人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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予定を変更して本編を投稿します!

明日から5連休みのため、スケジュール調整です!


リオ「……………あら?」

『リオへ アダム』

「………………」

『万年筆』『タブレット』『アダムの連絡先』

「…………くすっ。男性として、自信に満ちあふれているわね」

「……ありがとう。アダム先生………」


復讐するは何処にあり

【出来たわ!!】

 

楽園カルデア、その一角にある大人気スイーツ店舗。SWEETSじゃんぬに響き渡る、憎悪と情熱に満ち溢れし声。

 

【出来たわ…出来てしまったわ。リッカのもうなんか速すぎる剣技をモチーフに作り上げた【ライジング・エクレア雷位エディション!】中身ギッチギチに詰めたことにより一口噛んだだけで中身がむりゅっと口に広がる、まさにリッカ並の覚悟が無かったらたべれない逸品よ!】

 

【新開発に余念がないのは良いことだ。さっさと食わせろパティシエ娘】

 

【そうね…。まぁ、食べてあげないことも無いわ】

 

【なんなのよその上から目線は……はいはい。いい子に待ってなさいな。今よそってあげるから】

 

店長であるじゃんぬ、そして個人的に毒味を買ってでているセイバー・オルタにマリー・オルタ。この三人の会合は、じゃんぬ個人による新作すいーつの堪能のためのもの。

 

だがそれは単に仲良しというわけでなく、じゃんぬは【まぁ失敗作でもこいつらならいいわ】という信頼。

 

セイバー・オルタは【腑抜けたスイーツは即座に吐き捨ててやろう】という厳しい査定のため。

 

マリー・オルタは【まぁ美味しいお菓子は悪くないわ】というアンニュイ王女メンタルでなんとなく。

 

という、オルタならではの集いであるのだ。

 

【ふむ……確かに瞬時に食わなくては溢れ出るな。まさにあの電光石火の剣筋を思い起こさせる】

 

【でしょ?もう凄いんだから。チャキっとしたらチンって、ズバーなわけよ!流石私のリッカよ!ありありと浮かぶわ、あの抜刀からの流れ!】

 

といえど、もう数カ月になる会合。オルタならではの剣呑さも鳴りを潜め、単なる黒い女子会といった様相なのは間違いなくなっていた。血色の悪い三人の、華やか(?)なものである。

 

【やっぱりモチーフやイメージがあると出来栄えが違うわね。次はモチーフを誰にしようかしら?】

 

【ふむ、アルトリア・クラウン・バーガーというのはどうだ?】

 

【せめてスイーツにしなさいスイーツに。でも王冠チョコは浪漫よね。芸術風味か…ジルに聞いてみようかしら…】

 

普段の気質からは中々に遠い雰囲気の中、マリー・オルタの食の進みが遅い事にじゃんぬは気付く。

 

【…………】

 

【あら、何よ。口に合わなかったワケ?別に嫌がらせとかはしてないわよ。というかしないわ。リッカモチーフだもの】

 

彼女はスイーツ評価においては中々に辛辣であり、素直に褒めることはない。それがじゃんぬの克己心を燃え上がらせるのだが、今回は毛色が違う。

 

【いいえ。スイーツではないわ。あなたよ、ジャンヌ】

 

【私?私が何だって言うのよ】

 

【少し、悲しく思えてしまったの。このスイーツも、前からのスイーツも。あなたの燃え盛る情熱が創り上げたものよね?】

 

何を今更、という顔のじゃんぬに、マリーは続ける。

 

【あなたは復讐者。なのにあなたは復讐以外の事に情熱と自身を捧げているのよね?】

 

【そうだけど、今更それが何よ?あのクハハマンはともかく、私は来歴がちょっと違うんだから別に…】

 

【…………】

 

【……何よ。批評と喧嘩なら受けて立つわよ?】

 

その口調と視線に、じゃんぬはやや眉を上げる。

 

そこには、哀れみがあったからだ。

 

【可哀想ね、あなた。あなたは復讐者になんてならなければよかったの】

 

【何よホント、どうしたわけ?急に他人に哀れみ出すとか】

 

【だって……、復讐者なんて、普通の人のそばにいられるはずがないのだもの】

 

【!】

 

セイバー・オルタはナプキンで口を拭く。マリーは続けた。

 

【自らを炎にして敵と全てを焼き尽くす復讐者。それは確かに激しく美しく戦いを彩るでしょう。でも、それ故に私達はどこにも行けないの】

 

【何が言いたいのよ】

 

【あなた、リッカ…マスターと一緒にいるつもりでしょう?】

 

【当たり前でしょ?地獄…になんてリッカには逝かせないから、天国の門まで一緒よ!】

 

【哀しいわね。【炎が普通の人生に齎すのは厄災だけよ】】

 

【…!】

 

