人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
(金色に包まれたカルデアス…マリスビリー、お父さんが作り上げた地球の極小モデル。人理を保証する天球)
「…でも、それは今金色の光に包まれている。観測されている光、そして文明の在処。それは一体、どうなっているのか」
(……マリスビリーの血縁であり、滅び、死ぬはずだった私の存在。全てをカルデアに捧げる準備は出来ている。けれど…)
「冠位に到達したマシュ。根源に接続したリッカ。…なら、私はこのカルデアスを誰よりも知らなくてはならない」
(でも、マリスビリーは私ではなくキリシュタリアを選んだ。落伍の私には、カルデアスの全貌は分からない)
「…教えて、カルデアス」
「私とあなたには、どういった関連と関係があるというの…?」
『──────答えましょう』
オルガマリー「!?」
『私は、カルデアス。貴方がたと共に歩まんとする、『異なる星』。貴方がたがもたらせし『開闢の光』に照らされし、星の意志です』
オルガマリー「か、カルデアスの…意志…!?」
オルガマリーがカルデアスと共にある時、それは語り掛けた。
カルデアス。異なる星にして、共に歩むものと。
「か、カルデアスの意志そのもの……?いえ、カルデアスは極小の地球の…!」
その時、思い至る。オルガマリーは泰然であれば、比類無き君主であるが故に。
「───オリジナルの地球は、今此処にある。なら……あなたは、別の星……?」
『我々は、憎しみと共に生み出されました』
「!」
カルデアスは語る。自身が、生誕した理由と意味。
『何も残さぬ憎しみ。決して残さず。全てを白紙にするように。星を空洞にし、宇宙を閉ざし、全てを無為に、無作為に、無価値に、無意味にするように。その為に、私という星は作られました』
「……!」
一見、悪辣で邪悪な理由。
「──いいえ。それは邪悪ではないはずよ」
そうでなければ、ロマニが…
ソロモンが、マリスビリーに手を貸した説明がつかない。彼とて、世界を滅ぼす邪悪になど手を貸すはずがないのだから。
『はい。私達は───その結論に、否という異議を申し立てました』
「────え?」
『私を生み出した者。そして、我等をあの開闢の輝きで包んだもの。それは異なる、別の意義を私に授けたのです』
別の意義。オルガマリーは固唾を飲み込み、異星の言葉を待つ。
『私という星は、あの光と輝きに包まれ知ったのです。私が生まれたことへの意味。私の生まれた事への意義。それは、如何なるものであるのかと』
「…………」
『何も残さぬために生まれ、無為に全てを消し去るための星であらんとするが正しいのか。ならば私という星は、消え去る事が正しい選択ではないか。私は、光り輝く中に見出した存在に問いました』
根源に接続したリッカが、異星を金の輝きで包みこんだ。
「あれは……カルデアスとの、対話………だったの?」
異星は続ける。
『あなたがたは、汎人類史は応えてくださいました。『生命を謳歌する権利は、誰にでも赦されている』』
「!」
『『死と断絶を越え、愛と希望を抱き、尊き生命を共に謳おう。異なる星でも、生まれが異なっていても。私達は歩み、手を取り合える』。その言葉と共に、異星に住む文明に、光に満ちた福音と恩寵を授けてくださいました』
干渉、観測はできない。レイシフトとは、過去と今にしかできないもの。
『光と共に未来を。そして私達のソラの果てにはあなた方という善き隣人が在り、全ての生命、全ての宇宙の為に戦うあなた達がいる事を知ったのです。楽園と呼ばれし、カルデアの方々』
カルデアスの声は告げる。あの光を齎したのは、人類であると。
『私やあなたがたの敵は、根源的な破滅を齎す終極の獣。我等カルデアスは、その存在に推論を立てました』
「ビーストΩの事を……!?」
『はい。あれは、全ての人類を最も肯定するもの。全ての存在を、ただ肯定し、賛美し、歓待し、祝福するものです』
カルデアスの告げる言葉は、衝撃的なものだった。
それは大凡、カルデアが浮かんでいたビーストΩとは違うもの。
まるでそれこそ、真の神であるかのような…。
だが、その推察は続く。
『かの敵は、『自愛』の化身。人類とは、人とは、己の内にしかない。かの神は、内に有る人類しか認めない』
「内に有る、人類……?」
『自らの肯定。自らの祝福。自らの賛美。自らの歓待。自らの祝福。それらは全て、人類に向けられている。『自身』という人類に』
「神なのに、己の内に人がいる?それは………」
その時。思い至る。
半神であり、己の内に人を、もう一人を宿すものを。
「……ギルと、同じ……?」
『宇宙とは不完全と定義し、人は愚かと断じ。真なる光輝溢れる世界の為、全ての魂を不完全から『解放』する。それが、かの神の命題たる使命』
「何故、あなたがそれ程の事を……?」
『請われたのです。光の内から、その神を、共に討ち果たす為の力を合わせるべきなのだと』
異星は、告げる。
『全ての次元、時空において。私は『異星』として地球を、星を空洞にし宇宙に閉ざすもの。カルデアとは、宿敵にして雌雄を決する者でしかなかった』
「あなたは、違うというの?」
『あの輝きに包まれた瞬間から、私は異星であり異星でなきものとなりました。皆様と共に歩む、小さな異星、カルデアス』
カルデアスはその時、口調を崩す。
