人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「じゃあ・・・行ってくるよ、母さん」


『キングゥ・・・?』


「見付けたんだ。僕の望みを。僕自身の願いを――」


Childhood's End~幼年期の終わり~

冥界下りのパーティー、宴が終わりし早朝の朝。

 

 

三女神同盟は事実上瓦解し、メソポタミアの土地から脅威は去った――

 

 

否。まだ終わってはいない。完遂してはいない。・・・否『敵』はもういないが、『儀式』は残っている

 

 

そう、それは訣別の儀

 

 

それは、人間という種の・・・幼年期の終わり――

 

 

早朝七時、太陽が登りし頃。サーヴァント、カルデア一行、そして王は玉座の間に集まっていた

 

 

皆が一様に真剣な面持ちで表情を引き締めるなか、王が高らかに声を上げる――

 

「集まったな!楽しんだか!歯は磨いたな!二日酔いはしておらんな!」

 

「「はーい!」」

 

『裏方も皆問題ない。始めてくれ、賢王』

 

「よし――これよりティアマト神!いや、ビーストⅡへの対策会議!メソポタミア脅威一掃作戦概要の議論を始める!心せよ者共!!」

 

そう、これよりはメソポタミアの命運を懸けた戦いの幕開け

 

その綿密なる打ち合わせが、これより行われるのだ。・・・人という種が、生き残るために

 

『――・・・』

 

(いいのかい、ティアマト。皆の前に現れなくて)

 

真摯に問いかけるフォウに、ティアマトは穏やかに頷く

 

『彼等に、余計な感傷を背負わせたくはないから』

 

(・・・そうか)

 

それ以上、フォウは問わなかった。彼女の決意に、水を差さぬよう口をつぐんだ

 

 

《・・・》

 

――王?

 

《・・・いや、他愛ない思案だ。気にするな》

 

「何を呆けているか愚かな我!ティアマト神のデータを割り出したのであろう?ささっと提示せよ!」

 

「解っているわ、そう逸るな。――マルドゥークから割り出した記録だ。ほぼ万全なものであろう。ロマン共々目を通せ」

 

英雄王が手を掲げると、上空にディスプレイが展開され、ティアマト神のマテリアル、特性が開示される

 

「ふむふむ。海洋侵食。正しき歴史から生まれしものへの耐性、怪力、単独顕現。・・・えぇい!!貴様ティアマトの太鼓持ちか!弱点らしい弱点がまるで無いではないか!」

 

賢王が叫ぶのも栓なきこと。提示された条件は特性と長所しか書いておらず、突破口がまるで書かれていない。ただ――神話的にも、物理的にも完全である、という事を無慈悲に示している

 

「泣き言なぞ今更であろう。我等人類を編みし基底、生命の原初の土台、神々の母。人が見付けられるような弱点を残してなんとする。これは神話の再演。マルドゥークが挑み、為し遂げた英雄譚を為すことを求められているのだ」

 

「ぬぅう・・・解りきった事をしたり顔で述べるで無いわ!お前達も目を通しておけよ!」

 

――王、この『生命として死の概念がない』とは一体どう言ったことなのでしょう?

 

エアは其処に着目した。生物でありながら死がない、というのは矛盾している。死がない生命など、有り得るのだろうか?

 

『乱暴な仮説ではあるけど、ティアマト神は全ての生命の母だ。それは逆説的に『子がある限り死なない』といった事では無いだろうか?地上において自らが産み出した生命が有る限りティアマトは死なない。『この地上にて最後に死ぬ』事で、ようやく生命の物理法則を受け入れるんだと思う』

 

「そんな・・・!それでは意味がありません!『地上の生命が死に絶えなければ、倒すことができない』なんて!」

 

・・・マシュの言う通りだ。それでは意味がない

 

いくらティアマト神を倒したところで、人類が、全ての生命が消え去らなければならないなんて・・・それでは、本末転倒そのものだ

 

――・・・どうすれば・・・

 

《何を気後れすることがあろうか。『宙の道筋』を示したのはエア、他でもないお前なのだぞ?》

 

エアは英雄王の横顔を見る。この絶望的とも言える情報を見ていながら・・・その顔は、絶対的な自信に満ち溢れている

 

