人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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冥界



『Fuuuuuu――!!』

「降りてきた――!?待っていて御兄様、今綺麗にするから!」

「個人的に力を貸すのは良いが、冥界の女主人としての力は要らぬ!貴様に要するは入国と出国許可だけよ!」

「わ、分かったわ!とりあえず御兄様を休ませなくちゃ!」

「暇を持て余している場合ではないぞ!これよりマルドゥークは『木星権限』を解放する準備に移行する!」

「も、木星権限・・・!?」

「マルドゥークの守護神としての権能を身に宿すのだ!あらゆる重力を振り切る推進力を宿す!貴様は冥界の刑罰の準備を始めよ!」

「わ、分かったわ!忙しすぎるわ最近!」

――重力を振りきる・・・!?

《フッ、一足先に目の当たりにしに行くぞ。――この星、我が庭の姿をな!》


『GuuuuuuOOOOOO・・・――』

――はいっ!!


解り合えぬ摂理

蠢くラフムの一体に、右腕を変形させたエルキドゥの刀が突き刺さる

 

 

【!!】

 

 

「大丈夫。痛くしかしないから」

 

 

それを鏃の翼と変え、肉体の間で羽ばたかせ、肉体を丹念に挽き肉とする

 

 

【eqe!eqe!eqe――!!】

 

 

「ごめんね、何を言っているか解らないや」

 

さっくりと、簡潔に。菓子を砕くかのように。体の中心線から真っ二つにラフムを両断する

 

「あぁ、フォウ君のお蔭で仕事がしやすい」

 

 

ゆらり、とゆらめき。笑いを浮かべながらラフムへ飛びかかる

 

【!!】

 

本能的な防衛意識にて、ラフムがエルキドゥに手を伸ばし突き刺さんとする

 

それをなんなく掴み取り・・・

 

「あぁ、耐久性も確認しておこうか」

 

腕の先から、先割れチーズのごとく・・・真っ二つに身体を割いていく――

 

【!!!】

 

暴れ悶え、じたばたと狂うラフム。そんな様子を、慈しみながら見つめる。・・・手を緩めぬままに

 

 

「よしよし。痛覚はあるみたいだね。では、最後まで楽しんでほしいな」

 

右腕から、胴体。肉体を引きちぎり生命活動を終わらせ、苦痛と激痛の中で息絶えさせる。泥と塵に還りしラフム

 

「二人目・・・と。たまには、弱いものいじめも悪くないね。うん。――次は・・・」

 

エルキドゥの目に、不可解なものが映る

 

ラフムが二体程、同士討ちをし合う。互いを傷付け、争い、戦っている

 

「・・・?」

 

何をしているのか・・・その答えに、エルキドゥは直ぐ様思い至る

 

あれは【意思表明】だ。自らは敵ではない。弱者ではない。――こいつらとは、仲間ではない。だから――殺さないでほしい

 

【at@4!0qdfat@4・・・!】

 

【eqhduew@ b\xuew@・・・!】

 

だから、互いを傷付けている。自分が助かるために、同族を傷付け、自分だけが生き残るために

 

「――・・・」

 

その様子を、興味深げに観察するエルキドゥ。ふむふむ、追い詰められれば生存に走るのか。良くできているなぁと言わんばかりに笑いながら

 

【――!!】

 

ラフムの一体の刃が、一体の身体を貫く。ぐらり、とよろめく敗北せしラフム

 

【7Zq!b;w@・・・】

 

勝利せしラフムが、歓喜を表しながらエルキドゥに向き直り・・・

 

【・・・――、?】

 

ぐさり、と。頭から斧を叩き込まれていたのに、数瞬かけて気が付いた

 

「ありがとう。手間が省けたよ」

 

穏やかに笑い、同族殺しに手を染めたラフムを労るエルキドゥ

 

【s@、4dw・・・s@4dw・・・】

 

【――・・・】

 

まだ息があるラフムを、当然のように鎖で始末するエルキドゥ

 

「ごめんね。――何を言っているか解らないんだ。・・・それに」

 

【・・・!】

 

「・・・――君達の断末魔、中々に聞き応えがあって素敵だからね。たくさん聞かせておくれ」

 

力を込め、ゆっくりと両断していく

 

