人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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初華〘あの王様と、あの姫様は、皆の『願い』を叶えようとしている〙

〘それは、皆の願いを叶えることが大切な事だから〙

〘けれど、そこにはあの二人の苦労や奮闘という代償がある〙

〘願いを叶える事には、必ず何か対価がいる〙

〘………なら〙

〘私という〘存在〙が出来ることは〙

〘きっと、これだと思う〙


改築区切り〜寄り添う手助け〜

「さて、改築の案件も漸く区切りが見えてきたか?財も仕事も、溜め込めば終わりが見えてこぬようになるのは同じよな」

 

改築王ことギルガメッシュが、スポドリ片手にスケジュール表を確認する。特殊環境で招かれた者たちも含めれば、その作業は決して容易に終わるものではない。

 

───思えば欠かさず、ずっと皆様の居住を手掛けてきましたね。決して妥協せず、決して軽く見積もることなく誠実に…。

 

エアの振り返りの感慨に、王は軽く鼻を鳴らす。

 

《些か気遣いすぎと思うか?しかしこれはな、盤石な防衛拠点を手掛ける一因を担っている側面も大いにあるのだぞ、エア》

 

──防衛拠点、ですか?

 

《然り。英霊共は所詮仮初の来客にすぎん。契約が終わり、または不覚を取れば消えて失せる陽炎の如き存在よ。その様な存在に衣服を与え、居住を構え、食を振る舞う。一見すればそれは、砂上の楼閣を建てているに等しいと雑種は考えよう》

 

だが、それは違うとギルはエアに説く。

 

《来歴が影法師であれ、肉体が仮初であれ、そこには確かに意志持つ生命が介在し存在している。サーヴァントとは所詮マスターの道具に過ぎんが、そこには確かに意思があり、思考があり、そして魂がある。まぁ我としては意志持つ道具など悲劇にしか繋がらぬとは思うがそれはよい》

 

───大切に向き合い、尊重し重用することで、サーヴァントや人間の皆様は限界を越えた頑張りをみせてくれる、という事でしょうか?

 

《つまる真理はそういう事だ。カルデアという地を守らせるのであれば、その地に根付かせたいのであれば、そこを仮初ではなく第二の故郷とさせてやればよい。仮の寂れた四阿よりも、自らの基盤が根差した故郷の方が守護に力が入るは当然の理であろう?》

 

ギルガメッシュは、決して人助けの為に改築を進めているわけではない。彼は王として、カルデアを第二のウルクにすると宣言した。

 

国とは王のもの。しかし国は王一人では成り立たず、数多の民や職員や職種が必要となる。

 

結局のところ、人を最適に動かしたければ必要不可欠なものは衣服であり、食料であり、住居である。

 

ならば王として、それらを全て用意し、末端に至るまでの全てを最効率かつ最適解にまで整えてやればいい。

 

《守護や奮闘にも力が入るのは当然の事だ。今の人に優しすぎる世界は財の流動も歪みきっている故、公平や平等など望むべくもない。故にこそ、カルデアという組織の内にでのみ計れる芸当ではあるがな》

 

世界を救うプロフェッショナル。雑種や凡夫の存在しない最精鋭の最前線。

 

故にこそ、財を注ぎ込み重用する価値があるのだと彼は説く。彼は何処までも王であり、他者のために何かをすることはない。

 

《我が第二のウルク、蟻の一穴で大崩壊だなどと相成っては末代までの恥となろう。シドゥリの腹パンにドロップキックは二度と御免と言うやつだ。ふははははは》

 

彼が今の今まで行なってきた改築は、王としての責務。

 

納得の行く仕事を、自身が由とする全てを行ったに過ぎない。

 

───……………。

 

エアは微笑む。

 

王が納得する仕事というものの意味を、彼女はとうに知っている。

 

王とは全てを背負うもの。人や国、世界を。

 

彼がカルデアの王となり、納得する仕事をしたと判断することがあるならば。

 

それは、カルデアにいる全ての存在を幸せにすること以外にない。

 

彼は決して認めないし、無粋ゆえに口にはしない。問うこともしない。

 

だが、確かにその意思と奮闘の意味は伝わっている。

 

彼は、自身の愉しみと共に…

 

カルデアに関わる全ての幸福のために奮闘している王様なのだ。

 

《それに、だ。今の我の傍らには謙虚ながら強欲極まる姫もいるのだ。気合も入れねば務まるまい?》

 

────!