マリーは復讐者として、じゃんぬに問う。

 

【復讐者が普通の人生を送れはしないわ。そしてそれはマスターにもそう。あなたはあなたと言うだけで、誰かの人生を焼き尽くすもの】

 

【………】

 

【何かを作り、生み出すのはいいわ。でも復讐者は、誰にも寄り添えない。私達は炎。自分も、相手も、何もかもを焼き尽くさないと止まらないのだから】

 

【…………(エクレアに手を伸ばしている)】

 

【ねぇ、ジャンヌ?あなたが最後にマスターに遺すのは、深く深く抉れた【傷】だけではなくて?】

 

マリーの問いは、戯れでありながら復讐者の根本を問うもの。

 

復讐者の炎は、何を焼き何を残すのか。

 

セイバー・オルタとは違い、二人はエクストラクラス。

 

人理の戦いには存在しないものであり、それでいて人理に認められるかは未知数だ。

 

そんな中で、誰かの記憶に復讐以外に残ることは果たして良いことなのか。

 

マリーは、じゃんぬに問うた。復讐者の、彼女のスタンスを。

 

【………神妙な顔で、何を言い出すかと思えば】

 

だが、それに対するじゃんぬの返答は……。

 

【傷なんかじゃないわ。私はね、離別して心を縛るような独りよがりのヒロインなんかお断りよ】

 

【……?】

 

【私はね、消え去る瞬間までマスターと一緒にいるし、誰に言われても消えるつもりもないし、いつまでもずっとリッカといるわ。これは決定、確定事項なのよ!】

 

スイーツ。或いは、憎悪に代わる何か。

 

【復讐者は炎?何も残せない?人を焼くだけ?ハッ。さも正当な歴史がある復讐者サマは言うことが違うわね】

 

【あなたは違うというの?】

 

【えぇ違うわ。ジルに造られ、リッカに望まれた私は何もかもが違う。私が討つべき敵は個人じゃないし、私が焼くべき何かは何者と決められていない】

 

【(無言でエクレアを頬張る)】

 

【私は、リッカの正しい怒りで燃え上がる炎となる。理不尽を憎み、非道を許さないと叫ぶあの娘の憤懣と共に悪を焼き尽くす炎であり続けるのよ。私を望んだ、ただ一人の為にね】

 

【……】

 

【理不尽に何かを奪われ、理不尽に何かを脅かされた。その時にやられた側はメソメソ下を向いて泣き寝入りしろっての?冗談じゃないわよ!】

 

じゃんぬは叫ぶ。彼女だけの復讐を。

 

【やられたらやり返す!平和や平穏を奪われた際に叫ぶ怒りは正当で、その為に戦うことは正義よ!その時に抱く怒りの炎、私はその体現者となる!人理がどうだろうと知ったことか!】

 

【(エクレアをお代わりする)】

 

【私の炎は、正しき怒りを導く篝火よ!あんたらみたいなどこまでも個人にしか向けられない炎と一緒にしないでくださる?これでも私、聖女から生まれてるんだから!】

 

彼女なりの、炎の解釈。それがマリーに叩きつけられた。

 

人理の為、ではない。

 

人類の為、とは少し違う。

 

たった一人の為に、全てを尽くして燃え上がる。

 

魔女と呼ばれながら、その炎は苛烈で美しい。

 

【………あべんじゃあ、か】

 

【何よ、文句ある?】

 

【知らんな。私は復讐など興味も無い。貴様と違って正当な英霊なのだからな】

 

【はー!英霊サママウントムカつくわー!】

 

それは、その答えは。

 

【……そう。そうなのね】

 

彼女なりの、復讐者の末路の答えを跳ね除ける程度には。

 

【あなたの復讐は……幼稚だけれど、とても眩しいわね】

 

贋作として、しかし宿した熱は正しく真実、燃え上がるものであった。

 

【幼稚は余計よ、幼稚は】

 

【ふふ、いいわ。なら見届けてあげるわ。あなたの篝火が、何をもたらすのか】

 

【あ、あと暖炉よ。暖炉。私はリッカのそばでパチパチ燃えるわ】

 

【火の粉で火事になるような暖炉はお断りだがな】

 

【するか!!】

 

彼女が齎す復讐は…

 

どこまでも、誰かに捧げられたものであった。

 




そして深夜。

じゃんぬ【これでよし、と】

じゃんぬは編纂する。

もう何百ページにもなった、自身のレシピを。

じゃんぬ【……とはいったものの、本当に一緒にいられる保証はないわけだから】

彼女が積み上げた、復讐以外のもの。

【………もし、もしも。もし私がいなくなっても】

彼女に向けた本を。

ほんの少しの、未来への弱音を。

【負けちゃダメよ。私のリッカ】

エールと共に…

そっと、自らの本棚へと戻した。
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