人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
初華〘─────〙
レヴィアタン【…………その】
〘?〙
レヴィアタン【お願いがあるんだけど、いい?】
〘─────〙
マモン 小さな一軒家
マモン【いきなり連れてこられ、何をされるかと思えば!よもや俺の望みや願いを再現させられるとはな!ワッハッハッ!!】
初華〘──────〙
マモン【いやよい、よいのだ娘。皆まで言わずとも解っている。強欲たるこの俺が願うにしては!いささかチンケに過ぎる空間ではないかと!!そう思っているのだろう!!】
初華〘─────?〙
マモン【だがまぁそう焦るな焦るな。強欲の魔王たるこのオレが、欲のなんたるかをお前に教えてくれてやろう!!さぁ、ついてこい!!】
〜
マモン【ここにあるのは寝床、クローゼット、そして机だ。だがここに、欲望というものは過不足なく詰まっている!何故かわかるか、娘!!】
初華〘────〙
マモン【衣服、食卓。そして眠れる場所!欲望とはつまるところこのようなものだ!色欲はアスモデウス担当だが!】
初華〘────〙
マモン【文明が無き黎明、人はこれを得るにしても大層の努力と労力を必要としていた。世界は荒ぶり、自然においては人は無力だったからな。つまるところ、これらこそが大切な、得難き欲望の金型であったのだ】
初華〘─────〙
【結局のところ、これらがあれば人はよいのだ。衣服、食い物。命を脅かすこと無く眠る場所。人は結局、これだけあれば満たされる】
【しかしなぁ。欲望というものは終わりがないものだ。文明の過渡期や発展、発達により欲望は際限なく膨れ上がる。そのうち、これっぽっちでは満たされぬほどに膨れ上がるのだよ。満たされなくなるのだ。人はな】
〘─────〙
【故に知るのだ、娘よ。欲望の根幹、根源とはなんたるか。それはつまり、よく食べ、よく眠り、よく洒落る!それを知ることで、強欲を討ち果たす謙虚と清貧は宿るものよ!ワッハッハッ!】
〘──────〙
【せっかくオレの願いを形にしたのだ、オマエに欲を教えてやろう!バアルの民共ほどではない料理!ベルフェゴール程ではない睡眠!アスモデウス程ではない着飾りを貴様に教えてやる!】
〘────!〙
【ありがたく思え!根源の娘!!今や此処に、欲望という生きるエネルギーの源泉が導かれるのだァ!!ワッハッハッ!!】
〘──────〙
(このあとおめかしし、お昼寝し、マモン特製のフルコースをいただいた)
ベルフェゴール 空の結婚式場
初華〘───────〙
初華は、確かに眠れるベルフェゴールの願いを再現した。
しかし、そこは奇妙な空間であった。
タキシード、神父、そして花嫁衣装にブーケなど。様々なものが取り揃えられていながら、誰もいない。
ベルフェゴール『( ˘ω˘)スヤァ』
ベルフェゴールは何も語らない。しかし、その穏やかさはこの空間が間違いでないことを示す。
初華〘─────〙
そして、初華は気付く。
ここは『幸福に満ちた結婚式場』なのだと。
幸福に満ち溢れていながら、それを行うものはいない。
用意されていながら、それを執り行うものはいない。
つまるところ、これはベルフェゴールの諦観。
幸せな結婚式、幸せな婚姻。
そんなものは、どこにも存在してはいないのだと。それ故に、人はおらず空虚なのだと。
『( ˘ω˘)スヤァ』
安らかに寝息を立てておりながら、誰よりも華やかな場所でありながら。
そこに執り行われるものは何もない。それが、ベルフェゴールの望んだもの。
華やかな結婚式、幸せな新郎新婦は存在しない。
だが、幸せな『カタチ』と『夢』は見る。
いつか此処で式を執り行う者は現れるのだと信じている。
いつかこの場が、祝福に溢れるものだと信じている。
その願いすらも、初華は叶えられる。
しかし、彼女はそうしなかった。
解ったのだ。その願いは『叶えたいと願うものが無くては意味がない』と。
願いに寄り添いながらも、彼女はそれを叶えない。
誰かに用意されたものでは意味がないからだ。
ベルフェゴール『( ˘ω˘)スヤァ』
根源でも『叶えにくい』、ベルフェゴールの願い。
その怠惰は、人の幸せへの諦観への裏返しなのだ。
〘────〙
だが、その願いに一つだけ救いがあるとするならば。
