人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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今回は一話ほぼ丸々プロットを頂いたので、それを元に肉付け、監修したお話をお送りします。

掲載の理由は、作者がこういった『政治的お話』があんまり得意ではないため大いに参考にさせていただいたからです。

ブルアカも偽神絡みで重要ファクターなので、夏休みイベントも引っ越し先でやっていこうと思います。

河口大輔さん、本当にありがとうございました!


プロット提供話〜キヴォトス夏休み前日譚〜

その日、連邦生徒会統括室首席行政官、および生徒会長代行たる七神リンは来客の対応の準備を行なっていた。

 

 

その理由は数日前、カイザーコーポレーション幹部となった鬼方カヨコから連邦生徒会の財務室宛てにメールが届いたこと。

 

『オクトパスバンクが所有していた連邦生徒会の土地について』

 

という件名の内容のメッセージ。

 

 

詳細はオクトパスバンク(その実態はカイザーコーポレーションの子会社)が持っていた土地の権利書に、連邦生徒会所有のものがいくつか混ざっていたという。

 

『土地の権利関係ということもありメールでのやり取りという訳にもいかないため、後日正式な訪問をしたい』

 

本来なら財務室長の扇喜アオイが担当するだろうが、生徒会所有の土地ともなれば自分だけでは対応しきれない。

 

そう判断したアオイはリンに相談、リンは自身が同席および主導とすることを相手に伝え、向こうもそれを了承し、今日の訪問となったのだ。

 

アダムの手伝いを差し引いた今日の分の書類を処理していると、生徒会室長執務室のドアをノックする音が聞こえる。

 

「そろそろカイザー社の方がお見えになる時間です」

 

「ええ、わかりました」

 

アオイの言葉にリンは書類に目を落とすと書類にサインし判子を押すと脇に置き、執務室から出る。

 

廊下を歩き、応接間のドアを開けるとすでにスーパー便利屋68の中核、カヨコがソファに座っていた。

 

「あ、来たね」

 

 

カヨコはソファから立ち上ろうとするが、

 

「ああ、そのままで構いません」

 

というリンの言葉を受け、カヨコは座り直す。

 

調停室長の岩櫃アユムが三人の前にコーヒーを置いて一礼してから退室した後、リンから口を開く。

 

「早速ですが本題に入りましょう。オクトパスバンクが連邦生徒会の土地の権利書を持っていたということですが・・・」

 

「ああそれなら・・・これが権利書、確認して」

 

カヨコが差し出した権利書の束をアオイが受け取ると、手元あたりに置き、タブレットを翳し、それを数回繰り返した。

 

タブレットの画面を数秒見たアオイは隣のリンに顔を向ける。

 

「・・・冒頭の数ページをAIで簡単な照合をさせましたが、確かにウチの権利書ですね。後で正式な照合をします」

 

リンは頷いた後、カヨコに顔を向ける。

 

「ありがとうございます。連邦生徒会の土地を悪用される前に気付けて助かりました」

 

「どういたしまして。…それで、ひとつ質問なんだけど」

 

「何でしょうか?」

 

「その土地、今後どうするの?」

 

「…仰る意味を測りかねますが」

 

「その土地の管理となると莫大なお金が必要になるんじゃないかと思って。それでこれはあくまで提案だけど…その土地を売地か借地にすれば『各学校・学園から合法的に税金を取れる』ようになるよ」

 

「───!」

 

連邦生徒会はキヴォトスの中央政府にあたるため土地の固定資産税は掛からないが、その土地を維持するためには当然お金が掛かる。

 

カヨコはその解決策として土地を売るか、借地にすればお金が取れると考えているのだ。

 

「・・・何を、企んでいるのですか?」

 

「企むなんて心外だね。ウチとしてはあくまで提案しているだけだよ。それにウチの外部顧問が誰かは、アンタ達だって知ってるはずでしょ?」

 

「……」

 

カヨコの言葉にリンは沈黙する。

 

カイザー社の外部顧問、それは当然彼のアダム・カドモンが務めていることは連邦生徒会も当然把握している。

 

