んだ方が、きっと幸せ。

 

『アダム先生〜!ナギちゃんとセイアちゃんがお茶会しようってー!』

『それはいい。午後の紅茶を持参するか』

 

『あははっ、ナギちゃん的には甘すぎるみたいだけどね?』

 

【………………】

 

幸せは、世界は不平等だ。

 

ある所には腐る程溢れてるくせに、無いところには髪の毛一つも存在しない。

 

【…………あ〜………】

 

自分だって同じなのに。

 

自分だって、あの娘なのに。

 

向こうの彼女には全てがあって。

 

こちらの自分には何もなくって。

 

それが、人生の歩み方で決まったのなら。

 

それが、人生の生き方で決められたのなら。

 

ねぇ、神様。

 

私にどうして、教えてくれなかったのかな。

 

【……私だって……】

 

幸福は得難いものだって。

 

日常は大切なんだって。

 

当たり前なんてものは、どこにもないんだって。

 

教えてくれたなら。少しでも教えてくれていたなら。

 

きっと、少しは……。

 

【……あぁ、そっか】

 

神様は、今の神様はアレだった。

 

なんだ、じゃあどこにもないんだ。

 

救いなんて、どこにも無いんだ。

 

助けてくれる神様が、自分しか見ていない。

 

そんな事実を、知っているから。

 

じゃあどこにも、希望なんて無いんだって。

 

当たり前の答えが、胸に落ちた。

 

【────もう、いいや】

 

もういいや。

 

考えたくもない。足掻きたくもない。起き上がりたくもない。

 

……生きて、いたくもない。

 

【どうせもう…良いことなんて一つもないし】

 

苦しむために生まれてきたと、狼耳のあの子は言った。

 

私は、それは少し違うと思う。

 

私は違う。

 

……生命なんて、必要無かった。

 

【どうせ、苦しみしか持っていないんだったら】

 

携帯端末の電源を、落とす。

 

【生まれてなんて、こなければよかったのに】

 

諦観と、悟りと共に目を閉じる。

 

【まぁいいや。もう二度と】

 

もう二度と目覚めないのなら。

 

それに勝る幸福なんて、きっと無い。

 

【もう二度と、生まれ変わりませんように】

 

死んだらどこに行く?

 

何処にも行きたくない。

 

真っ白でも、真っ黒でもいい。

 

二度とこんな、不平等で無慈悲で、不完全な世界に呼び戻さないでほしい。

 

【もう二度と……】

 

虚無の祈りと共に、目を閉じる。

 

【苦しいだけの生命を、繰り返しませんように…】

 

目を閉じる。

 

神を騙る獣が支配する、一片たりとも救いのない世界から。彼女は解き放たれ──。

 

【────ッ!?】

 

瞬間、眼前に満ち溢れる光。

 

〘───────〙

 

六枚翅を携えた、目にきついほど光輝く存在。

 

【な、に………?】

 

〘──────〙

 

困惑する彼女を認めたその存在は跪き、そっと手を翳す。

 

【─────!】

 

瞬間、全ての傷が癒えていく。いや、治癒の領域を超えている。

 

これは『奇跡』。はじめから、傷付いていた事など無かったかのように…。

 

【………あなた……確か……】

 

覚えがある。

 

たしか、偽神が必死に貶めていた始まりの獣。

 

〘──────〙

 

微笑みと共に彼女が離れた頃には、全ての傷が癒えていた。

 

【─────どうして】

 

突如現れた、慈悲と救い。

 

彼女には、それが受け止められない。

 

【どうして助けたの?どうして、助けようとしたの?】

 

〘──────〙

 

【あなたの敵だよ?私は敵で、あなたの知る『ミカ』じゃない。勝手に自滅して、勝手に死にかけてただけ。なんで助けたのって聞いてるの!】

 

見れば彼女は、何かが根本的に、決定的に違う。

 

存在が、風格が。持っている因果が、獣などとはまるで違う。

 

これではまるで、本当の……

 

【私は死にたいの!もう生きていたくない!何もかもが嫌なの!】

 

〘──────〙

 

【生きていたって何にも良いことなんてない…!いつまでも苦しいし、私じゃない誰かは皆幸せなのに、私は何にも幸せじゃない!私が悪かったの?私がいけなかったの!?それなら────!】

 

堰を切ったようにぶつける思い。

 

それは、神への懺悔にも似て。

 

【どうして、誰も教えてくれなかったの…!教えてくれたら…教えてもらえたら…!私だって!】

 

〘──────〙

 

【私だって……私だって…!私だって、幸せに、なりたかった…!】

 

血の涙を流し、蹲る。

 

不平等に疲れ切った娘に、歩み寄る。

 

 

〘生きてほしい〙

 

【!!】

 

〘私はあなたに、生きてほしい〙

 

それは、彼女が堕ちてから初めて受け取った言葉。

 

祝福の肯定。

 

【……無責任な事、言わないで……!生きていたくなんてない!誰も助けてくれないのに…!】

 

〘助けに来る〙

 

【!】

 

〘何度も、何度でも。私や皆が、助けに来る〙

 

その言葉は、実体験。

 

〘生命を謳歌する権利は、誰にだって赦されているよ〙

 

【……!!】

 

〘生きるって事は、生命活動を続ける事を言うんじゃない〙

 

彼女の手を取る。

 

〘自分だけの幸せを、手に入れるための旅を言うんだよ〙

 

世界が、皆が、そうしてくれたように。

 

〘辛い時、苦しい時、哀しい時。思い出して〙

 

【──────】

 

〘必ず誰かが、誰でもないあなたを待っているから───〙

 

彼女は、彼女が知る世界の真理を告げる。

 

【──────】

 

その言葉に、呆然と聞き入る彼女。

 

〘迎えが来たよ〙

 

【!】

 

〘またね。またいつか…〙

 

ふわりと、翅を開く。

 

〘またいつか会おうね。約束だよ〙

 

輝きと共に、彼女は消え去る。

 

彼女の手には……

 

【……………】

 

緋色の翅が残されており。

 

その暖かさは、静かに彼女を癒していた。

 




シロコ?【探した。大丈夫?】

ミカ【………探してくれたの?】

シロコ?【うん】

ミカ【どうして?】

シロコ?【…………友達】

ミカ【!】

シロコ?【友達だと、思っているから】

ミカ【……………そっか】

シロコ?【迷惑だった?】

ミカ【………、………】

翅を、握る。

ミカ【…………別に】

その『救い』を……

否定することは、しなかった。



カルデア

始まりの娘〘─────〙

オルガマリー「……………えー…………」

「第六魔法の使い手。人類最後の魔法使い…根源接続者、藤丸龍華よ」

始まりの娘〘──────〙

…その紹介のみで。

一般カルデアスタッフ数十名とゴッフが卒倒したという。(ゴッフは2回目)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。