《それは後に謳おう。今は者共の苦難と四苦八苦を愉しもうではないか》

 

愉快げに、余裕を保ちながら、王は天空神の酒を煽る

 

『皆、ティアマト神の脚を見て。――推定される大きさは60メートルとあるけれど、そう仮定した場合、その体重を支えるにはあまりにも細すぎるわ』

 

オルガマリーがディスプレイのティアマト神を指差し、脚の問題を提示する。言われた通り、ティアマトの足は接する末端がない。指がない。脚の甲から下が無いのだ。大地に接する箇所がはじめから存在していていないのである

 

『これでは歩行は愚か、自らの体重すら支えられないわ。――ティアマト神は海上でしか活動できないと見た方が自然ね』

 

「成る程・・・つまりティアマト神は大地を浸食し海とすることで大地を滑走し、このウルクに至ると言うことですね」

 

二人の王の補佐役の慧眼に、英雄王と賢王が笑い合う

 

「それだけではない。こやつはあくまで大地の心臓たるウルクのみを狙うだろう。人類掃討はヤツが産む子が担当しよう。――海の泥から生まれし黎明の泥人形、新人類ラフムがな」

 

(――・・・)

 

その名を聞いたフォウの顔が一層引き締まる。そしてエアの胸の中で、静かに頷く

 

(・・・次はどちらが蹂躙される立場になるか、白黒つけようじゃないか)

 

――新人類・・・どんな見た目なんだろうね、フォウ

 

(エア、キミは知らなくていい。・・・生理的嫌悪に陥らない為にもね)

 

フォウの言葉に、微かに身震いが走る。そ、そんなに独創的なのだろうか・・・

 

「総数は一億体を越えるとシミュレーションで出ている。ウルクの力を結集しなくば、対抗は叶うまい」

 

「・・・ふむ、何やら嫌な響きですね。混沌の泥に黒き海、とは」

 

海とは綺麗なものでしょう、と牛若丸が頷き、弁慶も賛同する

 

「その海に触れることは赦されんぞ。ティアマト神の権能『細胞強制(アミノギアス)』により、海に触れた生物を強制的に眷属とする力を持つ。いわば海がティアマトそのもの。――触れれば、もはや死んだ方がマシなまでに改造を施され、人類の敵となる。――言わば、生命を犯し脅かす黒化の泥よ」

 

「黒化の泥・・・えぇい、聞いたことは無いが不愉快極まる単語よ」

 

苦虫を噛み潰したかのように呻く賢王。遥か先の未来でよもやそこま、ガッする未来を感じたのだろうか

 

「これが、ティアマト神・・・目覚めてしまえば、最早滅びは確約されし大災害・・・王はこのような未来を見ていたのですね・・・」

 

シドゥリが青ざめる。――が、その時だった

 

「・・・地上じゃ死なないなら、命がない場所で倒せばいいんじゃない?」

 

リッカの言葉を待っていたかのように、賢王がニヤリと笑う

 

「――その通りだ、リッカよ。我と同じ閃きとは小癪なヤツめ」

 

《うむ。やはり環境は大切よな。土壇場にて天と地を臨む者が同時に現れるとは。まさに天啓と言うヤツよ》

 

ふはは、と笑うダブル王。すかさず賢王が声を上げる

 

「エレシュキガル!エレシュキガル!エレシュキガルはいるか!!」

 

『うるさいわね!軽々しく女神の名を呼ぶものではなくてよ!?』

 

即座に冥界の鏡に、エプロンと三角巾姿で現れるはエレシュキガルその神である。・・・料理中?

 

『今この馬鹿みたいに辛い麻婆を誰でも食べられる胃に優しいヘルシー麻婆に改良してて忙しいんだから!それに冥界の鏡を渡したのは仲良く会話するためじゃなくて――』

 

「やほー!エレちゃん!」

 

『リッ――』

 

一旦エプロンとおたまを置き、いそいそとおめかしをし、優雅に現れ直す冥界の女神

 

『こんにちは、リッカ。冥界の女神、エレシュキガル。華麗に参上したわ。用件はなにかしら?』

 

(優雅に参加しなおした!)