【ド・・・ドウシテ、ドウシテ!】

 

死ぬ間際の最中、ラフムは成長し、言葉を発す

 

【ワタシタチハ、ドウシテ、コンナ・・・――イタイ、イタイ!ヤメ、ヤメテ・・・!】

 

「うんうん。生まれた意味が解らないかい?それは辛いだろう。苦しいだろうね」

 

生命力が強靭なばかりに、なまじ死ぬこともできない。体が八割割かれながら、自問自答する

 

何故、私達は産まれてきたのか、と

 

「それはね・・・――そうだな。理由が欲しいならあげよう。君達は・・・」

 

ピタリ、と手を止め、笑いかけ・・・

 

「いい悲鳴をあげるために、僕たちに始末されるために・・・産まれてきたのかな?うん。それはいいものだ。じゃあ――さようなら」

 

【ソン、ナ・・・――】

 

両断。霧散。壊滅

 

塵と化したラフムを、無感情に見下ろしながら・・・残るラフムに向き直る

 

「お待たせ。君はどんな風に生命を終えたい?期待には答えられるとおもうな」

 

ゆっくりと浮かびながら、ラフムに近づく

 

「剣で両断かい?槍で串刺しかな?弓矢で蜂の巣?乗り物で引き回し?拷問でなぶられるのが好みかな?痛覚を引き上げさせるもいい。引き裂かれたいならそうしよう」

 

【ア、ア・・・】

 

「期待に応えてみせるよ。さぁ、言ってごらん?」

 

どこまでも優しく、語りかけるように告げるエルキドゥ

 

小刻みに震え続けるラフム。相互理解の叶わぬ相手に、人の形をせし何者かに、心底まで叩き込まれる

 

なぶられるおぞましさ

 

死しか待っていない絶望

 

苦痛と激痛の中で息絶える恐ろしさ

 

【――オ】

 

その中で、選んだ言葉は・・・

 

【オネガイ、オネガイ・・・コロサナイデ】

 

懸命に言葉を真似た、命乞いであった

 

【シニタクナイ、イキテイタイ。ナンデ、ウマレタバカリナノニ、コンナ】

 

「・・・」

 

【シニタクナイ。オネガイ、オネガイ・・・コロサナイデ、コロサナイデ、コロサナイデ・・・】

 

「ごめんね。それは出来ない望みだよ」

 

口を掴み、口の中に小さな兵器と化した泥を、詰め込み、呑み込ませ、内部をズタズタにしていく

 

【!!!!!】

 

「いけないなぁ。困難に命乞いをすれば助かるなんて甘えを覚えちゃ」

 

ブクブクと膨れ上がっていくラフム。苦痛と激痛に苛まれながら、おぞましい笑顔のエルキドゥが目に入る

 

「いいかい?君達はね、僕たちに殺されるために産まれてきたんだ。どうせ君達は異種。駆除されるのが丁度いい。――さようなら。新しい人間のカタチ。いい砥石代わりになった」

 

そのあまりに残酷な結論に、意識を失う永遠の一瞬の中で、ラフムは思う

 

 

産まれてきたくなどなかった

 

こんな苦しい思いなどしたくなかった

 

産み出してほしくなどなかった

 

【――!!!】

 

楽になりたい

 

生命などいらない

 

こんな苦痛から、解放されたい

 

あぁ、なんて・・・

 

人間は、恐ろしく・・・怖い生き物なのだろうか、と・・・

 

ラフムは破裂する瞬間まで、自らの生命のあり方を悔やみ、呪い続けた・・・

 

 

「最後のは今一だったなぁ。兵器に人徳なんてつけるからいけない。所謂量産型なんだから、単調で構わないのに」

 

五体を倒したエルキドゥは、呆れ気味にため息を吐く

 

「さてさて、残りは残しておいて・・・フォウくんはどうなっているかな、と」

 

 

 

人間めいた何者かが、震え始める

 

好都合なので、爪で引き裂く。バラバラに消し飛んだ。一匹目

 

人間めいた何者かが、金切り声をあげて襲い掛かってくる

 

面倒なので頭部を噛み砕く。ジャリジャリとして気持ち悪い。二匹目

 

勝ち目がないと悟ったのか、ティアマトに向かって飛来していく人間めいた何者かがいる

 

