人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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『あなた達に依頼を申し込みます』

『依頼内容は、『会社の秘守資料を持ち逃げし新規企業を立ち上げようとする元会社所属員、並びに企業の殲滅及びに壊滅』』

『先んじて協力者には話を通してあるので、合流の後彼の指揮に従ってください』

『ターゲットの生死は問いません』

『準備は一任します』


OK召喚〜ハワイからのデリバリー〜

「この時期にシャーレに所属したい、だなどとは、意外かつ驚きだな」

 

6月の終わり、クーラーを利かせた事務室にてアダム・カドモンがアイスとロールケーキ、カップラーメンの完成を待ちつつ懸念を漏らす。

 

『なんでもオルガマリーちゃん、ひいてはスーパー便利屋68からの依頼の関係者らしいよ。なんでも人員改革でコネや親族経営で会社を私物化していた連中を片っ端からリストラしたらしく、そのうちのメンバーが元カイザーコーポレーションの秘匿企画資料データを持ち去っていったとかなんとか』

 

「重大事件ではないか…!」

 

『それで、アダム先生には極秘裏にこれに関係する人物の捕縛及び無力化をお願いすると連絡があった。これから来る『生徒』はその依頼に協力してくれる何でも屋、だとか』

 

パパポポが資料をつまんで読み上げる。アロナは暑さで絶賛ダウン中な為の代打だ。

 

「カイザーコーポレーションには一筋縄ではいかない大人が数多くいた。アビドス再興でも随分と翻弄してくれたものだからな」

 

『十中八九その重役や理事あたりが絡んでいるだろう。アルちゃんに丸々会社を取られた形を、納得できるような者らじゃないだろうしね』

 

「キヴォトスの生徒では報復の対象になりかねないという懸念も挟まるか…。まぁ、私がいる限り生徒に手出しなどはさせるはずもないがな」

 

カップラーメンが出来上がり、箸を割る。アダムはいつでも変わらず、自然体だ。

 

『格式なのかそうなのか、シャーレに一時的に編入かつお前の指揮下に入る新生徒とは。大丈夫かっポ?』

 

「問題ない。人類皆生徒だ。意志があるなら、いやなくとも私は全ての先を生きるものとなってみせよう」

 

『頼もしいな。───おや、来たようだぞ』

 

『あついです〜〜…クーラー早く効いてください〜』

 

シャーレのオフィスに、ドタドタとした足音と規律正しい足音が響く。そしてやがてそれは扉の前で…

 

「てってってー♪てててーれってー♪」

 

「これはアロナが封筒を叩きつける時の…!」

 

「じゃーん!なんとまさかの単発紫封筒〜!SSRだよ喜んで!アダムせんせ〜!」

 

「……封筒の色に意味があるんですか?」

 

「君達が…」

 

『そう。外部からの編入生徒。錦木 千束(にしきぎ ちさと)に、井ノ上たきなちゃんだっポ』

 

アダムの前に現れた、二人の生徒候補。

 

それらが、オルガマリーが派遣した任務協同の『エージェント』であった。

 

 

「では改めて。アダム・カドモンだ。今回のミッションにおける…そうだな。前衛兼指揮者としての役割を担う。よろしく頼む」

 

そして始まったのは、面談形式の自己紹介。言うなれば面接のような状態で、二人の生徒が向かい合う。

 

「おおー、マジで高校受験面接みたいじゃん!こんなイケメンせんせーが担任とかツイてるね、たきな!」

 

「そうですね。セクハラおやじでないことには安心です」

 

「その点については安心してほしい。死者対策のため禁欲中だ」

 

「死者対策…?」

 

「では始めよう。まずは、…錦木千束からお願いしよう」

 

はいはーい♪黄色がかった白髪、ボブカットに赤いリボンを着けた少女が立ち上がる。

 

「ご紹介に預かりました錦木千束17歳!誕生日は9月23日!血液型はAB型!身長は162センチ、座右の銘は「やりたいこと最・優・先」!普段はハワイで喫茶店やってまーす!この度はよろしくね、アダムせんせ!」

 

「ほう…元気で快活、大変結構な事だ。仲良くなれていけそうだな」

 

「勿論勿論!どうどう?アダムせんせ!どう思う?」

 

「どう、とは?」

 

「単発でぇ、紫封筒引けちゃった感想は!やっぱり嬉しい?神に感謝?幸運、神様に祈っちゃっりした?」

 

「ナイスパパポポ」

『そうだろ息子よ』

 

(…千束、彼はペットと会話する危ないタイプの人かもしれません)

(あんなカッコいいのにメルヘン属性!やば、人工心臓にキュンってきたかも…!)