 

《我はさして興味などない。興味などないのだが…お前はアレらを見て自身も幸福となるタイプの魂であろう?》

 

ギルの言わんとすることを、エアは理解する。

 

───はい!ギルの改築で幸せそうに笑う皆さんを観るのは、とっても大好きです!

 

真っ直ぐ伝えるエアに、困り気ながら否定しない笑いを返すギル。

 

何のことはない。彼の王道に照らし合わせれば簡単な事だ。彼の王道とは『自身に相応しい宝を手にし、守護する』こと。

 

ならばこそ、自らの成果に目を輝かせ、大輪の笑顔を浮かべる至宝が傍にあるのであれば。

 

そして王の果たすべき責務が、結果的に至宝を曇らせず磨く手段であるのならば。

 

《フッ、皆まで言いおって。お前は政界や腹の探りあいには参加できそうに無いな》

 

──えへへ、そういう面はからっきしだと自分でも思います!

 

《ふはは、それでよい。くだらぬ政治などオルガマリーらに任せておけば良いのだからな。我等はただ、愉悦の赴くままに道を突き進むまでよ!》

 

その愉悦が、エアの存在により愉快なものへと変わっている事は言うまでもない。

 

新しいを知る歓び、未知に胸をときめかせる本能。

 

己の人生を彩る娯楽を追い求める。

 

二人が、彼等を取り巻く全てが笑顔を浮かべる事が出来ること。

 

それが、今も変わらぬ楽園のご機嫌王の奮闘する理由であるのだから。

 

〘王様。姫様〙

 

そこに、フォウに乗った初華が現れる。

 

──フォウ!初華ちゃん!

 

《何処へ行っていた、珍獣。それに貴様…言葉を発するようになったのか?》

 

〘うん。私の意志は、根源には関係なくなれた〙

(成り行きで背中に乗せてきたんだ。ボクの背中は全ての心清き存在にフリーだからね!)

 

《丁度腰掛けが入り用だったのだ。良きにはからえだぞ珍獣》

(触るなァ!!!)

 

ギルとフォウの仁義なきビーストファイトが始まる中、初華はエアに問いかける。

 

〘姫様と王様に、見せたいものがある〙

 

───ワタシたちに?

 

〘あなたたちは、たくさんの人の願いを叶えてくれた。そして、今も皆の願いを叶えてくれる〙

 

初華は、願いを叶えるものとして語る。

 

〘私が、あなた達の代わりに願いを叶える事はできる。でも、きっとそれはあなたも、皆も、望まないこと〙

 

───初華ちゃん…

 

〘だから私は、私なりに。願いを『助けたい』と思った。それを、今から見せたいと思う〙

 

(そうそう!凄いこと、してくれたんだよね!)

 

〘付いてきて。見せたいものがある〙

 

そして、初華は導く。

 

彼女自身が見出した願いの『助け方』へと。

 

 

───ここは…!

 

そこは、全天周囲に展開されたマルチタスク空間。

 

他人への要望や、改築に必要不可欠な材料。かかる工数などと言った全てを統括できる空間が、そこに用意されていたのだ。

 

《ほう。この空間が意味する事は、我等の業務の円滑化か?》

 

〘うん。あなた達は皆の願いに寄り添ってくれている。だから、私はあなた達の頑張りに寄り添おうと思った〙

 

初華は、改築によって理解したのだ。

 

誰かが、二人の願いを叶える頑張りに寄り添うべきだと。

 

〘ここを使って、皆の願いを叶える助けにしてほしい〙

 

自分に願いを叶える力がありながら。

 

それを、誰かの願いを叶える為に頑張る為の力に使う。

 

それが、初華が見出した力の、自身の力の振るい方であった。

 

───ありがとう!初華ちゃん、とっても嬉しい!

 

その答えに、エアは歓喜を示し共に喜びを分かち合う。

 

(ちょっと前まで無言でついてくるだけだったのに、あっという間に自己意識を確立しちゃったよ)

 

成長は早いね、とフォウは感慨深げに頷く。

 

「幼子とはそういったものよ。珍獣、我等はずっとそれらを目の当たりにしてきたであろう?」

 

(────あぁ、そうだね。珍しく、意見が一致したじゃないか)

 

フォウとギルは、共に…

 

はしゃぐエアと、初華を見つめていた。

 

 

 

 




ギル《さて、引続き水面下で改築を行っていく。表沙汰は任せたぞ、珍獣》

フォウ(心配はしてないけど…一応、気をつけろよ)

ギル《フッ、無論だ。我は過労死などせぬからな!》

こうして、より一層スムーズとなった改築業務に専心する…

愉快な王と、姫であった。
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