人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ラダーン『むむぅ………』
リッカ「ラダーン?…ラスティ達が心配?」
ラダーン『おお、流石解るか!如何にラニの王たる星と月の王たるあやつも、異世界の狭間となれば勝手が違うはずだ。杞憂ではあり、負けるはずは無いにしろ…』
リッカ「大事な義弟だもんね!」
ラダーン『うむ!どうしようか…験担ぎの壺でも…』
ラニ『戻ったぞ』
ラダーン『うおぉ!?噂をすればか!』
ラニ『誰かと思えば兄上にリッカか。私達の出迎えとは殊勝な事だ。確かに今、帰参したぞ』
リッカ「ラスティさんは!?」
ラスティ「ただいま、二人とも!」
リッカ「お帰りなさい!…ん?」
ラスティ「たくさんの、仲間を連れてきたよ!」
ラニとラスティが挑んだ、狭間の地。それはラスティが駆け抜けた狭間とは異なる歴史を歩んだものである。
エルデンリングが砕け、大ルーンの力を得て狂ったデミゴッド達による『破砕戦争』により世界はどうしようもなく壊れてしまった。
更にその地に【夜】が現れた。【夜】は狭間の地を呑み込み、歴史を、生命を、全てを消し去り変えていった。
黄金樹は消え去り、マリカの治世は消え、狭間はかつての地を失った。そこは、神なき夜に呑み込まれし地となった。
星と月、夜の王たる『ラスティ』、そして彼が伴侶とする【ラニ】はカルデアから夜に呑まれし狭間【リムベルド】へと赴いた。
【夜と星、月を治めし王は私の王のみ。僭称など万死に値する】
そう熱愛の夜の王鏖殺宣言を発したラニの願いに応え、結論からしてラスティは全ての夜の王を下した。
時に倒し、時に説き伏せ、時に眷属とし、全ての夜を祓った。どのような夜であろうと、王であろうと、
全ての神を討ち果たし、
デミゴッドや神そのものを殺し、
ラニという神を擁する彼は一度たりとも敗北を知ることはなかった。
そして、カルデアに凱旋した彼は『仲間』を連れてきた。
夜を越えた事により、役目を終えた『夜渡り』達。円卓に集められた、夜に抵抗する戦士達。
その円卓は、夜の王を倒す為の場所。全ての夜の王を倒した事により彼等は解き放たれた。
しかし、ラスティに対し様々な縁が出来た彼等はカルデアへと来訪することを決めた。
あるものは恩義。あるものは高揚。あるものは興味。
円卓と夜を、神として新たにラニが掌握管理したことにより作り替えた結果、彼等はラスティの仲間としてカルデアへの在籍を希望した。
夜渡りの戦士達。八人の仲間を、ラスティとラニはカルデアの戦力として招き入れたのだ。
〜 追跡者
遊牧民族出身の、一族の仇を討つために夜の王を追い続けていた戦士。
彼は、ラスティとラニにとある肉親を救われたと語る。
自身が成すべきであった事を、果たしてくれたと。
その恩義を返すために、自身は此処に来たのだと。
「ラスティ、そしてラニ。その仲間であるなら、俺の義理を果たす相手だ。よろしく頼む」
「よろしく!どうどう?ラスティ、強かったでしょ!」
「あぁ。───エルデの王、あれ程とは。驚くばかりだった」
『間違えるな。エルデの王、ではない。私の王だ』
「そうだったな。……立ち話もなんだ。良かったら、パンでも焼いてみせようか」
「パン焼けるの追跡者さん!?」
「故郷の味でな。…戦士の傍ら、パン屋を開くのも悪くないな」
その面持ちや声音には、憑き物が落ちた軽やかさがあった。
〜 レディ
「レディと呼んで。ラスティは夜の王を討つ素晴らしい力添えをしてくれた。これからは、私達があなた達の為に戦うわ」
レディ。またの名を巫女。円卓に選ばれし管理人であり、夜の王を倒す為の組織を纏めていた存在。
巫女の家系に養子として引き取られたが、代々伝わる義賊の技を身に着け巫女と義賊の顔を共に持つ者である。
「あれ、そのパン…追跡者さんの?」
「あぁ、もう兄さんは焼いてくれたのね。美味しいでしょう?私、大好きなの」
そう、彼女と追跡者は兄妹である。同じ遊牧民であり、双子の馬を共に走らせた比翼の兄妹。
やがて、二人は別れてしまい絶縁。それがなんの因果か夜渡りとして奇跡の再会を果たした。円卓は夜の王を討ち果たすと崩壊し、巫女も円卓と運命を共にする筈だったのだが…。
「ラスティも、気難しい顔をしているラニもこれがお気に入りなの。兄さん、いっそ剣を捨ててパン屋を開こうだなんて言い出して…ふふ、言い過ぎよね」
先の通り、リムベルドの夜の支配者はラニとなった。夜は暗く、しかし優しい夜となり、円卓は作り変えられた。彼女は巫女の使命から解放されたのである。
「でも…戦いのがてら、勉強してみようと思いたいの。資料をいただけるかしら?」
『うむ!是非とも学び、振る舞ってやってほしい!サリアや赤獅子の奴等にな!』
それこそが、追跡者の永遠の奉仕を決意させるに足る恩義。
彼女の生命こそが、その忠誠の源泉であったのだ。
〜 守護者
「君達が、彼等本来の群れだな?私は守護者と呼ばれている。これから、共に力を合わせて戦おう」
鳥の風貌を有する翼人。盾と槍を持つ堅牢な戦士が守護者と呼ばれる者だ。
「あの、翼が…」
リッカの指摘したとおり、守護者の羽は片翼がへし折れ、飛行できぬ代物だ。
「あぁ、心配をかけてしまうだろうか。安心してほしい。飛べはしないが、群れを護るに不足はない」
『ほう。それは頼もしいな!是非ともどの様な顛末を歩んだか、話を聞かせてもらおうではないか!』
彼は群れを護り、群れを遵守する。その防護は、楽園の盾の少女とも似通う部分があるだろう。
「ラスティ殿やラニ殿にも、始めは無礼をしたものだ。それも含めて、話していくとしようか」
『群れ』とする仲間達の為、彼は救世の翼をはためかせる守護者となるであろう。
その穏やかなる語り口と揺るぎない自信には、そうした自負が宿っていた。
ラスティとラニが招いた戦士は、あと半数ほどを残している。
それらは、夜を越えた者達。次回に分けて紹介すると彼と彼女は言い、一旦部屋へと戻った。
そして彼等は、とある二人を連れてシミュレーションルームへと赴く。
そこはかつて、遊牧民が馬を走らせた草原。
神と王は、双子に促した。
双子は頷き、馬へと跨り駆け出す。
かつての故郷の、その草原を駆ける。
───双子の馬が、風を切り駆ける。
その様子を、夜の神とその王は静かに見守っていた。