人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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キラナ「そう言えば、アフラ・マズダ様の神話もカルデアの皆に知ってもらいたいなぁ…」

アンリマユ【おぉ、随分と今更だな。引っ越し間近の今かよ】

キラナ「今だからこそ、印象に残る神話をぐぐっと説明したいと思った!」

アンリマユ【ほーん、そうかい。なら、うってつけとまでは言わないが…心あたりのあるやつを知ってるぜ】

キラナ「ホント?」

アンリマユ【おうよ。連絡してやるから会いに行きな。ただ…】

【ちょっと…いや、かなりこだわりが強いやつだから…地雷を踏まないようにな〜】

キラナ「?」


物語を愛する虚構

【というわけで……今日はよろしくね。えっと……キラナちゃん?】

 

「うん!よろしくね!」

 

アンリマユの導きにより、かつてドラランドにて脚本を手がけた【つむぎ】とのコンタクトを果たすキラナ。彼女は本元の存在たる『アフラ・マズダ』の信仰と逸話をもっともっと知ってもらうために『紙芝居』の制作に着手しようとしていたのだ。

 

(……そう言えば、この子もリッカと同じ獣さんなんだよね)

 

彼女が見る上での懸念、それはつむぎもリリスやアマノザコ、リッカの如くに資格を有した『イフ』の獣であるという事。

 

そして、彼女にはまだ有しており把握されていない闇がある。折角なので、その闇を見極める目論見もあった。

 

「アフラ・マズダ様はね〜。善を司る存在だけど、とっても柔軟な考え方をお持ちの方なの!善はよい。しかし、独善はダメだよと啓発してくださる凄い方でね、私のことも信徒じゃなくて娘みたいに扱ってくれてるの!」

 

キラナは存分に語る。アフラ・マズダと自身の在り方を。彼は善神にして、キラナを見初め使徒や信徒として扱い、かの下へと迎え入れた。

 

だが、その思想は非常に優しく人間味に溢れたものであり、彼女においても決して画一的な信仰を求めはしない。それどころか彼女の自由意志や想いを尊重し、主体性を任せている。

 

【大好きなんだね、その神様】

 

「うん!大切な家族であり、素敵な本尊様なの!」

 

満面の笑みで語るキラナに、つむぎもまた笑みを零す。紙芝居の制作は、とても穏やかに進行していった。

 

「そう言えば…」

 

そんな制作の最中、キラナはつむぎに問いかける。

 

「あなたにとっての現実世界は、どんな場所なのかな?」

 

彼女はビーストの素養を持っている。ビーストは、それぞれ司る理や矜持があるもの。

 

それを知らなくては、本当の意味で彼女を理解することはできない。キラナは思い切って、彼女の内面に切り込む事とした。

 

虚構の理を持つ彼女にとって、この世界は…現実は、どう見えているのかと。

 

【この世界のこと?…うん、そうだね……】

 

思案し、ぽつぽつと彼女は語りだす。

 

【素敵な物語だと思ってるよ。カルデアの皆をはじめとして…この世界は、たくさんの素晴らしい物語やお話を生み出してくれる土壌であり、本棚みたいなものかな】

 

つむぎは満足気に、キラナに語る。この世界は、良いものであると。

 

【友達とも、昔語り合ったんだ。素敵なこの世界で、素敵な自分だけの物語とお話を手掛けようって…】

 

「お友達?」

 

【今は先生と……編集者になってるんだったかな。うん、私はもう死んでるから会えないけど、元気でやってるみたいで、嬉しい】

 

「死んでる……」

 

キラナの驚きは意に介さず、彼女は告げる。

 

【この世界には、悲しいことに……素敵な物語よりずっとずっとたくさんの【染み】や【汚れがある】。それは物語を侵し、改悪し、改変し、台無しにしてしまうような悍ましいもの】

 

その口調には先の穏やかさが消え、煮え滾るような激情を孕んでいく。

 

【そんな染みや汚れに、素敵な物語が汚される。そんな悍ましい事を世界は容認している。許せない、許せない。そんな事は許せない。許せない………!!】

 

「つ、つむぎちゃ」

 

【だからッ!!!】

 

勢いよく、つむぎは机に手を叩きつける。キラナは思わず、肩を竦める程の勢い

 

【消さなきゃ。綺麗にしなきゃ。塗りつぶさなきゃ!世界を汚す汚れなんかが生まれない世界に私がしなくちゃいけない!全ての物語のために!全ての美しい結末を護る為に!!】

 

その勢いは、狂気すら孕んでいた。物語を愛するが故に、その世界の全てを塗り潰すことすら辞さない。

 

「────…………」

 

その在り方は、揺るぎない愛によるもの。物語における愛が故に、世界の全てを自身の物語で塗り潰す可能性を孕むもの。

 

それこそが、彼女の持つ獣性。物語に対する、現実を侵食する存在。

 

それが……彼女という、あり得ざる獣という存在の本質を、キラナは確かに見届けたのだった。

 

【───はっ。あ、ご、ごめんね。熱くなっちゃって…。怖かった?】

 

怒りと狂気は即座になりを潜め、先程のつむぎに様子が戻る。それを認め、キラナは首を振る。

 

「ううん。物語を紡ぐ人はどこかしらおかしくないとだめだって私の友達も言ってたから!」

 

【……ひ、否定できないのが辛いけど、だいたいそんな感じだね…】

 

その時、ポンと彼女が手を叩く。

 

【そうだ。驚かせたお詫びとして……私の秘密を、教えるね】

 

ちょいちょいとキラナを寄せ耳打ちする。

 

【私の本当の願いと思いは──】

 

「────」

 

彼女にのみ託された、話された願い。

 

「あなたは…」

 

そこに、彼女の覚悟を見た彼女は静かに頷く。

 

「うん。……いつか、ううん。必ず私達の道は交わる。その時に、必ず…」

 

「あなたの願いは、叶うはずだよ」

 

その言葉を聞いたつむぎは、静かに微笑み…

 

【…うん。信じてるよ。あなたや、カルデアの皆を信じてる。だから…】

 

「うん!」

 

【これからもずっと、素敵な物語を紡ぎ続けてね。大切な、素敵なお話を。ずっとね】

 

笑顔を見せるキラナの頭を、そっと。

 

そして、優しく撫でるのであった。

 

 

 

 

 




つむぎ【あ、キラナちゃん】

キラナ「?」

【さっきの秘密は…皆には】

キラナ「うん!しー、だね!」

【うん。──ありがとうね。キラナちゃん】

紙芝居の完成と共に…二人の秘密が、出来たのだった。
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