人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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女の子にしました。ぐだ子可愛いし


紅蓮の邂逅

耳を疑う。聞き間違いでもなければ、戯れ事を口にしているようにも思えない。

 

 

人理を観測し、保障する機関……カルデアと言ったか。そこに原因不明の爆発が起き、施設が燃え落ち、偶然にも生き延びレイシフトとやらを果たしたマスターと、死の間際で謎の英霊と融合を果たし、デミ・サーヴァントと呼ばれる存在となってマスターとこの焼け落ちる街で戦っていた、と

 

「凄いじゃないか藤丸君!初めての召喚でかの英雄王を引き当てるなんて!いいぞぅ!戦力的にはこれ以上の札はない!」

 

姿は見えないが声はする。随分と頼りなく軽薄な印象を与えるが、彼が参謀の立場なのだろうか。

 

つまり……この二人の少女達に……全人類の命運がかかっている、と。

 

 

「あ、あの」

 

渡された情報を頭で反芻していると、紫色の鎧に身を包んだ、儚げな印象の少女が口を開く。

 

 

「先輩の召喚に応じていただき、ありがとうございます。私は、マシュ・キリエライトと言います。とある英霊と融合を果たした、デミ・サーヴァント。先輩と契約したサーヴァントの一人です」

 

 

「――――」

 

 

「その、私達はこの特異点の調査を行い、レイシフトにてカルデアへの帰還を計画しています。ですが、ここには既に多数のエネミーが巡回していて、戦闘経験が皆無な私達では、まだまだ踏破が困難と予測されます」

 

紫色の少女が言葉を紡ぐ。細くも芯の通った、耳に心地好い声であると思える。

 

その細腕に見合わぬ、大きな盾。召喚時に与えられた知識によれば、サーヴァントはクラスとかいう枠組みに押し込まれ一側面を顕現させる、らしい。

 

彼女のクラスはなんなのだろう。そもそもの話ではあるのだが、この英雄王ギルガメッシュという英雄のクラスもなんなのだろうか?

 

それは知識としては与えられない。自分がどんなクラスでどんな戦い方を得意としますか?など尋ねる英雄はいるまい。痴呆を患うサーヴァントなど願い下げだ。

 

……だが、盾と思わしき得物を見ていると、違和感を覚える。

 

それは、盾なのか?どうもイメージに結び付かない。

 

盾というよりかは、下に敷いて、晩餐を囲う時に用いる――

 

「不敬を承知でお願……い、いえ。進言します。どうか先輩と私に、力を貸していただけませんか?」

 

真っ直ぐな要請。水面下の企みなど微塵も感じさせない誠実な物言い。

 

……助けになれるのなら、それに越したことはない。むしろそのために自分はここにいる。

 

あのとき叫んだ慟哭……何かを為せずに死にたくない、と言った自分が、こうしてここにいる。

 

「良かろう」

 

そんな言葉しか言えなかったが、意思は余さず伝わったようだ。二人の少女の表情が明るくなる。

 

「今更そのような確認は要らぬ。力を貸さずに召喚に応じるはずもなかろうが」

 

「えっ!傲岸不遜な王様が二つ返事なんてどんな気紛れだい!?君は本当にあの英雄王かな!?」

 

「そんなモノは貴様らの眼で査定するのだな。そら、出立するぞ。ここにいて為すべきことは為したであろうが」

 

 

「為すべき、こと?」

 

 

「この我を召喚したことだ。貴様らにとって我が要か不要かは貴様らが決めるがいい。そこに在る令呪で、サーヴァントの始末など如何様にできよう」

 

 

「――召喚に不備があったのか?いや、そんなはずは……なんだこの慎み深い英雄王は!?怖いぞ!なんか怖い!」

 

「ドクターは黙っていてください。……あの、それでは……よろしくお願いします、英雄王」

 

「うむ、励めよ」

 

緊張に張り詰めていたマシュ・キリエライトの雰囲気が弛む。何故だか解らないが、首を飛ばされるのを覚悟していたかのような腹の決めようだ。

 

「なーんだ。心配して損した!意外とフレンドリーな人なんだね英雄王って!」

 

先程までうずくまっていた少女が破顔する。マシュとは対照的に、快活そうな雰囲気の少女だ。

 

 

「私は藤丸リッカ!なんだかなし崩し的にマスターになった者です!よろしく!ギル!」

 

「な――」

「ばっ――」

 

響く声と、マシュが絶句する。一々リアクションが大きい連中だ。

 

「うむ。マスターの大役、努めて果たすがよい」

 

「い、いいのかい!?」

 

「何がだ」

 

「君の事をその、愛称で呼ぶなんてことを赦すのかな君は!不敬だ、とか怒り出さないのかい!?」

 

「呼び名なぞ何でも良かろう。その程度で何を取り乱す」

 

どうも過剰に恐れられているような気がする。暴君でもあるまいし呼び名くらい好きにすればいい。

 

「あ、あの……英雄王がよろしいなら、よろしいのですが……」

 

「フレンドリー!私最高のサーヴァント引いちゃったかも!よーしマシュ!ギル!私達の旅は、これからだ!」

 

「なんだか終わりそうです先輩!」 

 

快活に叫ぶリッカ。元気なのはいいことだ。もっと言えば活力に溢れているのは好ましい。

 

 

さて、自分はどれほど彼女達の期待に応えられるだろうか……少なくとも、初戦で敗退するなどという無様は晒すことのないようにしなくては。

 

それに、カルデアとやらには英雄王の書物くらいはあるだろう。せめて、器となった英雄の詳細は知っておかねばなるまい。

 

 

「おい、そこの声音」

 

「あ、あぁ僕の事かい?僕はロマニ・アーキマン。カルデアの医療スタッフなんだけど……」

 

「帰ったら、ギルガメッシュ……我にまつわる資料を閲覧したい。集めておい……集めておけ」

 

「英雄王の書物をかい?構わないけど……あぁ、藤丸君に詳しく君を知ってもらうためかな?随分と面倒見がいい英雄を」

「我が読む」

 

「えぇ……?」

 

 




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