 

「………アダム先生。彼女に何か質問などはありますか。手短に、セクハラ以外の内容でお願いします。セクハラの場合は射殺も辞しません」

 

『怖いッポ…タキーナ怖いッポ…』

 

震え上がるパパポポを肩に乗せ、アダムはふむと考え込む。

 

「では、今回は何故この依頼とシャーレに協力する意志を見せてくれたのかを聞こうか」

 

「あー、動機?そりゃー私達なんでも屋なんで!受けた依頼はなんだってこなすしやり遂げます!人助けや悪人成敗お手の物ってね!」

 

『チサちゃんは明るいっポね〜。全然小さくないのに偉いッポ、ひぃ!?』

(………─────)

 

『射殺す視線を感じるっポ…十三キロだっポ…』

 

「成る程。では正式に依頼を受けてくれたことに感謝する。私の生徒の会社の明日がかかる手前、存分に助けてもらうとしよう」

 

「はいはーい!お任せお任せってね!ていうかアダムせんせーホントにイケメンだよねー!ちょっと一緒に写真撮ってもいーい?自慢しちゃおー!」

 

快活な様子で、アダムとの距離を縮める千束。だがアダムは見抜いていた。

 

(この娘…。銃の腕前はキヴォトスでも指折りの存在だな)

 

「ほらほら、ハート作って作って?こっちがハートなのにそっちはグッドは傷つくからナシねー?まぁ喫茶店じゃたまにやるけど!」

 

その体捌きや所作を見れば、アダムには一目瞭然だった。オルガマリーの見識は正しいものだと確信する。

 

(うっわ……近付いてみたら身体の密度と厚さやっば…。こんなん細マッチョの究極体じゃん…!いるんだこんなヒト…!)

 

そしてそれは、千束も同じく。

 

(銃弾これ通るのかな…?まさか弾き返したりしないよね…?ふっつーにあり得そうなのがまた怖い!ホラーだよそんなん!)

 

ハートマークを作り写真を撮る中、互いに互いの品定めは水面下で行われていたのだった。

 

「こほん。……次は私でいいですか」

 

千束を引っ込ませ、井ノ上たきなが向き直る。黒いロングヘアの少女は、淡々と用件を告げる。

 

「井ノ上たきな。千束のサポートとフォローを担当します。アダム…先生は、見たところ誠実で自信に満ち溢れた男性に見受けられますが…」

 

「解ってしまうか?このアダム・スゴイジシン・オーラが」

 

『初見だっポよ。なんだそれ』

 

「私達の足を引っ張らないことを期待します。平和な学園生活の中で安穏とした『先生』を鉄火場で護りながら戦うほど、私は器用ではないので」

 

淡々とした口調で、アダムを足手まとい扱いするたきな。どうやら狂犬気質を有した見た目に違わぬ少女のようだ。

 

「たきな。その言い方は無いんじゃないかな?アダムせんせ、かなりやるかもよ?」

 

「線引きはすべきです。先生皆セクハラ魔だとも言うらしいので」

 

「それは先生という職業自体にも…」

 

「いいんだ、千束。彼女の言う事にも一理はある。初体験で好感度マックスになる生徒ばかりではない。それは至極当然だ」

 

しかしアダムは、千束を宥めたきなに向き直る。

 

「君の懸念は最もだ。私も自分自身の魅力を口伝でプレゼンするほどナルシストな訳でもないからな」

 

「………」

 

「故に、私は君達といる間は常にありのままの自身を見せることを約束しよう。私を見直すか、幻滅するかは全て君達に一任する。君達を縛ることも、侮ることもしない。それで良いか?」

 

真っ直ぐ問い返すアダムに、たきなは向き直る。

 

「……無礼な物言い、失礼いたしました」

 

「変わり身早っ!?」

 

「今の言葉…教師としての矜持と決意を感じました。プロフェッショナルに払う礼儀は、持っているつもりです」

 

そうか、とアダムが安心したように席に着く。

 

「では一先ず、今日の面談はこれまでだ。任務開始の日には、改めて連絡し合おう」

 

「続きはプチコラボで!ってやつですね!これからよろしくね、アダムせんせ!くー!任務が待ち遠しー!」

 

「はい、アダム先生。それでは」

 

こうして、アダムと二人の生徒の面談は終わった。

 

「む……」

 

『モモトークって此処で合ってる? アダムせんせ、個人的にかなりポイント高いよ!これからヨロシクー! ミ☆』

『任務以外のご連絡はお断り致します』

 

「フッ、これはまた…」

『中々素敵な子達が来たっポね、アダム』

 

新たな生徒の出会いに…

 

アダムとカルデアは、再び縁を結ぶ事になるのであった。

 

 

 

 




アダム「という訳で!親睦の柴犬らーめん奢りを開始する!!」

千束「やたー!ただらーめん最高ー!!」

たきな「業務以外のご連絡はお断りと言った筈ですが…」

アダム「連絡はお断りなのだろう?ならば提案、発案ならどうだ?」

たきな「くっ…。……受理します」

千束「アダムせんせのおすすめ一丁〜!」

柴大将「あいよ!見ない顔だが、たくさん食べていきな!」

たきな「犬が料理…?衛生面の観点はどうなって…」

アダム「細かいことは気にするな。ラーメンの旨さで飛ぶぞ!」

千束「飛ぶぞ〜!!」

たきな「……食べたら帰ります」

その後ショッピング、カラオケ、ボーリングを堪能した後電池切れした二人をおぶってシャーレに帰還したアダムであった。

アダム「………本来ならば、これが女子学生のあるべき姿なのかも知れんな」

珍しく、銃撃一つならなかった日を尊び。

それが、嵐の前の静けさと予感しながら。

アダムは、二人を抱え想い耽るのだった。

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