人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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始まりの娘が、カルデアに保護された頃。

根源中枢にて、藤丸龍華は───


アカシック『それでは、魔法使いとしての技能と性質。そして君に起きた変質。それら諸々を解説、引き継ぎさせてもらうよ』

リッカ「はーい!」

アカシック『勿論、君に帰る手段はあるから安心するように』

リッカ「よろしくお願いしまーす!」

アカシックから引き継ぎを受けていた。


彼方から此方への引き継ぎ

『さて、魔法使いを名乗るにおいて君が知るべき複数の事柄を説明させてもらう。根源について、蒼崎青子のように『よく分からなかった』というのでは気を揉ませた仲間達に申し訳無いからね』

 

根源の世界。星が降り注ぎ、宇宙にその身でいるようなその空間にてアカシックとリッカは語る。

 

アカシックの姿は、白き人影。何も定義されていないもの。異質だが、リッカには『そういうもの』として把握されていた。

 

『まず、今君の肉体を動かしている存在、いわゆる始まりの娘だが…あれは君の肉体がジブリールの祝福により神代に回帰したことと、彼女が根源に接続チャンネルを開いたことにより生まれた存在。魔法使いの力を制御する為の人格と言ったところだ』

 

「始まりの娘は、根源に最初から接続していたってこと?」

 

『そういう事だ。アダムが拓き、リリスとイヴが広げ、そして君が治める。始まりの一族はそういう役割と力を神からもらっていたんだよ。この場合とはあの偽神ではなく、本来の神のことだ』

 

「パパポポ様……」

 

『王権の光から生まれ、セファール襲来の折に神々から『世界』を託され、同時にセファールに対話を試みた程の慈悲の神。よくも悪くも、子々孫々に自分を超える力を与えるのに躊躇いがなかったのが事態の複雑化に繋がってしまった』

 

それを責める気はないが、とアカシックは付け加え続ける。

 

『ともかく、始まりの娘たる君ははじめから根源に繋がる力を持っていて、それが発動した際に『藤丸龍華』がこちらに送られ、魔法の定義がされた。君が此処に来たのは、始まりの娘の意思だ』

 

「あの子の!」

 

『魔法や統治、そして世界に向き合うには内部人格、魂の方針、魔法の定義が必要だからね。君という存在は、根源の力という無色に色彩を齎すために此処に飛ばされた…という訳さ。まぁ、引き継ぎのせいでちょっと戻り方は特殊になるが、後で情報は共有しておく』

 

本来ならば全て把握し理解できるが、アカシックはあえて言葉にする。それも、全能の奴隷に起きた変化。

 

『始まりの娘は魔法を定義した。それは皆を幸せにする魔法。これは人理を定義し、世界を救う為にあらゆる人類史の全てをノーコスト、ノーデメリットで使役するもの。抑止力すら『人類と星の存続のためだ、文句は言わせない』と黙らせられるものだ』

 

「凄い!私がそんな素敵な魔法を!?」

 

『僕も全能も、君と君を取り巻く環境なら大丈夫と判断したからね。根源の力を、誰かを幸せにするために振るう。そんなロマンチックな魔法なら拒む理由もない』

 

ただし、とアカシックは補足する。

 

『君自身に不安はないが、それでも出しっぱなしの蛇口は一般的に壊れているものだ。それをするに、いくつか制限…スイッチは付けさせてほしい』

 

「はいっ!」

 

『いいお返事。まず、魔法を振るう際は『始まりの娘』に必ず変化する。これは『皆を幸せにする』という魔法に、他者や君の主観を挟まないためだ』

 

悪意ある存在が、魔法を悪用しないように。

 

君自身が、奇跡に溺れ退屈や倦怠に倦まないように。

 

『変化するには厳しい条件があるが、変化したら勝ち確定。そういう最強フォームや究極フォームは君は好きかな?』

 

「うん!大好き!」

 

『よろしい。始まりの娘はリリン、リリム、オリジン・イヴという仮称で呼ばれるべきだが、彼女に自己表現の機能はない。好きにしてあげてくれ』

 

「うん!私はよろしくできたらいいなって思う!」

 

『それはいい。受け入れてもらえるなら彼女も喜ぶ。そして『皆を幸せにする魔法』という定義の話だ。この『皆』とは君の決意により、汎人類史とそこにいる全て。これらを護るために全てを行使できる』

 

だが、とアカシックは告げる。

 

『あちらの世界の法則に従い、『救えないもの』を定義させてもらった。都合よく万能の力、はまだまだ人類には危険だからね』

 

「!」

 

『結論から言えば、君の魔法は『汎人類史』を絶対に救うためのものだ。『異聞帯』に対しては、君の魔法は滅ぼすことしかできない』

 

異聞帯。間違いでなく、そのまま滅ばなかった世界。

 

『侵略、競争において魔法使いたる君は絶対に汎人類史の味方になる事が決定している。どんなに優れた異聞帯だろうと、どんなに惨い異聞帯だろうと。『皆を幸せにする』ために、君は滅ぼすしかない。これが、魔法使いたる君の唯一の責務だ』

 

「──────」

 

『ふっ。全然悲壮感が無いね?』

 

「『私』は無理でも、『私達』なら?」

 

アカシックは頷く。

 