 

(ふふっ、これだから彼女は可愛いんだ)

 

「おぉ、天の女主人に比べてあまりにも可憐な姿よ。冥界での女子会を経て、女ぶりが上がったと見える」

 

「なんでこっちを見るのよ金ぴか」

 

「事実であろう。だが今は解りきった女神格付けをやっている場合ではない」

 

賢王がニヤリと笑い、英雄王が頷く

 

 

――あ、麻婆気に入ったのですか?

 

『あ、エア。ううん、これ美味しいんだけど辛味が酷いから、皆で食べられるようなモノにならないかなって・・・』

 

「我等が挑むティアマト神。ティアマト神は生命が地上に有る限り死なぬ。――其処でだ。ティアマト神の接待を貴様に譲ってやろうと思ってな」

 

『え――?』

 

「生命満ちる世界にて無敵を歌うのなら、生命なき世界にて嘆きを与えるまで。冥界であれば、アレは最後の命になるのではないか?」

 

「「「「「!」」」」」

 

賢王の言葉に、一同が眼を見開く

 

――そうでしたか!その手が!

 

《フッ、そうだ。其処に至るのは必然。至らねばならぬ》

 

『は?母さんを、冥界に呼ぶ?というか、今落とすって言った!?』

 

「無論!冥府の女神エレシュキガルよ!王の名の下に貴様に命じる!ティアマト神進行ルートに冥界の門を開け、ティアマト神を語る災害の獣を地の底に繋ぎ止めよ!それが三女神として狼藉を働いた貴様の役割、唯一の罪滅ぼしである!」

 

『む、無理も無理!ウルクの前に冥界を!?』

 

《出来るかどうかは問題ではない。やるかやらぬかだ。可能かエレシュキガル》

 

『やるわよ!そうしないとメソポタミアが滅びるんだから!今までの話は聞いていたわ。正直、そう来たかとも』

 

「であろう、であろう。やはり冥界の方はいい。天の方は反省せよ!」

 

「やる気は買おう。では次は実現可能か否かだ。貴様の都市を埋めるので半年。最大の都市であるウルククラスを広げるにはどれ程かかる」

 

エレシュキガルは考え込む。固唾を飲む一同

 

『こんな広い都市、本来なら10年かけてもギリギリね』

 

「ぬ、10年か・・・!・・・それは、流石に不可能だな・・・」

 

――そ、それではゲーティアの計画が成就して焼却が成ってしまいます!

 

《うむ。時間が足らぬ――我が秘策、口にするは今しかあるまい!》

 

『ま、実はウルク憎しでずっと前から企んでいたから三日もあれば準備できるけど!』

 

キラン、と輝きながらエレシュキガルはガッツポーズを示す

 

《何ィ!?――エレシュキガル・・・!有能にも程があろう・・・!これでは我の方が道化ではないか!》

 

王の予想すら越えたエレシュキガル、活路の見えし対談にはしゃぐエア

 

――エレちゃん凄い!有能!やったぁ!

 

(エレシュキガル・・・やはり女神か・・・)

 

(流石だね。彼女はやればできる子さ)

 

「ナイスぅ!エレちゃんはナイスぅ!」

 

『Goojoooo――――――b!』

 

待機していたマルドゥークも排熱をするほど、エレシュキガルはファインプレーを果たしていた

 

これが本当ならば、十分に勝機はある。冥界の施工を果たし、穴と門を開け、ティアマト神をマルドゥークにて叩き落とせば――!

 

「ふはははははは見事だエレシュキガル!だが貴様には後で話がある!」

 

「フッ。こうなれば勝機は見えたようなもの。――なぁ?駄女神よ」

 

「?なんで私?」

 

英雄王が、笑いを堪えながら告げる

 

「とぼけるなよ放蕩娘。煮ても焼いても喰らえぬ貴様を、何のために招いたか?それはこの瞬間に決まっていようが」

 

――あっ・・・

 

『あぁ!マルドゥークに加え、イシュタルなら確かに!』

 

『えぇ。かの神の戦艦、それに加え、イシュタル様なら』

 

「イシュタルなら楽勝デース!」

 

「そうだったか・・・イシュタル・・・やはり天才だったかニャ・・・」

 