当然のごとく追いかける。羽根は邪魔だ、むしってしまおう。絶叫が響き渡る。――やはりお前達は下劣だな。これは、お前達がやった事なのに

 

思い出したら腹が立ってきた。五体を一本ずつ引き抜いていこう。右腕、右足、左足、左腕

 

いい加減耳障りなので、粉々に砕く。うん、中々にスッキリする。サンドバッグには悪くないな。三匹目

 

【バケ、モノ・・・!コノ、バケモノメ!】

 

化け物?ボクの事だろうか

 

【コンナコトヲシテ、タノシイノカ!ウレシイノカ!オマエハ、バケモノダ!オゾマシイ、バケモノ!バケモノ!】

 

よく言う。お前達がやったことを再現してやっているだけなのに

 

だが、一緒にされるのは心外だ。お前たちと違って・・・

 

【ヒッ――】

 

耳障りな声を出す口に手をやり、メリメリと縦に割いてやる

 

【アガ、アガガ、アガガガガガガ――!!】

 

『一緒にするな、ゲスども。――こんなもの、楽しくもなんともない』 

 

真っ二つに引き裂いてやる。ありがたく思ってほしい。終わりがあるんだから

 

・・・心の底から溜め息がでる。自分のスペックを振りかざして弱いものいじめ。何が楽しいんだ、こんなもの。四匹目

 

『次。逃げるなよ、面倒臭いんだから』

 

ズシン、ズシンと迫る五メートル近い巨体を揺らし、ラフムに歩むフォウ

 

『お前と、アレでおしまいだ。これを忘れないよう、細胞に刻み込むくらいに痛め付けてやる』

 

【ァ、ア、ァ・・・】

 

『じゃあね。大丈夫。母親の骸も、すぐに連れていってやるから』

 

牙をぎらりと光らせ、フォウが口を開けた瞬間・・・

 

【ヤメテ!タスケテ!タスケテ!】

 

両手を上げ、無抵抗を示すラフム

 

『命乞いか?随分と弱気になったね』

 

【タスケテ・・・!タスケテ!シニタクナイ、シニタクナイ・・・!】

 

『うん。死ね』

 

胴体を爪で引き裂き、下半身を尻尾で吹き飛ばし、頭部を噛み砕く

 

馬鹿な奴等だ。命乞いを聞くのは生かす価値がある者に限られる

 

お前達みたいな下等極まる泥、生きているとすら言えない

 

知恵を、自我を、知識を真似したところで、お前達は薄汚い人間擬きなんだ

 

『――はぁ』

 

うんざりする。こんなもの、何も面白くない

 

・・・エアに会いたい。頭を撫でてほしい。抱き締めてほしい

 

・・・そして、少しだけ、申し訳ない気持ちになる

 

『・・・ごめんよ、エア』

 

君からもらった力を、君からもらった尊さを、こんな下らない泥処理に使いたくなかった

 

あぁ・・・エアとお風呂に入りたいな・・・こびりつく倦怠と、うんざりするような暗い気分を洗い流してほしい

 

【ヒ、ヒッ】

 

・・・ん?あぁ、11体いたんだっけ。エルキドゥが五体、ボクが五体か

 

 

面倒だ。さっさと終わらせてしまおう

 

「コレで最後かい?残念だ。砥石が無くなってしまうね」 

 

マジですかエルキドゥ。こんなのいたぶって楽しいの?ホントに?

 

『サッサと終わらせて戻ろう。めんどい』

 

「ふふ、そうかい?なら『二つに分けよう』」

 

・・・エルキドゥが楽しそうなので、合わせることにする

 

胴体を両断する。『痛覚は残したまま』

 

【!!!】

 

『ボクは足だ。エルキドゥはそっちを』

 

「わかったよ」

 

そのまま、縦に引き裂いていく。ゆっくりと、確実に

 

痛覚は残っているから痛いだろう。痛くしているんだから当たり前だ

 

苦しんで死ぬのもまぁ、たまにはいいんじゃないか?痛みは生命活動の一環てナイチンゲールも言ってたし

 

【イタイ!イタイ!!ヤメテ、タスケテ、シニタクナイ!シニタクナイ!】

 

『口抑えておいてよエルキドゥ』

 