ベルフェゴール自身が『存在してほしい』と願っていること。
いつか幸せな婚姻が見てみたいと、信じていることだ。
願い続ければ、いつかは叶う。
ベルフェゴールは願い続けるのだろう。
いつかこの地上に、そんな幸せがやってくるのだと。
〘───〙
その時だった。
ベルフェゴール『( ˘ω˘)スヤァ』
ベルフェゴールの鼻提灯が、初華を包む。
〘!〙
その鼻提灯に包まれた初華は、ゆらゆらと揺られ……
〘───────…………〙
よろよろと、眠りに落ちてゆく。
それは、彼女を労ったものであろうか。
『( ˘ω˘)スヤァ』
彼はベルフェゴール。怠惰ゆえ、何もすることなく眠る魔王。
故にこそ……
〘─────(コテッ)〙
『( ˘ω˘)スヤァ』
何かを『叶える』存在にすら。
何もさせないという、ある意味で願望機を最も尊重する行為ができる。
しばし結婚式場に、二人の寝息が響き渡り、
その結婚式場は、後々天空式場に組み込まれ。
ロマン「なんだいここ!?」
シバにゃん「あらぁ〜」
ロマニ夫妻に、見つかったという。
アスモデウス 星が煌めく砂浜
アスモデウス【この景色は………!】
初華〘─────〙
アスモデウス【そう。あなた…でしたのね】
【おかしいでしょう?色欲の魔王で、こんな蠱惑的でいやらしい肢体を晒す私が、こんな場所を望んでいるというのは】
初華〘──────〙
アスモデウス【あなたに分かりやすく言うのなら、色欲はあくまで担うもの、ビジネスや肩書き。私という大罪の魔王ではありますが、私が望むものではありませんわ。全て、魔王の責務ですのよ】
初華〘──────〙
アスモデウス【私の願いは、細やかなもの。…愛する御方と、砂浜を歩む。足の裏に土の柔らかさを。空に輝く星々の歓待を受けながら、手を繋ぎ、同じ歩幅で歩いて…】
〘─────〙
【せっかくですわ。あなたとしましょう。そうして、腰を下ろし…肩を寄せ合って、水平線を見つめるの。さ、いらっしゃい】
〘─────〙
【手を絡めるのも忘れてはダメよ。するとほら。夜明けが訪れ、朝焼けが辺りを照らし出す───】
〘────〙
【明けの明星と、朝日が輝くその景色。それを、地上の星たるあの方と…。そう、これが私の大切な望みであり、願いなの】
〘────〙
【過不足なく、再現してくれたのね。ありがとう。カルデアに、この景色を有してくれた事に感謝を捧げるわ。……あ、そうですわ】
『日記帳』
【感謝の印として、あなたにこれを。夏草でこっそり買った日記の一つ。交換日記用のスペア、ですわよ】
〘─────〙
【あなたは迂闊に喋れないのでしょう?ですがそれでは哀しいですわ。言葉は刃、しかし愛の発露。あらゆる感情を紡ぐ七欲なのです】
〘─────〙
【無垢なるあなたが、いつか自身の色にそれを染める日を楽しみにしておりますわ。もしよろしければ、私とも文通をなさいましょう。とりとめのないお話も、興味を持った何事も。喜んで読み込ませていただきます】
〘────それは、願い?〙
アスモデウス【うふふ。願いとは少しだけ違いますわ。これは───】
〘─────〙
【頑張り屋さんのあなたへの、お姉さんからのご褒美ですわ。今日はありがとう、レディ・初華。あなたの願いもいつか見つかり、どうか叶いますように】
………レヴィアタンの、【残りの奴等にも願いを聞いてあげてほしい】という願いを、初華は叶えた。
その報酬は……
暖かい、素敵なものとなって帰ってきたのだ。
番外編
シャミ子「ウオオオなんかスッゴイ力がみなぎってくる!!初華ちゃん!これは一体!?」
初華〘──────?〙
ルシファー『アスモデウス〜。交換日記したいんだって?僕で良ければ相手になるよ?』
アスモデウス【あばばばばばばばば────!?】
ルシファー[僕は最近バイオリンにハマってるんだ。アスモデウスは好きな楽器とかあるかな?]
アスモデウス【好きな楽器好きな楽器好きな楽器………!!】
マモン【クラリネットクラッシュ!!】
アスモデウス【お黙りなさいッ!!こ、ここはどっしりとチェロ…?いえいえトランペット…!?】
レヴィアタン【なんでもいいじゃん。ね?(カスタネット)】
初華〘─────(ぷぇー)←リコーダー〙
カルデアと魔王たちの絆は、ぐっと深まったとさ。