「計算通りの展開です!・・・本当ですよ?」

 

「あぁ、ウルクの皆様がついに、真なる意味で報われる日が・・・!巴は感激です・・・!」

 

「・・・むしろ、この為の彼女ですから」

 

「成る程!彼女は騎馬にも優れていましたか!・・・かの牡牛の首、落としてみたいものですね」

 

「なりませんぞ、牛若丸様。なりませんぞ」

 

「はい。風魔的に、嵐はカッコいいですから」

 

「やはり、神は見ておられるのですね」

 

「はい!マーリンさんから伝え聞いていた通りです!」

 

「だろう?今こそ駄女神の汚名を返上するときだ!」

 

一同が沸き立ち、歓声を送る。――が

 

 

「・・・?」

 

頭のわるいかおをしながら首をかしげるリッカに、困惑するばかりのイシュタル

 

「ははは、こやつめ勿体振りおるわ。切り札の見せ方を心得ているとはにくいにくい。だが、ニクイのはもうよい。さぁ、グガランナを呼ぶがよい」

 

「げ――」

 

「あぁ、イシュタル様が従えしメソポタミアの誇る神威グガランナ!山のごとき偉容、雲を肉とし金を骨とするシュメルを脅かせし災害!そのグガランナが、誉れ高きマルドゥーク神と肩を並べティアマト神と、今・・・!」

 

シドゥリが感極まり、泣き崩れる

 

「あ、うんそうね。私のグガランナなら、全盛期ならティグリスも干上がらせるし」

 

「はい!グガランナは恐るべき神獣・・・!そして素晴らしきはイシュタル様!神々ですら手懐けられないグガランナをイシュタル様は厳しく、激しく、おぞましく躾け、自在に操ったのです!」

 

「え、えぇそうね。グガランナとか私の乗り物だし。でも皆、グガランナはそんなたいしたヤツじゃ無いから。ティアマト神の前じゃなんの役にも・・・」

 

「随分と勿体振るではないかイシュタルよ。かつての貴様ならば此処等で高笑いの一つもあげ、聞いてもおらぬグガランナの自慢話をあげつらい悦の一つに入る場面ではないか?それとも――」

 

――え、英雄王が今まで見たこともないような笑いを・・・!

 

「『グガランナを見せびらかせぬ理由でもあるのか』?どうなのだ?駄、女、神――イシュタルよ?」

 

英雄王が邪悪に、愉悦的に口許を歪ませ――イシュタルを、嘲け嗤う

 

「――――っ!金ぴか、アンタ、知ってて――!!」

 

そのやり取りを目の当たりにせし賢王が、訝しげに言葉を告げる

 

 

「・・・どうした?様子がおかしいではないか。愚かなる我の言う通り、いつもの貴様なら甲高い笑い声と共に、自分の力でもないグガランナを自慢しきっていた筈だが。・・・おい、貴様、まさか――」

 

その言葉を聞いたイシュタルが、観念したかのように眼を閉じ、告げる

 

「・・・・・・はい。ありません。グガランナ」

 

「――・・・イシュタル様、いま、なんと?」

 

「ッ、く、は――っっっ・・・!!」

 

――おぉ、神よ・・・寝ているのですか・・・

 

「無いの!落としたの!どっかで無くしちゃったのよ――!たぶん北部で落としたんだけど、もうどこにも見当たらなくて!バビロンも探し回ったのに、グガランナのヤツ、影も形も無いんだもの――!!!」

 

泣きわめくイシュタルに、二の句が告げられず絶句する賢王。対し――

 

 

「くっ、ふはっ!はははははははははははははははははははは!!!はははははははははははははははは!!ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 

 

この瞬間を待っていたのだとばかりに、腹の底から笑い転げる英雄王ギルガメッシュ

 

 

「神威を示すときに示せず!何かを救うべき時に何も救えず!果てには飼い牛にまで縁を切られる!それで神とは笑わせる!イシュタル神とは成すべき時に何も出来ぬ無価値、無力、道化の神であったのかふはははははははははははははは!!たわけめ!!信仰を食い荒らしながらそれに報いられぬ神など犬畜生にも劣る寄生虫の名よ!それで恥知らずに神を名乗るとは御笑い草だ!驚嘆に値する無能ぶりだ!貴様はメソポタミアの文化に名を燦然と輝かし残すド阿呆!!貴様は、まさに一流の駄女神よ!!――愚かなる女神イシュタル!!貴様の美とやらは、醜さと無様さを覆い隠すだけの虚飾に過ぎんのだ!後世にて悪魔に貶められるのも納得のド阿呆ォよ!!ふはははははは!!はははははははははははははははははははははははは!!!!ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははァ――――――――!!!!