アダムはその存在がブラックマーケットの抑止力かつ覇者。彼の有する資産は生徒たち、並びに学園全てという不動の評価を築いている彼がバックにいることの意味を彼女は知っている。

 

「アダム先生に足を向けるような真似はしない。それだけは理解してほしいかな」

 

「・・・わかりました。ですが、各学校・学園が土地を購入または借りない場合は?」

 

「その時はアダム先生に買い取ってもらえば良い。生徒が困ってるとなれば、あの人ならきっと力になってくれる」

 

アダムは柴関ラーメンに9億クレジットも投資したのだ。連邦生徒会の土地についても恐らく言い値の10倍だろうが100倍だろうが出してくれるはずだ。

 

並びに、カルデアのオルガマリーも有する以上…彼はキヴォトスの不動産王としての資質すら持つ。

 

しかしそんな事をすれば後から欲しいとなった時に問題になる。決行するとしても土地の最高値だろう。

 

「まあ、その土地をどう活かすかは買った人、借りた人しだいだね」

 

「カイザー社は買うか借りるかしないのですか?」

 

カイザー社はキヴォトス屈指の巨大会社だ。お金などいくらでもあるはずとリンは懸念するが…

 

「まあ…そこに建物が建つとしたらウチの出番だろうし、それで充分に利益が出るよ。それに…幹部が交代して間もないウチだとまた揉めそうだしね」

 

カイザー社はアルたち元・便利屋68に交代し、社員たちも『教育し直した』が、

それでも未だカイザー社に対する不信感は拭い切れていないし、他の会社からすれば自分たちなどまだまだ小娘だろう。

 

なら下手にアレコレ手を出すよりは今は『地盤固め』に集中し、出番がある時に出るくらいの方が良い。

 

「・・・分かりました。一応提案については話しをさせて頂きます」

 

――数日後、会議にて。

 

「そういう訳で、土地は各学校・学園に借地または売地として提供しようと思います。この契約が成立しなかった場合、アダム先生にこの話を持っていくということにします」

 

その話を聞いていた交通室所属の由良木モモカが口を開く。

 

「それなんだけどさ・・・アダム先生に話を持って行くというのを最初の選択肢に入れても良いんじゃない?」

 

その言葉に全員の視線がモモカに集まる。

 

「どういうことでしょうか?」

 

「だってさ、どこかの学校・学園だと、よその生徒がちょっかい出すかもしれないじゃん。でも、その土地がアダム先生の物ならどうなると思う?」

 

その言葉にリンは目をぱちくりとさせ、目からうろこが取れたような表情をする。

 

そしてしばし考え込むと、顔を上げる。

 

「・・・そうですね。税金を取るという趣旨からは外れますが、各学校・学園の反発が予想される以上は次善策としては良いでしょう。アユム、土地の説明会を開いて二つの選択肢を提示という方向で行きましょう」

 

「どちらも成立しない場合はいかがいたしましょう?」

 

「アダム先生が土地を買わないまたは借りないという選択肢は無いと思うけど・・・その場合は『土地の維持費を確保するために各学校・学園からの税金を引き上げる』と言いましょう」

 

「脅迫めいたように聞こえるけど、ウチだってそんな余裕無いしね。カルデアとの関係性、金銭面では頼ったら良くなさそうだし」

 

「では、その方向で行きましょう」

 

 

――さらに数日後、午前中。

 

連邦生徒会の会議室では土地の説明会が行なわれていた。

 

アビドスや百鬼夜行のように直接行って参加している学校もあったが、大半はオンラインでの出席で会議を行っている。

 

「――以上のように、連邦生徒会の土地の売買または貸借を募集します」

 

ひと通りの説明が終わった後、真剣に考えているのは百鬼夜行の河和シズコくらいで、他の生徒たちは余りやる気が無いように見受けられた。

 

『リン行政官、質問よろしいでしょうか?』

 

「では、ミレニアムサイエンススクール、生塩ノアさん」

 