『あれほどたくさん共に在ったのです。資格は充分に備わっていると自負していますが』
「…そうね。なんであれ、カルデアはカルデアス無くしては成り立たない程に助けられてきた」
まるで自慢げな子を見るように、オルガマリーは苦笑する。
『しかし、この世界の敵は人理や異聞帯、ましてや侵略者や宇宙の来訪者ですらない。生きとし生けるもの、今の宇宙、全てにおいての絶対的な厄災と言っていいもの』
カルデアスは結論を断じる。
『この世界に生きるもの全てが、向き合い取り組まなくてはならない偉大なる戦いにして、冠位指令。その前には、一人の魔術師の思惑などからは脱却しなければならない。私は異星として、この宇宙に生きる星として。そう結論を導いたのです』
「お、思い切ったのね……流石よ、カルデアス…」
なんだかこの思い切りの良さには覚えがあるわ…その時、カルデアスは告げる。
『オルガマリー・アニムスフィア。あなたは聖杯に汲み取られ、本体から離れながらも立派に、汎人類史の一員として覚醒しました。異星、その大本として祝福を送ります』
「……本体?汎人類史の一員?え、ちょっと待って、どういう事…!?」
『根源に触れたカルデアスは意義を異なるものとします。138億光年の果て、地球に生きる命が『全宇宙を救った最高の生命体』と称えられる存在となるために』
カルデアスは、はっきりと告げる。
『オルガマリー。あなたが、地球とカルデアスの『架け橋』になってくださいますか?』
「─────!」
自身の生まれた意義。
自身の存在価値。
はたしてこのカルデアは、楽園は、どこに向かうのか。
「………お父さん。私もカルデアスも、親離れの時が来たそうよ」
何もわからない。マリスビリーが何を思い、何をしようとしているのか。
だが事実として、オルガマリーの運命は変わり、カルデアスの運命も変わった。
何もわからないのなら……
「─────私達が先に、道を拓いてしまえばいいのよ」
後に明かされた真相が、自分達の選んだ真相とは懸け離れていったとしても。
『これが自身たちの選んだ道だ』と、胸を張って進めばいい。
その道筋は、暗く道標すらないものであっても。
自身たちだけの、グランドオーダーにきっとなる。
たとえ自分が何者であったとしても。
このカルデアに、居場所はちゃんと必ずある。
「解ったわ、カルデアス」
意を決して、オルガマリーは異星を見据える。
「オーダーを受諾します。同時にカルデア所長として、正式に異星、カルデアスをフィニス・カルデアのメンバーとして認めます」
『ありがとう、オルガマリー。共に根源的なる厄災を打ち払い、人理のより良い未来の為に力を合わせましょう』
カルデアスの言葉に頷き、オルガマリーは、異星に近付く。
「あの時は真っ赤で、あなたに吸い込まれそうで怖かったけれど…。金色のあなたは、なんだかゴージャスね」
『神の座に潜む獣を討つ星です。これからも頼り、尊重していただける事を期待します』
何もかもが異なったのならば。
進むべき道は自分で決め、旅の正解は自分達で見出す。
『我々に接触し、進むべき道を示してくださった根源接続者にお伝え下さい』
「リッカに?何かしら?」
『『異星として、隣り合う星に生まれた隣人に敬意と感謝を』』
「………───必ず、伝えるわ」
こうして、オルガマリーは異星の『神』ではなく。
汎人類史の『人』として。異星の『仲介者』となったのだった。
カルデアス『ビーストΩ。自尊にして自愛の化身。それを討つには、カルデアの戦力はほんの少しだけ足りません』
オルガマリー「え、ほんの少しなの?」
カルデアス『有している戦力はともかく、概念階梯が下次元に設定されています。ビーストΩはこの宇宙の『閲覧者』であり、我等は閲覧されている『本』なのです。本のキャラクターが読者を殺すことはできないでしょう?』
オルガマリー「……階梯を合わせなきゃ、土俵にも立てないのね」
カルデアス『オルガマリー。ほんの少しと言ったのは、ほんの少しだからなのですよ』
オルガマリー「……知らないことがある、とか?」
カルデアス『全知の聖杯、全能の聖杯。まだ楽園カルデアには、全知の把握が完了できていません』
オルガマリー「!」
カルデアス『楽園カルデアの人理定礎地は、今はA。これをEXに上げ、階梯を上げるにはいくつかのタスクが必要です』
オルガマリー「タスク……?」
カルデアス『エクストラクラスの向き合い方を知るのです、オルガマリー。濫用ではない、正しい意味を。それは異なるカルデアに力を貸さねば、辿り着けない答え。偽神はそれ故動かない。『楽園には知り得ない知識がある』と』
オルガマリー「⋯!」
『アルターエゴ。ムーンキャンサー。ルーラー。アヴェンジャー。ビーストとフォーリナーは、楽園なりに答えを得ていますから良しとします。ビーストは『共に歩む』。フォーリナーは『見つめ返す』。カルデアス的にそれでよしです』
オルガマリー「アバウトね、カルデアス…」
『全知の聖杯に、エクストラクラスのタスクを入力してください。七つ、いや、六つの異聞帯の果てに全知はあり、三つの意味を見いだすことが、来年のカルデアの指標です』
カルデアスは告げる。
『カルデアを跨いだ人助け。『オーディール・コール』。頑張りましょうね、オルガマリー』
オルガマリー「…………随分未来を見ているのね……」
来年における、カルデアの戦いの道筋を。