 

「ぐぐっ――ぅうぅうぅうぅうぅう~~~~~~~!!」

 

悔しさと憎しみと殺意にて英雄王を睨むイシュタル。歯牙にもかけず英雄王は笑い転げる

 

 

――イシュタル様・・・申し訳ありませんが、御許しください。・・・愉悦は人それぞれ。王の愉悦を止める権利は、ワタシには、はじめから無かったのです・・・

 

その様を見て――せめて嗤うことなく、嘲ることなく、静かに英雄王に寄り添うエアであった・・・

 

 




「さて、存分に嘲笑ったゆえ、本題に戻るとするか」


『私は駄目な女神ですと書かれた石板を持って立たされている』

「むぅ・・・マルドゥークに負担が倍かかるか。いけるのか、愚かなる我」

「勝ち筋など既に組み立てている。イシュタルめの無様さを見るためにここまで黙っていたのだ、当然であろう」

「(反論する元気すらない)」

「元から駄女神なんぞに期待などしておらぬ。――では改めて作戦配備を行う!まずはゴルゴーンの始末だ!今まで半死半生にしていたが最早用済み!さっさと始末してくれよう!」

(ごめんなさい、ゴルゴーン。・・・相手が、悪すぎたみたいね)

「マルドゥークの天元螺旋腕イルカルラにて居城もろとも貫通崩落させ、ゴルゴーンを抹殺してくれる!――その意味を理解しているな、華の魔術師」

「あぁ。私の幻術を解き、ティアマト神を目覚めさせる。夢から即座に逃れ、彼女を自由にさせるんだ」

「そうだ。ティアマト神は今や理性なき憎しみの化身、即座に目覚めるであろう。――そこでだ。インド洋をモーセに叩き割らせた後『マルドゥークの太陽神としての力を使い乾上がらせる』」

「な、出来るのですか!?そんな事が!?」

「今より時間をかけ、溜めたエネルギーを解放すれば可能だ。界聖杯とは時代全ての熱量と魔力を汲み取りし、空の光帯に匹敵する世界そのもの。界聖杯ひとつあれば海の一部を乾上がらせるなど容易いわ」

「それが事実ならば進行は食い止められ、浸食も叶うまい。――だが、後の活動に支障は無いのか?」

「太陽神の権能を発揮した即座に戦闘は叶わぬ。二時間ほど待機させ、魔力を練る時間を要するな。エレシュキガル!冥界にマルドゥークの入国許可を寄越せ!かの神は無機物だ、生きてはおらぬ!貴様の世界、メンテナンス場所にしてくれるわ!」

『お兄様まで来るの!?緊張するのだわ・・・綺麗にしなきゃ・・・!』

「その間、ティアマト神をあらゆる手段にて害せよ!手練手管を振るい、危機を覚えるまでに苛烈に攻め立てるのだ!」

【そーいう事なら、私とマスターにお任せあれだ!60メートルクラスのドラゴンエネミー一つ、用意しちゃうぜ?】

「――まことか、マスター」

「うん。――タイマンは任せて!」

――マスター・・・あれ、フォウ?

「そう言うことなら、彼女の権能、息子達は私と彼女に任せてくれたまえ」

そう言ってマーリンが示すは、セミロングにて白きローブに身を包む美女

「ボクの名はウーフォ。このクズの使い魔で、豆と酒の大賢者さ」

「貴様であったか!ウルクの民には早すぎたわたわけ!」

「まぁまぁ。かのティアマト神の泥は、私が無害な花に変えてみせよう。そうすれば、ティアマト神が新たなる命を生むことは無くなる筈だ。そして――」

「護衛として産まれる・・・十一体のラフムはボクが担当する。召喚魔術『霊長類の殺戮者(プライミッツ・マーダー)』を使い、完膚なきまでに葬ってやる」


「霊長の殺戮者?・・・驚きデース。そんな大層な存在を使役できると言うの?」

「もちろん。だからここにいる」

――フォウ・・・?