『もしこの土地を各学校・学園が売買または貸借の契約をしなかった場合はどうなるのでしょうか?』

 

「その場合は、アダム先生にこの話を持って行くことにします」

 

リンのその言葉に会議室がザワつき始める。彼のネームバリューはこれ程に大きい。

 

「お静かに。この場合のメリットとしては『各学校・学園同士が揉め事を起こしにくくなる』ということです」

 

『詳細をお聞きしてもよろしいでしょうか?』

 

「土地が各学校・学園の物なら、その土地を奪おうと何処かの各学校・学園あるいは…学園非在籍生徒たちが動くかも知れません。ですがその土地がアダム先生の物となれば、おいそれと手を出してこなくなるでしょう。いえ…そこはもはや、絶対的な不可侵領域とすら言っていいかと」

 

それ以外にも、とリンは眼鏡を上げる。

 

「『各学校・学園は余計な出費を抑えられる』ということ。アダム先生なら各学校・学園に貸すとなれば期限を設けない、あるいは格安で契約なさってくれるでしょう。そうなれば各学校・学園が別荘や店舗を建てる時に安くで済む。あなた方にとっては悪い話では無いと思いますが」

 

会議室はまた、俄なる騒動が起こる。

 

 

『い、いくら何でもアダム先生に土地買ってー、なんて言っていいの…?』

 

という良識的な声や

 

『でも、流石にウチで土地を転がす予算は無いし・・・』

 

という懸念が交わり聞こえる。

 

「いいんじゃないかな〜?アダム先生に購入してもらうか借りてもらうっていうのは」

 

その時、アビドスの重鎮ホシノのその言葉に、出席者全員の視線が集まる

 

「おじさんたちとアダム先生の出会いは借金問題だったかもしれないけど、全部返し終わるとアダム先生がいなくなっちゃうんじゃないかって思ってさ〜。だからね、残り5万クレジットの借金はまだ返していないんだ〜」

 

それまで目を閉じていたホシノの目が開く。

 

「…そういった『縁』が多くあれば、アダム先生がどこかに行ってしまったとしても…またキヴォトスに帰ってきてくれるかもしれない。そんな『縁』は、お金がいくらあっても代えられるものじゃないからね。ってなんかスピリチュアルっぽい言い方になっちゃったけどさ」

 

たはは〜とホシノが笑った後、会議室では先程までとは別のザワめきが起こっていた

 

「この場にいるメリットはもう無いわね。すぐに百鬼夜行に帰らないと」

 

『ノア、すぐに予算を確保するわ。私が絶対なんとかして見せる。財政?アダム先生がいなくなる損失に比べたら些細な事よ!』

 

そんな熱気が会議室で起こり、説明会はリンの閉会宣言をもってお開きとなった。

 

――数時間後、シャーレにて。

 

「了解だ、リン。生徒の発展と学園生活の充実に繋がるのなら、喜んで手伝わせてもらう」

 

「手前味噌で申し訳ありません。ですが…アダム先生、よろしくお願いします」

 

アダムは各書類にサインし、リンと握手を交わした。

 

 

その日、アダムは幾つもの土地を有する事となり。

 

正式な手続きを踏めば、ほぼ言い値の使用料金で活用できる生徒に寄り添った形のエリア解放となった。




パパポポ『いよいよ土地の有権者か。王様っぽくなってきたなアダムよ』

アダム「あくまで預かり、提供者に過ぎん。生徒達に正しい契約を行えば得をし、契約の勉強の題材にもなる。良いこと尽くめだ」

パパポポ『私には、お前の縁を作りたいという意志を感じたぞ。人気者だな、アダム』

アダム「ふふ……それは杞憂だと、契約締結の際に伝えておかなくてはな」

私が道半ばで消え去るなどあり得ない。

この地の生徒と、カルデアの皆こそが…

我がEDENが求めた希望そのものなのだから。

アダム「夏が、始まるな」

アダムは変わらず青く美しい、キヴォトスをシャーレより見つめていた。
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