人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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始まりの娘〘───────〙

カドック「リッカ…どこまでもとんでもないヤツだと思ってたけど、まさか根源にまで達するなんてな…」

キリシュタリア「ヴォーダイム家の千年の研鑽がリッカ君の1代で抜かれてしまったよ!笑うしか無いねはっはっは!」

ベリル「いやまあそれはご愁傷様なんだけどよ、まさかずっとこのままって訳じゃあないよな?」

始まりの娘〘────〙

ベリル「リッカは間違いなく俺らの中枢なわけで、お喋りも出来なくなるってのは相当な痛手だぜ?」

ぺぺ「そうねェ…でも、彼女も彼女で除け者にするのは可哀想よ。確かに此処にいるんだもの」

オフェリア「彼女とリッカ、両方に帰ってきてもらわなくちゃね」

デイビット「そう心配することはない」

マスターアルトリア「出た、最適解ショートカット」

デイビット「導き手も帰る手段も、用意はされているのだから」

ぐっちゃん「ふん。魔法使いだろうとなんだろうと、後輩は後輩よ」

始まりの娘〘────〙

ぐっちゃん「リッカ。パン買いに行くわよ。ついてきなさい」

始まりの娘〘─────〙

はくのん「おぉ」

〘────(すっ)〙

ぐっちゃん「ウソ、パンを…作ったの!?」

〘──────〙

ぐっちゃん「や…やるわね、後輩…!」


歓待の奇跡

〘───────〙

 

魔術師達が集うカルデアにて、満を持して現れた『魔法使い』、始まりの娘ことリッカ。

 

その姿と、リッカが不在という状態に思い悩まされながらも、彼らは懸命に現状を受け止めんとしていた。

 

「まぁ、根源や魔法使いがどんなものかは、皆魔術師だから大体わかっているから説明を省くけれど……ボク達、とんでもない領域にリッカ君を導いてしまったのは間違いないよ」

 

ロマンが神妙な面持ちで、始まりの娘を見つめる。

 

「いやはや、こちらとしても驚きを隠せないよ。魔術師達が躍起になって求める根源に、彼女は一足先に行ってしまったのだから!」

 

ダ・ヴィンチの驚きと高揚や、周囲の様々な目線にも、始まりの娘たる彼女は特に動じる様子もない。

 

〘──────〙

 

「まぁ少なくとも悪いやつじゃないのは確かよ。美味しいしこのパン(もぐもぐ)」

 

「根源接続者の魔法使いにパン作らせたのはアンタだけだろうぜ、ヒナコさんよ…」

 

ドン引きするベリルをよそにヒナコは続ける。

 

「だとすると尚更問題ね。万能や全能なんて人の手には余るでしょう。だから彼女は自分を出さないんじゃないかしら。公平を保つ為に、リッカの意思を待っているとか…どうなの、デイビット?」

 

ヒナコの問いに、デイビットは目を開く。

 

「彼女はオレの交信すらも届かない場所にいる。だが、彼女は必ず戻って来る」

 

「あら頼もしいわ。その心は?」

 

「彼女は人理救済のプロフェッショナルだ。責任放棄はあり得ない。ならオレたちは、彼女と上手く向き合い準備するべきだろう」

 

デイビットの言葉に、一同の視線が再び向けられる。

 

〘──────〙

 

特に気にする様子もなく、始まりの娘は何も口にせず佇むのみだった。

 

 

「ひとまず彼女が本当に魔法使いに至っているのなら、それは本当に凄まじい事態よ。その力を、私達は細心の注意を以て向き合わなくてはならない」

 

オルガマリーが、始まりの娘に歩み寄る。

 

「でもまずは、人間として…隣人として。リッカと同じように彼女を受け止め、受け入れましょう」

 

差し出したのは、右手の握手。

 

「ようこそ。まずは全ての魔術師を代表してあなたを歓迎するわ。人類最後のマスター…に、宿っていた魔法使いのあなた」

 

〘─────〙

 

「握手、よ。最大限の友好の証になるのだけれど…解るかしら?」

 

始まりの娘は手とオルガマリーを交互に見やった後……

 

〘──────〙

 

そっと、手を握り返す。

 

「!っ……!?」

 

その瞬間、オルガマリーが光に包まれ、煌めきを放つ。

 

「マリー!?」

 

「なんの光ぃ!?」

 

「ボイルド君!何か異常は!?」

 

「だ、大丈夫よ皆。少しびっくりしたけれど私は…」

 

光が収まる頃には、オルガマリーの姿は晴れ……

 

「は…?」

 

巨大な角。

 

派手な外装パーツ。

 

奇天烈なインナー。

 

『落ち着いて対処しましょう。私達はどっしり構えなきゃならないのだから』

 

「「「「「所長ーーーーーー!?」」」」」

 

彼女は、規格外の姿へと変貌していたのだ。

 

『ん?え………なっ!?何この格好!?え、ホントになにこれ!?』

 

「あれ!?見たことあるぞ!?これどこかで…!」

 

「思い出した!確か向こうの藤丸が出会ったとかいう『地球大統領』!その姿と同じだぞ!」

 

『地球大統領!?報告書にあったけどあまりにあまりなんで私が現実逃避したあの!?』

 

「まさにそれだ!愛弟子、今君は極限まで霊基が引き上げられ、地球大統領になっているんだ!」

 

『い、言われてみれば…私の中の聖杯がこれ以上無いほどに活性化してる…これはまさか、霊基再臨…!?』

 

(今の一瞬で!?これが魔法…いや、根源の力の一端!?)