(ボクも戦うよ、エア。キミに、あんなものを見せるわけにはいかないからね)

――でも・・・戦うってことは、フォウも傷つくって事・・・フォウの覚悟は尊重したいけど・・・

(うん。なら、僕も付き合うよ、フォウくん)

――エルキドゥさん!?

(友を喪う辛さと痛みは知っているからね。君達に、そんな思いはさせたくない。フォウくんが戦うのなら、僕は君達を護ろう)

(エルキドゥ・・・)

《安心するがいい。こやつが下種に負けるなど万に一つも有り得ぬ。必ずや、獣を連れて帰ろうさ》

――・・・・・・・・・・・・エルキドゥさん。・・・・・・――ワタシの親友を、お願いいたします・・・!

(任せて。――6体、五体。なぶりがいがありそうだね)

(――あぁ。随分と借りがあるからね、奴等には)

――絶対、絶対帰ってきてね!約束だよ!約束だから!

(勿論さ!ボクはキミを、絶対裏切らない!)

「ならばサーヴァント達はウルクに配置する。360のディンギルを城壁に配置し、兵士を配備し、その指揮を執らせる。・・・ウルクの民の力を総結集し、絶え間無い援護射撃をくれてやろう」

「うむ。貴様のその酔狂なる姿の本懐を果たすがいい。――そしてここからが本題よ。ヤツはビーストとなり『飛行を可能としている』」

「「「――!!」」」

「――なんと。それは真実か?」

「然り。確かに可能と結論を出している。――地の女神は、天を駆ける術を手にしているのだ」

「嘘よ!母さんは地の女神!その母さんは、けして天には近付けない!」

「事実なのだ、仕方あるまい。――だが、逆に考えよ。『飛ぶのならば飛ばせればよい』とな。飛来すると言うのならば、食い止め、阻み、その隙を衝くまで」

「・・・マルドゥーク、冥界、天を飛ぶ女神・・・あぁ、成る程。そう言うことか」

――???つ、つまり・・・

《フッ、思い至らぬか?『生命の無い場所は、地だけではない』と言うことだ。――つまるところ、お前の望みの一端が、王にこの活路を見出ださせたのだぞ?》

――ワタシの、望み・・・

《今は思い至らぬならそれでよい。我も気付かなかったのだがな――楽しみにしておくがよい》

――は、はい!


『ローマ』

「ロムルス!?」

『ローマよ。――母を阻む壁もまた、ローマである』

『僕の出番もあるかどうか。ま、あったらよろしくね~』

――・・・

「(立たされている)」

――・・・王。この作戦を磐石にするため、準備期間を設ける事を進言いたします。三日、いえ、一週間ほど猶予を持ち、完璧なる勝利を

《――ふっ。何かイシュタルめに期待することがあるか?》

――追い込まれればガッツを発揮する、それが・・・イシュタル様はそういった神様なのでしたよね?王の予測を越えたエレシュキガル様のように、必ず・・・何かをやってくれるはずです!

《ふはは!駄女神にも期待するか!つくづくお前は慈悲深いものよ!――いいだろう!御前に免じ、挽回の期間を設けてやるか!》


「概要はこんなところだ!これは戦闘、争いに非ず!今の我等の総てを結集した『訣別の義』!奮い立て、心せよ!最早我等に、母の胎内への回帰は無用と知らしめ、謳うときだ!!」

英雄王の檄が、言葉が。ジグラットを、ウルクを振るわせる

《エア!作戦の銘を謳え!我等の命運を占う一大作戦よ!》


――はい!母に、成長した人類の総てを叩きつけ、親から独り立ちする作戦!名付けて――!



「――訣別!親孝行作戦!!開始は一週間後に定めるぞ!真なる人と神の戦い!今こそ幕を上げる時だ――!!」

人類の未来が黄昏に沈むか、世界を拓くに足る者か

真なる試練が――開幕を告げる!

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