「いやいや、これが楽しいのさ。愉悦、愉悦」

 

【アアアアァアァアアァアアァア――!!!】

 

・・・理解できないな。本当に

 

『・・・おし、まいと』

 

真っ二つに引き裂き・・・苦痛と激痛の中、生命を終わらせてやる

 

・・・全員倒したかな?じゃあね、ラフム

 

『悔やむなら、前世の業を悔やむんだね。因果応報って言うだろ?・・・はぁ、胸糞わるい』

 

こんなのを楽しいだなんて・・・本当、救いがたい劣等種だ

 

「はぁ、面白かった!たまには弱いものいじめもいいね!」

 

・・・あの、ブーメランを身代わり防御するの止めて?

 

 

「これでラフムは生まれないんだろう?じゃあギルの援護に向かおうかな。フォウ君はどうする?」

 

どうする、かぁ。リッカちゃんや牛がいるし、町には皆がいるし、冥界には・・・

 

――・・・そうだ。エアは宇宙に行くって言ってたし。ちょっと洒落てみよう

 

『やりたいことがある。先に行ってて』

 

エルキドゥにそう言い。虹色の軌跡を描き空を走る

 

「何か、いたずらかい?」

 

『この力を、もっと尊いことに使いたい。塵掃除で終わらせるなんて勿体無い』

 

「そっか。じゃあ、こっちは任せて」

 

手を振るエルキドゥに頭を下げ、ボクは飛ぶ

 

 

虹色の軌跡が出ていることを確認し、飛び立つ

 

 

『この力は、やっぱり戦い以外に使う方がいい。――見ていてほしいな。エア。そして、ティアマト』

 

フォウは翔ぶ。高く、何処までも高く

 

雲より高く、何よりも高く

 

 

何も遮るものの無い、宇宙と地球の境界、狭間まで――

 

『君達に、ボクなり、人の感謝を伝えようじゃないか』

 

どんな感想が帰ってくるか・・・それを思い、フォウは一人笑う

 

 

・・・喜んでくれることを願う。これが・・・人類愛となったボクの、ボクなりの・・・――




【⬛⬛⬛⬛⬛!!】

おぞましき咆哮を上げながら、ビーストifがビーストⅡを滅多打つ

パンクラチオンの打撃、源氏の斬撃、尻尾を叩きつけ、懐に潜り殴り付け

【Aaaaaa、Aaaaaa・・・――!】

巨人のごとき腕力にて放たれる拳を、紙一重で受け流し――

【AaaaaaAAAAAAAA・・・――!!】

尻尾で首を絞め、腕をガッチリと極めティアマトを拘束する――!

「ナイスリッカ!グガランナ!畳み掛けて!」

『ブモォアァアァ!!』

動きが封じられしティアマトを、グガランナの嵐と蹄が滅多打つ

「ナイス!効いてる効いてる!」

ガチャガチャとコントローラー『ヴィナスリモコン』を動かす。これは急拵えのグガランナを意のままに操る金星アイテムである

(調教の時間なかったから心配だったけど、大丈夫みたいね!)

グガランナの首輪に受信機があり、それを受けとることにより動くグガランナ。これこそ、金星の女神の操縦術――が

イシュタルは失念していた。依代たる少女の欠点のひとつを――

【AAAAAaaaaaAAAA!!】

力付くで拘束から逃れ、ビーストifに殴りかかるビーストⅡ

【!!】

「いけない!グガランナ、リッカを庇って!」

イシュタルは白熱し、リモコンを全力で傾ける

操作に応え、グガランナが軌道に割って入り、拳を受け止める

「ナイス!リッカ、体勢を立て直して!」

ボキリ、と。何かが折れた音がする

(へ?何、今の音・・・)

手元にある、リモコンに目をやるのと


【Aaaaaaaaaaa・・・・・・!!】

埒が明かないとばかりに唸りをあげ、ティアマトの身体に異変が起こるのと


『――ブモォアァアァァアアァアァアアァア!!』

【――!?】


グガランナの眼が赤く輝き――アジ=ダハーカに襲い掛かるのは・・・


「ちょ、待ちなさい!何やってるのよグガランナ!相手が違うって――あぁあ!?コントローラー壊れてる――!!?」

全くの、同時であった――

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