 

「お、オルガマリー所長!し、信じがたい事なのですが朗報です!」

 

『大丈夫よシオン!この格好ほど信じがたいものはないわ、報告して!』

 

「れ、レイシフト適正です!オルガマリー所長に、レイシフト適性が発揮されました!」

 

『え……!?』

 

一同、カルデアスタッフがざわめきを起こす。

 

「まさか、所長に足りないものを一瞬で!?」

 

「与えたっていうのか!?なんの理屈も代償も無しに!?」

 

「いや、それにしたってその格好はなんだ!?」

 

〘──────〙

 

始まりの娘は、静かにオルガマリーを見つめている。

 

『あなた………』

 

その目は、確かにオルガマリーの内面を見つめていた。

 

マシュやリッカを、送り出すことしかできない私。

 

アイリーンの力を借りなくては、共にレイシフトすら出来ない。

 

いつか、本当の意味で彼女たちに並び立ち。

 

責任や危険を背負うことが、せめてできたのなら……。

 

『……叶えて、くれたのね。私の、秘めた願いを……』

 

〘─────〙

 

始まりの娘は、オルガマリーにそっと手を差し出した。

 

友好の握手。

 

『………あはは……』

 

どうやら魔法使いの彼女にとって、こんな事ですらも『挨拶』に、過ぎなかったらしい。

 

だが……

 

そこには確かに、願いを正しく叶える『優しさ』を感じ。

 

『ありがとう。大切に使わせてもらうわね。この力と、贈り物を』

 

再び強く、握手を交わすのであった。

 

「凄いぞマリー!マスター適性もついてきてる!カルデア最後の追加マスターかもしれないね!」

 

『うそ……!?』

 

「一応契約サーヴァントはボクにしておくね。腰の重い最後の切り札コンビとして頑張ろう!」

 

『それでいいの、ロマニ…?』

 

「……第六魔法。それは私の家系たる叔父が挑み、五百年以上かけて敗北した課題にして命題。その答えをまさかこうして目の当たりにできる日が来るとは、本当に驚きでした」

 

シオンは、敬意と共に始まりの娘を見やる。

 

「でも、今は安心と確信に満ちています。あなたという存在が、我らの知る藤丸リッカに宿ったのなら、なんの心配もありません」

 

〘──────〙

 

「魔法使い、根源の存在と区切ること無く、カルデアの新しい同胞として!これからもよろしくお願い致しますね!私はシオン。シオン・エルトナム・ソカリスです!」

 

「う、うむ。正直魔術師としてミソッカスな私からしてみては話しかけることすら憚れるかもしれんが…それでも、副所長として保証しよう」

 

ゴルドルフもまた、始まりの娘に向き合う。

 

「君の力を必要以上に頼ること無く、またすがること無く。リッカ君と同じ様に接することを誓わせてもらう。君……名前とかは無いのかね?」

 

〘──────〙

 

「そうか、それすらも……。では、彼女が戻って来る前に名前を考えるのも良いかもしれないねェ」

 

「そうだな!名前ってのは祝福だもんな!」

 

カルデアスタッフも、口々に彼女を寿ぐ。

 

「まさか魔法使いにまでなっちゃうなんて。あなたの規格外さには呆れちゃうわ」

 

「まぁ、心配しないでいい。絶対悪用しないし、させないからさ」

 

「多分リッカに義理立てして喋らないんだろ?それじゃあなんというか、寂しいよな?」

 

「そうそう、せっかく得た自我と自意識があるなら、親しみを込めて接しなきゃ」

 

「尊び、重んじる。それが楽園カルデアの第一モットーだからな」

 

〘──────〙

 

始まりの娘は、見た。

 

人の色彩の一つ。暖かな善意を。

 

「まぁ、その……なんだ」

 

カドックもまた、始まりの娘の肩を叩く。

 

「別に君を除け者にしたいわけじゃない。ただ、僕達には藤丸龍華が必要不可欠というだけなんだ。気を悪くしないでくれ」

 

〘────〙

 

「リッカを取り戻して……そうしたら彼女を含めて、歓迎会をしよう。同じ、仲間としてさ」

 

カドックの言葉に……

 

始まりの娘は、静かに頷いた。

 




─────そして。

始まりの娘〘─────〙

始まりの娘は、カルデアスを見やる。

オルガマリー「あれが気になる?アレはアニムスフィア家の……」

始まりの娘〘────〙

それを見た始まりの娘は、動いていた。

オルガマリー「なっ───!?」 

始まりの娘から、六つの翅が輝きを放ちエネルギーとなって浮かぶ天体を包み込む。

オルガマリー「どうしたの!?一体何を…!?」

始まりの娘は、応えず。

異星、カルデアスを自らの力を以て包み込む。

ロマニ「うわわわ、どうしたんだい!?マリスビリーのアレコレが気に入らなかったのかな!?」 

蒼き星は、綺羅びやかに輝く無垢金の色に姿を変える。

シオン「カルデアスが……金色に……」

ゴルドルフ「ど、どうなっているのかね……?」

始まりの娘〘──────〙

始まりの娘は、何も応えない。

デイビット「……………───」

キリシュタリア「デイビット、これは…?」

デイビット「───カルデアスの、運命が変わった」

カドック「カルデアスの…?」

デイビット「たった今。マリスビリーの計画は、終わった」

デイビットが口にする言葉と、金色の天球。

始まりの娘〘────〙

始まりの娘は、何も口にすること無く。

ただ、静かにカルデアスを見つめていた。
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