『その通りだ。君は汎人類史を護る幹。そして、それ以外を尊び未来に繋げる者は既に君のそばにいるんだ』

 

私達。根源に至ろうと、けして変わらぬ彼女を祝福しながら。

 

『英雄姫エア。彼女を有する黄金の王ギルガメッシュ。君が助けられない世界に価値を見出し、枝として彩りを加えるのは彼女達だ』

 

「やっぱり!」

 

『君が君であるからこそ、全ての世界と全ての可能性を人は掴める資格を得た。勿論生存競争で勝たなければ生殺与奪はできないが、そんなところは心配に値しない』

 

彼は確信している。

 

『完全無欠のはっぴぃえんど。どれだけ困難な道でも、君達は誰もが笑顔になる道を選ぶだろう?』

 

「うんっ!異聞帯をみんなの力で【行き止まり】から『極まったもしも』にしてみせる!」

 

『期待しているよ。そんな君だから、根源という全ての起源に招けたのだから。欲するものには何も与えず、欲さぬものには全てを与える。されど欲さぬものは欲さぬがゆえ、辿り着くことはない』

 

「あ、だから『始まりの娘』?」

 

『そう。彼女が君なら大丈夫と送り出したんだよ。……まぁ今頃『あれ?戻ってこないな?』と焦っているかもしれないがね』

 

アカシックは言霊を、光としてリッカに託す。

 

『この会話記録は始まりの娘に同期する。彼女はアジーカ、セーヴァー達と違い普段は知覚することすらできない存在だが、必ず君には応えてくれる。仲良くしてあげてくれ』

 

「うん、勿論!」

 

『よし。では最後に、君達が求めるべき、大いなる敵を討ち果たす為のアドバイスを贈っておこう』

 

アカシックは静かに、二つの光を手から取り出す。

 

『君は『全知』そして『全能』、どちらが格上だと思う?』

 

「全知全能……」

 

『先に答えを言ってしまうが、全能よりも全知の方が何倍も厄介で、恐ろしいものだ。全能は既に彼女に資格を託したが、全知だけはどうしても君達が見出さなくてはならない』

 

アカシックは光の一つを輝かせる。

 

『全能とは何でもできる力を指す。しかしその『何でも』とは、行使する人格の制限を受ける。……君は『おら新宿に行くだ』という曲を知っているかな?』

 

「知ってるー!新宿に出たなら銭どかため…あっ!?」

 

『そういう事だ。田舎を嫌い、都会に行ったところで、出来るのは田舎基準の豪遊。それと同じだ。『全能を有したところで、振るえる権能は一人分』。それが真理だ』

 

だが、とアカシックは付け加える。

 

『全知とは全てを知ること。全能の資格者が全てを知ったとき、それは正しく全能の覇者となる。何故か?『全能』の全てを『全知』で把握するからだ』

 

「…!」

 

『全てを知るということは全てを行使するということ。ソロモンという智慧の覇者が人格を持たなかったのもこれが起因する。そして、偽神たる存在が今も世界に干渉しているのも同じだ』

 

アカシックは語る。

 

『全能は一人に託され、数多無数に簒奪された。それにより、この宇宙の何処かに在る『全知の聖杯』を手にした者が、真なる全知全能となり世界を手にするだろう』

 

「全知、全能……」

 

『君達魔術師が生み出した形式と、変わることはない。これは全宇宙、全存在を懸けた終極の獣との『聖杯戦争』なのだ。勝者こそが、正しく全ての世界の覇権を握る』

 

アカシックが示した、全宇宙での聖杯戦争。

 

その果てに、終極の獣は在る。

 

『本来なら私は傍観者なのだが、エア達のマネージャーとして存分に君達を依怙贔屓させてもらう』

 

「いいの!?」

 

『いいんだ。転生者を輩出した者として、あんな雑魂共にエアやフォウ、ティアマトが負けるなんて認めるものか』

 

全能にありながら、何一つ成せぬ奴隷。

 

彼が贈る、値千金の助言。

 

『人理の守護者よ、『新しき生命』を探せ。アーキタイプと呼ばれる、人類が生み出した次代のいのち。それこそが『全知』の聖杯の資格となりアクセス権だ』

 

「アーキタイプ…!?」

 

『宇宙の何処かにある、いや今も存在する全知に至るもう一つの智慧の根源。導き手の猫辺りに、詳しい話を聞くといい』

 

彼は詳しい場所は告げられない。

 

全知の聖杯の位置以外を、全てを知っていながら。

 

だがそれでもリッカに託す。

 

それはロマンチストになった根源の…

 

細やかな、祝福とエールであった。




アカシック『長々と話してしまったな。では、君を送り返すために必要な場所に案内しよう』

リッカ「場所?」

アカシック『ああ』

『藤丸龍華が終着を迎える際に辿り着く場所。極めて有り体に言えば『死後の場所』だ』

リッカ「!」 

(……地獄、かなぁ…)

アカシック『行くかい?』

リッカ「────行く!」

(それでも、皆の世界に帰らなきゃ!)

アカシック『よろしい。付いておいで』

リッカ「……そこって、無間地獄って場所?」

アカシック『いいや、違う』

『────────『涅槃』、という場所さ。君宛の、特待チケットを受け取っているんでね』

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